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肺炎球菌感染症

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Perez

, MD, Wellington Regional Medical Center, West Palm Beach

最終査読/改訂年月 2019年 6月
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肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌)は,莢膜を有するα溶血性のグラム陽性好気性双球菌である。米国では毎年,肺炎球菌感染により約700万例の中耳炎,約500,000例の肺炎,約50,000例の敗血症,および約3000例の髄膜炎が引き起こされ,約40,000人が死亡している。診断はグラム染色と培養による。治療法は耐性プロファイルに依存し,β-ラクタム系,マクロライド系,レスピラトリーキノロン系薬剤のいずれかのほか,ときにバンコマイシンが使用される。

肺炎球菌は,寒天平板上での増殖にカタラーゼを要する選好性細菌である。検査室では,肺炎球菌は以下によって同定される:

  • ランセット型のグラム陽性双球菌

  • カタラーゼ陰性

  • 血液寒天培地上のα溶血

  • オプトヒンへの感受性

  • 胆汁酸塩による溶解

肺炎球菌は一般的にヒトの気道に定着し,特に冬期と春の初めによくみられる。拡大は空気中の飛沫による。

肺炎球菌感染症の流行はまれであるが,いくつかの血清型に特定集団内(例,軍隊,施設)でのアウトブレイクとの関連がみられる。

血清型

肺炎球菌の莢膜は複合多糖体で構成されており,血清型を規定するとともに,毒性および病原性に寄与している。遺伝的多様性のため,同じ血清型の中でも毒性に若干の相違がみられる。

型特異抗血清による反応に基づき,現時点で90を超える肺炎球菌の血清型が同定されている。肺炎球菌の多糖体でできた莢膜が,食作用を回避するために極めて重要である。血清型3型の菌株は,より厚い莢膜を有し,他の血清型よりムコイド型集落を形成する傾向が強く,成人の侵襲性肺炎球菌感染症の一般的な原因である。最も重篤な感染症は少数の血清型(3,4,6B,9V,14,18C,19F,および23F)によって引き起こされており,それらは13価肺炎球菌結合型ワクチン 肺炎球菌ワクチン 肺炎球菌感染症(例,中耳炎,肺炎,敗血症,髄膜炎)は,90を超える血清型の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae[肺炎双球菌])のうちの一部によって引き起こされる。感染症を引き起こす血清型の多くに対するワクチンが使用可能になっている。特定の医学的状態(例,慢性疾患,易感染状態,髄液漏,人工内耳)は肺炎球菌感染症のリスクを高める。 詳細については,Pneumococcal... さらに読む でカバーされている。これらの血清型は小児では侵襲性感染症の約90%,成人では60%の起因菌となっている。しかしながら,一部には多価ワクチンの広範な使用により,こうしたパターンは徐々に変化してきている。強毒性で多剤耐性を獲得した血清型19Aが出現したが,これは気道感染症および侵襲性感染症の重要な原因となっていることから,現在では13価肺炎球菌結合型ワクチンの対象に含められている。

危険因子

重篤な侵襲性肺炎球菌感染症に最も罹患しやすいのは以下の集団である:

  • 慢性疾患(例,慢性心肺系疾患,糖尿病,肝疾患,アルコール依存症)のある患者

  • 免疫抑制(例,HIV)のある患者

  • 機能的または解剖学的無脾症の患者

  • 鎌状赤血球症の患者

  • 長期療養施設の入居者

  • 喫煙者

  • アボリジニー,アラスカ先住民のほか,アメリカンインディアンの特定の集団

高齢者では,たとえ他の疾患がなくても,肺炎球菌感染症の予後が不良となる傾向がある。

慢性気管支炎や一般的な呼吸器ウイルス感染症(特にインフルエンザ)によって気道上皮が損傷すると,肺炎球菌の侵襲が起きやすくなる可能性がある。

肺炎球菌による疾患

肺炎球菌感染症としては以下のものがある:

