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多発性骨髄腫

(骨髄腫症;形質細胞骨髄腫)

執筆者:

James R. Berenson

, MD, Institute for Myeloma and Bone Cancer Research

最終査読/改訂年月 2019年 9月
本ページのリソース

多発性骨髄腫は,形質細胞の悪性腫瘍で,単クローン性免疫グロブリンを産生し,隣接する骨組織に浸潤し,それを破壊する。一般的な臨床像としては,骨痛および/または骨折を引き起こす溶骨性骨病変,腎機能不全,高カルシウム血症,貧血,繰り返す感染症などがある。典型的には,Mタンパク質(ときに尿中にみられ,血清中に認められない場合があるが,まれに全く認められない場合もある)および/または軽鎖タンパク尿,および骨髄中の過剰な形質細胞の証明が診断に必要である。最も頻用される特異的治療法としては,従来の化学療法薬の併用,コルチコステロイド,および新しい薬剤(プロテアソーム阻害薬[例,ボルテゾミブ,カルフィルゾミブ,イキサゾミブ],免疫調節薬[例,レナリドミド,サリドマイド,ポマリドミド],またはモノクローナル抗体[例,ダラツムマブ,エロツズマブ])のいずれかまたは併用などがある。高用量メルファラン投与後の自家末梢血造血幹細胞移植も施行されることがある。

多発性骨髄腫の発生率は10,0000人当たり2~4例である。男女比は1.6:1で,年齢の中央値は65歳である。黒人の有病率は白人の2倍である。病因は不明であるが,染色体異常,遺伝因子,放射線,および化学物質が示唆されている。

病態生理

悪性形質細胞が産生するMタンパク質(単クローン性の免疫グロブリンタンパク質)は,骨髄腫患者の約55%がIgG型,約20%がIgA型であり,IgG型またはIgA型のいずれかを産生する患者のうち,40%ではベンスジョーンズタンパク尿もみられるが,これは尿中のκ型またはλ型の遊離単クローン性軽鎖である。患者の15~20%では,形質細胞からベンスジョーンズタンパク質のみが分泌される。IgD型骨髄腫は,症例の約1%を占める。まれに,血中と尿中のどちらにもMタンパク質が認められない患者がいるが,現在用いられている血清遊離軽鎖測定法であれば,かつて非分泌型と呼ばれていたこうした患者の多くで単クローン性軽鎖が証明される。

通常は骨盤,脊椎,肋骨,大腿骨,上腕骨,および頭蓋にびまん性の骨粗鬆症 骨粗鬆症 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 骨粗鬆症 または孤立性の溶骨性病変が認められる。これらの病変は,形質細胞腫が拡大して骨組織が置換されるため,または悪性形質細胞から分泌されるサイトカインにより破骨細胞が活性化され,骨芽細胞が抑制されるために発生する。溶骨性病変は,通常多発性である;ときに孤立性の髄内腫瘤がみられることがある。骨量減少が亢進し,高カルシウム血症 高カルシウム血症 高カルシウム血症とは,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。主な原因には副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒,がんなどがある。臨床的特徴としては多尿,便秘,筋力低下,錯乱,昏睡などがある。診断は,イオン化カルシウムおよび副甲状腺ホルモンの血清中濃度測定による。カルシウムの排泄を増強し骨のカルシウム吸収を抑制... さらに読む を来すこともある。骨外性の孤立性形質細胞腫はまれであるが,いずれの組織にも発生することがあり,特に上気道に多くみられる。

