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糖尿病(DM)

執筆者:

Erika F. Brutsaert

, MD, New York Medical College

最終査読/改訂年月 2019年 1月
本ページのリソース

糖尿病(DM)はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリンおよび経口血糖降下薬などがある。合併症は適切な血糖コントロールにより遅延または予防できる;心疾患は依然として糖尿病における死因の第1位である。

糖尿病には1型および2型があり,それぞれ一連の特徴によって鑑別される(1型糖尿病および2型糖尿病の一般的特徴の表を参照)。年齢群および治療は2つの病型で重複するため,発症年齢(若年型または成人型)または治療の種類( インスリン依存性またはインスリン非依存性)による分類用語はもはや正確ではない。

耐糖能障害(impaired glucose regulation)(耐糖能異常[impaired glucose tolerance]または空腹時血糖異常[impaired fasting glucose]―糖尿病および耐糖能障害の診断基準の表を参照)は,正常糖代謝と,加齢に伴ってより頻度の高まる糖尿病との中間にある,過渡期の状態と考えられる。これは糖尿病の有意な危険因子であり,糖尿病発症の何年も前から存在することがある。これは心血管疾患のリスク上昇と関連するが,典型的な糖尿病性微小血管合併症はあまりみられない(アルブミン尿および/または網膜症は6~10%の患者で発生する)。

合併症

長年にわたるコントロール不良の高血糖は,主として小血管(微小血管性),大血管(大血管性),またはその両方を侵す複数の合併症をもたらす。(さらなる詳細については,Professional.see page 糖尿病の合併症。)

以下に挙げる,最も頻度が高く破壊的な糖尿病の3つの臨床像の基礎には,微小血管障害がある:

微小血管障害は皮膚の治癒も阻害する場合があるため,特に下肢では,皮膚にわずかな傷ができただけでも深い潰瘍が生じて容易に感染を起こしうる。徹底した血漿血糖コントロールによってこれらの合併症の多くを予防または遅延できるが,一度生じてしまった合併症は回復しないこともある。

大血管疾患には大血管のアテローム性動脈硬化が関与し,以下の合併症を引き起こす恐れがある:

免疫機能不全はもう1つの主要合併症であり,高血糖が細胞性免疫に直接及ぼす影響に起因する。糖尿病患者は,細菌および真菌感染症に特に罹りやすい。

病因

1型糖尿病

  • 自己免疫性の膵β細胞破壊による インスリン産生の欠如

1型糖尿病(従来は若年型糖尿病または インスリン依存性糖尿病と呼ばれていた)では,自己免疫性の膵β細胞破壊が原因で インスリン産生が欠如しており,その誘因はおそらく遺伝的に感受性の高い集団における環境性曝露であると考えられる。破壊は数カ月または数年かけて無症状に進行し,血漿血糖値の調節に十分な インスリン濃度を保てなくなるまでβ細胞量が減少する。1型糖尿病は一般に小児期または青年期に発症し,最近までは30歳以前に診断される病型として最も多いものであった;しかし成人で発症することもある(成人潜在性自己免疫性糖尿病[これは,初期には2型糖尿病のように見える場合が多い])。1型糖尿病の一部の症例は,特に非白人集団において,自己免疫性ではないようであり,特発性であると考えられている。1型は糖尿病症例全体の10%未満である。

自己免疫性のβ細胞破壊の病因には,感受性遺伝子,自己抗原,および環境因子の相互作用が関与するが,完全には解明されていない。

感受性遺伝子には,主要組織適合抗原複合体(MHC)内の遺伝子―特にHLA-DR3,DQB1*0201,およびHLA-DR4,DQB1*0302などがあり,これらは90%を上回る1型糖尿病患者に認められる―ならびにMHC以外の遺伝子があり,MHC以外の遺伝子は インスリンの産生およびプロセシングを調節し,MHC遺伝子と呼応して糖尿病のリスクを生むと考えられる。感受性遺伝子は一部の集団では他の集団より多くみられ,1型糖尿病の有病率が一部の民族集団(スカンジナビア人,サルデーニャ人)で高いことをこれにより説明できる。

自己抗原にはグルタミン酸脱炭酸酵素, インスリン,プロインスリン,インスリノーマ関連タンパク質,亜鉛トランスポーターZnT8,およびβ細胞中のその他のタンパク質などがある。β細胞の正常な代謝回転またはβ細胞の傷害(例,感染による)時にこれらのタンパク質が曝露または放出され,主にT細胞性免疫反応を活性化することでβ細胞を破壊する(膵島炎)と考えられている。 グルカゴン分泌α細胞は傷害されない。自己抗原に対する抗体は血清中に検出され,β細胞破壊に対する反応(原因ではなく)であると考えられる。

数種のウイルス(コクサッキーウイルス,風疹ウイルス,サイトメガロウイルス,エプスタイン-バーウイルス,およびレトロウイルスを含む)は1型糖尿病の発症と関連づけられている。ウイルスはβ細胞に直接感染して破壊することもあれば,自己抗原を表出させる,自己反応性リンパ球を活性化する,免疫反応を刺激する自己抗原と類似の分子配列をもつ(分子擬態[molecular mimicry]),またはその他の機序によって間接的にβ細胞破壊を引き起こすこともある。

食事も要因の1つでありうる。乳児の乳製品(特に牛乳および乳タンパク質βカゼイン)への曝露,飲水中の高濃度硝酸塩,およびビタミンD摂取不足は1型糖尿病のリスク上昇と関連づけられている。早期(< 4カ月)または後期(> 7カ月)にグルテンおよび穀物に曝露すると膵島細胞自己抗体の産生が増加する。これらが関連する機序は不明である。

