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神経眼科疾患および脳神経疾患の概要

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2019年 6月
本ページのリソース

特定の脳神経の機能障害は,眼,瞳孔,視神経,または外眼筋とその神経に影響を及ぼす可能性がある;そのため,そういった障害は,脳神経疾患,神経眼科疾患,またはその両者とみなされる場合がある。神経眼科疾患は,眼球運動および視覚を制御・統合する中枢経路の機能障害が関与していることもある。脳神経疾患では,嗅覚,視覚,咀嚼,顔面の感覚または表情,味覚,聴覚,平衡覚,嚥下,発声,頭部回転と肩挙上,舌の運動などの機能障害がみられることもある(脳神経の表を参照)。侵される脳神経は1つの場合もあれば,複数の場合もある。

脳神経

脳神経
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脳神経

神経

機能

可能性がある異常所見

考えられる原因*

嗅神経(第1脳神経)

嗅覚入力情報の伝達

嗅覚脱失

頭部外傷

鼻疾患(例,アレルギー性鼻炎

神経変性疾患(例,アルツハイマー病パーキンソン病

頭蓋窩,鼻腔,および副鼻腔の腫瘍

視神経(第2脳神経)

視覚入力情報の伝達

一過性黒内障(一過性単眼失明),一側の視野上部または下部欠損

眼動脈塞栓症

同側の内頸動脈病変

網膜動脈塞栓症

前部虚血性視神経症

小さく腫脹した視神経乳頭(disk at risk[危険を伴う視神経乳頭]と呼ばれる)

白内障手術後の合併症

動脈炎を生じる結合組織疾患(例,巨細胞性[側頭]動脈炎抗リン脂質抗体症候群

重度の低血圧または循環血液量減少

同側の内頸動脈閉塞

ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬(例,シルデナフィル,タダラフィル,バルデナフィル)

視神経炎(乳頭炎および球後視神経炎)

急性脱髄疾患(例,多発性硬化症視神経脊髄炎

細菌感染症(例,結核梅毒ライム病

感染後または散在性脳脊髄炎

ぶどう膜炎

中毒性・栄養障害性視神経症(中毒性弱視)

薬剤(クロラムフェニコール,エタンブトール,イソニアジド,ストレプトマイシン,スルホンアミド系,ジギタリス,クロルプロパミド,麦角製剤,ジスルフィラム)

メタノール摂取

栄養欠乏(重度の場合)

有機水銀

ビタミンB12欠乏症

両耳側半盲

頭蓋咽頭腫

鞍結節髄膜腫

海綿静脈洞の嚢状動脈瘤

下垂体腺腫の鞍上部への進展

動眼神経(第3脳神経)

眼瞼挙上

眼球の上下運動および内転

眼球内に入る光量の調整

水晶体の焦点を合わせる

麻痺

後交通動脈の動脈瘤

第3脳神経の虚血(糖尿病で生じるような小血管病による),または中脳における第3脳神経線維束の虚血

頭蓋内腫瘤(例,硬膜下血腫,腫瘍,膿瘍)によるテント切痕ヘルニア

滑車神経(第4脳神経)

上斜筋を介して眼球を内下方へ動かす

麻痺

しばしば特発性

小血管病による梗塞(例,糖尿病)

テント髄膜腫

松果体腫

Para

上斜筋のミオキミア(典型的には主観的な視野のちらつき,眼球の振動,および/または視野の傾きを生じる短時間の眼球運動発作)

血管ループによる滑車神経の絞扼(三叉神経痛の病態生理に類似する)

三叉神経(第5脳神経)

  • 眼枝

眼表面,涙腺,頭皮,前額部,および上眼瞼からの感覚入力情報の伝達

神経痛

血管ループによる神経根の圧迫

多発性硬化症(ときに)

海綿静脈洞または上眼窩裂の病変

  • 上顎枝および下顎枝

歯,歯肉,唇,口蓋,および顔面皮膚からの感覚入力情報の伝達

神経痛

海綿静脈洞または上眼窩裂の病変

多発性硬化症(ときに)

