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ブドウ球菌感染症

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Perez

, MD, Wellington Regional Medical Center, West Palm Beach

最終査読/改訂年月 2019年 6月
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本ページのリソース

ブドウ球菌はグラム陽性好気性細菌である。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は最も病原性が強く,典型的には皮膚感染症を引き起こすほか,ときに肺炎,心内膜炎,骨髄炎を引き起こすこともある。一般的には膿瘍形成につながる。一部の菌株は,胃腸炎,熱傷様皮膚症候群,および毒素性ショック症候群を引き起こす毒素を産生する。診断はグラム染色と培養による。治療には通常,ペニシリナーゼ抵抗性β-ラクタム系薬剤を使用するが,抗菌薬耐性がよくみられるため,バンコマイシンまたは他のより新しい抗菌薬が必要になることもある。一部の菌株はほぼ全ての抗菌薬に対して部分的または完全な耐性を示すが,最新の抗菌薬は例外で,例えばリネゾリド,テジゾリド,キヌプリスチン/ダルホプリスチン,ダプトマイシン,テラバンシン(telavancin),ダルババンシン(dalbavancin),オリタバンシン(oritavancin),チゲサイクリン,オマダサイクリン(omadacycline),デラフロキサシン(delafloxacin),セフトビプロール[ceftobiprole](米国では入手できない),セフタロリン(ceftaroline)などがある。

コアグラーゼを産生して血液を凝固できるか否かで,病原性の強い黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と病原性の弱いコアグラーゼ陰性ブドウ球菌属細菌を鑑別する。コアグラーゼ陽性である黄色ブドウ球菌(S. aureus)は,病原性が強く,抗菌薬耐性発現能が高いことから,最も遍在的で危険なヒト病原体の1つに数えられる。

表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)などのコアグラーゼ陰性菌種は院内感染との関連が増大しており,腐性ブドウ球菌(S. saprophyticus)は尿路感染症を引き起こす。コアグラーゼ陰性菌種であるS. lugdunensisは,黄色ブドウ球菌(S. aureus)と同様の病原性を有し,侵襲性感染症を引き起こすことがある。大部分のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌とは異なり,S. lugdunensisはしばしばペニシリナーゼ抵抗性β-ラクタム系抗菌薬への感受性(すなわちメチシリン感受性)を維持している。

病原性ブドウ球菌は普遍的に存在する。健康な成人の約30%の鼻孔前方部,また約20%の皮膚に,通常は一時的に保菌されている:このような部位から,ブドウ球菌は宿主や他の人に感染を引き起こしうる。入院患者や病院職員では保菌率が高い。黄色ブドウ球菌(S. aureus)感染症は,非保菌者より保菌者で多くみられ,通常は定着株により引き起こされる。

危険因子

以下に挙げる集団はブドウ球菌感染症に罹りやすい:

  • 新生児および授乳中の母親

  • インフルエンザ,慢性気管支肺疾患(例,嚢胞性線維症,肺気腫),白血病,腫瘍,慢性皮膚疾患,または糖尿病がある患者

  • 移植,機器または他の異物の植込み,血管内へのプラスチック製カテーテル留置がある患者

  • 副腎ステロイド,放射線照射,免疫抑制薬,またはがん化学療法を受けている患者

  • 注射薬物使用者

  • 慢性腎臓病で透析治療を受けている患者

  • 外科的切開,開放創,または熱傷がある患者

素因のある患者は,他の患者,医療従事者,または医療環境からの伝播により抗菌薬耐性ブドウ球菌に感染する可能性がある。医療従事者の手指を介した伝播が最も一般的な感染経路であるが,空気感染も起こりうる。

ブドウ球菌による疾患

ブドウ球菌は以下のようにして疾患を引き起こす:

  • 組織への直接の侵入

  • ときに外毒素の産生

組織への直接侵襲はブドウ球菌による疾患で最も一般的なメカニズムであり,以下の疾患でみられる:

ブドウ球菌からは,ときに複数種類の外毒素が産生される。毒素には局所的に作用するものあれば,特定のT細胞からのサイトカイン放出を誘発して重篤な全身性作用(例,皮膚病変,ショック,臓器不全,死亡)を引き起こすものもある。Panton-Valentine leukocidin(PVL)は,特定のバクテリオファージが感染した菌株によって産生される毒素である。PVLは典型的には市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(CA-MRSA)株に認められ,壊死性をもたらすと考えられてきたが,この作用については検証されていない。