通常,肺炎球菌の一次感染は中耳または肺で発生する。

以下に挙げる疾患については,本マニュアルの別の箇所で詳細に考察されている。

肺炎球菌菌血症

菌血症は一次感染症のこともあれば,局所の肺炎球菌感染症の急性期に併発することもある。菌血症が生じると,二次性の播種により,化膿性関節炎,髄膜炎,心内膜炎などの遠隔部位の感染症が発生することがある。

治療を行った場合でも,菌血症の全体的な致死率は以下の通りである:

  • 小児(主に髄膜炎の患児,易感染状態の患児,または脾臓摘出を受けて重症菌血症を発症した患児)および成人で15~20%

  • 高齢者で30~40%

最初の3日間で最も死亡リスクが高くなる。

肺炎球菌性肺炎

最大40%の患者で胸水 胸水 胸水は胸膜腔(pleural space)内における体液の貯留である。胸水には複数の原因があり,通常,漏出液または滲出液に分類される。検出は身体診察および胸部X線による;原因を同定するために胸腔穿刺および胸水分析がしばしば必要とされる。無症状の漏出液は治療の必要はない。症状のある漏出液およびほぼ全ての滲出液には,胸腔穿刺,胸腔ドレナージ,胸膜切除術,またはこれらの組合せが必要となる。... さらに読む 胸水 がみられるが,そのほとんどは薬物治療中に消失する。膿胸を発症する患者はわずかに約2%であるが,その場合は被包化を伴う濃厚な線維素膿性となることがある;膿胸は肺炎球菌(S. pneumoniae)血清型1型と関連する頻度が最も高い。肺炎球菌(S. pneumoniae)に起因する肺膿瘍は,成人ではまれであるが小児ではより頻度が高い;血清型3型が通常の病原菌であるが,他の肺炎球菌血清型が関与する場合もある。

肺炎球菌性急性中耳炎

乳児(新生児期の後)および小児における急性中耳炎 中耳炎(急性) 急性中耳炎(AOM)は,中耳の細菌感染症またはウイルス感染症であり,通常は上気道感染に併発する。症状としては耳痛があり,しばしば全身症状(例,発熱,悪心,嘔吐,下痢)を伴い,特に非常に若年の患者でその傾向が強い。診断は耳鏡検査に基づく。治療は鎮痛薬により行い,ときに抗菌薬も用いる。 急性中耳炎はどの年齢層でも生じるが,3カ月から3歳の間で最も多い。この年齢層では,耳管が構造的にも機能的にも未熟であり,耳管の角度が比較的水平で,口蓋帆張筋... さらに読む 中耳炎(急性) 症例の30~40%は肺炎球菌に起因する。ほとんどの集団で3分の1以上の小児が2歳になるまでに肺炎球菌急性中耳炎を発症するが,肺炎球菌性中耳炎は一般的に再発する。比較的少数の血清型の肺炎球菌(S. pneumoniae)がほとんどの症例の起因菌となっている。米国で2000年に全乳児を対象とした予防接種が開始されてからは,ワクチンに含まれない血清型の肺炎球菌(S. pneumoniae)血清型(特に血清型19A―当初のタンパク質結合型肺炎球菌ワクチンには含まれていなかった)が肺炎球菌急性中耳炎の起因菌として最も頻度が高くなった。

合併症としては以下のものがある:

  • 軽度の伝音難聴

  • 前庭平衡障害

  • 鼓膜穿孔

  • 乳様突起炎

  • 錐体炎

  • 内耳炎

先進国では頭蓋内合併症はまれであるが,具体的には髄膜炎,硬膜外膿瘍,脳膿瘍,横静脈洞血栓症,海綿静脈洞血栓症,硬膜下膿瘍,頸動脈血栓症などがある。

肺炎球菌による副鼻腔炎

ほとんどの場合,上顎洞および篩骨洞が侵される。副鼻腔の感染症は疼痛および膿性鼻汁を引き起こし,頭蓋骨に到達して以下の合併症をもたらすことがある:

  • 海綿静脈洞血栓症

  • 脳,硬膜外,または硬膜下の膿瘍

  • 敗血症による皮質の血栓性静脈炎(septic cortical thrombophlebitis)

  • 髄膜炎

肺炎球菌性髄膜炎

典型的な髄膜炎の症状(例,頭痛,項部硬直,発熱)がみられる。

肺炎球菌性髄膜炎後の合併症としては以下のものがある:

  • 聴力障害(最大50%の患者で)

  • 痙攣発作

  • 学習障害

  • 精神機能障害

  • 麻痺

肺炎球菌による心内膜炎

肺炎球菌による心内膜炎では,心臓弁に腐食性の病変が生じることがあり,突然の破裂や穿孔が生じて,急速に進行する心不全を来し弁置換が必要となることがある。オーストリアン(Austrian)症候群は,肺炎球菌による髄膜炎,肺炎,および肺炎球菌(S. pneumoniae)に起因する心内膜炎の3つを特徴とするまれな疾患であり,致死率が高い。自己大動脈弁の閉鎖不全が,患者の心不全の原因として最も頻度が高い。

肺炎球菌による化膿性関節炎

肺炎球菌による特発性細菌性腹膜炎

診断

  • グラム染色および培養

肺炎球菌は,グラム染色でランセット型双球菌の典型的な外見を示すことから,容易に同定される。

特徴的な莢膜をもち,莢膜膨化試験で最もよく検出できる。この試験では,抗血清を添加した後に墨汁で染色すると,微生物の周りに莢膜が暈のように観察される。莢膜はメチレンブルー染色した塗抹標本においても確認できる。

培養により同定を確定し,抗菌薬感受性試験を施行すべきである。分離株の血清型および遺伝子型分析は,疫学的な理由(例,特定クローンの拡大や抗菌薬耐性パターンの追跡)で役立つことがある。パルスフィールドゲル電気泳動やmultilocus sequence typing(MLST)法などの分析技術によって,1つの血清型の中での毒性の差異を鑑別できる場合がある。

治療

  • β-ラクタム系,マクロライド系,レスピラトリーキノロン系(例,レボフロキサシン,モキシフロキサシン,ゲミフロキサシン[gemifloxacin]),またはテトラサイクリン系(例,オマダサイクリン[omadacycline])薬剤

肺炎球菌感染が疑われる場合,感受性試験の結果が出るまでの初期治療は地域の耐性パターンにより決定すべきである。

肺炎球菌感染症に対してよく選択される治療薬は,β-ラクタム系またはマクロライド系抗菌薬であるが,耐性株が出現したことから,治療はより困難になってきている。ペニシリン,アンピシリン,その他のβ-ラクタム系薬剤に対して高度耐性を示す菌株が世界中でよくみられる。β-ラクタム耐性出現の素因で最も頻度が高いのは,過去数カ月以内の同クラス薬剤の使用である。マクロライド系抗菌薬に対する耐性もかなり増加してきており,市中肺炎の入院患者に対する単剤療法としてはもはや推奨されない。

中等度耐性菌は,常用量もしくは高用量のベンジルペニシリン,または他のβ-ラクタム系薬剤で治療できる。

ペニシリン高度耐性菌による髄膜以外の感染症で重篤な状態にある患者は,しばしばセフトリアキソン,セフォタキシム,またはセフタロリン(ceftaroline)で治療できる。分離株の最小発育阻止濃度が非常に高くない限り,非常に高用量のベンジルペニシリンの注射剤(成人で1日当たり2千万~4千万単位を静注)も有効である。フルオロキノロン系薬剤(例,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,ゲミフロキサシン[gemifloxacin])およびオマダサイクリン(omadacycline)は,ペニシリン高度耐性肺炎球菌による成人の呼吸器感染症の治療に効果的である。多剤用療法(例,マクロライド系 + β-ラクタム系)を用いると菌血症を伴う肺炎球菌性肺炎の死亡率がより低くなることを示唆したエビデンスがある。