血管ループによる神経根の圧迫

咀嚼筋を動かす(咀嚼,歯のグラインディング)

神経障害

がん性またはリンパ腫性髄膜炎

結合組織疾患

頭蓋底の髄膜腫,神経鞘腫,または転移性腫瘍

外転神経(第6脳神経)

外直筋を介して眼球を外方へ動かす(外転)

しばしば特発性

頭蓋内圧亢進

梗塞(多発性単神経炎の可能性がある)

髄膜を侵す感染症または腫瘍

上咽頭癌

橋または小脳腫瘍

橋梗塞

顔面神経(第7脳神経)

顔面表情筋を動かす

近位枝:涙腺および唾液腺を神経支配,舌の前方3分の2の味覚入力情報の伝達

麻痺

前庭神経鞘腫

頭蓋底骨折

橋の梗塞および腫瘍

メルカーソン-ローゼンタール症候群

ラムゼイ-ハント症候群(耳帯状疱疹

側頭骨に浸潤した腫瘍

ぶどう膜耳下腺熱(Heerfordt症候群)

動脈ループが神経根を圧迫

内耳神経(第8脳神経)

平衡覚および聴覚入力情報の伝達

耳鳴,回転性めまい,耳の閉塞感,および難聴

加齢および/または外傷に関連する,後または外側半規管における耳石の集塊化

感染症(ときに)

ウイルス感染症

難聴または聴力障害

加齢

気圧外傷

小脳橋角部腫瘍

大きな音への曝露

遺伝性疾患

髄膜炎

ウイルス感染症(可能性あり)

聴器毒性のある薬剤(例,アミノグリコシド系)

舌咽神経(第9脳神経)

咽頭,扁桃,舌後部,および頸動脈からの感覚入力情報の伝達

動脈拡張または腫瘍(比較的まれ)による神経圧迫

嚥下筋を動かし,耳下腺からの分泌をコントロールする

血圧調節の補助

舌咽神経障害

後頭蓋窩または頸静脈孔の腫瘍または動脈瘤(頸静脈孔症候群)

迷走神経(第10脳神経)

声帯および嚥下筋を動かす

心臓(心拍数を下げる)と内臓平滑筋(蠕動を調節する)にインパルスを伝達する

嗄声,発声障害,および嚥下困難

血管迷走神経性失神

縦隔腫瘍による反回神経の絞扼

感染性またはがん性髄膜炎

延髄の腫瘍または虚血(例,延髄外側症候群)

後頭蓋窩または頸静脈孔の腫瘍または動脈瘤(頸静脈孔症候群)

副神経(第11脳神経)

頭部を回転させる

肩を挙上させる

胸鎖乳突筋および僧帽筋上部の部分的または完全麻痺

医原性(例,後頸三角でのリンパ節生検などによる)

特発性

外傷

後頭蓋窩または頸静脈孔の腫瘍または動脈瘤(頸静脈孔症候群)

舌下神経(第12脳神経)

舌を動かす

舌の萎縮および線維束性収縮

延髄内病変(例,運動ニューロン疾患,腫瘍)

脳底部髄膜または後頭骨の病変(例,扁平頭蓋底,頭蓋底のパジェット病

手術外傷(例,動脈内膜剥離術による)

運動ニューロン疾患(例,筋萎縮性側索硬化症)

*びまん性運動麻痺を引き起こす疾患(例,重症筋無力症,ボツリヌス症,ギラン-バレー症候群の亜型,延髄障害を伴うポリオ)では,しばしば脳神経が侵される。

神経眼科疾患と脳神経疾患は原因および症状が重複する。どちらの疾患群も腫瘍,炎症,外傷,全身性疾患,変性,その他によって発生し,症状として視力障害,複視,眼瞼下垂,瞳孔異常,眼周囲の疼痛,顔面痛,頭痛などを引き起こす。

診断

  • 臨床的評価

  • 脳画像検査

脳神経の評価も参照のこと。)

神経眼科疾患および脳神経疾患の評価には以下が含まれる:

視覚系の診察には,眼底検査と視力検査,視野検査瞳孔検査,眼球運動の検査(眼球運動検査)などがある。この検査の一環として,第2,第3,第4,および第6脳神経の診察も行う。CTまたはMRIによる神経画像検査も通常必要となる。

視覚系の診察の中でも,以下のものは神経眼科疾患および脳神経疾患の診断に特に重要である。

瞳孔を視診して,大きさ,左右対称性,および不整の有無を調べる。正常であれば,遠近調節中,ならびに直射光照射および他眼への光照射中(間接対光反射)に,瞳孔が迅速(1秒以内)かつ左右対称性に縮瞳する。ペンライトを動かして間接対光反射を検査することで,障害の有無を判断できる。正常では,ペンライトを一方の眼から他方の眼へ動かした際に,縮瞳の程度が変化しない。

  • 相対的瞳孔求心路障害(求心路遮断瞳孔,求心性瞳孔障害,またはMarcus Gunn瞳孔)があれば,ペンライトが障害側に動いたときに逆に散瞳する。求心路障害のある瞳孔は,間接光に反応して収縮するが,直接光には反応しない。

  • 遠心路障害があれば,直接光に対しても間接光に対しても瞳孔反応が遅延するか,全く反応しない。

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一般的な瞳孔異常

所見

説明

1~2mmの瞳孔不同,対光反射は保たれ,症状はない

正常変異(生理学的瞳孔不同)

左右非対称,対光反射障害は生じるが調節反応は保たれる(対光近見反応解離またはアーガイル・ロバートソン瞳孔)

神経梅毒(可能性あり)

両側性の縮瞳

オピオイド

緑内障治療のための縮瞳薬(最多;片眼にのみ点眼すると一側性縮瞳を引き起こす)

橋出血(散瞳を司る中枢性交感神経経路を損傷する)

有機リンまたはコリン作用を有する毒性物質

両側性の散瞳(対光反射が保たれる場合)

高アドレナリン状態(例,離脱症候群,交感神経刺激薬またはコカインなどの薬物,甲状腺中毒症)

両側性の散瞳(対光反射障害を伴う場合)

交感神経刺激薬(例,フェニレフリン)および調節麻痺薬(例,シクロペントラート,トロピカミド,ホマトロピン,アトロピン)などの散瞳点眼薬

脳ヘルニア

低酸素性または虚血性脳症

片側性の散瞳(瞳孔求心路障害を伴う場合)

眼球,網膜,または第2脳神経(視神経)の病変

片側性の散瞳(瞳孔遠心路障害を伴う場合)

第3脳神経(動眼神経)麻痺,多くは圧迫(例,後交通動脈の動脈瘤またはテント切痕ヘルニアに起因)による

虹彩外傷(また瞳孔不整)

散瞳点眼薬*

片側性の散瞳,直接および間接対光反射の減少または遅延,ならびに調節反応に伴う縮瞳の減少または遅延を来す

緊張性(アディ)瞳孔

*テント切痕ヘルニアと散瞳点眼薬の使用との鑑別は,しばしばピロカルピン点眼溶液を散大した瞳孔に一滴滴下することで見分けられる;縮瞳反応がみられなければ,散瞳点眼薬を示唆する。

緊張性瞳孔は毛様体神経節の損傷による永続的で非進行性の瞳孔の異常散大である。典型的には20~40歳の女性に発生する。発症は通常突然である。みられる所見は軽微な霧視と暗順応障害のみで,ときに腱反射消失を伴うことがある。

眼球運動は,患者に頭部を動かさないよう指示し,検者が指を右,左,上,下,対角線の両方向,さらに患者の鼻に近づく向き(調節を調べるため)に動かすのを眼で追わせて確認する。しかしながら,このような診察では,複視を引き起こしうる軽度の眼球運動麻痺を見逃すことがある。

