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住血吸虫症

(ビルハルツ住血吸虫症)

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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住血吸虫症は,血管寄生吸虫である住血吸虫属(Schistosoma属)による感染症であり,汚染された淡水中での遊泳または歩行により経皮的に感染する。住血吸虫は消化管または泌尿生殖器系の脈管に寄生する。急性症状は皮膚炎で,その数週間後に発熱,悪寒,悪心,腹痛,下痢,倦怠感,および筋肉痛が起こる。慢性症状は種により異なるが,血性下痢(例,マンソン住血吸虫[S. mansoni]および日本住血吸虫[S. japonicum])または血尿(例,ビルハルツ住血吸虫[S. haematobium])などがある。診断は便,尿,または生検検体での虫卵の同定による。血清学的検査は感度かつ特異度が高い可能性があるが,感染虫体数または臨床状態に関する情報は得られない。治療はプラジカンテルによる。

吸虫は種によって様々な部位(例,血管,消化管,肺,肝臓)に寄生する扁形動物である。

病因

住血吸虫症は群を抜いて最も重要な吸虫感染症である。住血吸虫(Schistosoma)は経皮的に侵入する唯一の吸虫であり,他の吸虫は全て経口摂取により感染する。世界中で約2億700万人が感染している。

5種の住血吸虫がヒトに感染する;いずれも淡水の巻貝が関わる類似の生活環を有する。ビルハルツ住血吸虫(S. haematobium)は尿路疾患を引き起こし,その他の住血吸虫(Schistosoma)は腸疾患を引き起こす。

地理的分布は以下のように種により異なる:

  • ビルハルツ住血吸虫(S. haematobium):アフリカ大陸全域に広く分布し,中東,トルコ,およびインドに小規模の発生地がある。

  • マンソン住血吸虫(S. mansoni):アフリカに広く蔓延し,中東で発生地があり,南米の一部およびカリブ諸島の一部にみられる西半球で唯一の種である。

  • 日本住血吸虫(S. japonicum):アジア,主に中国,フィリピン,タイ,およびインドネシア

  • メコン住血吸虫(S. mekongi):東南アジア

  • S. intercalatum:中央アフリカおよび西アフリカ

ヒトが主な病原体保有生物である。日本住血吸虫(S. japonicum)の病原体保有生物はイヌ,ネコ,齧歯類,ブタ,ウマ,およびヤギであり,メコン住血吸虫(S. mekongi)の病原体保有生物はイヌである。住血吸虫症は流行地域からの旅行者や移民によってもち込まれることがあるが,これらの種が米国(プエルトリコを含む)およびカナダ内で伝播することはない。

病態生理

住血吸虫(Schistosoma)属の成虫は腸間膜の細静脈内(日本住血吸虫[S. japonicum]およびマンソン住血吸虫[S. mansoni]で典型的)または膀胱の細静脈内(ビルハルツ住血吸虫[S. haematobium]で典型的)に生息して交接する。一部の虫卵は,腸管または膀胱の粘膜を通過して便中または尿中に排出される;また一部の虫卵は,宿主の臓器内にとどまるか,門脈系を介して肝臓やときに他の部位(例,肺,中枢神経系,脊髄)に運ばれる。排出された虫卵は淡水中で孵化してミラシジウム(第1期幼虫)を放出し,これが巻貝に侵入する。増殖後に何千もの自由遊泳性の二股の尾をもつセルカリアが放出される。

セルカリアは曝露後数分以内にヒトの皮膚に侵入する。ヒトの皮膚に侵入したセルカリアは二股の尾を失って幼住血吸虫に変態し,血流を介して肝臓に到達し,そこで成虫に成熟する。その後,成虫は最終的な生息部位である腸管の静脈または泌尿生殖器の静脈叢に移行する。