2型糖尿病

  • インスリンに対する抵抗性

2型糖尿病(従来は成人型糖尿病または インスリン非依存性糖尿病と呼ばれた)では,患者に インスリンに対する抵抗性が発生しているため, インスリン分泌が不十分な状態となる。肝臓で インスリン抵抗性が上昇すると,肝臓でのグルコース産生を抑制できなくなり,また末梢 インスリン抵抗性により末梢でのグルコース取り込みが阻害される。これらが組み合わさり,空腹および食後高血糖が生じる。 インスリン濃度は,特に疾患の初期では,非常に高値になることが多い。疾患の後期では, インスリン産生は減少し,高血糖をさらに増悪させる場合がある。

2型糖尿病は一般に成人で発生し,加齢に伴いより頻度が高まっていき,65歳以上の成人では最大3分の1に耐糖能異常がみられる。比較的高齢の成人では,若年成人と比較して,食後,特に大量の炭水化物を摂取した後の血漿血糖値がより高値に達する。血糖値が正常範囲に戻るのにもより時間がかかり,この原因の一部には,内臓脂肪および腹部脂肪の蓄積増加および筋肉量の減少がある。

小児肥満の蔓延に伴い小児における2型糖尿病の頻度もますます高まってきている。糖尿病を有する成人の > 90%が2型である。2型糖尿病の有病率が特定の民族集団内(特にアメリカンインディアン,ヒスパニック,およびアジア人)や罹患者の近親者で高いことからわかるように,明らかな遺伝的決定因子が存在する。この数年間でいくつかの遺伝子多型が同定されているが,2型糖尿病の最も多い病型を引き起こす単一の遺伝子は同定されていない。

病因は複雑で,完全には解明されていない。 インスリン分泌によって インスリン抵抗性を代償できなくなると高血糖が生じる。2型糖尿病の患者やそのリスクを有する者では インスリン抵抗性が特徴的である,β細胞機能不全および インスリン分泌障害を示す証拠も存在し,その例としてブドウ糖静注に反応して生じる第1相 インスリン分泌の障害,正常なパルス状 インスリン分泌の喪失, インスリンプロセシング障害を示唆するプロインスリン分泌増加,および膵島アミロイドポリペプチド(正常では インスリンとともに分泌されるタンパク質)の蓄積などがある。高血糖はβ細胞の脱感作,β細胞の機能不全(糖毒性),またはその両方を引き起こすため,高血糖自体が インスリン分泌を障害する可能性がある。 インスリン抵抗性の存在下で,通常は数年かけてこれらの変化が現れる。

肥満および体重増加は2型糖尿病における インスリン抵抗性の重要な決定因子である。肥満や体重増加には遺伝的決定因子も存在するが,食事,運動,および生活習慣も反映される。脂肪組織で脂肪分解の抑制ができなくなると,遊離脂肪酸の血漿中濃度が上昇し,それにより インスリン刺激性グルコース輸送および筋肉でのグリコーゲン合成酵素活性が阻害されることがある。脂肪組織は内分泌器官として機能するとも考えられ,糖代謝に有利(アディポネクチン)または不利(腫瘍壊死因子α,IL-6,レプチン,レジスチン)な影響を及ぼす複数の因子(アディポサイトカイン)を放出する。子宮内胎児発育不全および低出生体重もその後の生涯における インスリン抵抗性と関連があるとされており,出生前の有害な環境がグルコース代謝に及ぼす影響を反映している可能性がある。

糖尿病の様々な病型

ごく一部の糖尿病症例でみられるその他の原因としては,β細胞機能, インスリン作用,およびミトコンドリアDNAに影響を及ぼす遺伝子異常(例,若年発症成人型糖尿病),膵疾患(例,嚢胞性線維症,膵炎,ヘモクロマトーシス,膵摘出),内分泌障害(例,クッシング症候群,先端巨大症),毒性物質(例,殺鼠剤であるpyriminyl[Vacor]),薬剤性糖尿病(特にグルココルチコイド,β遮断薬,プロテアーゼ阻害薬,および治療量のナイアシンによるもの)などがある。妊娠すると全ての女性である程度の インスリン抵抗性が生じるが,妊娠糖尿病を発症するのはごく少数のみである。

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1型糖尿病および2型糖尿病の一般的特徴

特徴

1型

2型

発症年齢

30歳未満が最も一般的

30歳以上が最も一般的

肥満を伴う

まれ

非常に多い

インスリン治療を要するケトアシドーシスを来す傾向がある

あり

なし

内因性 インスリンの血漿中濃度

極めて低値~検出不能

多様; インスリン抵抗性および インスリン分泌障害の程度によって低値,正常範囲内,または高値

双生児での一致率

50%

> 90%

特定のHLA-D抗原との関連

あり

なし

診断時の膵自己抗体

あり,ただし認めないこともある

なし

膵島の病理

膵島炎,大半のβ細胞の選択的喪失

膵島はより小さく,見た目は正常;アミロイド(アミリン)沈着がよくみられる

糖尿病合併症(網膜症,腎症,神経障害,動脈硬化性心血管疾患)を発症する傾向

あり

あり

高血糖の経口血糖降下薬への反応性

なし

あり,初期には多数の患者が反応

症状と徴候

糖尿病の最も頻度が高い症状は,高血糖症状である。初期の糖尿病の軽度高血糖はしばしば無症状であり,そのため,診断が何年も遅れる場合がある。高血糖がより有意になると,糖尿ひいては浸透圧利尿が生じ,これにより頻尿,多尿,多飲を来し,ここから起立性低血圧脱水へと進行しうる。重度の脱水は脱力,疲労,および精神状態の変化を引き起こす。症状は血漿血糖値の変動につれて出現したり消失したりする。過食は高血糖の随伴症状であるが,通常患者はそれほど気にしていない。高血糖は体重減少,悪心・嘔吐,および霧視を引き起こすことがあり,また細菌や真菌に感染しやすくなる。

1型糖尿病患者は典型的には症候性の高血糖を呈し,ときに糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)もみられる。一部の患者は,糖尿病の急性発症に続いてハネムーン期(血糖値が正常範囲近くとなる長いが一過性の時期)を経験するが,これは インスリン分泌の部分的な回復によるものである。

