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肺炎球菌感染症

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Perez

, MD, Wellington Regional Medical Center, West Palm Beach

最終査読/改訂年月 2016年 2月
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肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae) (肺炎球菌)は,莢膜を有するα溶血性のグラム陽性好気性双球菌である。米国では毎年,肺炎球菌感染により約700万例の中耳炎,約500,000例の肺炎,約50,000例の敗血症,および約3000例の髄膜炎が引き起こされ,約40,000人が死亡している。診断はグラム染色と培養による。治療法は耐性プロファイルに依存し,β-ラクタム系,マクロライド系,およびレスピラトリーキノロン系薬剤のほか,ときにバンコマイシンが使用される。

肺炎球菌は,寒天平板上での増殖にカタラーゼを要する選好性細菌である。検査室では,肺炎球菌は以下によって同定される:

  • 血液寒天培地上のα溶血

  • オプトヒンへの感受性

  • 胆汁酸塩による溶解

肺炎球菌は一般的にヒトの気道に定着し,特に冬期と春の初めによくみられる。拡大は空気中の飛沫による。

肺炎球菌感染症の流行はまれであるが,いくつかの血清型に特定集団内(例,軍隊,施設)でのアウトブレイクとの関連がみられる。

血清型

肺炎球菌の莢膜は複合多糖体で構成されており,血清型を規定するとともに,毒性および病原性に寄与している。遺伝的多様性のため,同じ血清型の中でも毒性に若干の相違がみられる。

現時点で90を超える血清型が同定されている。最も重篤な感染症は少数の血清型(4,6B,9V,14,18C,19F,および23F)によって引き起こされており,それらは13価肺炎球菌結合型ワクチンでカバーされている。これらの血清型は小児では侵襲性感染症の約90%,成人では60%の起因菌となっている。しかしながら,一部には多価ワクチンの広範な使用により,こうしたパターンは徐々に変化してきている。強毒性で多剤耐性を獲得した血清型19Aが出現したが,これは気道感染症および侵襲性感染症の重要な原因となっていることから,現在では13価肺炎球菌結合型ワクチンの対象に含められている。

危険因子

重篤な侵襲性肺炎球菌感染症に最も罹患しやすいのは以下の集団である:

  • 慢性疾患(例,慢性心肺系疾患,糖尿病,肝疾患,アルコール依存症)のある患者

  • 免疫抑制(例,HIV)のある患者

  • 機能的または解剖学的無脾症の患者

  • 鎌状赤血球症の患者

  • 長期療養施設の入居者

  • 喫煙者

  • アボリジニー,アラスカ先住民のほか,アメリカンインディアンの特定の集団

高齢者では,たとえ他の疾患がなくても,肺炎球菌感染症の予後が不良となる傾向がある。

慢性気管支炎や一般的な呼吸器ウイルス感染症(特にインフルエンザ)によって気道上皮が損傷すると,肺炎球菌の侵襲が起きやすくなる可能性がある。

肺炎球菌による疾患

肺炎球菌感染症としては以下のものがある:

  • 中耳炎

  • 肺炎

  • 副鼻腔炎

  • 髄膜炎

  • 心内膜炎

  • 化膿性関節炎

  • 腹膜炎(まれ)

通常,一次感染は中耳または肺で発生する。

以下に挙げる疾患については,本マニュアルの別の箇所で詳細に考察されている。

肺炎球菌菌血症

肺炎球菌菌血症は,免疫能が正常な患者にも免疫抑制状態の患者にも発生するが,脾摘患者では特にリスクが高い。

菌血症は一次感染症のこともあれば,局所の肺炎球菌感染症の急性期に併発することもある。菌血症が生じると,二次性の播種により,化膿性関節炎,髄膜炎,心内膜炎などの遠隔部位の感染症が発生することがある。

治療を行った場合でも,菌血症の全死亡率は小児(主に髄膜炎の患者,易感染状態の患児,または脾臓摘出を受けて重症菌血症を発症した患児)および成人で15~20%,高齢者で30~40%であり,最初の3日間で最も死亡リスクが高くなる。

肺炎球菌性肺炎

肺炎は肺炎球菌による重篤な疾患で最も頻度の高いものであり,大葉性肺炎の場合と比較的まれながら気管支肺炎の場合がある。米国では毎年約4百万例の市中肺炎が発生しており,そのうち入院を要する症例では,全ての年齢層を通じて肺炎球菌が最も頻度の高い起因菌である。

最大40%の患者で胸水がみられるが,そのほとんどは薬物治療中に消失し,膿胸を発症する患者はわずかに約2%であるが,その場合は被包化を伴う濃厚な線維素膿性となることがある。肺膿瘍形成はまれである。