虫卵はセルカリアが皮膚から侵入した1~3カ月後に便中または尿中に現れる。

成虫の寿命は3~7年と推定される。雌虫の体長は7~20mmであり,雄虫はそれよりも若干小さい。

簡略化した住血吸虫(Schistosoma)の生活環

  • ヒト宿主内で,ミラシジウムを含む虫卵が便または尿とともに水中に排泄される。

  • 水中で虫卵が孵化し,ミラシジウムが放出される。

  • ミラシジウムが遊泳し,巻貝(中間宿主)に侵入する。

  • 巻貝の体内で,ミラシジウムは2世代のスポロシストを経てセルカリアになる。

  • 自由遊泳性のセルカリアが巻貝から放出され,皮膚からヒト宿主に侵入する。

  • 侵入する過程で,セルカリアは二又に分岐した尾を失い,幼住血吸虫になる。幼住血吸虫は脈管を介して肝臓に運ばれる。そこで,成虫に成熟する。

  • 成虫のペア(雄および雌)は(種に応じて)腸管または直腸の静脈に移行するか,泌尿生殖器の静脈叢に移行し,そこに生息して産卵を開始する。

症状と徴候

急性住血吸虫皮膚炎

急性片山熱

片山熱は産卵の開始とともに(典型的には大量曝露後2~4週間後)起こりうる。症状としては,発熱,悪寒,咳嗽,悪心,腹痛,倦怠感,筋肉痛,蕁麻疹,著明な好酸球増多などがあり,血清病に類似する。流行地域の在住者よりも外来者で症状がみられる頻度が高く,通常より重度で,典型的には数週間続く。

慢性住血吸虫症

慢性住血吸虫症は,主として組織内に残留した虫卵に対する宿主反応に起因する。初期には,マンソン住血吸虫(S. mansoni)または日本住血吸虫(S. japonicum)により引き起こされた腸管粘膜の潰瘍が出血して血性下痢に至ることがある。病変が進行するにつれて,腸管の限局性線維化,狭窄,瘻孔,および乳頭腫状増殖を来しうる。

肝内のマンソン住血吸虫(S. mansoni)および日本住血吸虫(S. japonicum)の虫卵に対する肉芽腫性反応は,通常肝機能を損なわないが,線維症および肝硬変を引き起こすことがあり,それにより門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。... さらに読む を来し,結果として脾腫 脾腫 脾腫とは,脾臓が異常に腫大した状態である。 (脾臓の概要も参照のこと。) 脾腫は,ほとんどの場合が他の疾患による二次的なものである。脾腫の原因は無数にあるため,可能な分類法も多くある(脾腫の一般的な原因の表を参照)。温帯気候で最も一般的な原因は,以下のものである: 骨髄増殖性疾患 リンパ増殖性疾患 さらに読む や食道静脈瘤が生じる可能性がある。食道静脈瘤が出血して,吐血がみられることがある。

ビルハルツ住血吸虫(S. haematobium)の場合は,膀胱壁の潰瘍により排尿困難,血尿,および頻尿が生じることがある。時間の経過とともに,慢性膀胱炎を来す。狭窄から水尿管症および水腎症に至ることがある。膀胱に乳頭腫様の腫瘤がよくみられ,扁平上皮癌が発生しうる。消化管および泌尿生殖器からの失血によりしばしば貧血を来す。

泌尿生殖器への細菌の二次感染がよくみられ,マンソン住血吸虫(S. mansoni)感染では持続性のサルモネラ(Salmonella)敗血症が生じうる。数種の住血吸虫(特にビルハルツ住血吸虫[S. haematobium])は,男女を問わず生殖器疾患の原因となることがあり,不妊症をはじめとする多くの症状を引き起こす。住血吸虫(Schistosoma)の少数寄生でも,神経学的合併症が生じることがある。脊髄に残留した虫卵または成虫は横断性脊髄炎 急性横断性脊髄炎 急性横断性脊髄炎は,単一の髄節または複数の隣接する髄節(通常は胸髄)において灰白質および白質に急性炎症が生じる病態である。原因としては,多発性硬化症,視神経脊髄炎,感染症,自己免疫性または感染後炎症,血管炎,特定の薬剤などがある。症状としては,病変レベル以下に生じる両側性の運動,感覚,括約筋障害などがある。診断は通常,MRI,髄液検査,および血液検査による。コルチコステロイドの静注と血漿交換が早期には役立つ可能性がある。それ以外の場合,... さらに読む の原因となることがあり,脳内の虫卵は限局性病変および痙攣発作を引き起こしうる。

診断

  • 便または尿(ビルハルツ住血吸虫[S. haematobium])検体の鏡検による虫卵の検出

  • 血清学的検査

便または尿(ビルハルツ住血吸虫[S. haematobium],ときに日本住血吸虫[S. japonicum])を検査して,虫卵がないか調べる。集卵法を用いた再検査を要することもある。地理情報は種を決定する主要因子であるため,曝露歴を検査室に通知すべきである。臨床像からは住血吸虫症が示唆されるが尿または便の反復検査をしても虫卵が発見されない場合,虫卵検出のため腸または膀胱粘膜を生検することもある。

使用する抗原に応じて,血清学的検査は感染症への感度および特異度が高い可能性があるが,感染虫体数,臨床状態,予後に関する情報は得られない。患者が流行地域の居住者ではない場合,住血吸虫が成虫に成熟し,それに対する抗体が産生されるのを待って,淡水への最後の曝露から6~8週間以上経過後に血清学的検査を行うべきである。