これまでのところ,全てのペニシリン耐性分離株がバンコマイシンに対して感受であるが,バンコマイシンを注射剤で投与しても髄膜炎治療に十分な髄液中濃度が得られるとは限らない(特にコルチコステロイドも使用している場合)。したがって,髄膜炎患者ではバンコマイシンとともにセフトリアキソンもしくはセフォタキシム,リファンピシン,またはその両方を使用する。

予防

感染により血清型特異的な免疫が誘導されるが,これは別の血清型には有効ではない。予防として以下を行う:

  • 予防接種

  • 予防的抗菌薬投与

肺炎球菌ワクチン

  • 肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13):13の血清型(1,3,4,5,6A,6B,7F,9V,14,18C,19A,19F,23F)に対する結合型ワクチン

  • 肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23):成人および小児における重篤な肺炎球菌感染症の90%以上の原因となる23の血清型(1,2,3,4,5,6B,7F,8,9N,9V,10A,11A,12F,14,15B,17F,18C,19F,19A,20,22F,23F,33F)に対する多価多糖体ワクチン

ワクチン接種のスケジュールは,年齢および患者のもつ疾患によって異なる。

肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は,以下の集団に推奨される:

特定の医学的状況は肺炎球菌感染症にかかるリスクを高め,具体的には以下のものがある:

  • 人工内耳

  • 髄液漏

  • 鎌状赤血球症または別の異常ヘモグロビン症

  • 先天性または後天性無脾症

  • 易感染状態(例,先天性免疫不全,慢性腎不全,ネフローゼ症候群,HIV感染症,白血病,リンパ腫,全身性の悪性腫瘍,免疫抑制薬の使用,臓器移植)

肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)は以下の集団に推奨される:

  • 65歳以上の成人

  • 2~64歳の患者で,上記のような高リスクの病態をもつ人

2~64歳の患者を対象とする追加の接種基準として以下のものがある:

  • 慢性肺疾患(喘息を含む)

  • 慢性心血管疾患(高血圧は除く)

  • 糖尿病

  • 慢性肝疾患

  • 慢性アルコール中毒

  • 喫煙

予防的抗菌薬投与

機能的または解剖学的無脾症の5歳未満の小児に対しては,ペニシリンV 125mg,経口,1日2回の予防投与が推奨される。化学予防の継続期間は経験的に決定するが,一部の専門家は無脾症の高リスク患者に対して小児期から成人期まで予防投与を継続している。児童または青年では,脾臓摘出後少なくとも1年間にわたるペニシリン250mg,経口,1日2回の投与が推奨される。

要点

  • 肺炎球菌は中耳炎および肺炎症例の多くの起因菌となっており,また髄膜炎,副鼻腔炎,および化膿性関節炎も引き起こしうる。

  • 慢性気道疾患または無脾症のある患者は,易感染性患者と同様に,重篤な侵襲性肺炎球菌感染症のリスクが高くなる。

  • 単純性または軽度の感染症はβ-ラクタム系またはマクロライド系抗菌薬で治療する。

  • β-ラクタム系およびマクロライド系抗菌薬に対する耐性が増加していることから,重篤患者の治療には新世代のセファロスポリン系薬剤(例,セフトリアキソン,セフォタキシム,セフタロリン[ceftaroline]),レスピラトリーキノロン系薬剤(例,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,ゲミフロキサシン[gemifloxacin]),および/またはテトラサイクリン系薬剤(例,オマダサイクリン[omadacycline])を使用してもよい。

  • 重症または菌血症を伴う肺炎球菌性肺炎の治療は多剤用療法(例,マクロライド系 + β-ラクタム系)による。

  • 生後2カ月から6歳までの全ての小児,65歳以上の全ての成人,および他の年齢層で特定の危険因子を有する個人には,PCV13によるルーチンのワクチン接種が推奨される。

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