多くの患者で,腎不全が診断時にみられたり,疾患経過中に発生したりする。腎不全の原因には多くのものがあり,特に多いのは,遠位尿細管における軽鎖沈着(骨髄腫関連腎疾患 骨髄腫関連腎疾患 多発性骨髄腫患者では単クローン性のIg軽鎖(ベンスジョーンズタンパク質)が過剰産生されるが,それらの軽鎖は糸球体により濾過され,腎毒性を有するため,様々な形態(遊離,尿細管円柱,アミロイド)で腎実質のほぼ全領域に損害を与える可能性がある。診断は尿検査(スルホサリチル酸検査もしくはタンパク質電気泳動)または腎生検による。治療は多発性骨髄腫と十分な尿量の確保に焦点を置く。骨髄腫関連腎疾患がIg重鎖により生じることはまれである。... さらに読む 骨髄腫関連腎疾患 )または高カルシウム血症に起因するものである。貧血がみられることも多く,通常は腫瘍細胞による腎疾患または赤血球産生の抑制に起因するが,ときに鉄欠乏症 鉄欠乏症 鉄(Fe)はヘモグロビン,ミオグロビン,および体内の多数の酵素の成分である。主に動物性食品に含まれるヘム鉄は,平均的な食事中の鉄分の85%超を占める非ヘム鉄(例,植物および穀物に含まれる)よりもはるかに吸収がよい。しかし,非ヘム鉄は,動物性タンパク質およびビタミンCと一緒に摂取すると吸収が増大する。 (ミネラル欠乏症および中毒の概要も参照のこと。) 鉄欠乏症は,世界的に最も一般的なミネラル欠乏症の一種である。以下の結果として起こることが... さらに読む またはビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症 食事によるビタミンB12欠乏症は通常,不十分な吸収に起因するが,ビタミンサプリメントを摂らない完全菜食主義者に欠乏症が生じることがある。欠乏症により,巨赤芽球性貧血,脊髄および脳の白質への障害,ならびに末梢神経障害が起こる。診断は通常,血清ビタミンB12値の測定によって行う。シリング試験が病因の特定に役立つ。治療はビタミンB12の経口または静脈内投与による。葉酸塩(葉酸)は,貧血を軽減することがあるが,神経脱落症状を進行させることがある... さらに読む などの他の無関係な原因による場合もある。

一部の患者では,正常な抗体の欠失やその他の免疫機能障害のために細菌感染に対する感受性が高まる。新たな治療方法(特にプロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ,イキサゾミブ,およびカルフィルゾミブ,ならびにダラツムマブおよびエロツズマブなどのモノクローナル抗体の使用)が現れた結果として,ウイルス感染(特に帯状疱疹感染 帯状疱疹 帯状疱疹は,水痘帯状疱疹ウイルスが後根神経節で潜伏状態から再活性化される際に生じる感染症である。症状は通常,侵された皮膚分節に沿った疼痛から始まり,その後小水疱が2~3日以内に生じ,通常はこれが診断の決め手となる。治療は,皮膚病変発現後72時間以内に抗ウイルス薬を投与することによる。 (ヘルペスウイルス感染症の概要を参照のこと。) 水痘と帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(ヒトヘルペスウイルス3型)により引き起こされるが,水痘は同ウイルスに... さらに読む 帯状疱疹 )がますます増えてきている。アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは,異常凝集したタンパク質から成る不溶性線維の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらのタンパク質は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染症,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。診... さらに読む アミロイドーシス が骨髄腫患者の10%にみられ,最も多いのはλ型Mタンパク質の患者である。

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症状と徴候

持続性の骨痛(特に背部または胸郭),腎不全,および繰り返す細菌感染症が初診時に最もよくみられる病態であるが,多くの患者はルーチンの臨床検査で血中総タンパク質値の上昇,タンパク尿,または原因不明の貧血もしくは腎不全が認められることで同定される。病的骨折(すなわち,軽微な外傷や外傷なしに発生する骨折)がよくみられ,椎体圧壊により脊髄圧迫 脊髄圧迫 様々な病変が脊髄を圧迫して,髄節性の感覚,運動,反射,および括約筋障害を引き起こしうる。診断はMRIによる。治療は圧迫の軽減を目標として行う。 (脊髄疾患の概要および脊椎・脊髄外傷の応急処置も参照のこと。) 圧迫の原因としては,脊髄内部の病変(髄内病変)より脊髄外部の病変(髄外病変)の方がはるかに頻度が高い。 圧迫は以下の場合がある: 急性 さらに読む 脊髄圧迫 または対麻痺を来すことがある。一部の患者では貧血症状が優勢であったり,それらが唯一の評価理由となったりする場合がある一方,少数の患者では過粘稠度症候群の臨床像 症状と徴候 マクログロブリン血症は,悪性の形質細胞疾患で,B細胞が過剰な量のIgM型Mタンパク質を産生する。臨床像としては,過粘稠,出血,繰り返す感染症,全身性リンパ節腫脹などがみられる。診断には,骨髄検査およびMタンパク質の証明が必要である。治療法としては,過粘稠に必要な血漿交換のほか,アルキル化薬,コルチコステロイド,ヌクレオシドアナログ,イブルチニブ,またはモノクローナル抗体による全身療法などがある。... さらに読む がみられる。末梢神経障害,手根管症候群(特に関連するアミロイド疾患によるもの),異常出血,および高カルシウム血症の症状(例,多飲,脱水)がよくみられる。腎不全を認める患者もいる。リンパ節腫脹および肝脾腫はまれである。

