膀胱癌

執筆者:Thenappan Chandrasekar, MD, University of California, Davis
Reviewed ByLeonard G. Gomella, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 修正済み 2025年 2月
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膀胱癌は通常,移行上皮癌(尿路上皮癌)である。通常は血尿(最も多い)または頻尿や尿意切迫などの刺激性の排尿症状がみられ,続いて尿路閉塞により疼痛が生じる可能性がある。診断は膀胱鏡検査および生検による。治療は,高周波治療,経尿道的切除術,膀胱内注入,根治的手術,化学療法,外照射療法,またはこれらの組合せによる。

米国では,毎年約83,190例の膀胱癌が新たに発生し,約16,840例が死亡している(2024年の推定値)(1)。膀胱癌は男性では4番目に頻度の高いがんであるが,女性での頻度はそれほど高くなく,発生率の男女比は約3:1である。膀胱癌は黒人と比較して白人でより多くみられ,発生率は年齢とともに上昇する。

危険因子としては以下のものがある:

  • 喫煙(最も頻度が高い危険因子で,新規症例の50%以上の原因)

  • シクロホスファミドの長期使用

  • 慢性的な刺激(例,住血吸虫症,長期カテーテル留置,または膀胱結石に起因するもの)

  • 炭化水素,トリプトファン代謝物,工業化学薬品への曝露,特に芳香族アミン(染色工業で使用されるナフチルアミンなどのアニリン色素)およびゴム,電線,ペンキ,繊維工業で使用される化学薬品への曝露

膀胱癌には以下の組織型がある:

  • 移行上皮癌(尿路上皮癌):膀胱癌の90%超を占める。大半は乳頭癌であり,表在性かつ高分化型で,外側に増殖する傾向がある;無茎性腫瘍はより潜行性で,早期に浸潤し,転移を起こす傾向がある。

  • 扁平上皮癌:比較的頻度が低く,通常は膀胱の寄生虫感染または慢性的な粘膜刺激がある患者で発生する。

  • 腺癌:原発腫瘍として発生する場合もあれば,まれに腸管に生じた癌からの転移である場合がある。膀胱への転移を除外すべきである。

40%を超える患者では,膀胱内の同一または別の部位で再発がみられ,特に腫瘍が大型または低分化型であるか,複数ある場合にその傾向が強くなる。膀胱癌は,リンパ節,肺,肝,および骨に転移する傾向がある。

膀胱の上皮内癌は,悪性度は高いが非浸潤性であり,通常は多巣性で,再発しやすい傾向がある。

参考文献

  1. 1.Siegel RL, Giaquinto AN, Jemal A.Cancer statistics, 2024 [published correction appears in CA Cancer J Clin. 2024 Mar-Apr;74(2):203. doi: 10.3322/caac.21830]. CA Cancer J Clin.2024;74(1):12-49.doi:10.3322/caac.21820

膀胱癌の症状と徴候

大半の患者は原因不明の血尿(肉眼的または顕微鏡的)を呈する。一部の患者は貧血を呈し,血尿は評価中に検出される。刺激性の排尿症状(排尿困難,灼熱感,頻尿)および膿尿も,受診時に一般的に認められる。骨盤痛は進行がんで起こり,骨盤内腫瘤が触知可能なことがある。

膀胱癌の診断

  • 膀胱鏡検査および生検

  • 尿細胞診

膀胱癌は臨床的に疑われる。血尿がみられる場合は,精査はリスクで層別化にて行い,診断目的の膀胱鏡検査と画像検査(CT尿路造影または腎超音波検査[1])を併用する。尿細胞診も行うべきであり,これにより悪性細胞を検出できることがある。診断および臨床病期診断のために,異常のある領域の膀胱鏡検査および生検か腫瘍の切除が必要である。尿中抗原検査が利用可能であるが,診断でのルーチンな施行は推奨されない。尿中抗原検査は,がんが疑われるが細胞診が陰性の場合に施行される。

アミノレブリン酸ヘキシルエステルの膀胱内注入後に青色光を用いて行う膀胱鏡検査により,膀胱癌の最初の検出率だけでなく,無再発生存期間も改善できる可能性がある。検出率が高まれば,将来の再発が減少し,治療に反応しない特定の腫瘍をより早期に認識しやすくなる(それにより一部の患者で不必要な治療が回避される)ことにより,臨床的な予後が改善すると予想される。

