(溶血性貧血の概要 溶血性貧血の概要 赤血球は正常な寿命(約120日)が尽きると,循環血液から取り除かれる。溶血は,赤血球が未熟な段階で破壊され,それにより赤血球寿命が短くなる(120日未満)ことと定義される。骨髄での赤血球産生が赤血球寿命の短縮を代償できなくなると貧血が生じるが,この状態を非代償性溶血性貧血と呼ぶ。骨髄により代償できている場合,その状態を代償性溶血性貧血と呼... さらに読む も参照のこと。)
循環血中の過剰なずり応力または乱流により,末梢血中の赤血球が物理的に損傷することで,破砕赤血球と呼ばれる断片化した赤血球(例,三角形,ヘルメット形)が生じる。末梢血塗抹標本で破砕赤血球を認めれば診断に至る。破砕赤血球により赤血球分布幅が大きくなるが,これは赤血球大小不同を反映する。
微小血管障害性溶血性貧血には,機械的器具によるもののほか微小血管損傷によって引き起こされる赤血球断片化も含まれる。断片化による溶血の原因としては以下のものがある:
敗血症,悪性腫瘍,妊娠合併症,外傷,手術など,他の病態に続発する消耗性の過程である 播種性血管内凝固症候群 播種性血管内凝固症候群(DIC) 播種性血管内凝固症候群(DIC)は,循環血中のトロンビンおよびフィブリンの異常な過剰生成に関係する。その過程で血小板凝集および凝固因子消費が亢進する。緩徐に(数週間または数カ月かけて)進行するDICでは,主に静脈の血栓性および塞栓性の症状がみられる;急速に(数時間または数日で)進行するDICでは,主に出血が生じる。重度で急速進行性のDICは,血小板減少症,部分トロンボプラスチン時間およびプロトロンビン時間の延長,血漿Dダイマー(または血... さらに読む
心臓弁の狭窄,機械弁の使用,または人工弁の機能不全(すなわち,弁周囲の逆流)
Foot strike hemolysis(行軍血色素尿症)や空手の打撃,水泳,手での太鼓演奏など,反復的な強い衝撃により生じるまれなケース
治療では原因となっている過程に対処する。慢性ヘモジデリン尿の結果として,溶血に 鉄欠乏性貧血 鉄欠乏性貧血 鉄欠乏症は貧血の最も一般的な原因であり,通常は失血の結果として起こり,セリアック病などでみられる吸収不良ははるかにまれな原因である。症状は通常非特異的である。赤血球は小球性および低色素性の傾向を示し,血清フェリチン低値,血清総鉄結合能高値,および血清鉄低値で示されるように,貯蔵鉄量は低値である。この診断を下した場合は,他の原因が証明されない限り潜在的な失血を疑うべきである。治療としては,鉄補充に加え,失血の原因に対する治療がある。... さらに読む が加わることがときにあるが,この場合は鉄補充療法に反応する。ヘマトクリットを30%超に維持することで,乱流により生じる溶血を低減することができる。