毒素が介在するブドウ球菌感染症としては以下のものがある:

以下に挙げる疾患については,本マニュアルの別の箇所で詳細に考察されている。

ブドウ球菌菌血症

ブドウ球菌(S. aureus 菌血症 菌血症 菌血症とは,血流中に細菌が存在する状態のことである。特定の組織感染を契機として,泌尿生殖器または静脈内にカテーテルを留置しているとき,あるいは歯科,消化管,泌尿生殖器,創傷などに対する処置を施行した後に,自然に発生する可能性がある。菌血症は心内膜炎などの転移性感染症を引き起こすことがある(特に心臓弁膜異常の患者で)。一過性の菌血症は無症状のことが多いが,発熱の原因となりうる。その他の症状の出現は通常,敗血症や敗血症性ショックなどのより重... さらに読む は,しばしば転移性の感染巣をもたらし,あらゆる限局性のブドウ球菌(S. aureus)感染症で生じうるが,特に多いのは血管内カテーテルまたは他の異物に関連した感染症に随伴するものである。明らかな原発部位がなくても起こりうる。表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)および他のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌は,血管内カテーテルや他の異物上にバイオフィルムを形成できるため,これらの材料に関連する院内菌血症の原因となることが増えてきている。ブドウ球菌菌血症は衰弱した患者における合併症(特に入院の長期化)や死亡の重要な原因である。

ブドウ球菌皮膚感染症

皮膚感染症はブドウ球菌感染症の最も一般的な病型である。表在感染症は,小胞性膿疱および痂皮形成(膿痂疹 膿痂疹および膿瘡 膿痂疹は,レンサ球菌,ブドウ球菌,またはその両方によって引き起こされる,痂皮または水疱を伴う表在性の皮膚感染症である。膿瘡は潰瘍の形態をとる膿痂疹である。診断は臨床的に行う。治療は抗菌薬の外用のほか,ときに内服による。 (皮膚細菌感染症の概要も参照のこと。) 膿痂疹を来しやすい先行病変は大部分の患者で見当たらないが,膿痂疹はあらゆる種類の皮膚の破綻に続発する可能性がある。湿度の高い環境,不良な衛生状態,およびブドウ球菌またはレンサ球菌の... さらに読む 膿痂疹および膿瘡 )またはときに蜂窩織炎 蜂窩織炎 蜂窩織炎は皮膚および皮下組織の急性細菌感染で,最も頻度の高い原因菌はレンサ球菌とブドウ球菌である。症状と徴候は疼痛,熱感,急速に拡大する紅斑,および浮腫である。発熱がみられる場合もあるほか,より重篤な感染例では所属リンパ節腫脹を認めることもある。診断は病変の外観によるほか,培養も参考になるが,その結果を待つために治療(抗菌薬投与)を遅らせてはならない。時機を逸することなく治療すれば,予後は極めて良好である。... さらに読む 蜂窩織炎 を伴うびまん性の場合もあれば,結節性膿瘍(せつとよう せつとよう せつ(おでき)は,ブドウ球菌感染により生じる皮膚膿瘍であり,毛包とその周囲の組織を侵す。ようは複数のせつが皮下でつながってできる病変であり,せつよりも化膿が深く,瘢痕化を来す。それらは皮下膿瘍よりは小さく浅在性である。診断は病変の外観による。治療は温罨法としばしばブドウ球菌に有効な抗菌薬の内服である。 (皮膚細菌感染症の概要も参照のこと。) せつ,ようともに健康な若年者に発症することがあるが,肥満者,易感染性患者(好中球機能異常のある患... さらに読む せつとよう )を伴う限局性の場合もある。皮膚深在部の膿瘍がよくみられる。重度の皮膚壊死性感染症 壊死性軟部組織感染症 壊死性軟部組織感染症は,典型的には好気性菌と嫌気性菌の混合感染であり,皮下組織(通常は筋膜を含む)の壊死を引き起こす。この感染症は四肢および会陰に好発する。患部組織は発赤して熱感を帯びながら腫脹し,重度の蜂窩織炎に類似し,臨床所見と釣り合わない強い疼痛が生じる。外科的検索の際には,灰色の滲出液と脆弱な浅筋膜がみられ,膿はみられない。治療が遅れると,患部に壊疽が起きる。病状は急速に悪化する。診断は病歴および診察により行い,圧倒的な感染の所... さらに読む 壊死性軟部組織感染症 が起こることがある。