診断

  • 血小板数を含む血算,末梢血塗抹標本,赤血球沈降速度(赤沈),および生化学検査(血中尿素窒素[BUN],クレアチニン,カルシウム,尿酸,乳酸脱水素酵素[LDH])

  • 血清および尿(24時間蓄尿)のタンパク質電気泳動後に免疫固定法;免疫グロブリン定量;血清遊離軽鎖測定

  • X線(全身骨X線検査)

  • 骨髄検査,従来の細胞遺伝学的検査および蛍光in situハイブリダイゼーション検査(FISH)を含む

多発性骨髄腫は,40歳以上において,特に夜間または安静時における原因不明の持続性の骨痛,その他の典型的な症状,または血液タンパク質もしくは尿タンパクの上昇,高カルシウム血症,腎機能不全,貧血など,原因不明の臨床検査値異常が認められた場合に疑われる。臨床検査による評価としては,ルーチンの血液検査,LDH,血清β2ミクログロブリン,尿および血清の免疫およびタンパク質電気泳動,血清遊離軽鎖測定,X線,骨髄検査などがある(レビューについては[1, 2] 診断に関する参考文献 多発性骨髄腫は,形質細胞の悪性腫瘍で,単クローン性免疫グロブリンを産生し,隣接する骨組織に浸潤し,それを破壊する。一般的な臨床像としては,骨痛および/または骨折を引き起こす溶骨性骨病変,腎機能不全,高カルシウム血症,貧血,繰り返す感染症などがある。典型的には,Mタンパク質(ときに尿中にみられ,血清中に認められない場合があるが,まれに全く認められない場合もある)および/または軽鎖タンパク尿,および骨髄中の過剰な形質細胞の証明が診断に必要で... さらに読む 診断に関する参考文献 を参照)。

ルーチンの血液検査としては,血算,赤沈,生化学検査などがある。貧血は患者の80%にみられ,通常は積み重なって生じる3~12個の赤血球の集塊である連銭形成を伴う正球性正色素性貧血である。白血球数および血小板数は通常正常である。赤沈が通常100mm/hを超え,BUN,血清クレアチニン,LDH,β2ミクログロブリン,および血清尿酸が上昇することがある。アニオンギャップ低下がときにみられる。診断時に患者の約10%で高カルシウム血症がみられる。

血清検体で免疫およびタンパク質電気泳動を実施するとともに,尿中Mタンパク質の量を定量するために,24時間蓄尿から濃縮した尿検体でも実施する。血清の電気泳動により,約80~90%の患者でMタンパク質が同定される。残りの10~20%は通常,遊離単クローン性軽鎖(ベンスジョーンズタンパク質)またはIgD型である。これらのほぼ全てで,尿のタンパク質電気泳動によりMタンパク質が検出される。

免疫固定電気泳動では,Mタンパク質の免疫グロブリンの型(IgG,IgA,またはまれなIgD,IgM,IgE)が同定できるほか,血清免疫電気泳動が偽陰性の場合に,軽鎖タンパク質が検出できることが多い;免疫固定電気泳動は,血清検査で陰性であっても,多発性骨髄腫が強く疑われる場合に実施する。

κ/λ比を求める血清遊離軽鎖測定は,診断確定に役立ち,治療の有効性のモニタリングおよび予後データの収集にも使用可能である。

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X線検査には,全身骨X線検査(頭蓋,長管骨,脊椎,骨盤,および肋骨の単純X線)が含まれる。打ち抜き像を示す溶骨性骨病変またはびまん性の骨粗鬆症が80%の症例でみられる。骨シンチグラフィーは,通常は役に立たない。MRIでは,より詳細な情報が得られ,特定部位の疼痛または神経症状がみられる場合に実施する。PET-CTは,予後に関する情報が得られる場合があり,孤立性形質細胞腫と多発性骨髄腫の鑑別に役立つことがある。