治療

  • プラジカンテル

プラジカンテルによる1日間経口治療が推奨されている(ビルハルツ住血吸虫[S. haematobium],マンソン住血吸虫[S. mansoni],およびS. intercalatumに対しては20mg/kg,1日2回;日本住血吸虫[S. japonicum]およびメコン住血吸虫[S. mekongi]に対しては20mg/kg,1日3回)。プラジカンテルは住血吸虫の成虫には効果的であるが,感染早期にみられる発育中の幼住血吸虫には効果的でない。そのため,旅行者に対しては,最後の曝露から6~8週間にわたり治療を遅らせる。プラジカンテルの有害作用は一般に軽度であり,腹痛,下痢,頭痛,めまいなどがある。治療失敗例が報告されているが,その原因が再感染によるのか,未熟な住血吸虫の耐性が比較的強いことによるのか,またはプラジカンテル耐性の住血吸虫の成虫によるのかを判断するのは難しい。

診断時点で虫卵が認められる場合は,治療の1~2カ月後に治癒を確認するためのフォローアップ診察が推奨される。その時点でも虫卵が認められる場合は,再び治療を行う。

片山熱の治療法は不明である。プラジカンテルは感染早期にはあまり効果的ではなく,重度の症状はコルチコステロイで軽減できる。治療後3カ月および6カ月時に,生きた虫卵の有無を検査するべきである。虫卵排泄が著明に減少していなければ再治療の適応となる。

予防

汚染された淡水との接触を徹底して避けることで住血吸虫症を予防する。

入浴に使用する淡水は1分以上煮沸し,その後冷やしてから入浴すべきである。ただし,貯水タンクに1~2日間保管した水は煮沸なしでも安全なはずである。

汚染された水に誤って曝露した場合(例,川に落ちる)は,寄生虫が皮膚を通過する前に除去するよう試みるため,タオルで徹底的に拭いて乾かすべきである。

尿および便の衛生的処理により感染の可能性が低減する。

流行地域在住の成人は再感染に対して小児より抵抗性であり,獲得免疫の可能性が示唆される。

流行地域では住血吸虫症を制御するために,プラジカンテルによる集団治療および学校での治療,教育プログラム,ならびに軟体動物駆除剤による巻貝の個体数削減が行われている。

現在ワクチン開発が進められている。

要点

  • 住血吸虫(Schistosoma)は,経皮的に侵入する唯一の吸虫であり,世界で約2億700万人が感染している。

  • セルカリアは皮膚に侵入すると,二股の尾を失って住血吸虫となり,血流を介して肝臓に到達し,そこで成熟する;成虫は,腸管の静脈または泌尿生殖路の静脈叢に移動し,最終的にそこに住み着く。

  • 肝臓内の虫卵は肉芽腫反応を惹起し,これが線維化および門脈圧亢進をもたらし,脾腫,食道静脈瘤,吐血の原因となる。

  • 腸管内の虫体は血性下痢を引き起こし,膀胱内の虫体は血尿および慢性膀胱炎を引き起こす。

  • プラジカンテルで治療する。

  • 感染を予防するには,流行地域での淡水との接触を避ける。

鳥類および動物の住血吸虫による皮膚炎

皮膚疾患であるセルカリア皮膚炎は,汚染された淡水または汽水との接触時に,ヒトの体内で発育できない住血吸虫(Schistosoma)が皮膚から体内に侵入した際に生じる。

鳥類およびヒト以外の哺乳類に寄生する住血吸虫(Schistosoma)のセルカリアはヒトの皮膚を通過することができる。このセルカリアはヒトの体内では発育しないが,感作が生じて,侵入部位にそう痒を伴う斑状丘疹状,または小水疱状の皮膚病変が出現することがある。皮膚病変は,全身性の発熱反応を伴うことがあり,これは5~7日間持続して自然に解熱する。

セルカリア皮膚炎は世界中で発生している。北米では,海水性の住血吸虫による皮膚炎(clam diggers’ itch)が大西洋,メキシコ湾,太平洋,およびハワイ沿岸の全域でみられる。ケープコッド沖の干潟ではよくみられる。淡水性の住血吸虫による皮膚炎(swimmer’s itch)は五大湖地域でよくみられる。

セルカリア皮膚炎の診断は臨床所見に基づく。ほとんどの症例は医学的処置を必要としない。

セルカリア皮膚炎の治療は,冷罨法,重曹,または止痒ローションによる対症療法である。コルチコステロイドの外用剤も使用できる。

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