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真性多血症

(原発性赤血球増多症)

執筆者:

Jane Liesveld

, MD, James P. Wilmot Cancer Institute, University of Rochester Medical Center

最終査読/改訂年月 2019年 2月

真性多血症(PV)は,形態学的に正常な赤血球,白血球,および血小板の増加を特徴とする慢性骨髄増殖性腫瘍であり,赤血球増多が典型的にみられる。10~30%の患者で最終的に骨髄線維症および骨髄不全が生じ,1.0~2.5%では急性白血病が自然発生する。出血および動脈血栓症または静脈血栓症のリスクが高い。一般的な臨床像には,脾腫,微小血管イベント(例,一過性脳虚血発作,肢端紅痛症,眼性片頭痛),およびaquagenic pruritus(温水に曝露することにより誘発されるそう痒)がある。診断は血算,JAK2またはCALR変異の検査,および臨床基準により行う。治療には,瀉血,低用量アスピリン,ルキソリチニブ,インターフェロン,およびまれに造血幹細胞移植がある。

骨髄増殖性腫瘍の概要も参照のこと。)

真性多血症は,最も多くみられる骨髄増殖性腫瘍であり,米国での発生率は1.9/100,000と推定され,発生率は加齢に伴い増加する。診断時の平均年齢は約60歳であるが,女性ではより若年で生じ,10歳代や20歳代で発症することもあり,ときにバッド-キアリ症候群を伴う。

病態生理

真性多血症では,赤血球,白血球,および血小板を含む全ての血球系で産生亢進がみられる。そのため,3種類の末梢血成分が全て上昇することから,真性多血症は汎骨髄症の1つである。赤血球系に限定された産生亢進は赤血球増多と呼ばれ,真性多血症に伴って孤立性の赤血球増多が起きることもあるが,他の原因によるものの方がはるかに多い(二次性赤血球増多症を参照)。真性多血症では, エリスロポエチンの量と無関係に赤血球産生が進行する。

脾臓,肝臓,およびその他の造血能を有する部位で髄外造血がみられることがある。真性多血症では,二次性赤血球増多症とは対照的に,初期には赤血球量の増加が血漿量の増加(ヘマトクリットを正常範囲に保つ)にしばしばマスクされる。これは女性で特によくみられ,その場合,肝静脈血栓症を認め,ヘマトクリット値が正常になることがある。

赤血球を産生するために鉄の需要が増加するため,鉄欠乏症が最終的に発生することがある。種類にかかわらず鉄欠乏症が存在する場合,赤血球容積(MCV)を代償に赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)が維持されるため,赤血球が小さくなっていく(小球性の赤血球増多)。他の原因による鉄欠乏症患者は貧血を呈するが,真性多血症患者では赤血球産生が亢進しているため,鉄欠乏状態であっても,初期にはヘマトクリット値が正常でありながら,赤血球指標は小球性である;この複合所見は真性多血症の特徴である。

最終的に約10~15%の患者が原発性骨髄線維症と一致する症候群に進行するが,生存率は良好である。

急性白血病への転化はまれで,発症には長い年数を要する場合がある。クロラムブシルなどのアルキル化薬や放射性リン(その意義は主に歴史的側面にある)のほか,場合によりヒドロキシカルバミドへの曝露量の増加に伴って転化のリスクが高まる。

遺伝学的基礎

真性多血症は,造血幹細胞に生じた遺伝子変異によって引き起こされる。

ヤヌスキナーゼ2(JAK2)遺伝子の変異が,高い割合で真性多血症の原因である。JAK2はチロシンキナーゼファミリーに属する酵素であり,他の因子の中でもエリスロポエチン,トロンボポエチン,および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)に対する信号伝達に関与している。特に,真性多血症のほとんどの患者でJAK2V617F変異またはJAK2のエクソン12変異がみられる。しかしながら,JAK2変異のない真性多血症患者でカルレティキュリン(CALR)変異が最近発見され,また孤立性の赤血球増多がある患者でリンパ球のアダプタータンパク質(LNK)の変異が発見されている。これらの変異は,JAK2キナーゼの持続的活性化をもたらし, エリスロポエチンと無関係に過剰な血球産生を引き起こす。

合併症

真性多血症の合併症としては以下のものがある:

  • 血栓症

  • 出血

真性多血症では,血液量が増加し,赤血球の増加によって過粘稠が生じることがある。過粘稠は大血管の血栓症を誘発し,その結果,脳卒中深部静脈血栓症心筋梗塞,網膜動脈閉塞症,網膜静脈閉塞症,脾梗塞(しばしば摩擦音を伴う),または,特に女性において,バッド-キアリ症候群が生じることがある。微小血管イベント(例,一過性脳虚血発作肢端紅痛症,眼性片頭痛)が生じることもある。他の細胞系の増加(白血球増多,血小板増多)によって血栓症のリスクが増大することを示すエビデンスはない。

高分子のフォン・ウィルブランド因子マルチマーを血小板が吸着してタンパク質分解するために生じたフォン・ウィルブランド因子の後天的な欠乏によって,血小板数が1,500,000/μLを超える場合,血小板の機能が異常になることがある。この後天性フォン・ウィルブランド病は,自然出血以外の出血増加の素因となる。

細胞回転の亢進は,高尿酸血症をもたらし,痛風および尿酸腎結石のリスクを高める可能性がある。真性多血症患者は,Helicobacter pylori感染による消化性疾患に罹患しやすい。

症状と徴候

真性多血症単独では無症状となる場合が多いが,最終的には赤血球容積の増大と粘稠度の上昇により,筋力低下,頭痛,ふらつき,視覚障害,疲労,および呼吸困難が生じる。しばしばそう痒が,特に温浴またはシャワーの後に生じることがあり(aquagenic pruritus),これが最初の症状であることがある。顔面が赤くなり,網膜静脈が充血することがある。手掌および足に発赤,熱感,疼痛がみられ,ときに指の虚血を伴う(肢端紅痛症)。30%を超える患者に脾腫(巨大化することもある)がみられる。

血栓症により患部に症状が現れることがある(例,脳卒中または一過性脳虚血発作による神経脱落症状,下肢の血栓症による下肢痛,腫脹,またはその両方,網膜血管閉塞による片眼性視力障害)。

出血(典型的に消化管)は,約10%の患者にみられる。

代謝亢進により,微熱および体重減少がみられることがあり,二次性骨髄線維症への進行が示唆されるが,これは臨床的に原発性骨髄線維症と区別できないものの予後は良好である。

診断

  • 血算

  • JAK2CALR,またはLNK変異の検査(順に行う)

  • ときに骨髄検査および血清 エリスロポエチン濃度測定

  • ときに赤血球量測定

真性多血症は,最初に血算異常(例,ヘモグロビンが男性で16.5g/dL超,女性で16.0g/dL超)により疑われることが多いが,示唆的な症状またはまれな部位の血栓イベントが認められる患者(特にバッド-キアリ症候群の女性または門脈血栓症の男性)では,真性多血症を考慮しなければならない。好中球数と血小板数が増加することが多いが,常に増加するとは限らず,ヘマトクリットのみが高値の患者では,真性多血症の可能性があるものの,ヘマトクリット高値の原因としてより頻度の高い二次性赤血球増多症をまず考慮しなければならない。ヘマトクリット値は正常であるが,小球性の赤血球増多と鉄欠乏症の所見を認める患者でも,真性多血症を考慮すべきであり,この複合所見は真性多血症の重要な特徴である。

真性多血症を診断する際の困難は,他のいくつかの骨髄増殖性腫瘍でも同じ遺伝子変異と骨髄所見がみられることに加え,真性多血症の特徴は赤血球増多であるが,一部の患者は白血球増多のみ,または血小板増多のみを呈し,初期にヘモグロビン値の上昇を呈さないためである。そのため,多数の所見を統合する必要がある。

真性多血症が疑われる患者には基本的にJAK2V617F(エクソン14)変異およびJAK2のエクソン12変異の検査を行うべきである。これらが陰性の場合,CALR変異およびLNK変異の検査を行う。明らかな赤血球増多を認める患者で原因になることが知られている変異が認められれば,本症の診断が強く示唆される。赤血球増多の存在が明らかではない場合は,赤血球量および血漿量の直接測定(例,クロム標識赤血球によるが,この検査は通常は専門施設でしか行えない)を行い,真性多血症と相対的赤血球増多症との鑑別および真性多血症と他の骨髄増殖性疾患(赤血球量の増加がみられない)との鑑別に役立てる。赤血球増多があるものの二次的な原因が除外されていない場合は,血清 エリスロポエチン濃度を測定すべきであり,真性多血症患者の血清 エリスロポエチン濃度は典型的には低値または正常低値となり,高値であれば二次性赤血球増多症が示唆される。