骨髄穿刺と骨髄生検 骨髄穿刺および骨髄生検 貧血では,赤血球の数が減少する(ヘマトクリットまたは赤血球ヘモグロビン量で測定する)。男性では,貧血はヘモグロビン さらに読む 骨髄穿刺および骨髄生検 を施行し,シート状またはクラスター状の形質細胞を明らかにする;この種の細胞が10%を超えれば,骨髄腫と診断される。ただし,骨髄病変は斑点状であるため,骨髄腫の患者によっては,検体の形質細胞が10%を下回ることがある。それでも,骨髄中の形質細胞数が正常になることはまれである。形質細胞の形態は,合成される免疫グロブリンの型と相関しない。骨髄での染色体検査(例,蛍光in situハイブリダイゼーション[FISH]や免疫組織化学法などの細胞遺伝学的な検査方法を用いる)により,形質細胞に特定の核型異常が明らかになることがあり,これが生存期間の差に関連している。

診断ならびに他の悪性疾患(例,転移性の癌腫,リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫は,網内系およびリンパ系から発生する不均一な一群の腫瘍である。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫(NHL)に大別される(Professional.see table ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の比較)。 リンパ腫はかつて,白血病とは全く異なる疾患と考えられていた。しかし現在では,細胞マーカーとそれらのマーカーを評価する... さらに読む 白血病 白血病の概要 白血病は,未成熟または異常な白血球の過剰産生が起きることで,最終的に正常な血球の産生が抑制され,血球減少に関連する症状が現れる悪性疾患である。 白血化は,自己複製能が少し制限された造血前駆細胞レベルで生じることもあるが,通常は多能性幹細胞の段階で発生する。異常な増殖,クローン性増殖,異常な分化,およびアポトーシス(プログラム細胞死)の低下... さらに読む )および意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS) 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)では,非悪性の形質細胞によりMタンパク質が産生されるが,それ以外に多発性骨髄腫に典型的な症状は認められない。 (形質細胞疾患の概要も参照のこと。) 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)の発生率は年齢とともに高くなり,25歳で1%であるのが,70歳以上では5%を上回る。MGUSは,他の疾患に伴って発生することがあり(形質細胞疾患の分類の表を参照),その場合のMタンパク質(... さらに読む との鑑別では,典型的に以下のような多くの基準が必要である:

  • クローン性骨髄形質細胞または形質細胞腫

  • 血漿中および/または尿中のMタンパク質

  • 臓器障害(高カルシウム血症,腎機能不全,貧血,または骨病変)

血清Mタンパク質を認める患者では,24時間当たり200mgを超えるベンスジョーンズタンパク尿または血清遊離軽鎖値の異常,溶骨性病変(転移性の悪性腫瘍または肉芽腫性疾患の所見がない),および骨髄中のシート状またはクラスター状の形質細胞により,骨髄腫が示唆される。

診断に関する参考文献

  • 1. Rajkumar SV, Kumar S: Multiple myeloma: Diagnosis and treatment.Mayo Clinic Proc 91(1):101-119, 2016.doi: 10.1016/j.mayocp.2015.11.007

  • 2. Rajkumar SV: Myeloma today: Disease definitions and treatment advances.Am J Hematol 91(1):90-100, 2016.doi: 10.1002/ajh.24392

予後

本疾患は進行性で治癒が得られないが,最近の治療法の進展により,生存期間の中央値は5年を超えるまでに改善されている。診断時における予後不良の徴候は,血清アルブミンの低値,β2ミクログロブリンの高値,LDHの高値,および腫瘍細胞における特定の細胞遺伝学的異常である。初診時に腎不全がみられた患者も,治療による腎機能の改善(典型的に現在の治療選択肢によりもたらされる)が得られない限り,予後不良である。

治療

  • 症状のある患者に対する化学療法

  • サリドマイド,レナリドミド,またはポマリドミド,および/またはボルテゾミブ,カルフィルゾミブ,またはイキサゾミブに加えて,コルチコステロイドおよび/または従来の化学療法