主なブドウ球菌皮膚感染症

新生児ブドウ球菌感染症

新生児感染症は通常生後6週間以内に発生し,以下の臨床像を呈する:

ブドウ球菌性肺炎

市中環境で発生する肺炎は,あまり頻度は高くないが,以下に該当する患者に生じる可能性がある:

  • インフルエンザに罹患している

  • コルチコステロイドまたは免疫抑制薬を使用している

  • 慢性気管支肺疾患または他の高リスク疾患を有する

ブドウ球菌肺炎はときに,肺膿瘍が形成され,続いて急速に嚢胞および膿胸が発生することを特徴とする。CA-MRSAは,しばしば重症の壊死性肺炎を引き起こす。

ブドウ球菌による心内膜炎

黄色ブドウ球菌(S. aureus)による心内膜炎は,急性熱性疾患であり,しばしば内臓膿瘍,塞栓現象,心膜炎,爪下点状出血,結膜下出血,紫斑病変,心雑音,弁周囲膿瘍,伝導障害,および心臓弁障害に続発する心不全を伴う。

ブドウ球菌による骨髄炎

骨髄炎 骨髄炎 骨髄炎は,細菌,抗酸菌,または真菌に起因する骨の炎症および破壊である。よくみられる症状は,全身症状を伴う(急性骨髄炎)または全身症状を伴わない(慢性骨髄炎),限局性の骨痛および圧痛である。診断は画像検査および培養による。治療は抗菌薬およびときに手術による。 骨髄炎は以下によって生じる: 感染組織または感染した人工関節からの連続した進展 血液由来の微生物(血行性骨髄炎) 開放創(汚染された開放骨折または骨の手術による) さらに読む 骨髄炎 は小児でより多くみられ,悪寒,発熱,および感染骨上の疼痛を引き起こす。続いて患部の軟部組織に発赤と腫脹が生じる。関節感染症を来すこともあり,しばしば関節液の貯留につがなるが,これは骨髄炎よりむしろ化膿性関節炎を示唆する。成人における脊椎および椎間板感染症の大半には黄色ブドウ球菌(S. aureus)が関与している。

ブドウ球菌による感染性関節炎

関節は典型的には血行性感染により感染するが,骨の感染の拡大,外傷,または関節手術時の直接感染により感染する可能性もある。人工関節 人工関節の感染性関節炎 人工関節には急性および慢性感染症のリスクがあり,敗血症や種々の合併症につながり,死に至ることもある。しばしば最近の転倒歴がみられる。症状としては,関節痛,腫脹,運動制限などがある。診断は様々な基準に基づく。治療は長期にわたる抗菌薬療法と通常は関節切開による。 人工関節では通常の関節よりも感染が多くみられる。感染の原因は,周術期における関節内への細菌の播種のほか,皮膚感染,肺炎,歯科処置,侵襲の大きい器具使用,尿路感染症,ときに転倒に起因... さらに読む は特に感染しやすい。植込み後1カ月における人工関節のブドウ球菌感染症は,通常は手術時に感染したものである一方,術後12カ月以降に発生する感染症は血行性の伝播に起因する可能性が高い。ただし,感染症が植込み時に不注意により侵入し休眠状態を維持した微生物に起因し,数カ月後に臨床的に明らかになる場合もある。

ブドウ球菌による毒素性ショック症候群

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

ブドウ球菌食中毒

ブドウ球菌食中毒は,ブドウ球菌が産生した耐熱性のエンテロトキシンを摂取することで発生する。食物はブドウ球菌保菌者や活動性皮膚感染症の患者によって汚染される。加熱調理が不完全であったり,室温で放置されたりした食品中では,ブドウ球菌が増殖してエンテロトキシンを産生する。多くの食物が増殖培地の役割を果たし,汚染されているにもかかわらず,味と匂いは通常のままとなる。重度の悪心および嘔吐が摂取後2~8時間で始まり,典型例では続いて腹部痙攣と下痢がみられる。症状の持続は短時間で,12時間未満のことが多い。