骨髄検査では真性多血症の診断を確定できない。骨髄検査を実施した場合は,典型的に汎骨髄症,巨大化し凝集した巨核球,およびときに細網線維の増加が認められる。ただし,骨髄所見をもってしても,真性多血症を過度の赤血球増多を示す他の疾患(例,先天性の家族性真性多血症)や他の骨髄増殖性腫瘍と常に鑑別できるとは限らないが,これらのうち最も頻度が高いのは真性多血症である。

世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,ヘモグロビンおよびヘマトクリット値と赤血球量の測定値に基づく診断ガイドラインを策定している。

後天性フォン・ウィルブランド病(出血の原因として)が,リストセチン補因子検査によって血漿中のフォン・ウィルブランド因子抗原の減少が示されることで診断されることがある。

真性多血症でみられることがある非特異的な臨床検査値異常としては,ビタミンB12およびB12結合能の増加や,高尿酸血症および高尿酸尿症(80%以上の患者にみられる),巨核球および血小板におけるMPL(トロンボポエチンに対する受容体)の発現減少などがある。診断に,これらの検査は必要ない。

予後

一般に,真性多血症には寿命短縮との関連が認められる。ほとんどの研究で生存期間の中央値が10年を超えると報告されているが,現在では,たとえ骨髄線維症を発症したとしても,数十年単位の長期生存が期待でき,新たな治療法が広く用いられるようになるにつれて,生存期間はさらに延びると予想される。

血栓症が合併症および死亡の最も一般的な原因であり,次いで骨髄線維症の合併および白血病の発症が多い。将来的には,遺伝子発現プロファイリングまたはその他の特徴が,予後良好なサブグループの同定に役立つ可能性がある。

治療

  • 瀉血

  • 場合によりアスピリン投与

  • 場合によりルキソリチニブまたはペグインターフェロンによる分子標的療法

真性多血症は,骨髄抑制療法が適応となる唯一の赤血球増多症であるため,正確な診断が極めて重要である。治療法は,年齢,性別,医学的状態,臨床像,および血液検査所見に基づいて,患者毎に個別に選択しなければならない。しかし,年齢および極度の血小板増多(1,000,000/µL)などの高リスクか低リスクかの分類による治療の層別化に用いられた過去の基準は,前向きには妥当性が確認されておらず,治療法の指針としては推奨されない。

瀉血

治療の中心は瀉血である。瀉血の目標は,ヘマトクリットが男性で45%未満,女性で42%未満とする。2013年に公表されたランダム化比較試験で,ヘマトクリットが45%未満にランダム化された患者における心血管系障害による死亡および血栓症の割合は,目標ヘマトクリットが45~50%の患者よりも有意に低かったことが示された(1)。実際,瀉血によってヘマトクリットが男性で45%,女性で42%を下回ることにより,血栓症のリスクがなくなる。

最初,隔日毎に300~500mLの血液を抜き取る。高齢患者および心臓病または脳血管疾患の患者では,除去する血液量を少なくする(すなわち,週2回毎に200~300mL)。ヘマトクリットが目標値を下回った場合は,毎月1回再確認し,必要に応じて瀉血をさらに実施して,この値を維持する。必要であれば,電解質輸液またはコロイド輸液を用いて循環血液量を維持可能である。瀉血の結果として血小板が増加することがあるが,この増加は一過性のものであり,徐々に血小板数および白血球数が増加することは真性多血症の特徴であり,無症状の患者の治療は不要である。

瀉血のみで治療される患者の一部では,瀉血の必要性が最終的に大きく低下する。これは骨髄不全(いわゆる消耗期)の徴候ではなく,むしろ血漿量の増加によるものである。

アスピリン

アスピリンによって微小血管イベントの症状が緩和する。そのため,肢端紅痛症,眼性片頭痛,または一過性脳虚血発作の症状があるか過去にあった患者には,禁忌(例,後天性フォン・ウィルブランド病による)がない限り,アスピリンを81~100mg,経口,1日1回で投与すべきであり,より高用量での投与が必要になる場合もあるが,出血リスクが明らかに高まる。アスピリンによって微小血管イベントの発生率が低下するわけではないため,無症状の真性多血症患者(他の適応がない場合)では適応とならない。