2型糖尿病患者は症候性の高血糖を呈することもあるが,しばしば無症状であり,病状はルーチンの検査でのみ検出される。初期症状が糖尿病合併症の症状である患者もおり,この場合糖尿病がしばらく持続していたことが示唆される。一部の患者では高浸透圧性高血糖状態が初期にみられ,これは特にストレス下や,コルチコステロイドなどの薬剤によって糖代謝がさらに障害されたときに生じる。

診断

  • 空腹時血漿血糖値(FPG)

  • 糖化ヘモグロビン(HbA1C)

  • ときに経口ブドウ糖負荷試験

糖尿病の診断は典型的な症状および徴候によって示唆され,血漿血糖測定によって確定される(1)。8~12時間絶食後の測定(FPG)または高濃度ブドウ糖液摂取2時間後の測定(経口ブドウ糖負荷試験[OGTT])が最も優れている(糖尿病および耐糖能障害の診断基準の表を参照)。OGTTによる糖尿病および耐糖能障害の診断感度はFPGよりも高いが,FPGに比べて不便で再現性も低い。そのため,妊娠糖尿病の診断および研究目的以外でルーチンに用いられることはまれである。

臨床では,糖尿病または空腹時血糖異常(impaired fasting glucose)は,血漿血糖またはHbA1Cの随時測定を用いて診断されることが多い。随時血糖値が200mg/dL(11.1mmol/L)を上回れば診断に有用でありうるが,この値は採血前の食事に影響されることがあり,検査を繰り返して確認しなければならない;糖尿病症状の存在下では2回検査することは不要な場合もある。

HbA1Cの測定結果は,測定前3カ月間の血糖値を反映する。現在の糖尿病の診断基準には,以下のHbA1C測定値がある:

  • HbA1C 6.5% = 糖尿病

  • HbA1C 5.7~6.4% = 前糖尿病または糖尿病のリスク

しかし,HbA1C値は偽高値または偽低値となる場合があるため(Professional.see heading on page 糖尿病(DM) : モニタリング),認定された臨床検査機関で,認定および標準化された測定法により検査しなければならない。HbA1Cのポイントオブケア測定は糖尿病コントロールのモニタリングに用いることができるが,診断に使用すべきではない。

尿糖測定は以前は一般的に使用されていたが,感度も特異度も高くないため,診断やモニタリングにはもはや使用されていない。

パール&ピットフォール

  • HbA1Cのポイントオブケア検査は,糖尿病の初回診断に使用できるほど正確ではない。

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糖尿病および耐糖能障害の診断基準*

検査

正常

耐糖能障害

糖尿病

FPG(mg/dL[mmol/L])

< 100(< 5.6)

100~125(5.6~6.9)

126(7.0)

OGTT(mg/dL[mmol/L])

< 140(< 7.8)

140~199(7.8~11.0)

200( 11.1)

HbA1C(%)

< 5.7

5.7~6.4

≥ 6.5

*以下も参照のこと:American Diabetes Association: Standards of Medical Care in Diabetes. Diabetes Care 41: Supplement 1: S1–S158, 2018.

FPG = 空腹時血漿血糖値;HbA1C = 糖化ヘモグロビン;OGTT = 経口ブドウ糖負荷試験,2時間値。

疾患のスクリーニング

糖尿病のリスクがある人には糖尿病のスクリーニングを施行すべきである。糖尿病のある患者には合併症のスクリーニングを施行する。

1型糖尿病の高リスク者(例,1型糖尿病患者の同胞および子)では,膵島細胞抗体または抗グルタミン酸脱炭酸酵素抗体の有無を検査する場合があり,これらの抗体は疾患が臨床的に発症する前からみられる。しかし,高リスク者に対する予防効果が証明された方策はなく,そのためこのようなスクリーニングの施行は通常は研究目的に限られている。

2型糖尿病の危険因子としては以下のものがある:

  • 45歳以上

  • 過体重または肥満

  • 座位時間の長い生活習慣

  • 糖尿病の家族歴

  • 耐糖能障害の既往

  • 妊娠糖尿病または4.1kgを超える新生児の出産

  • 高血圧の既往

  • 脂質異常症(HDLコレステロール < 35mg/dL[0.9mmol/L]またはトリグリセリド > 250mg/dL[2.8mmol/L])

  • 心血管疾患の既往

  • 黒人,ヒスパニック,アジア系アメリカ人,またはアメリカンインディアン

45歳以上の成人と上述した付加的な危険因子がある全ての成人には,FPG値,HbA1c,または75gOGTT2時間値による糖尿病スクリーニングを実施すべきであり,血漿血糖値が正常範囲内であれば3年に1回以上,空腹時血糖異常(impaired fasting glucose)があれば年1回以上の頻度で行う(糖尿病および耐糖能障害の診断基準の表を参照)。

糖尿病の合併症のスクリーニング

全ての1型糖尿病患者では診断の5年後から糖尿病合併症のスクリーニングを開始すべきである。2型糖尿病患者では診断時からスクリーニングを開始する。合併症の典型的なスクリーニングには以下のものがある:

  • 足の診察

  • 眼底検査

  • 尿検査でアルブミン尿の有無を確認する

  • 血清クレアチニンおよび脂質プロファイルの測定

足の診察は少なくとも年に1回は行うべきであり,末梢神経障害の特徴である圧覚,振動覚,痛覚,または温度覚の障害がないか確認する。圧覚はモノフィラメントの知覚テスターを用いるのが最善である(糖尿病患者の足のスクリーニングの図を参照)。足全体,特に中足骨頭下の皮膚に,ひび割れや虚血徴候(潰瘍形成,壊疽,爪真菌感染症,脈拍減弱,および脱毛)がないかを調べる。

