ビタミンには以下のものがある:
脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,およびK)
水溶性ビタミン(ビタミンB群およびビタミンC)
ビタミンB群には,ビオチン,葉酸,ナイアシン,パントテン酸,リボフラビン(B2),チアミン(B1),B6(例,ピリドキシン),B12(コバラミン)などがある。
ビタミン類の食事からの必要摂取量,供給源,機能,欠乏症および中毒の影響,血中濃度,ならびに通常の治療用量については,ビタミンの1日当たりの推奨摂取量およびビタミンの供給源,機能,および作用の表を参照のこと。
ビタミン(および他の栄養素)の食事からの必要摂取量は1日当たりの推奨摂取量(daily recommended intake:DRI)として表される。3種類のDRIがある:
1日当たりの推奨量(recommended daily allowance:RDA):RDAは97~98%の健常者の必要量を満たすように設定されている。
目安量(adequate intake:AI):RDAを算出するためのデータが不十分な場合には,健常者の栄養素摂取量を観察的に推定または実験的に算出した値に基づいたAIを設定している。
耐容上限量(tolerable upper intake level:UL):ULは,大部分の成人が健康に対する有害作用のリスクなしに毎日摂取できる栄養素の最大量である。
先進国では,ビタミン欠乏症は主に以下に起因して発生している:
貧困
フードファディズム
薬物(栄養素-薬物相互作用および潜在的なビタミン-薬物相互作用の表を参照)
長期間かつ不十分な非経口的栄養補給
フレイルで施設に入所しているタンパク質-エネルギー低栄養の高齢者では,軽度のビタミン欠乏症がよくみられる。
発展途上国では,ビタミン欠乏症は栄養素を摂取できないことに起因して発生する。
低栄養が数週間から数カ月続くと,水溶性ビタミンの欠乏症(ビタミンB12を除く)が発生することがある。脂溶性ビタミンおよびビタミンB12の欠乏症は,それらが体内に比較的多量に蓄えられているため,発生までに1年以上かかる。古典的なビタミン欠乏症(壊血病や脚気など)の予防に十分なビタミン摂取量では,最大限の健康状態となるには十分でない場合がある。この分野には依然として議論があり,精力的に研究が進められている。
ビタミン依存症は,ビタミン代謝に関与する遺伝子の異常に起因する。一部の症例では,DRIの1000倍という高用量のビタミン摂取によって異常な代謝経路の機能が改善する。
ビタミン中毒(ビタミン過剰症)は通常,ビタミンA,D,C,B6,またはナイアシンの大量摂取により起こる。
多くの人は不規則に食事をするため,食物からの摂取だけでは一部のビタミンが最適な量を下回る可能性がある。このような場合,特定のがんまたは他の疾患のリスクが高くなることがある。しかし,総合ビタミン剤を毎日規則正しく摂ることでがんが減少するということは証明されていない。ビタミンの補給により,心血管疾患(1, 2)や転倒(3, 4, 5, 6)が予防されることはないようである。
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