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小脳疾患

執筆者:

Hector A. Gonzalez-Usigli

, MD, HE UMAE Centro Médico Nacional de Occidente

最終査読/改訂年月 2018年 12月
本ページのリソース

小脳疾患には,先天奇形,遺伝性運動失調症,後天性の病態など様々な原因がある。症状は原因により異なるが,典型的には運動失調(筋肉の協調障害)などである。診断は臨床的に行い,しばしば画像検査や,ときに遺伝子検査が用いられる。原因が後天性で可逆的なものでない限り,治療は通常,支持療法である。

小脳は3つの部分で構成される:

  • 古小脳(前庭小脳):片葉小節葉を含み,内側に位置する。古小脳は身体のバランス維持と眼,頭部,および頸部の協調に関与しており,前庭核との間に密接な相互連絡がある。

  • 正中部の虫部(旧小脳):体幹と下肢部の協調に関与している。虫部病変は立位および歩行の異常を来す。

  • 外側半球(新小脳):迅速で精妙な四肢の協調運動(特に上肢)を制御する。

協調運動に加え,小脳は記憶,学習,および認知の側面を制御しているという見解にコンセンサスが得られつつある。

運動失調は小脳機能障害を示す典型的な徴候であるが,他にも多くの運動異常が生じる可能性がある(小脳疾患の徴候の表を参照)。

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小脳疾患の徴候

障害

臨床像

運動失調

よろよろした開脚歩行

運動分解

細かな協調運動を順序立てて正しく行えない

構音障害

不明瞭に話し,言い回しも不適切で,言葉を正しく発音できない

拮抗運動反復障害

急速な交互運動ができない

測定障害

運動範囲を制御できない

筋緊張低下

筋緊張の低下

眼振

水平,垂直,または回転方向への不随意かつ素早い眼球の振動で,小脳病変側に向かう急速相が最大となる

断綴性言語

発音が緩徐になり,単語や音節の出だしに躊躇の傾向がみられる

目標に近づくにしたがって起こる律動的かつ交代性で振動性の四肢の運動(企図振戦),または,固定した姿勢もしくは体重をかけようとしたときに起こる律動的かつ交代性で振動性の近位筋の運動(姿勢時振戦)

病因

先天奇形

このような奇形はほぼ常に散発性で,しばしば,中枢神経系の他の部分も侵す複合奇形症候群(例,ダンディー-ウォーカー奇形)の一部として生じる。

奇形は生後早期に顕在化し,非進行性である。臨床像は罹患部位によって大きく異なるが,通常は運動失調がみられる。

遺伝性運動失調症

遺伝性運動失調症には,常染色体劣性のものと,常染色体優性のものがある。常染色体劣性の運動失調としては,フリードライヒ運動失調症(最も有病率が高い),毛細血管拡張性運動失調症,無βリポタンパク質血症,ビタミンE単独欠損症に伴う運動失調,脳腱黄色腫症などがある。

フリードライヒ運動失調症は,ミトコンドリアタンパク質のフラタキシンをコードする遺伝子のDNA配列にGAAリピートの異常を引き起こす遺伝子変異によって発生する。遺伝形式は常染色体劣性である。フラタキシン濃度が低下すると,ミトコンドリア内の鉄過剰につながり,ミトコンドリアの機能が損なわれる。

フリードライヒ運動失調症では,5~15歳で不安定歩行が始まり,その後,上肢の運動失調,構音障害,および不全麻痺(特に下肢)が生じる。しばしば精神機能の低下がみられる。振戦はあってもわずかである。反射と振動覚および位置覚が失われる。内反尖足(内反足),脊柱側弯症,進行性心筋症が一般的にみられる。20代後半までに,車椅子生活を余儀なくされる場合がある。通常は中年までに死に至り,死因は不整脈または心不全が多い。

脊髄小脳失調症(SCA)は,常染色体優性遺伝による主要な運動失調である。これらの運動失調の分類は,遺伝子に関する知見が増えたことを受けて,最近になって何度も改定されている。現在では,少なくとも43個の遺伝子座が確認されており,そのうち約10個は,DNA配列リピートの増大に関与している。一部の遺伝子座は,ハンチントン病と同様に,アミノ酸であるグルタミンをコードする部分のCAG配列のリピート数に関与している。

SCAの臨床像は様々である。最も頻度の高いSCAの中には,中枢神経系および末梢神経系の複数の領域に影響を及ぼすものがあり,具体的には末梢神経障害,錐体路徴候,およびレストレスレッグス症候群のほか,運動失調の頻度が高い。一部のSCAは,通常は小脳性運動失調のみを引き起こす。

SCA 3型は,以前はMachado-Joseph病として知られていたもので,世界で最も頻度の高い優性遺伝性のSCAと考えられる。症状としては,運動失調やパーキンソニズムなどのほか,ジストニア,顔面のぴくつき,眼筋麻痺,独特の眼球突出が生じる可能性もある。

後天性の病態

後天性の運動失調は,非遺伝性の神経変性疾患(例,多系統萎縮症),全身性疾患,多発性硬化症,小脳卒中,繰り返された外傷性脳損傷,または毒性物質への曝露により生じる場合もあれば,特発性の場合もある。全身性疾患としては,アルコール依存症(アルコール性小脳変性),セリアック病熱中症甲状腺機能低下症ビタミンE欠乏症などがある。毒素としては,一酸化炭素,重金属,リチウム,フェニトイン,特定の溶剤などがある。特定の薬物(例,抗てんかん薬)が毒性濃度に達すると,小脳機能障害や運動失調が生じる可能性がある。

まれに乳癌,卵巣がん,小細胞肺癌,その他の固形腫瘍の患者において,腫瘍随伴症候群として亜急性小脳変性症が発生することがある。小脳変性はがん発見の数週間前から数年前に現れることがある。一部の患者,特に乳癌または卵巣がんの女性では,循環自己抗体である抗Yo抗体が血清中または髄液中にみられる。

小児では,原発性脳腫瘍(髄芽腫,嚢胞性星細胞腫)が原因となる場合があり,小脳正中部はこうした腫瘍の好発部位である。まれに小児では,ウイルス感染に続いて可逆性のびまん性小脳機能障害が生じることがある。

診断

  • 臨床的評価

  • 典型的にはMRI

  • ときに遺伝子検査

小脳疾患の診断は臨床的に行い,詳細な家族歴を含めて,後天性の全身性疾患を検索する。

神経画像検査(典型的にはMRI)を施行する。家族歴が示唆される場合は,遺伝子検査を行う。

治療

  • 可能であれば原因の治療

  • 通常,支持療法のみ

一部の全身性疾患(例,甲状腺機能低下症,セリアック病)および毒性物質への曝露は治療可能であり,ときに構造的病変(腫瘍,水頭症)に対する手術が有益なこともある。しかしながら,治療は通常,支持療法のみである。

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