眼底検査は眼科医が行うべきである;一般的なスクリーニングの頻度としては,何らかの網膜症がある患者では年1回,前回の検査で網膜症が認められなかった患者では2年毎とする。網膜症の進行を認めれば,より頻繁な評価が必要になることがある。

アルブミン尿を検出するため年1回の随時尿検査または24時間尿検査の適応があり,また血清クレアチニンを年1回測定して腎機能を評価すべきである。

心疾患のリスクがあるため,多くの医師はベースライン時の心電図を重要視する。脂質プロファイルを少なくとも年1回,異常があるときにはそれよりも頻繁に確認すべきである。血圧は診察時に毎回測定すべきである。

診断に関する参考文献

治療

  • 食事および運動

  • 1型糖尿病の場合, インスリン

  • 2型糖尿病の場合,経口血糖降下薬,グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬の注射用製剤, インスリン,またはこれらの組合せ

  • 合併症の予防には,しばしばレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害薬(ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬),スタチン,および アスピリン

糖尿病の治療には,生活習慣の変更と薬剤の両方を必要とする。1型糖尿病患者はインスリンを必要とする。2型糖尿病患者の一部で,食生活の改善と運動で血漿血糖値を維持できる場合は,薬物療法を回避または中止できることがある。詳細な議論については,糖尿病の薬物療法を参照のこと。

目標と方法

治療としては,高血糖をコントロールして症状を軽減し,合併症を予防すると同時に,低血糖の発生を最小限にとどめる。

血糖コントロールの目標は以下の通りである:

  • 食前の血糖値が80~130mg/dL(4.4~7.2mmol/L)

  • 食後血糖値のピーク(食事開始から1~2時間後)が < 180mg/dL(10mmol/L)

  • HbA1C値 < 7%

血糖値は通常,毛細血管血糖値(例,指先採血など)の在宅モニタリングによって決まり,HbA1C値は7%未満に維持する。厳格な血糖コントロールが勧められない患者ではこれらの目標値を調整することもあり,フレイルな高齢者,期待余命の短い患者,低血糖発作,特に無自覚性低血糖を繰り返す患者,低血糖症状があることを伝えられない患者(例,幼児,認知症患者)などがその対象である。逆に,低血糖を起こさずこれらの目標を達成できる患者には,HbA1C < 6.5%という,より厳しい目標を勧めることもある。より厳しい血糖コントロールを行う患者の候補として,低血糖を誘発する薬剤による治療を受けていない患者,糖尿病の罹患期間が短い患者,期待余命が長い患者,心血管疾患のない患者などが挙げられる。

全ての患者で重要となる要素は,患者教育,食事指導,運動指導,および血糖コントロールのモニタリングである。

全ての1型糖尿病患者がインスリン療法を必要とする。

血漿血糖値の上昇が軽度である2型糖尿病患者には食事療法および運動療法の試行を指示すべきであり,生活習慣の変更で不十分であれば続いて経口血糖降下薬を1つ処方し,必要に応じて経口薬および/またはGLP-1受容体作動薬を追加して(併用療法),併用療法でも推奨目標を達成できないときには インスリンを処方する。通常,メトホルミンは最初に使用する経口薬である。動脈硬化性心血管疾患のない患者においては,特定の薬剤または特定のクラスの薬剤の使用を支持するエビデンスはない;薬剤を決定する際はしばしば,有害作用,簡便性,および患者の希望に配慮する必要がある。動脈硬化性心血管疾患のある患者では,SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬が推奨されることがある。

2型糖尿病を有し,診断時により有意な血糖上昇がみられる患者には,典型的には生活習慣の変更および1つまたは複数の血糖降下薬を同時に処方する。

2型糖尿病を有する妊娠中の女性,および高浸透圧性高血糖状態または糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)などの急性代謝代償不全を呈する患者では,初期治療としてインスリンが適応となる。重度の高血糖(血漿血糖値が400mg/dL[22.2mmol/L]超)がある患者は,短期の インスリン投与により血糖値を正常化した後の方が,治療により良く反応する場合がある。

耐糖能障害の患者は,糖尿病発症のリスクについて,また糖尿病予防のためにいかに生活習慣の変更が重要であるかについてカウンセリングを受けるべきである。このような患者では,糖尿病症状の発生または血漿血糖値の上昇がないか綿密にモニタリングすべきである。理想的なフォローアップ間隔は決定されていないが,年1回または2回の検査がおそらく適切である。

患者教育

糖尿病の原因,食事,運動,薬剤,指先採血での自己血糖モニタリング,ならびに低血糖,高血糖,および糖尿病合併症の症状や徴候についての教育は,治療を最適化する上で不可欠である。大半の1型糖尿病患者には, インスリン用量の調節方法も指導する。診察毎および入院毎に教育を強化すべきである。糖尿病専門看護師および栄養士によって一般に行われる正規の糖尿病教育プログラムは,非常に効果的であることが多い。

食事

食事を個人の状況に合わせて調整することは,血糖値変動の調節に有用な場合があり,2型糖尿病患者では体重を減らす上でも役立つ可能性がある。

一般に,全ての糖尿病患者は食事指導を受ける必要があり,飽和脂肪やコレステロールが少なく,中等量の炭水化物(食物繊維含有量の多い全粒穀物由来のものが望ましい)を含む食事を推奨する。食物中のタンパク質および脂肪はカロリー摂取(したがって体重の増減)に寄与するが,血糖値に直接的な影響を及ぼすのは唯一炭水化物のみである。低炭水化物・高脂肪食は一部の患者で血糖コントロールを改善するため短期間は使用できるが,長期の安全性については不明である。