肺炎球菌性急性中耳炎

乳児(新生児期の後)および小児における急性中耳炎症例の30~40%は肺炎球菌に起因する。ほとんどの集団で3分の1以上の小児が2歳になるまでに肺炎球菌急性中耳炎を発症するが,肺炎球菌性中耳炎は一般的に再発する。比較的少数の血清型の肺炎球菌(S. pneumoniae)がほとんどの症例の起因菌となっている。米国で2000年に全乳児を対象とした予防接種が開始されてからは,ワクチンに含まれない血清型の肺炎球菌(S. pneumoniae)血清型(特に血清型19A)が肺炎球菌急性中耳炎の起因菌として最も頻度が高くなった。

合併症としては以下のものがある:

  • 軽度の伝音難聴

  • 前庭平衡障害

  • 鼓膜穿孔

  • 乳様突起炎

  • 錐体炎

  • 内耳炎

先進国では頭蓋内合併症はまれであるが,具体的には髄膜炎,硬膜外膿瘍,脳膿瘍,横静脈洞血栓症,海綿静脈洞血栓症,硬膜下膿瘍,頸動脈血栓症などがある。

肺炎球菌による副鼻腔炎

副鼻腔炎は肺炎球菌が原因のことがあり,慢性化して複数菌感染となりうる。

ほとんどの場合,上顎洞および篩骨洞が侵される。副鼻腔の感染症は疼痛および膿性鼻汁を引き起こし,頭蓋骨に到達して以下の合併症をもたらすことがある:

  • 海綿静脈洞血栓症

  • 脳,硬膜外,または硬膜下の膿瘍

  • 敗血症による皮質の血栓性静脈炎(septic cortical thrombophlebitis)

  • 髄膜炎

肺炎球菌性髄膜炎

急性化膿性髄膜炎は,しばしば肺炎球菌に起因するが,他の感染巣(主に肺炎)からの菌血症,耳,乳様突起,または副鼻腔からの直接の感染拡大,もしくはこれらの部位のいずれかまたは篩板を巻き込んだ頭蓋底骨折(通常は髄液漏を伴い,これにより副鼻腔,上咽頭,または中耳の細菌が中枢神経系に侵入できるようになる)に続いて,二次的に発生することがある。

典型的な髄膜炎の症状(例,頭痛,項部硬直,発熱)がみられる。

肺炎球菌性髄膜炎後の合併症としては以下のものがある:

  • 聴力障害(最大50%の患者で)

  • 痙攣発作

  • 学習障害

  • 精神機能障害

  • 麻痺

肺炎球菌による心内膜炎

肺炎球菌菌血症に続発して,たとえ心臓弁膜症のない患者でも急性細菌性心内膜炎が発生しうるが,まれである。

肺炎球菌による心内膜炎では,心臓弁に腐食性の病変が生じることがあり,突然の破裂や穿孔が生じて,急速に進行する心不全を来すことがある。

肺炎球菌による化膿性関節炎

化膿性関節炎は,他のグラム陽性球菌によるものと同様に,通常は別の部位の感染巣からの肺炎球菌菌血症の合併症として生じる。

肺炎球菌による特発性細菌性腹膜炎

肺炎球菌による特発性細菌性腹膜炎は,肝硬変と腹水を有する患者で最も多くみられ,他の原因による特発性細菌性腹膜炎と鑑別できる特徴はない。

診断

  • グラム染色および培養

肺炎球菌は,グラム染色でランセット型双球菌の典型的な外見を示すことから,容易に同定される。

特徴的な莢膜をもち,莢膜膨化試験で最もよく検出できる。この試験では,抗血清を添加した後に墨汁で染色すると,微生物の周りに莢膜が暈のように観察される。莢膜はメチレンブルー染色した塗抹標本においても確認できる。

培養により同定を確定し,抗菌薬感受性試験を施行すべきである。分離株の血清型および遺伝子型分析は,疫学的な理由(例,特定クローンの拡大や抗菌薬耐性パターンの追跡)で役立つことがある。パルスフィールドゲル電気泳動やmultilocus sequence typing (MLST)法などの分析技術によって,1つの血清型の中での毒性の差異を鑑別できる場合がある。