  • エロツズマブやダラツムマブなどのモノクローナル抗体

  • コルチコステロイド,サリドマイド,および/またはレナリドミド,ならびにプロテアソーム阻害薬(特に経口イキサゾミブ)による維持療法

  • 場合により,自家造血幹細胞移植

  • 場合により,全身療法に反応しない症候性の特定領域に対する放射線療法

  • 合併症(貧血,高カルシウム血症,腎機能不全,感染症,および骨病変 ー 特に高い骨折リスクを伴うもの)の治療

初診時に臓器機能障害を呈する患者に対して骨髄腫の迅速な治療を必要とする危険因子として,骨髄中の形質細胞が60%を超える,MRI画像で病変が複数認められる,血清遊離軽鎖値が100mg/Lを超えることなどがある。そのため,これらの患者は現在では活動性骨髄腫とみなされおり,こうした患者の早期治療を検討したランダム化臨床試験では,ほぼ全てで全生存期間の改善が示されていないものの,迅速な治療が必要である。前述の危険因子がなく,末梢臓器の機能障害もない患者では,迅速な治療が有益となる可能性は低いため,通常は症状または合併症が現れるまで治療を保留する。.

悪性細胞の治療

過去には,経口メルファランおよびプレドニゾンによる従来の化学療法から成る多発性骨髄腫の初期治療で,4~6週間のサイクルが8~12サイクル実施され,毎月1回の奏効評価が行われていた。しかしながら,プロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ(またはカルフィルゾミブ)または免疫調節薬のレナリドミドもしくはサリドマイドのいずれかを追加することで,良好な治療精液が達成されている。シクロホスファミド,ベンダムスチン,ドキソルビシンとそのアナログのペグリポソーム化ドキソルビシンなど,その他の化学療法薬も免疫調節薬(サリドマイドまたはレナリドミド)またはボルテゾミブと併用した場合により効果的となる。ボルテゾミブとレナリドミドの両方をコルチコステロイドとともに初期治療に使用すると,生存期間が改善することが複数の研究で示唆されている。さらに,初期治療の一部としてモノクローナル抗体のダラツムマブをボルテゾミブおよびデキサメタゾンに追加すると,治療成績が改善するようである。

治療に対する反応(がん治療に対する反応の定義 がん治療に対する反応の定義 がんを治癒させるには,患者の生涯にわたり再発の可能性を残すがん細胞全てを根絶する必要がある。主な治療法として以下のものがある: 手術(限局例または所属リンパ節転移陽性例を対象とする) 放射線療法(限局例またはリンパ節転移陽性例を対象とする) 薬物療法(全身性の疾患を対象とする)... さらに読む の表を参照)は,血清中および尿中のMタンパク質減少,関与する血清遊離軽鎖濃度の低下,赤血球数の増加,腎不全を呈する患者における腎機能の改善,ならびにカルシウム高値を呈する患者におけるカルシウム値の正常化により判定される。骨痛および疲労を軽減させるべきである。

自家末梢血幹細胞移植 造血幹細胞移植 造血幹細胞(HSC)移植は,造血器悪性腫瘍(白血病,リンパ腫,骨髄腫)および他の血液疾患(例,原発性免疫不全症,再生不良性貧血,骨髄異形成)で治癒をもたらす可能性がある手技で,急速に発展しつつある。HSC移植は,ときに化学療法に反応する固形腫瘍(例,一部の胚細胞腫瘍)に用いられることもある。(移植の概要も参照のこと。) HSC移植は,以下の機序によって寛解に導く: 骨髄破壊的前処置によって骨髄を再建する... さらに読む は,心臓,肝臓,肺,および腎臓の機能が十分にあり,特に初回化学療法を数サイクル実施後に安定または奏効が得られた患者に対して考慮することができる。しかしながら,新しい治療選択肢は非常に効果的であるため,移植が必要になる頻度が減るか,全く必要にならない場合もあることが複数の研究で示唆されている。