1型糖尿病患者は,炭水化物の摂取量に合わせて インスリン用量を調節し,生理的な インスリン補充に役立てるために,カーボカウントまたはcarbohydrate exchange systemを使用すべきである。食事中の炭水化物量の「カウント」は,食前の インスリン用量の算出に使用する。例えば,炭水化物対インスリン比(CIR)を15グラム:1単位とする場合,食事中の炭水化物15gにつき1単位の超速効型 インスリンを必要とする。この比は患者の インスリン感受性に応じて有意に異なり,患者毎に調節しなければならない。このアプローチには詳細な患者教育が必要であり,糖尿病患者の扱いに長けた栄養士が指導を行うことで成功率が最も高くなる。急速に代謝される炭水化物とゆっくり代謝される炭水化物を区別できるよう,グリセミック指数(炭水化物を含む食事が血糖値に与える影響の指標)の使用を勧める専門家もいるが,このアプローチを支持するエビデンスはほとんどない。

2型糖尿病患者はカロリーを制限し,規則正しく食事をし,食物繊維の摂取を増やし,精製炭水化物および飽和脂肪の摂取を減らすべきである。栄養指導は診察の補完的役割を果たすべきであり,患者および患者の食事を用意する者の両者が指導に参加すべきである。

運動

身体活動量は,患者が耐えられる最大レベルにまで徐々に増加させるべきである。有酸素運動とレジスタンス運動はいずれも2型糖尿病において血糖コントロールを改善することが証明されており,レジスタンス運動と有酸素運動を組み合わせれば,いずれか1つだけを行った場合より高い効果が得られることを示す複数の研究がある。身体制限のない糖尿病の成人は,150分/週以上の運動を(少なくとも3日間に分けて)行うべきである。

運動中に低血糖症状を来す患者には,血糖値を測定し,必要に応じて炭水化物を摂取するか インスリンの用量を減らすことで,運動直前の血糖値が正常範囲をわずかに上回るようになるよう指導する。激しい運動中に生じる低血糖では,運動中に炭水化物,典型的には5~15gのショ糖または他の単糖の摂取を要することもある。

心血管疾患が診断されている,または疑われる患者では,運動プログラム開始前に運動負荷試験を行うのが有益な場合がある。神経障害および網膜症などの糖尿病合併症を有する患者では活動目標の修正を要することがある。

減量

肥満のある糖尿病患者には,できれば体重減少を促す,あるいは体重増加作用のない糖尿病薬を処方すべきである(詳細については糖尿病の薬物治療を参照)。オルリスタット,ロルカセリン(lorcaserin),フェンテルミン(phentermine)/トピラマート,ナルトレキソン/ブプロピオンなどのその他の減量効果のある薬剤は,選択された患者における包括的な減量プログラムの一環として有用な場合があるが,ロルカセリン(lorcaserin)の使用は短期間に限られる。腸管リパーゼ阻害薬オルリスタットは食物中の脂肪の吸収を抑制し,血清脂質値を低下させて体重減少を促す。ロルカセリン(lorcaserin)は選択的セロトニン受容体作動薬であり,満腹感をもたらすことで食事摂取量を減少させる。フェンテルミン(phentermine)/トピラマートは,脳内の複数の機序を介して食欲を減退させる合剤である。これらの薬剤の多くは,HbA1Cも有意に低下させることが示されている。

胃バンディング術,スリーブ状胃切除術,または胃バイパス術などの肥満に対する外科治療も,他の方法では減量できない糖尿病患者で減量を促し,(体重減少とは無関係に)血糖コントロールを改善する。

フットケア

感覚消失や循環障害を有する患者には,足趾の爪切りや胼胝の除去といった専門家による定期的な足のケアが重要である。このような患者には,あかぎれ,亀裂,胼胝,鶏眼,および潰瘍がないか毎日足を調べるように助言すべきである。刺激の少ない石鹸を使ってぬるま湯で足を毎日洗い,愛護的に完全に乾燥させるべきである。乾燥した鱗屑のある皮膚には潤滑剤(例,ラノリン)を塗布すべきである。湿った足に非薬用の足用パウダーを塗布すべきである。足趾の爪は,足専門医(podiatrist)が切るのが望ましく,まっすぐ横に切り,皮膚近くまで切り過ぎないようにする。絆創膏やテープ,刺激性の化学薬品,鶏眼治療薬,湯たんぽ,および電気パッドを皮膚に直接当てて使用すべきではない。靴下は毎日交換し,締めつけるような衣服(例,靴下止め,足先がきつく弾性に富んだ靴下やストッキング)は着用すべきではない。

靴はサイズを合わせ,足先の幅が広く踵やつま先が露出しないものを使用し,頻繁に交換すべきである。足が変形していれば(例,趾切断術の既往,槌趾バニオン),外傷を減らすために特別な靴を処方すべきである。裸足での歩行は避けるべきである。

神経障害性足潰瘍を有する患者は,潰瘍が治癒するまでは加重を避けるべきである。加重を避けられないならば,適切な整形外科的保護具を装用すべきである。このような潰瘍のある患者のほとんどは大血管の閉塞性疾患をもたない,またはほとんどもたないため,デブリドマンおよび抗菌薬で良好に治癒することが多く,大手術を避けられることがある。潰瘍の治癒後は,適切な靴内挿入具または特殊な靴を処方すべきである。難治例,特に骨髄炎がある場合は,中足骨頭(圧迫の原因)の外科的切除,患趾の切断術,または横断的中足骨切断術が必要になることもある。しばしば神経障害性関節症は,矯正器具(例,短下肢装具,型取りして作成した靴,スポンジゴムによる足弓支持,松葉杖,義足)によって十分に管理できる。

予防接種

全ての糖尿病患者に肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)ワクチン(1回)およびインフルエンザワクチン(毎年)を接種すべきである。

モニタリング

糖尿病のコントロールは,以下の血中濃度を測定することによりモニタリングできる:

  • ブドウ糖

  • HbA1c

  • フルクトサミン

グルコースメーター(指先の血液と試験紙を用いる)または持続血糖モニター(CGM)による自己血糖モニタリングが最も重要である。これを参考に患者は食事摂取量や インスリン用量を調節し,医師は薬剤の投与タイミングや用量の調節を勧めるべきである。