複視は,両側眼球運動の協調障害(例,神経経路内),あるいは第3脳神経(動眼神経),第4脳神経(滑車神経),第6脳神経(外転神経)の障害を示唆している可能性がある。片眼を閉じても複視が持続する場合は(単眼複視),原因はおそらく,神経系の異常によらない眼疾患([XRef])である。もし片眼を閉じると複視が消えるならば(両眼複視),原因は眼球運動障害であると考えられる。麻痺した眼筋によって支配される方向を見たとき(例,左眼の外直筋麻痺時には左方を見たとき),2つの像が最も離れて見える。閉眼時に辺縁側の像が消えるのが麻痺眼である。片眼の前に赤ガラスを置く方法が麻痺眼の同定に役立つことがある。麻痺眼の前に赤ガラスを置くと,辺縁側の像が赤く見える([XRef])。

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一般的な眼球運動障害

臨床所見

症候群

一般的な原因

麻痺

一方向への水平注視麻痺

同側橋の水平注視中枢または対側前頭皮質における病変

両方向への水平注視麻痺

完全(両側性)水平注視麻痺

ウェルニッケ脳症

両側の水平注視中枢を侵す大きな両側性橋病変

病変と対側の眼の外転を除く,全ての水平眼球運動の両側性麻痺;輻輳は保たれる

内側縦束および同側の橋水平注視中枢における病変

水平注視時の一側または両側性眼球内転麻痺,ただし輻輳時は正常

内側縦束における病変

両側性の上方注視麻痺,散瞳,瞳孔調節および輻輳による縮瞳は保たれているにもかかわらず対光反射が消失,下方注視傾向,および下向性眼振

パリノー症候群(垂直共同注視麻痺の一種)

松果体腫瘍

中脳背側梗塞

両側性下方注視麻痺

進行性核上性麻痺

一側性眼球偏位(眼球位は外下方);一側性眼球内転,上方視,および下方視の麻痺;眼瞼下垂;ならびにしばしば散瞳

動脈瘤

動眼神経または中脳虚血

外傷

テント切痕ヘルニア

一側性の内下方(鼻側)への眼球運動麻痺,麻痺は軽微となることがあり,症状を伴う(内下方視困難)

Head tilt sign(患眼の対側に頭を傾ける)

特発性

頭部外傷

虚血

先天性

一側性の眼球外転麻痺

特発性

梗塞

血管炎

頭蓋内圧亢進

ウェルニッケ脳症

多発性硬化症

斜偏視(眼球が左右同じ高さにない)

第3脳神経核,垂直注視中枢,または内側縦束の部分的および左右非対称性障害

中脳から延髄のどこかにある脳幹病変

全ての外眼筋の筋力低下または運動制限

外眼筋麻痺

眼筋または神経筋接合部の機能障害

通常以下の原因による:

  • 重症筋無力症

  • バセドウ病

  • ボツリヌス症

  • ミトコンドリアミオパチー(例,Kearn-Sayre症候群)

  • 眼咽頭型筋ジストロフィー

  • 筋強直性ジストロフィー

  • 眼窩腫瘤(例,腫瘍,偽腫瘍)

不随意運動または異常運動

律動性不随意運動,通常は両側性

多くの原因がある:

  • 前庭疾患(例,メニエール病,前庭神経炎)

  • 多発性硬化症

  • 頭部外傷

  • 薬剤(例,抗てんかん薬,抗不安薬,鎮静薬)

急速な下向き運動および中位まで緩徐に上行

眼球上下運動(ocular bobbing)

広範囲にわたる橋の破壊または機能障害

注視のオーバーシュートがあり,これに続いて数回の振動

眼球測定障害

小脳路障害

固視点周囲の急速な水平性振動の突発

眼球粗動

多くの原因がある:

  • 低酸素後脳症

  • 不顕性神経芽腫

  • 腫瘍随伴効果

  • 毛細血管拡張性運動失調症

  • ウイルス性脳炎

  • 薬物毒性

急速,共同性,多方向性,無秩序な運動,しばしば広範なミオクローヌスを伴う

眼球クローヌス

多くの原因がある(眼球粗動と同様,上記)

治療

神経眼科疾患および脳神経障害の治療法は原因によって異なる。

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