骨髄増殖性腫瘍は,骨髄幹細胞がクローン性に増殖する病態で,循環血中の血小板数,赤血球数,または白血球数(単独または複合)の増加として現れることがあり,ときに骨髄の線維化と髄外造血(骨髄外での血球産生)が生じる。これらの異常に基づき,以下のように分類される:
本態性血小板血症(血小板増多)
原発性骨髄線維症(骨髄の線維化または瘢痕化)
真性多血症(白血球,赤血球,血小板のうち複数が増加するが,まれに赤血球増多のみ)
慢性骨髄性白血病(フィラデルフィア染色体およびBCR-ABL融合遺伝子と関連あり)
本態性血小板血症,原発性骨髄線維症,および真性多血症は,自然に急性白血病に形質転換する可能性がある。本態性血小板血症および真性多血症は,ヒドロキシカルバミドなどの化学療法薬への長期曝露がなければ,形質転換を起こす頻度は非常に低い。
比較的まれな骨髄増殖性腫瘍として,好酸球増多症候群や肥満細胞症などがある。骨髄増殖性腫瘍は骨髄異形成症候群と重複して生じることもある。
各疾患は,その主な特徴に従って同定される(骨髄増殖性腫瘍の分類の表を参照)。1種類または複数種類の造血細胞の増殖がこれらの各疾患の臨床像を支配することがあるが,3つの疾患はいずれも,多能性造血幹細胞のクローン性増殖によって,骨髄中の正常な赤血球,白血球,および血小板の前駆細胞の増殖が亢進することで引き起こされる。ただし,この異常クローンは骨髄線維芽細胞に分化することがなく,異常な幹細胞に反応して多クローン性,反応性,かつ可逆的な様式で増殖することができる。
それぞれ共通の病因をもつことから,臨床所見や臨床検査所見に重複がみられる。 JAK2遺伝子の変異は,真性多血症の原因とされているほか,本態性血小板血症と原発性骨髄線維症でも高頻度でみられる。JAK2は1型チロシンキナーゼファミリーに属する酵素であり,エリスロポエチン,トロンボポエチン,および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体のシグナル伝達に関与している。トロンボポエチン受容体(MPL)遺伝子またはカルレティキュリン(CALR)遺伝子も,本態性血小板血症および原発性骨髄線維症の有意な割合で変異しているが,真性多血症ではまれである。
より詳細な情報
Tremblay D, Yacoub A, Hoffman R: Overview of myeloproliferative neoplasms.Hematol Oncol Clin N Am 35 :159-176, 2021.doi: 10.1016/j.hoc.2020.12.001