様々なグルコースメーターが利用可能である。ほぼ全ての装置で,試験紙のほか,皮膚を刺して血液検体を採取する手段を必要とする。大半の装置には対照溶液が付属しており,これを定期的に使用し,装置が適切に較正されているかを確認すべきである。どの装置を選択するかは通常患者の希望に基づいて決定し,結果が出るまでの時間(通常は5~30秒),表示パネルの大きさ(大きなスクリーンは視力の低下した患者に有益でありうる),較正の必要性などを考慮する。指先よりも疼痛の少ない場所(手掌,前腕,上腕,腹部,大腿)での検査が可能な測定器も利用できる。

持続血糖測定システムでは,皮下カテーテルを使用してリアルタイムに結果が得られ,低血糖,高血糖,または血糖値の急速な変化を警告する警報が取り付けられている。このような装置は高額である;しかしながらより一般的に用いられるようになってきており,より最近の型では血糖モニターを較正するために指先採血による血糖検査を毎日行う必要がない。これは1型糖尿病の患者や,無自覚性低血糖の患者または夜間低血糖の患者に特に有用である。

血糖コントロールの不良な患者,新しい薬剤を処方された患者,または使用中の薬剤の用量が変更された患者には,自己血糖モニタリングを1日1回(通常は早朝空腹時)~5回以上行うよう指導する場合があり,これは患者の必要性や能力,治療レジメンの複雑さによって変わる。大半の1型糖尿病患者では,少なくとも1日4回の検査を行うことが有益である。

HbA1C値は,過去3カ月間の血糖値を反映するため,前回の受診時から今回の受診時までのコントロールを評価できる。HbA1C値の測定は,1型糖尿病患者では3カ月毎に行い,2型糖尿病患者では血漿血糖値が安定していると考えられる場合には少なくとも年2回,コントロールが不明確な場合にはより頻回に行うべきである。家庭用検査キットは,使用説明書に正確に従える患者に有用である。

HbA1C値からわかるコントロールは,毎日の血糖測定からわかるコントロールとときに異なるように見えることがあるが,これはHbA1Cでは誤って高値や正常値が出ることがあるためである。HbA1Cの偽高値は,赤血球代謝の低下(鉄欠乏性貧血,葉酸欠乏性貧血,またはビタミンB12欠乏性貧血などでみられる),高用量アスピリン,および血中アルコール濃度高値などで生じうる。欠乏性貧血の治療中,または溶血性貧血および異常ヘモグロビン症(例,HbS,HbC)では,赤血球代謝が亢進するため誤って正常範囲内のHbA1C値がでる。慢性腎臓病ステージ4および5の患者では,HbA1Cと血糖値との相関が希薄であり,HbA1Cが偽低値を示すことがある。

フルクトサミンは,大半は糖化アルブミンであるがその他の糖化タンパク質も含み,過去1~2週間の血糖コントロールを反映する。フルクトサミンのモニタリングは,糖尿病の強化インスリン療法中の患者や,変異ヘモグロビンを有する患者,または赤血球代謝の亢進している患者(HbA1Cの誤測定が生じる)に用いられることもあるが,主に研究の場で使用される。

尿糖のモニタリングは非常に不正確であるため推奨されない。1型糖尿病患者において悪心,嘔吐,腹痛,発熱,感冒様症状,インフルエンザ様症状,自己血糖モニタリング時に異常に持続する高血糖(> 250~300mg/dL[13.9~16.7mmol/L])など,ケトアシドーシスの症状,徴候,または誘引が認められた場合には,尿ケトン体の自己測定が推奨される。

膵臓移植

膵臓移植または膵島細胞の移植 インスリン投与の代替手段である(1);いずれの手法を用いても, インスリンが欠乏している(1型)患者に インスリン産生β細胞を効果的に移植できる。両手法の適応,組織調達法,手技,および限界については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

膵臓移植に関する参考文献

特殊な集団および状況

ブリットル型糖尿病という用語は,しばしば明らかな理由なく再発性の劇的な血糖変動を呈する患者を指すのに使用されている。しかし,この概念は生物学的根拠がないため,使用すべきではない。動揺性の血漿血糖値は1型糖尿病患者に生じやすいが,その理由は,内因性 インスリン産生が完全に欠損しており,一部の患者では低血糖に対する拮抗反応が障害されているためである。その他の原因としては,不顕性感染,胃不全麻痺(食物中の炭水化物の異常吸収につながる),内分泌障害(例,アジソン病)などがある。

許容できるレベルの血糖値を維持するのが慢性的に困難な患者では,血糖コントロールに影響する要因を評価すべきである。こうした要因には,誤った インスリン投与につながる不十分な患者教育または理解不足,不適切な食事の選択,および心理社会的ストレス(薬剤の使用や食事のパターンが不規則になる原因)などがある。

最初のアプローチは, インスリンの準備と注射法および血糖測定を含め,自己管理技術を徹底的に見直すことである。自己血糖測定の頻度を増やすことによって,これまで認識されなかったパターンが明らかになり,患者に役立つフィードバックが得られる可能性がある。食事時間を含む完全な食事記録をつけて,コントロール不良の潜在的要因を同定すべきである。身体診察および適切な臨床検査によって基礎疾患を除外すべきである。 インスリン治療中の患者の一部では,(血糖測定に基づいて)頻繁に用量調整を行えるより強力なレジメンへの変更が役に立つ。一部の症例では特に治療を行わなくても低血糖および高血糖のエピソードの頻度が時間とともに減ることがあり,この場合生活環境が寄与していた可能性が示唆される。

小児

小児の糖尿病については別の箇所でより詳細に考察されている。

1型糖尿病の小児には,成人と同様に生理的な インスリン補充を行うほか, インスリンポンプを含め,同様の治療レジメンが必要である。しかし,食事や活動のパターンが予測不可能であるほか,低血糖症状を報告する能力が限られていることから,低血糖のリスクが高く,治療目標の調整を要する場合がある。大半の幼児には,血糖測定および インスリン注射を含め,本人のケアに積極的に関わるよう教育できる。学校職員および他の介護者には,糖尿病があることを告知し,低血糖エピソードの認識および治療法を指導しなければならない。一般に,微小血管合併症のスクリーニングは思春期以降まで遅らせてもよい。