骨髄非破壊的化学療法(例,低用量のシクロホスファミドおよびフルダラビン)または低線量の放射線療法後の同種造血幹細胞移植では,一部の患者において5~10年の骨髄腫フリー生存期間が得られている。ただし,同種造血幹細胞移植では,骨髄破壊的または骨髄非破壊的化学療法のいずれを用いても,移植片対宿主病 合併症 造血幹細胞(HSC)移植は,造血器悪性腫瘍(白血病,リンパ腫,骨髄腫)および他の血液疾患(例,原発性免疫不全症,再生不良性貧血,骨髄異形成)で治癒をもたらす可能性がある手技で,急速に発展しつつある。HSC移植は,ときに化学療法に反応する固形腫瘍(例,一部の胚細胞腫瘍)に用いられることもある。(移植の概要も参照のこと。) HSC移植は,以下の機序によって寛解に導く: 骨髄破壊的前処置によって骨髄を再建する... さらに読む に起因する合併症および死亡の割合が高いため,依然として探索的治療である。

再発または難治性骨髄腫の治療

再発または難治性骨髄腫では,プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ,イキサゾミブ,またはカルフィルゾミブ)が免疫調節薬(サリドマイド,レナリドミド,またはポマリドミド)および化学療法またはコルチコステロイドとの併用で使用されることがある。これらの薬剤は,通常,患者に未投与の他の効果的な薬剤と併用されるが,長期の寛解が得られた患者では,初期寛解につながった同一レジメンによる再治療で寛解が得られる可能性がある。多剤併用療法を受けて反応が認められなかった患者では,同一クラス(例,プロテアソーム阻害薬,免疫調節薬,化学療法薬)の他の薬剤へ変更することで反応が得られることがある。

再発または難治性骨髄腫には,新しいモノクローナル抗体も高度に効果的となる可能性があり,具体的にはダラツムマブとエロツズマブがある。どちらの抗体も,レナリドミドまたはポマリドミドおよびデキサメタゾンと併用した場合により効果的である。ダラツムマブも,ボルテゾミブおよびデキサメタゾンと併用した場合に良好な成績を示している。

維持療法

インターフェロンαなどの非化学療法薬を用いた維持療法が検討されているが,寛解期間は延長するものの,生存期間は延長せず,重大な有害作用を伴う。コルチコステロイドをベースとしたレジメンで効果が得られた後では,コルチコステロイド単独が維持療法として効果的である。サリドマイドも維持療法として効果的となる可能性があり,複数の研究により,レナリドミド単独またはレナリドミドとコルチコステロイド併用も効果的な維持療法であることが示されている。ただし,長期にわたりレナリドミド治療を受けている患者では,特に自家造血幹細胞移植 造血幹細胞移植 造血幹細胞(HSC)移植は,造血器悪性腫瘍(白血病,リンパ腫,骨髄腫)および他の血液疾患(例,原発性免疫不全症,再生不良性貧血,骨髄異形成)で治癒をもたらす可能性がある手技で,急速に発展しつつある。HSC移植は,ときに化学療法に反応する固形腫瘍(例,一部の胚細胞腫瘍)に用いられることもある。(移植の概要も参照のこと。) HSC移植は,以下の機序によって寛解に導く: 骨髄破壊的前処置によって骨髄を再建する... さらに読む 後の場合,二次悪性腫瘍に関する懸念が一部にあり,二次癌を発症するリスクを生存期間延長と比較検討しなければならない。さらに,経口プロテアソーム阻害薬のイキサゾミブも維持療法の状況で単剤として有効である。この状況でイキサゾミブをレナリドミドと併用した方がより効果的となるかどうかは不明である。

合併症の治療

悪性細胞に対する直接的な治療に加えて,以下の合併症に対する治療も実施しなければならない:

  • 貧血

  • 高カルシウム血症

  • 高尿酸血症

  • 感染症

  • 腎機能不全

  • 骨病変

貧血では,化学療法により十分に軽減されない患者に対して遺伝子組換えエリスロポエチン(40,000単位を週1回皮下投与)を用いることで治療可能である。貧血により心血管系症状または重大な全身症状がみられる場合は,濃厚赤血球を輸血する 赤血球 全血により,酸素運搬能の改善,血液量の増加,および凝固因子の補充が可能となり,過去には急速な大量失血に対して全血輸血が推奨されていた。しかしながら,成分輸血療法も同等に効果的であり,献血血液をより効率的に使用できることから,米国では一般に全血は利用できなくなっている。 通常は,濃厚赤血球が選択すべき成分で,これを用いてヘモグロビンを増加させる。適応は,患者によって異なる。健康状態が良好な患者であれば,ヘモグロビン値が7g/Lと低くとも酸... さらに読む 過粘稠 マクログロブリン血症は,悪性の形質細胞疾患で,B細胞が過剰な量のIgM型Mタンパク質を産生する。臨床像としては,過粘稠,出血,繰り返す感染症,全身性リンパ節腫脹などがみられる。診断には,骨髄検査およびMタンパク質の証明が必要である。治療法としては,過粘稠に必要な血漿交換のほか,アルキル化薬,コルチコステロイド,ヌクレオシドアナログ,イブルチニブ,またはモノクローナル抗体による全身療法などがある。... さらに読む を来した場合は,血漿交換 血漿交換 アフェレーシスとは,機器を用いて血液中の血球と水溶性成分を分離する処理のことを指す。アフェレーシスは,供血者に対してしばしば行われ,様々な患者の輸血に用いるべく全血を遠心分離して個々の成分(例,特定の重力に応じて赤血球,血小板,および血漿)を分取する。アフェレーシスは様々な疾患に対する治療目的でも用いられる(1)。 治療目的のアフェレーシスとしては,血漿交換や血球除去などがある。... さらに読む の適応となる。鉄欠乏症を来して,鉄の静脈内投与が必要となる患者が多い。貧血の患者では,ビタミンB12値に加えて,貯蔵鉄量をモニタリングするために,血清鉄,トランスフェリン,およびフェリチンの濃度を定期的に測定すべきである。

高カルシウム血症は,積極的な塩排泄,補液後のビスホスホネート(ゾレドロン酸が望ましい)の静注に加え,ときにカルシトニンまたはプレドニゾンにより治療する。カルシウムを含む食事,カルシウムサプリメント,およびビタミンDは避けるべきである。

感染は,化学療法誘発性好中球減少症の場合に発生する可能性が高い。さらに,新規の抗骨髄腫薬(特にプロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ,カルフィルゾミブ,またはイキサゾミブおよびモノクローナル抗体のダラツムマブまたはエロツズマブ)による治療を受けている患者では,帯状疱疹 帯状疱疹 帯状疱疹は,水痘帯状疱疹ウイルスが後根神経節で潜伏状態から再活性化される際に生じる感染症である。症状は通常,侵された皮膚分節に沿った疼痛から始まり,その後小水疱が2~3日以内に生じ,通常はこれが診断の決め手となる。治療は,皮膚病変発現後72時間以内に抗ウイルス薬を投与することによる。 (ヘルペスウイルス感染症の概要を参照のこと。) 水痘と帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(ヒトヘルペスウイルス3型)により引き起こされるが,水痘は同ウイルスに... さらに読む 帯状疱疹 ウイルスの感染が高頻度で認められている。細菌感染が確認された場合は,抗菌薬で治療すべきである;ただし,ルーチンでの抗菌薬の予防投与は推奨されない。

プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ,カルフィルゾミブ,イキサゾミブ)またはモノクローナル抗体(ダラツムマブ,エロツズマブ)を投与している患者では,抗ウイルス薬(例,アシクロビル,バルガンシクロビル,ファムシクロビル)の予防投与が適応となる。

静注用免疫グロブリン製剤の予防投与により,感染リスクが低下する可能性があるが,一般には感染症を繰り返す頻度が高い患者のみに用いる。感染予防として,肺炎球菌ワクチン 肺炎球菌ワクチン 肺炎球菌感染症(例,中耳炎,肺炎,敗血症,髄膜炎)は,90を超える血清型の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae[肺炎双球菌])のうちの一部によって引き起こされる。感染症を引き起こす血清型の多くに対するワクチンが使用可能になっている。特定の医学的状態(例,慢性疾患,易感染状態,髄液漏,人工内耳)は肺炎球菌感染症のリスクを高める。 詳細については,Pneumococcal... さらに読む およびインフルエンザワクチン インフルエンザワクチン インフルエンザワクチンは毎年,世界保健機関および米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の勧告に基づき,最も流行しているウイルス株(通常はインフルエンザA型の2株とインフルエンザB型の1~2株)が含まれるように変更されている。ときに,北半球と南半球で若干異なるワクチンが使用されることもある。 詳細については,Influenza... さらに読む の接種が適応となる。ただし,このような易感染性患者における生ワクチンの使用は推奨されない。ただし,新規の遺伝子組換え帯状疱疹ワクチンは,初期の弱毒生帯状疱疹ワクチンと異なり,帯状疱疹の予防を目的に使用できる場合がある。