膀胱癌の70~80%を占める筋層非浸潤性膀胱癌(上皮内癌,Ta,T1)の腫瘍では,生検と膀胱鏡検査(および同時に行う完全切除)の併用で十分な病期診断が可能である。しかしながら,生検にて表在性腫瘍または扁平腫瘍よりも浸潤度が高いことが判明した場合は,筋層を含めるように注意した,4~8週間以内の再切除を考慮すべきである。排尿筋の浸潤が判明した場合(T2以上)は,腫瘍の進展範囲を判定し転移を評価するために,血液検査,腹部および骨盤CT,ならびに胸部X線を施行する。局所の病期診断にはMRIを考慮してもよい。浸潤性の腫瘍がある患者には,膀胱鏡検査および生検のための麻酔時に併せて双合診(男性では直腸診,女性では直腸内診)を行う。標準のTNM(tumor, node, metastasis)病期分類システムが用いられる(膀胱癌のAJCC/TNM分類の表および膀胱癌のTNM分類の定義の表を参照)。

表&コラム
表&コラム
表&コラム
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診断に関する参考文献

  1. 1.Barocas DA, Boorjian SA, Alvarez RD, et al: AUA/SUFU Guideline.J Urol.204(4):778-786, 2020.doi: 10.1097/JU.0000000000001297

膀胱癌の治療

  • 経尿道的切除と膀胱内注入による免疫療法または化学療法(筋層非浸潤性膀胱癌が対象)

  • 膀胱摘除術または放射線療法と化学療法の併用(筋層浸潤癌が対象)

表在がん

筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)は経尿道的切除または高周波治療により完全に除去すべきである。術後24時間以内に化学療法薬(マイトマイシンCおよびゲムシタビン)を注入することで,再発が減少することが示されている。外来で膀胱内注入を繰り返すことでも,低リスクNMIBCの再発が減少する可能性がある。上皮内癌およびその他の高悪性度筋層非浸潤性尿路上皮癌は,BCG(カルメット-ゲラン桿菌)の膀胱内注入療法または根治的膀胱摘除術で治療する(1)。BCG注入は,1~3年かけて週1回から月1回までの間隔で行うことができる。BCGにより膀胱刺激症状や排尿困難などの有意な不快症状が生じた患者と膀胱癌が再発または進行した患者に対する二次治療の選択肢としては,膀胱内化学療法(ゲムシタビン/ドセタキセル),ナドファラゲン フィラデノベク-vncg(nadofaragene firadenoec-vncg)(複製能のないアデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療)による膀胱内療法,BCG併用でのノガペンデキン アルファ インバキセプト(nogapendekin alfa inbakicept)(IL-15作動薬)による膀胱内療法,ペムブロリズマブの静脈内投与,早期の膀胱摘除術,臨床試験への登録などがある。

浸潤がん

筋層に浸潤した(すなわちT2以上)腫瘍には,通常は根治的膀胱摘除術(膀胱および周辺組織の切除)と尿路変向術の同時施行が必要であり,膀胱部分切除術が可能な患者は5%未満である。適格な患者では,膀胱摘除術施行前にシスプラチンベースのレジメンで行うネオアジュバント化学療法が標準治療とみなされている。病期診断に加えて想定される治療効果のために手術時のリンパ節郭清が必要となるが,その必要がある範囲については議論がある。

膀胱摘除術後に施行する従来法の尿路変向術では,尿を回腸導管を通して腹部のストーマに導き,体外の集尿袋に集める。自然排尿型代用膀胱造設術や導尿型代用膀胱造設術などの代替選択肢が一般的になりつつあり,これらは特定の条件を満たす患者に適切である。どちらの術式でも,体内リザーバーは腸管から作製される。自然排尿型代用膀胱造設術のリザーバーは尿道に接続される。リザーバーを空にするには,患者が骨盤底筋を弛めると同時に腹圧を上昇させることで,尿が尿道経由でほぼ自然に排出される。大半の患者が日中の尿禁制を維持できるが,夜間にはある程度の失禁が起こることがある。導尿型代用膀胱造設術では,リザーバーは禁制腹部ストーマに接続される。患者は1日を通して定期的な間隔で自己導尿を行い,リザーバーを空にする。

積極的な経尿道的切除術,化学療法,および放射線療法を組み合わせた膀胱温存プロトコルは,高齢患者やより侵襲的な手術を拒否する患者などの一部の患者では適切な場合がある。しかしながら,疾患特性が良好である(水腎症なし,病変が孤立性,完全切除,上皮内癌病変なし)選択された患者では,膀胱温存手技による膀胱摘除術に匹敵する成績が得られる可能性がある(2)。これらのプロトコルで得られる5年生存率は36~74%であり,10~20%の患者では救済療法としての膀胱摘除術が必要になる(3, 4)。

