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発作性夜間血色素尿症(PNH)

執筆者:

Evan M. Braunstein

, MD, PhD, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2019年 3月

発作性夜間血色素尿症(PNH)はまれな後天性の疾患で,血管内溶血およびヘモグロビン尿を特徴とする。白血球減少症,血小板減少症,動静脈血栓症,および発作性のクリーゼがよくみられる。診断にはフローサイトメトリーを要する。治療は支持療法と終末補体阻害薬であるエクリズマブの投与である。

PNHは,20代男性に最も多くみられるが,性別および年齢にかかわらず発生する。溶血は夜間だけではなく1日中起こる。

病因

PNHは,造血幹細胞のPIGA遺伝子における後天性の突然変異によるクローン性の疾患である。PIGAはX染色体上に存在し,膜タンパク質のグリコシルホスファジルイノシトール(GPI)アンカーの形成に不可欠なタンパク質をコードする。PIGAの突然変異によって,血球表面上の全てのGPIアンカー型タンパク質(重要な補体調節タンパク質であるCD59など)が失われる。結果として,血球が補体の活性化に脆弱となり,赤血球の持続的な血管内溶血につながる。

病態生理

四肢に動脈血栓症と静脈血栓症の両方が起きる可能性があるほか,門脈や脳静脈洞など比較的まれな部位にも血栓が生じることがある。血栓症は補体活性の亢進と溶血の結果である。

発作性夜間血色素尿症は,骨髄機能障害と関連しており,骨髄機能障害は造血幹細胞に対する免疫による攻撃が原因である可能性が高く,しばしば白血球減少症 白血球減少症の概要 白血球減少症は,循環血中の白血球数が4000/μL未満に減少することである。通常は循環血中の好中球数の減少を特徴とするが,リンパ球,単球,好酸球,または好塩基球の数の減少も一因となる場合がある。その結果,一般に免疫機能が低下することがある。 好中球減少症は,血中の好中球数が白人で1500/μL未満,黒人で1200/μL未満に減少することで... さらに読む および血小板減少症 血小板減少症 血小板は,凝固系で機能する細胞片である。トロンボポエチンは,その細胞質から血小板を産生・分離する巨核球を産生するよう骨髄を刺激することによって,循環血小板の数をコントロールすることに役立っている。トロンボポエチンは,肝臓において一定のペースで産生され,その循環血中濃度は,循環血小板が除去される程度のほか,おそらく骨髄の巨核球によって規定さ... さらに読む 血小板減少症 に至る。別のクローン性の造血器疾患である再生不良性貧血 再生不良性貧血 再生不良性貧血は,血球前駆細胞の減少,骨髄の低形成または無形成,および2系統以上(赤血球,白血球,血小板)の血球減少が生じる造血幹細胞の疾患である。症状は貧血,血小板減少症(点状出血,出血),または白血球減少症(感染症)によって引き起こされる。診断には,末梢血塗抹での汎血球減少と骨髄生検での骨髄低形成の証明が必要である。治療としては通常,ウマ抗胸腺細胞グロブリン【訳注:現在,日本で使用できるのはウサギ抗胸腺細胞グロブリンのみである。】お... さらに読む の重症患者のうち約20%で,検出可能なPNHクローンが認められる。

症状

通常は感染症,輸血,ワクチン接種,または月経などの「トリガー」によりクリーゼが誘発される。腹痛,胸痛,腰痛,および重度の貧血の症状が生じることがあり,肉眼的ヘモグロビン尿と脾腫がよくみられる。血栓症の臨床像は,血栓が生じた血管の部位に依存し,下肢または上肢の腫脹に加えて腹痛や頭痛などの症状が生じる可能性がある。

診断

  • フローサイトメトリー

典型的な貧血症状(例,蒼白,疲労,めまい,場合によって低血圧)がみられる患者と血管内溶血を伴う原因不明の正球性貧血の患者では,発作性夜間血色素尿症が疑われ,特に白血球減少症もしくは血小板減少症および/または血栓イベントが認められる場合,その疑いが強くなる。

従来,PNHが疑われる場合は酸溶血(ハム試験)または砂糖水試験が通常最初に行われる検査であった。これらの検査は血清または高濃度のショ糖溶液の酸性化による補体の活性化を利用するものであった。

現在は,PNHの診断はフローサイトメトリーによって行われ,この検査では赤血球または白血球上の特異的な細胞表面タンパク質(CD59およびCD55)が存在しないことを特定する。この検査は感度および特異度が非常に高い。

骨髄検査は不要であるが,他の疾患を除外するために実施すると,通常は赤芽球過形成を示す。

クリーゼでは肉眼的ヘモグロビン尿が多くみられ,尿には常にヘモジデリンが含まれる。

治療

  • 支持療法

  • エクリズマブ

クローンサイズが小さく(すなわち,フローサイトメトリーで10%未満),概ね無症状の患者は,一般的に治療を必要としない。以下が治療の適応となる:

  • 症状を伴い輸血を要する溶血

  • 血栓症

  • 他の血球減少

支持療法としては,鉄および葉酸の経口補充に加え,ときに輸血が行われる。コルチコステロイド(例,プレドニゾン20~40mgの1日1回経口投与)により,50%を超える患者において症状のコントロールおよび赤血球の数値の安定化が可能であり,コルチコステロイドはエクリズマブが利用できない場合に使用できる。しかし,長期使用の有害作用のために,コルチコステロイドは長期治療としては避けるべきである。

C5に結合して終末補体阻害薬として作用するモノクローナル抗体のエクリズマブにより,本疾患の経過は著しく変化した。治療を必要とする全ての患者に投与する。エクリズマブによって,輸血の必要性,血栓塞栓症のリスク,および症状が減少し,生活の質が改善する。しかし,エクリズマブは髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の感染リスクを高めるため,エクリズマブを開始する14日以上前に髄膜炎菌ワクチン 髄膜炎菌ワクチン 髄膜炎菌の血清群のうち,米国で最も多く髄膜炎菌感染症を引き起こしているものは,B群,C群,およびY群である。A群およびW群は米国外で疾患の原因になっている。現行のワクチンは,これらの血清群全てではなく,一部のみを対象とするものである。 (予防接種の概要も参照のこと。) A/C/W/Y群を対象とするもの(4価): 髄膜炎菌結合型ワクチン(MCV4):MenACWY-D(Menactra®)またはMenACWY-CRM(Menveo®)... さらに読む を接種すべきである。

要点

  • 発作性夜間血色素尿症(PNH)は,夜間だけでなく一日のどの時間帯にも溶血を引き起こす可能性がある。

  • 一般的な臨床的特徴としては,ヘモグロビン尿症,汎血球減少症,動脈および静脈血栓症などがある。

  • 静脈血栓症は,例えば肝静脈など,まれな部位に発生する。

  • 症状のある患者は,必ず髄膜炎菌ワクチンを接種した後に,エクリズマブを用いて治療する。

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