腎障害は,しばしば十分な補液で改善する可能性がある。重度のベンスジョーンズタンパク尿(10~30g/日以上)が持続している患者でも,2000mL/日を超える尿量を維持していれば,腎機能に異常がみられないことがある。ベンスジョーンズタンパク尿の患者では,高浸透の静注造影剤と合わせて,脱水を起こすと,急性の乏尿性腎不全が促進される恐れがある。一部の症例では,血漿交換が効果的な場合がある。

骨病変では,多くの支持療法が必要である。歩行運動を継続的に実施し,カルシウムとビタミンDを補給することが骨密度を保つのに役立つ。診断時および定期的にビタミンD濃度を測定し,それによりビタミンDの用量を調節する。鎮痛薬と緩和的な放射線療法(18~24Gy)により骨痛を軽減できる可能性がある。ただし,放射線療法は,重大な毒性を伴うことがあるほか,骨髄機能を抑制するため,細胞傷害性用量の全身化学療法を受ける患者の能力が損なわれる場合がある。

ほとんどの患者,特に溶骨性骨病変と全身性の骨粗鬆症または骨減少症が認められる患者には,静注ビスホスホネート(パミドロン酸またはゾレドロン酸のいずれか)を月1回投与すべきである。ビスホスホネートは骨合併症を減少させ,骨痛を軽減するほか,抗腫瘍効果を示すこともある。骨髄腫に起因するが,高カルシウム血症とは無関係の腎不全が回復する可能性がある患者,ならびにビスホスホネートの投与後に輸注反応(infusion reaction)が持続している患者では,月1回のデノスマブ(皮下)投与が選択肢の1つとなるが,この薬剤はビスホスホネートと異なり,腎臓から排泄されず,輸注反応を引き起こさない。ビスホスホネートとデノスマブは,どちらも顎骨壊死を引き起こす可能性が低い。この合併症のリスクを最小限に抑えるには,歯科衛生を良好に保つことと抜歯やインプラントを控えることが重要である。

治療に関する参考文献

  • 1. Berenson J, Spektor T, Wang J: Advances in the Management of Multiple Myeloma.Journal of Community and Supportive Oncology 14(5):232–235, 2016.

  • 2. Goldschmidt H, Ashcroft J, Szabo Z, Garderet L: Navigating the treatment landscape in multiple myeloma: which combinations to use and when?Ann Hematol 98: 1–18, 2019.doi: 10.1007/s00277-018-3546-8

  • 3. Rajkumar SV, Kumar S: Multiple myeloma: Diagnosis and treatment.Mayo Clinic Proc 91(1):101-119, 2016.doi: 10.1016/j.mayocp.2015.11.007.

  • 4. Rajkumar SV: Myeloma today: Disease definitions and treatment advances.Am J Hematol 91(1):90-100, 2016.doi: 10.1002/ajh.24392.

要点

  • 悪性形質細胞が単クローン性免疫グロブリンを産生し,骨組織に浸潤し,それを破壊する。

  • 形質細胞腫の増大とサイトカインの分泌により,多数の不連続な溶骨性病変(通常は,骨盤,脊椎,肋骨,および頭蓋骨)とびまん性の骨粗鬆症が引き起こされ,疼痛,骨折,および高カルシウム血症がよくみられる。

  • 貧血および腎不全がよくみられる。

  • アミロイドーシスは,約10%の患者に発生し,典型的には過剰なλ型軽鎖を産生する患者にみられる。

  • 血清および尿のタンパク質電気泳動に続いて,免疫固定法,免疫グロブリン定量,および血清遊離軽鎖の測定を行う。

  • 骨髄穿刺および骨髄生検を施行する。

  • 症状のある患者および臓器機能障害がある患者では,薬物療法による治療を行うべきであり,薬物療法にはコルチコステロイド,プロテアソーム阻害薬,免疫調節薬,モノクローナル抗体,および化学療法薬を含めてもよい。

  • 造血幹細胞移植は,病状が安定している患者に対する選択肢であるが,非常に効果的な新規の治療選択肢により,移植が必要になる頻度は少なくなる可能性がある。

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