2型糖尿病の小児では,食事および体重コントロール,ならびに脂質異常症および高血圧の発見・管理に関して,成人と同じ注意が必要である。2型糖尿病を有する小児の大半が肥満であるため,生活習慣の改善が治療の鍵である。一般に,高血糖が軽度の小児には,ケトーシス,腎機能不全,またはメトホルミン使用の他の禁忌事項がない限り,メトホルミンで治療を開始する。用量は500~1000mg,1日2回である。反応が十分でなければ, インスリンを追加することがある。一部の小児専門医は,チアゾリジン系薬剤,スルホニル尿素薬,GLP1受容体作動薬,ジペプチジルペプチダーゼ4阻害薬を併用療法に含めることがある。

青年

青年の糖尿病については別の箇所でより詳細に考察されている。糖尿病患児が青年期に入るにつれ,典型的には血糖コントロールが悪化する。これには複数の因子が関与しており,例として思春期および インスリンによって誘発される体重増加; インスリン感受性を低下させるホルモン変化; インスリンのアドヒアランス不良につながる心理社会的因子(例,気分障害,不安症);家庭不和,反抗期,仲間からの圧力;体重コントロールの手段としての摂食障害およびそれに起因する インスリン不使用;喫煙や飲酒,薬物使用の経験などが挙げられる。こういった理由から,一部の青年は救急外来受診や入院を要するような高血糖およびDKAのエピソードを繰り返す。

治療にはしばしば心理社会的介入(例,指導または支援グループ),個人療法または家族療法,および適応があれば精神薬理学を組み合わせた集中医学管理を要する。青年が成人期早期を自由かつ安全に謳歌できるようにするため,患者教育は重要である。医療提供者は,個人的嗜好や行動を批判するのではなく,厳重な血糖コントロールの必要性を繰り返し強調し,特に頻回の血糖モニタリングおよび必要に応じて速効性の インスリンを低用量で頻回使用することについて指導を強化していかなければならない。

入院

糖尿病は,入院の主因になることもあれば,入院治療を必要とする他の疾患に随伴することもある。DKA,高浸透圧性高血糖状態,または遷延性もしくは重度の低血糖を呈する糖尿病患者は全て入院させるべきである。スルホニル尿素薬による低血糖,コントロール不良の高血糖,または糖尿病合併症の急性増悪を呈する患者には,短期入院が有益と考えられる。糖尿病を新規発症した小児や青年にも,入院が有益な可能性がある。制御された入院環境で作成された インスリン投与レジメンが制約のない院外の環境に合わなければ,退院に際してコントロールは悪化する。

他の疾患で入院が必要な場合,患者によっては家庭での糖尿病治療レジメンを続けられる場合もある。しかし,血糖コントロールはしばしば困難であり,他の疾患の緊急性がより高い場合は,血糖コントロールが無視されることも多い。運動制限や急性疾患は一部の患者で高血糖を増悪させるが,食事制限および疾患の随伴症状(例,悪心,嘔吐,下痢,食欲不振)は低血糖を促し,特に血糖降下薬の用量が変更されていないときによくみられる。さらに,糖尿病の治療レジメンと比較して,院内業務(例,食事,投薬,処置)のタイミングは柔軟性に欠けるため,入院患者では血糖値の十分なコントロールが困難なことがある。

入院下では,経口血糖降下薬を中止しなければならないことがしばしばある。メトホルミンは腎機能不全の患者において乳酸アシドーシスを引き起こすことがあり,造影剤を使用する必要がある場合は中止しなければならないため,非常に安定している患者を除き全ての患者で使用が控えられる。スルホニル尿素薬は低血糖を引き起こすことがあるため,これも中止しなければならない。ほとんどの患者は基礎 インスリンに速効型 インスリンを場合により併用し,臨床状況に応じて治療できる。ジペプチジルペプチダーゼ4阻害薬は,腎疾患のある患者においてさえ比較的安全であり,食後血糖値の降下にも使用できる。スライディングスケールによる インスリン療法を高血糖是正のための唯一の介入とすべきではない;これは事前対応ではなく事後対応であり,この方法が他のアプローチと同等以上の転帰をもたらすことを示唆したデータはない。速効型の インスリンのみを用いて高血糖を是正するのではなく,より作用時間の長い インスリンの用量を調節して高血糖を予防すべきである。

入院中の高血糖が多数の急性疾患で短期予後を悪化させ,これは脳卒中急性心筋梗塞で最も顕著であり,しばしば入院を長期化させる。重篤な疾患は,糖尿病の既往がない患者においてさえも インスリン抵抗性や高血糖を引き起こす。 インスリン注入により血漿血糖値を140~180mg/dL(7.8~10.0mmol/L)に維持することで,臓器不全などの有害な転帰が予防され,脳卒中からの回復が促される可能性があり,長期(6日以上)に及ぶ集中治療を要する患者の生存率が改善する。以前の血糖値の目標値はより低かったが,特に心疾患のない患者では,有害な転帰を予防するのに上記のようなより緩い目標値で十分であると考えられる。重症患者,特にグルココルチコイドまたは昇圧薬を投与されている患者は, インスリン抵抗性があるため非常に高用量の インスリン> 5~10単位/時)を要することがある。 インスリン注入は,TPNが行われている患者や経口摂取のできない1型糖尿病患者でも考慮すべきである。