診断

  • グラム染色および培養

ブドウ球菌感染症の診断は感染材料のグラム染色および培養による。

現在はメチシリン耐性菌の頻度が高く,その治療には代替薬が必要となるため,感受性試験を施行すべきである。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群が疑われる場合は,血液,尿,上咽頭,皮膚病変部,または感染が疑われる全ての部位から検体を採取して培養すべきである;破れていない水疱は無菌である。診断は通常臨床的に行うが,感染部の皮膚生検が診断の確定に役立つことがある。

ブドウ球菌食中毒は通常,症例の集積(例,家族内,集会参加者,または飲食店の客)により疑う。確定診断(典型的には保健局による)には疑われる食物からのブドウ球菌分離のほか,ときにエンテロトキシン検査が必要となる。

骨髄炎を示すX線上の変化は10~14日間は明白ではなく,骨の菲薄化(rarefaction)や骨膜反応はさらに長い間認めないことがある。MRI,CT,または骨シンチグラフィーの異常所見は,それより早期に認められることが多い。骨生検(切開または経皮的)を施行して,病原体の同定および感受性試験を行うべきである。

スクリーニング

MRSAの院内感染率が高い一部の医療施設では,鼻腔拭い液検体による迅速診断を用いて,入院患者に対してMRSAのスクリーニングをルーチンに実施している(積極的サーベイランス)。高リスク患者(例,集中治療室に入室している患者,MRSA感染症の既往がある患者,または血管手術,整形外科手術,または心臓手術を受けようとしている患者)のみをスクリーニング対象としている施設もある。

MRSAを迅速に同定することには,以下のメリットがある:

しかしながら,いくつかの研究で除菌治療(decolonization treatment) ブドウ球菌はグラム陽性好気性細菌である。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は最も病原性が強く,典型的には皮膚感染症を引き起こすほか,ときに肺炎,心内膜炎,骨髄炎を引き起こすこともある。一般的には膿瘍形成につながる。一部の菌株は,胃腸炎,熱傷様皮膚症候群,および毒素性ショック症候群を引き起こす毒素を産生する。診断はグラム染色と培養による。治療には通常,ペニシリナーゼ抵抗性β-ラクタム系薬剤を使用するが,抗菌薬耐性... さらに読む (例,ムピロシン鼻腔用軟膏の使用)が入院患者(例,集中治療室の患者,大手術を受ける患者)におけるMRSA感染の削減にある程度効果的であることが証明されている。また,ムピロシンへの耐性が出現し始めている。しかし,最近の大規模研究で,MRSAが定着しており5日間月2回の除菌治療を6カ月間受けた患者では,退院後1年間のMRSA感染リスクが30%低下することが示された。除菌では4%クロルヘキシジンによる毎日の入浴またはシャワー,0.12%クロルヘキシジンによる1日2回の洗口,および2%ムピロシンの毎日の鼻腔内投与が行われた(1 診断に関する参考文献 ブドウ球菌はグラム陽性好気性細菌である。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は最も病原性が強く,典型的には皮膚感染症を引き起こすほか,ときに肺炎,心内膜炎,骨髄炎を引き起こすこともある。一般的には膿瘍形成につながる。一部の菌株は,胃腸炎,熱傷様皮膚症候群,および毒素性ショック症候群を引き起こす毒素を産生する。診断はグラム染色と培養による。治療には通常,ペニシリナーゼ抵抗性β-ラクタム系薬剤を使用するが,抗菌薬耐性... さらに読む 診断に関する参考文献 )。

診断に関する参考文献

治療

  • 局所的な処置(例,デブリドマン,カテーテルの抜去)

  • 感染症の重症度および地域の耐性パターンに基づいて選択した抗菌薬

最初に選択する抗菌薬およびその用量は以下に依存する:

  • 感染部位

  • 重症度

  • 耐性株が関与している可能性

したがって,初期治療には地域の耐性パターンを把握しておくこと(および最終的には実際の薬剤感受性を知ること)が不可欠である。

毒素が介在するブドウ球菌感染症(最も重篤なものは毒素性ショック症候群 治療 毒素性ショック症候群は,ブドウ球菌またはレンサ球菌の外毒素によって引き起こされる。症状としては,高熱,低血圧,びまん性の紅斑,多臓器不全などがみられ,重度かつ治療抵抗性のショックへと急速に進行することがある。診断は臨床所見と起因菌の分離による。治療法としては,抗菌薬,集中的な支持療法,免疫グロブリン静注療法などがある。 毒素性ショック症候群(TSS)は外毒素産生球菌により引き起こされる。ファージグループ1型黄色ブドウ球菌(Staphyl... さらに読む 治療 )の治療としては,毒素産生部位の除染(手術創の検索,洗浄,デブリドマン),集中的な支持療法(輸液,昇圧薬,呼吸補助など),電解質バランスの調整,抗菌薬投与などがある。β-ラクタマーゼ抵抗性かつブドウ球菌に有効な静注抗菌薬(例,ナフシリン[nafcillin],オキサシリン,バンコマイシン)とタンパク質合成阻害薬(例,クリンダマイシン900mg,静注,8時間毎,リネゾリド600mg,静注,12時間毎)の併用がin vitroのエビデンスによって支持されている。免疫グロブリン静注療法は重症例では有益である。

抗菌薬耐性

多くのブドウ球菌株は,いくつかのβ-ラクタム系抗菌薬を不活化する酵素であるペニシリナーゼを産生し,それらはベンジルペニシリン,アンピシリン,および抗緑膿菌ペニシリンに耐性を示す。

市中株は,しばしばペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン系(例,メチシリン,オキサシリン,ナフシリン[nafcillin],クロキサシリン,ジクロキサシリン),セファロスポリン系,カルバペネム系(例,イミペネム,メロペネム,エルタペネム[ertapenem],ドリペネム),テトラサイクリン系,マクロライド系,フルオロキノロン系,トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX),ゲンタマイシン,バンコマイシン,およびテイコプラニンに感性である。

MRSA分離株は,特に病院において一般的となっている。加えて市中感染型MRSA(CA-MRSA)が過去数年の間にほとんどの地域で出現した。CA-MRSAは院内感染型MRSAよりも多剤耐性度が低い傾向がある。これらの菌株は,ほとんどのβ-ラクタム系薬剤に耐性であるが,通常はTMP/SMXおよびテトラサイクリン系(ミノサイクリンまたはドキシサイクリン)に感性であり,しばしばクリンダマイシンにも感性であるが,エリスロマイシンに対する誘導型耐性株によってクリンダマイシン耐性が出現する可能性がある(検査室はこのような菌株をDゾーンテスト陽性と報告することがある)。バンコマイシンはほとんどのMRSAに効果的であり,一部の重篤な感染症(すなわち,骨髄炎,人工関節感染症,人工弁心内膜炎)に対しては,ときにリファンピシンおよびアミノグリコシド系薬剤が追加される。バンコマイシンの最小発育阻止濃度(MIC)が1.5μg/mLを超えるMRSA株に対しては,代替薬(ダプトマイシン,リネゾリド,テジゾリド,ダルババンシン[dalbavancin],オリタバンシン[oritavancin],テラバンシン(telavancin),チゲサイクリン,オマダサイクリン[omadacycline],デラフロキサシン[delafloxacin],キヌプリスチン/ダルホプリスチン,TMP/SMXのほか,場合により セフタロリン[ceftaroline])を考慮すべきである。

米国では,バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus(VRSA;MIC > 16μg/mL)およびバンコマイシン中等度耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(VISA;MIC 4~8μg/mL)の菌株が出現している。これらの菌株に対しては,リネゾリド,テジゾリド,キヌプリスチン/ダルホプリスチン,ダプトマイシン,TMP/SMX,デラフロキサシン(delafloxacin),オリタバンシン(oritavancin),またはセフタロリン(ceftaroline)が必要である。ダルババンシン(dalbavancin)およびテラバンシン(telavancin)は,VISAに対して活性を示すが,VRSAに対する活性はほとんどない。

MRSAの分離頻度が上昇したことから,重篤なブドウ球菌感染症(特に医療施設内で発生したもの)に対する最初の経験的治療には,MRSAに対して確実に活性を示す薬剤を含めるべきである。そのため,適切な薬剤としては以下のものがある:

  • 血流感染症またはその疑いには,バンコマイシンまたはダプトマイシン

  • 肺炎には,バンコマイシン,テラバンシン(telavancin),またはリネゾリド(ダプトマイシンは肺内では必ずしも活性を示すわけではないため)

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予防

無菌的な予防措置(例,診察と診察の間に徹底的に手を洗う,共用する器具を滅菌する)が,施設における菌蔓延の抑制に役立つ。耐性菌を保有している患者に対しては,その感染が治癒するまで厳格な隔離処置を行うべきである。無症状の黄色ブドウ球菌(S. aureus)の鼻腔保菌者は,保有する菌株がMRSAではなく,アウトブレイクの感染源として疑われているわけでもなければ,隔離する必要はない。米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)は,MRSAの定着または感染を認める患者は個室に収容し,入院患者の急性期ケアの環境で接触感染予防策を講じ,厳格な隔離処置を採用することを推奨している(Strategies to Prevent Hospital-onset Staphylococcus aureus Bloodstream Infections in Acute Care Facilitiesを参照)。

保菌者の最大50%で菌が再活性化し,しばしば耐性となる。特定のMRSA保菌者(例,整形外科手術,血管手術,および心臓血管手術前の患者)については,一部の専門家はムピロシン軟膏の1日2回5~10日間塗布による鼻腔除菌と皮膚消毒液(例,クロルヘキシジン)または希釈した次亜塩素酸溶液による薬浴(bleach bath)(約5mL/L)を用いる5~14日間の局所除菌レジメンを推奨する。

一般に,経口抗菌薬療法は活動性感染症の治療にのみ推奨されている。

特定の種類の手術前における予防的抗菌薬投与 手術時の感染症の予防 ほとんどの外科手技は,抗菌薬の予防投与または術後投与を必要としない。しかしながら,特定の患者関連因子および手技関連因子によってリスク-便益比が変化し,それにより予防的使用が支持されることがある。 抗菌薬の必要性を示唆する患者側の危険因子としては以下のものがある: 特定の心臓弁膜症 免疫抑制 リスクの高い処置は,細菌感染の可能性が高い以下の部位の手術である: さらに読む の集学的ガイドラインでは,大半の患者が手術直前の抗菌薬の単回投与で治療可能であると示唆されている(1 予防に関する参考文献 ブドウ球菌はグラム陽性好気性細菌である。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は最も病原性が強く,典型的には皮膚感染症を引き起こすほか,ときに肺炎,心内膜炎,骨髄炎を引き起こすこともある。一般的には膿瘍形成につながる。一部の菌株は,胃腸炎,熱傷様皮膚症候群,および毒素性ショック症候群を引き起こす毒素を産生する。診断はグラム染色と培養による。治療には通常,ペニシリナーゼ抵抗性β-ラクタム系薬剤を使用するが,抗菌薬耐性... さらに読む 予防に関する参考文献 )。外用治療にもかかわらず再定着した場合には,リファンピシンに加えて,感受性に応じてクロキサシリン,ジクロキサシリン,TMP/SMX,またはシプロフロキサシンのいずれかの使用を考慮すべきである。MRSAが鼻粘膜培養で同定されれば,バンコマイシンを使用すべきである。

ブドウ球菌性食中毒は適切な調理により予防できる。ブドウ球菌性皮膚感染症の患者は食物を扱ってはならず,食物は調理後すぐに食べるか冷蔵保存し,室温で放置してはならない。

予防に関する参考文献

  • 1.File TM Jr: New guidelines for antimicrobial prophylaxis in surgery.Infect Dis Clin Pract 21(3):185–186, 2013.doi: 10.1097/IPC.0b013e3182905630.

要点

  • コアグラーゼ陽性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は,ブドウ球菌属の中で最も危険な菌種である。

  • ほとんどのブドウ球菌感染症には組織への直接侵入が関与し,皮膚・軟部組織感染症,肺炎,心内膜炎,または骨髄炎が引き起こされる。

  • 一部の菌株は,毒素性ショック症候群,熱傷様皮膚症候群,または食中毒を引き起こす毒素を産生する。

  • メチシリン耐性株がよくみられるようになり,米国ではバンコマイシン耐性も出現している。

  • 薬剤の選択は,感染源および感染部位ならびに地域または施設の耐性パターンに応じて判断する。

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