治療

  • β-ラクタム系,マクロライド系,またはレスピラトリーキノロン系(例,レボフロキサシン,モキシフロキサシン,gemifloxacin)薬剤

肺炎球菌感染が疑われる場合,感受性試験の結果が出るまでの初期治療は地域の耐性パターンにより決定すべきである。

肺炎球菌感染症に対してよく選択される治療薬は,β-ラクタム系またはマクロライド系抗菌薬であるが,耐性株が出現したことから,治療はより困難になってきている。ペニシリン,アンピシリン,その他のβ-ラクタム系薬剤に対して高度耐性を示す菌株が世界中でよくみられる。β-ラクタム耐性出現の素因で最も頻度が高いのは,過去数カ月以内の同クラス薬剤の使用である。マクロライド系抗菌薬に対する耐性もかなり増加してきており,市中肺炎の入院患者に対する単剤療法としてはもはや推奨されない。

中等度耐性菌は,常用量もしくは高用量のベンジルペニシリン,または他のβ-ラクタム系薬剤で治療できる。

ペニシリン高度耐性菌による髄膜以外の感染症で重篤な状態にある患者は,しばしばセフトリアキソン,セフォタキシム,またはceftarolinで治療できる。分離株の最小発育阻止濃度が非常に高くない限り,非常に高用量のベンジルペニシリンの注射剤(成人で1日当たり2千万~4千万単位を静注)も有効である。フルオロキノロン系薬剤(例,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,gemifloxacin)は,ペニシリン高度耐性肺炎球菌による成人の呼吸器感染症の治療に効果的である。多剤用療法(例,マクロライド系 + β-ラクタム系)を用いると菌血症を伴う肺炎球菌性肺炎の死亡率がより低くなることを示唆したエビデンスがある。

これまでのところ,全てのペニシリン耐性分離株がバンコマイシンに対して感受であるが,バンコマイシンを注射剤で投与しても髄膜炎治療に十分な髄液中濃度が得られるとは限らない(特にコルチコステロイドも使用している場合)。したがって,髄膜炎患者ではバンコマイシンとともにセフトリアキソンもしくはセフォタキシム,リファンピシン,またはその両方を使用する。

予防

感染により血清型特異的な免疫が誘導されるが,これは別の血清型には有効ではない。あるいは,予防として以下を行う:

  • 予防接種

  • 予防的抗菌薬投与

肺炎球菌ワクチン

2つの肺炎球菌ワクチンが利用できる:

  • 13の血清型を対象とした結合型ワクチン(PCV13)

  • 成人および小児における重篤な肺炎球菌感染症の90%以上を占める23の血清型に対する多価多糖体ワクチン(PPV23)

ワクチン接種のスケジュールは,年齢および患者のもつ疾患によって異なる。

肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は,以下の集団に推奨される:

肺炎球菌感染症にかかるリスクを高める病態には以下のものがある:

  • 人工内耳

  • 髄液漏

  • 鎌状赤血球症または別の異常ヘモグロビン症

  • 先天性または後天性無脾症

  • 易感染状態(例,先天性免疫不全,慢性腎不全,ネフローゼ症候群,HIV感染症,白血病,リンパ腫,全身性の癌,免疫抑制薬の使用,臓器移植)

肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)は以下の集団に推奨される:

  • 65歳以上の成人

  • 2~64歳の患者で,上記のような高リスクの病態をもつ人

19~64歳の成人を対象とする追加の接種基準として以下のものがある:

  • 慢性肺疾患(喘息を含む)

  • 慢性心血管疾患(高血圧は除く)

  • 糖尿病

  • 慢性肝疾患

  • 慢性アルコール中毒

  • 喫煙

予防的抗菌薬投与

機能的または解剖学的無脾症の5歳未満の小児に対しては,ペニシリンV,125mg,経口,1日2回の予防投与が推奨される。化学予防の継続期間は経験的に決定するが,一部の専門家は無脾症の高リスク患者に対して小児期から成人期まで予防投与を継続している。児童または青年では,脾臓摘出後少なくとも1年間にわたるペニシリン250mg,経口,1日2回の投与が推奨される。

要点

  • 肺炎球菌は中耳炎および肺炎症例の多くの起因菌となっており,また髄膜炎,副鼻腔炎,および化膿性関節炎も引き起こしうる。

  • 慢性気道疾患または無脾症のある患者は,易感染性患者と同様に,重篤な侵襲性肺炎球菌感染症のリスクが高くなる。

  • 単純性または軽度の感染症はβ-ラクタム系またはマクロライド系抗菌薬で治療する。

  • β-ラクタム系およびマクロライド系抗菌薬に対する耐性が増加していることから,重篤患者の治療には新世代のセファロスポリン系薬剤(例,セフトリアキソン,セフォタキシム,ceftarolin)やレスピラトリーキノロン系薬剤(例,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,gemifloxacin)を使用してもよい。

  • 生後6週から59カ月までの全ての小児,65歳以上の全ての成人,および他の年齢層で特定の危険因子を有する個人には,ルーチンのワクチン接種が推奨される。

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