骨髄抑制療法

多数の研究で,過去に用いられた多くの骨髄抑制療法(ヒドロキシカルバミド,放射性リン,アルキル化薬[ブスルファンおよびクロラムブシルなど]を含む)は,血栓症の発生率を低下させず,障害を受けた幹細胞が抵抗性を示すため,適切な瀉血に比べて生存期間を延長させることもないことが示されている。クロラムブシルやヒドロキシカルバミドなどのアルキル化薬は,さらに急性白血病および固形腫瘍の発生率を高める;これらの薬剤は,特別な状況を除いて,もはや推奨されない。

瀉血以外の介入が必要な場合(例,症状または血栓イベントのため),インターフェロンまたはルキソリチニブが望ましい。血小板数のコントロールのためにアナグレリドが用いられているが,心毒性および腎毒性があり,貧血を引き起こすことがある。

ペグインターフェロンα-2bまたはα-2aは真性多血症に侵された細胞を特異的に標的とし,正常な造血幹細胞を攻撃しない。これらの薬剤は通常忍容性が高く,そう痒および過度の造血のコントロールと脾臓の縮小に効果的である。約20%の患者で分子遺伝学的完全寛解が得られる。

非特異的JAK阻害薬であるルキソリチニブは,真性多血症および真性多血症後の骨髄線維症に使用されている。真性多血症では通常,10mgを1日2回経口投与し,過度の毒性なしに反応が得られる限り継続する。

真性多血症ではヒドロキシカルバミドが広く用いられているが,その役割はルキソリチニブなどのJAK阻害薬の登場により進化している。ヒドロキシカルバミドの処方はその使用とモニタリングに精通する専門医のみが行うべきである。JAK阻害薬が利用できず腫瘍縮小が必要な場合,ヒドロキシカルバミドを500~1000mgの1日1回経口投与で開始する。週1回の血算により患者のモニタリングを行う。白血球数が4000/μL未満に低下した場合,または血小板数が100,000/μL未満である場合は,ヒドロキシカルバミドを中止し,値が正常に回復した後に50%用量で再開する。定常状態に達した場合は,血算の間隔を2週間毎に,次いで4週間毎に延長する。白血球数または血小板数を正常値まで低下させる必要はない。

合併症の治療

高尿酸血症で症状がみられる場合,または骨髄抑制療法を同時に受けている場合は,アロプリノール300mgを1日1回経口投与する治療を行うべきである。

そう痒は,抗ヒスタミン薬で管理可能であるが,コントロールが難しいことが多い;ルキソリチニブおよびインターフェロンが効果的である。コレスチラミン,シプロヘプタジン,シメチジン,パロキセチン,またはPUVA光線療法も奏効する可能性がある。入浴後に体を拭く場合は,皮膚に刺激を与えないようにする。

治療に関する参考文献

要点

  • 真性多血症は,赤血球,白血球,および血小板の産生増加を伴う慢性骨髄増殖性腫瘍である。

  • 真性多血症の原因は,造血幹細胞におけるJAK2が関与する変異やまれにCALRまたはLNKの変異によってJAK2キナーゼが持続的に活性化されることであり,その結果として過剰な血球産生が生じる。

  • 合併症には,血栓症,出血,および高尿酸血症があり,最終的に骨髄線維症を発症したり,まれであるが急性白血病へ転化したりすることがある。

  • 真性多血症は,最初にヘモグロビン値の増加により疑われることが多く,好中球数と血小板数は,必ずとは限らないが,しばしば増加する。

  • JAK2CALR,またはLNK変異の検査に加え,ときに骨髄検体を採取して検査し,血清 エリスロポエチン濃度を測定する。

  • 男性ではヘマトクリット45%未満,女性ではヘマトクリット42%未満を目標とする瀉血が不可欠であり,骨髄抑制薬としてはルキソリチニブおよびインターフェロンが望ましい。細胞傷害性薬剤は,可能であれば回避し,必要であれば一時的にのみ使用すべきである。

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