手術

外科手術による生理的ストレスは糖尿病患者の血漿血糖値を上昇させ,1型糖尿病患者でDKAを誘発する恐れがある。比較的短時間で終わる処置には,インスリン皮下注射を用いることができる。1型患者では,朝に通常投与する中間型 インスリンの2分の1~3分の2の量または持効型 インスリン(グラルギンまたはデテミル)の70~80%を,5%ブドウ糖液100~150mL/時の点滴静注と併せて手術当日の朝に投与する。術中および術後は,血漿血糖値(高血糖があれば必要に応じてケトン体も)を少なくとも2時間毎に測定するべきである。ブドウ糖を持続注入し,必要に応じてレギュラーインスリンまたは速効型 インスリンを4~6時間毎に皮下投与して血漿血糖値を100~200mg/dL(5.5~11.1mmol/L)に維持し,患者が経口食に移行して通常の インスリン投与レジメンを再開できるようになるまで続ける。通常のレジメンを再開するまでに大きな遅れ(> 24時間)がある場合,中間作用型インスリンまたは持効型 インスリンを追加投与すべきである。 インスリン治療中の2型患者にもこのアプローチをとることがあるが,その場合ケトン体の頻回測定は省略できる。

一部の医師は,手術当日は インスリンの皮下注射または吸入を控えて インスリン静注を選ぶ。長時間の手術または大きな手術に臨む患者には, インスリンの持続点滴が望ましく,手術のストレスに伴って インスリン需要が増すことからもこの選択が推奨される。血糖値を維持するため, インスリンの持続静注とブドウ糖溶液の静注を同時に行うことがある。1つのアプローチは,ブドウ糖, インスリン,カリウムを1つのバッグに入れることで(GIKレジメン),例えば,500mLのバッグに,10%ブドウ糖とカリウム10mEq(10mmol), インスリン15単位を組み合わせて入れることができる。 インスリンは5単位ずつ用量調節する。このアプローチは,患者の血糖値に合わせて頻繁な混合とバッグの変更を要するため,多くの施設で利用されているわけではない。米国でより一般的に行われるアプローチは, インスリンとブドウ糖を別々に点滴することである。 インスリン を1~2U/時で点滴しながら,5%ブドウ糖を75~150mL/時で点滴することができる。 インスリン投与速度は, インスリン感受性がより高い1型糖尿病患者では減量し, インスリン抵抗性がより高い2型糖尿病患者では増量しなければならないことがある。10%ブドウ糖を使用することもできる。DKAの発生を予防するため, インスリンの点滴を止めないことが重要であり,1型糖尿病患者ではこの点に特に注意すべきである。静注管に インスリンが吸収されることで作用にむらがでる恐れがあるが,これは静注管に インスリン液をあらかじめ流しておくことによって最小限に抑えられる。 インスリン点滴は回復期を通じて継続し,回復室で測定された血漿血糖値に基づいて インスリン投与量を調節し,その後は1~2時間間隔で調整する。

経口血糖降下薬で治療中の2型糖尿病患者のほとんどは,絶食中許容できるレベルの血糖値を維持し,周術期には インスリンを必要としない可能性がある。手術当日は,スルホニル尿素薬およびメトホルミンを含むほとんどの経口薬を中止し,術前および術後と輸液中6時間毎に血漿血糖値を測定すべきである。食事ができるようになれば経口薬を再開するが,術後48時間以降に腎機能が正常であることが確認されるまでメトホルミンは控える。

予防

1型糖尿病

1型糖尿病の発症または進行を確実に予防できる治療法はない。アザチオプリン,コルチコステロイド,およびシクロスポリンにより一部の患者で早期1型糖尿病が寛解するが,これはおそらくβ細胞の自己免疫性破壊が抑制されることによると考えられる。しかし,毒性が高く生涯にわたる治療が必要になるため,これらの薬剤の使用には限界がある。少数の患者では,抗CD3モノクローナル抗体を用いた短期治療により,T細胞の自己免疫反応が抑制されるため,発症後間もない糖尿病で少なくとも最初の1年間は インスリン必要量を抑えられる。

2型糖尿病

2型糖尿病は通常生活習慣の改善によって予防できる。ベースラインの体重からわずか7%の減量と,中等度の強度の運動(例,1日30分のウォーキング)を組み合わせるだけで,高リスク者における糖尿病発生率を > 50%下げられる。メトホルミンおよびアカルボースも耐糖能障害を有する患者の糖尿病のリスクを軽減することが示されている。チアゾリジン系薬剤にも予防効果があると考えられる。しかしながら,チアゾリジン系薬剤の予防的使用をルーチンに行うには,さらなる研究が必要である。

合併症

糖尿病合併症リスクは,厳格な血糖コントロール(HbA1C7%未満と定義),ならびに高血圧および脂質濃度のコントロールによって低減できる。ほとんどの糖尿病患者で,血圧は140/90mmHg未満に維持するべきである。心疾患のある,または心疾患リスクが高い糖尿病患者では,血圧を130/80mmHg未満に維持するべきである。一度検出された合併症の進行を予防する具体的方法については,合併症および治療に記載されている。

要点

  • 1型糖尿病は,膵臓β細胞の自己免疫性炎症に起因する インスリン欠如によって引き起こされる。

  • 2型糖尿病は,β細胞の分泌異常に加えて,肝臓での インスリン抵抗性(肝臓でのブドウ糖産生を抑制できなくなる)および末梢での インスリン抵抗性(末梢でのブドウ糖取り込みが阻害される)によって引き起こされる。

  • 微小血管合併症には腎症,神経障害,および網膜症などがある。

  • 大血管合併症には,アテローム性動脈硬化が関与しており,その結果冠動脈疾患,TIA/脳卒中,および末梢動脈の機能不全を来す。

  • 診断は,空腹時血漿血糖値の上昇および/またはHbA1Cの上昇,かつ/またはOGTT2時間値による。

  • 合併症のスクリーニングを定期的に施行する。

  • 食事,運動,および インスリン,かつ/または経口血糖降下薬により治療する。

  • 合併症予防のため,しばしばACE阻害薬,スタチン系薬剤,およびアスピリンを投与する。

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