根治的膀胱摘除術後には,シスプラチンベースのアジュバント化学療法を考慮すべきであり(ネオアジュバント療法を受けなかった場合),ネオアジュバント療法を受けたにもかかわらず有意な残存病変が認められるか,患者がシスプラチンベースの化学療法に耐えられない場合には,アジュバント療法としてニボルマブを考慮すべきである。

進行または再発について患者を3~6カ月毎にモニタリングすべきである。

転移例および再発例

転移がある場合は全身療法が必要であり,一般にシスプラチンベースの化学療法(ゲムシタビン/ドセタキセルまたはMVAC[メトトレキサート,ビンブラスチン硫酸塩,ドキソルビシン塩酸塩(Adriamycin),およびシスプラチン])か併用免疫療法/抗体薬物複合体(エンホルツマブ ベドチン/ペムブロリズマブ)のいずれかであり,これらはしばしば効果的であるが,転移がリンパ節のみである場合を除き,治癒はまれである。最初から化学療法で治療する場合は,その後の維持療法としてアベルマブによる免疫療法を行うことができる。全身療法により転移例の生存期間を延長できる可能性がある。現在では,化学療法が不成功に終わったFGFR3およびFGFR2変異陽性患者に対して,初の分子標的薬であるエルダフィチニブを使用することができる。

再発例の治療は,再発時の臨床病期および部位と前治療に依存する。表在性腫瘍に対する経尿道的切除術後の局所再発は,通常は再切除または高周波療法で治療される。高悪性度表在性膀胱癌の再発例には,早期の膀胱摘除術が推奨される。遠隔再発した場合は全身療法で治療する。

治療に関する参考文献

  1. 1.Lenis AT, Lec PM, Chamie K, et al: Bladder cancer: A review. JAMA.324(19):1980-1991, 2020.doi:10.1001/jama.2020.17598

  2. 2.Ditonno F, Veccia A, Montanaro F, et al.Trimodal therapy vs radical cystectomy in patients with muscle-invasive bladder cancer: a systematic review and meta-analysis of comparative studies. BJU Int.2024;134(5):684-695.doi:10.1111/bju.16366

  3. 3.Kulkarni GS, Hermanns T, Wei Y, Bhindi B, Satkunasivam R, Athanasopoulos P, Bostrom PJ, Kuk C, Li K, Templeton AJ, Sridhar SS, van der Kwast TH, Chung P, Bristow RG, Milosevic M, Warde P, Fleshner NE, Jewett MAS, Bashir S, Zlotta AR.Propensity Score Analysis of Radical Cystectomy Versus Bladder-Sparing Trimodal Therapy in the Setting of a Multidisciplinary Bladder Cancer Clinic.J Clin Oncol.2017 Jul 10;35(20):2299-2305.doi: 10.1200/JCO.2016.69.2327.Epub 2017 Apr 14.PMID: 2841001

  4. 4.Giacalone NJ, Shipley WU, Clayman RH, et al.Long-term Outcomes After Bladder-preserving Tri-modality Therapy for Patients with Muscle-invasive Bladder Cancer: An Updated Analysis of the Massachusetts General Hospital Experience. Eur Urol.2017;71(6):952-960.doi:10.1016/j.eururo.2016.12.020

膀胱癌の予後

筋層非浸潤性膀胱癌(Ta,Tis,またはT1)は局所再発率が高いが,一部の患者はより進行する。低悪性度腫瘍やTa腫瘍が死に至ることはまれである。高悪性度腫瘍およびT1腫瘍は筋層浸潤性膀胱癌に進行することがある。上皮内癌(Tis)は乳頭癌と比較して悪性度が高い場合があり,悪性度の高い腫瘍として治療すべきである。膀胱筋層浸潤がある患者では,5年生存率は約50%であるが,化学療法感受性の患者ではネオアジュバント化学療法によりこの結果が改善する。

一般に,進行性または転移性の浸潤性膀胱癌患者の予後は不良である。膀胱の扁平上皮癌または腺癌についても,これらのがんが通常は高度に浸潤性で,しばしば進行期で検出されることから,予後不良である。

要点

  • 移行上皮癌(尿路上皮癌)は膀胱癌の90%超を占める。

  • 原因不明の血尿またはその他の泌尿器症状を呈する患者(特に中年男性または高齢男性)では,膀胱癌を疑う。

  • 膀胱癌の診断は膀胱鏡下での生検にて行い,さらに,筋層浸潤がみられる場合は病期診断のため画像検査を施行する。

  • 表在がんは経尿道的切除術または高周波療法によって切除し,その後,薬剤を膀胱に反復注入する。

  • 筋層浸潤がみられる場合は,シスプラチンベースのネオアジュバント化学療法とその後の手術(典型的には根治的膀胱摘除術および尿路変向術),または頻度は低いが放射線療法と化学療法の併用で治療する。

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