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神経障害性疼痛

執筆者:

John Markman

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry;


Sri Kamesh Narasimhan

, PhD, University of Rochester

最終査読/改訂年月 2014年 4月

神経障害性疼痛は,痛覚受容器への刺激ではなく,末梢または中枢神経系の損傷または機能障害によって発生する。診断は,組織損傷と釣り合わない疼痛,異常感覚(例,灼熱感,チクチク感),および神経学的診察で検出される神経損傷の徴候から示唆される。神経障害性疼痛はオピオイドに反応するが,鎮痛補助薬(例,抗うつ薬,抗てんかん薬,バクロフェン,外用薬)を併用することが多い。

末梢か中枢を問わず,神経系のいずれのレベルの損傷でも疼痛が発生する可能性があり,交感神経系が巻き込まれることもある(この場合は交感神経依存性疼痛が生じる)。具体的な症候群としては,帯状疱疹後神経痛( 帯状疱疹 : 帯状疱疹後神経痛),神経根引き抜き損傷,有痛性外傷性単神経障害,有痛性の多発神経障害(特に糖尿病によるもの— 糖尿病の合併症 : 糖尿病性神経障害),中枢性疼痛症候群(神経系のあらゆるレベルのほぼあらゆる病変によって引き起こされる可能性がある),手術後疼痛症候群(例,乳房切除後症候群,開胸術後症候群,幻肢痛),複合性局所疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィーおよびカウザルギー― 複合性局所疼痛症候群(CRPS))などがある。

病因

末梢神経の損傷または機能障害は,神経障害性疼痛の発生につながる可能性がある。具体的には,単神経障害(例,手根管症候群,神経根障害),神経叢障害(典型的には神経腫,腫瘍,または椎間板ヘルニアなどによる神経圧迫により),多発神経障害(典型的には様々な代謝性神経障害による― 末梢神経系疾患の原因)などがある。機序は多様と考えられているが,再生中の神経膜上でのナトリウムチャネルの増加が関与している可能性がある。

中枢性神経障害性疼痛症候群には,中枢の体性感覚処理過程の再構築が関与するようであり,大きく分けて求心路遮断痛と交感神経依存性疼痛がある。これらはともに複雑で,おそらく互いに関連しているが,大きな相違がある。

求心路遮断痛は,末梢または中枢の求心性神経活動の部分的または完全な遮断により生じる。例えば,帯状疱疹後神経痛,中枢性疼痛(中枢神経系損傷後の疼痛),幻肢痛(切断された身体部位があった領域に感じられる疼痛― 合併症)などである。機序は不明であるが,活性化の閾値低下と受容野の拡大を伴う中枢ニューロンの感作が関与すると考えられる。

交感神経依存性疼痛は遠心性交感神経活動に依存する。複合性局所疼痛症候群は,ときに交感神経依存性疼痛を伴う。その他の種類の神経障害性疼痛にも,交感神経依存性の要素が存在することがある。おそらくその機序には,交感神経と体性神経の異常な連結(エファプス),局所の炎症性変化,および脊髄の変化が関与している。

症状と徴候

異常感覚(自発性または誘発性の灼熱痛で,しばしば電撃痛が重複する)は典型的な症状であるが,深部痛や疼くような痛みもみられる。その他の感覚異常,例えば知覚過敏,痛覚過敏,アロディニア(非侵害刺激で疼痛が生じる病態),ヒペルパチー(特に不快で過度に増強された疼痛反応)なども起こりうる。中枢神経系に感作およびリモデリングが生じているため,症状は長期間持続し,典型的には一次的な原因(あれば)が解消されてからも持続する。

診断

  • 臨床的評価

神経障害性疼痛は,神経損傷が既知または疑われる場合,典型的な症状から示唆される。原因(例,切断,糖尿病)は容易に判明することもある。そうでない場合は,しばしば患者の説明から本病態が推測される。交感神経ブロックで改善される疼痛は,交感神経依存性疼痛である。

治療

  • 集学的治療(例,心理学的治療,理学療法,抗うつ薬または抗てんかん薬,ときに手術)

診断,リハビリテーション,および心理社会的問題への配慮を欠いた治療では,成功の可能性は限られる。末梢神経病変には,萎縮性変化,廃用性萎縮,および関節強直の予防のために運動が必要である。圧迫の軽減に手術が必要になる場合もある。心理的因子は治療開始時から常に考慮する必要がある。不安や抑うつは適切に治療しなければならない。機能障害が成立している場合は,ペインクリニックによる包括的なアプローチが有益となりうる。

数種類の薬剤に中等度の有効性が認められているが( 神経障害性疼痛に対する薬剤EFNS (European Federation of Neurological Societies) guidelines on the pharmacological treatment of neuropathic pain: 2010 revisionも参照),完全な鎮痛やほぼ完全な軽減が得られる可能性は低い。抗うつ薬と抗てんかん薬は最も頻用されている。いくつかの抗うつ薬および抗てんかん薬については,効力を示した強いエビデンスがある。

オピオイド鎮痛薬は,一般にいくらかの緩和をもたらすが,急性侵害受容性疼痛に対するほどの効果は望めず,有害作用により十分な鎮痛が得られないこともある。外用薬とリドカインパッチは,末梢性の症候群に効果的となることがある。

その他に効果的となりうる治療法としては以下のものがある:

  • 特定の種類の神経障害性疼痛(例,脊椎手術後の慢性下肢痛)に対する硬膜外留置電極による脊髄刺激療法

  • 特定の慢性神経痛に対して末梢神経および神経節に沿った領域に電極を埋め込む治療法

  • 交感神経ブロックは,一部の複合性局所疼痛症候群患者を除いて,通常は効果的でない

要点

  • 神経障害性疼痛は,遠心性活動によって生じる場合と,求心性活動の途絶によって生じる場合がある。

  • 異常感覚がみられる場合,または組織損傷と釣り合わない疼痛がみられ,かつ神経損傷が疑われる場合は,神経障害性疼痛を考慮する。

  • 治療は複数の方法(例,心理学的治療,理学療法,抗うつ薬または抗てんかん薬,鎮痛薬,手術)を用いて行い,状況に応じたリハビリテーションが推奨される。

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