疼痛および炎症の治療のためのリハビリテーション

執筆者:Zacharia Isaac, MD, Brigham and Women's Hospital
Reviewed ByBrian F. Mandell, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2023年 11月
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疼痛および炎症の治療の目的は,運動を促進し,筋肉や関節の協調運動能力を向上させることである。薬剤を使用しない治療法としては,運動療法,温熱,冷却,電気刺激,頸椎牽引,マッサージ鍼治療などがある。これらの治療法は,筋肉,腱,および靱帯の多くの疾患に用いられている(の表を参照)。どの治療法を用いるかは,患者の希望と医師の選好および臨床判断に基づく。こうした治療法は,典型的には単独の介入ではなく補助的な介入である。しばしば運動療法の前後に用いられ,リハビリテーション戦略の構成要素である。処方者は以下の項目を記載しなければならない:

  • 診断

  • 治療法(例,超音波,ホットパック)

  • 施術部位(例,右肩,腰部)

  • 頻度(例,1日1回,隔日)

  • 期間(例,10日,1週間)

表&コラム
表&コラム

リハビリテーションの概要および疼痛の概要も参照のこと。)

温熱

温熱は,亜急性または慢性の外傷性あるいは炎症性の疾患(例,捻挫,挫傷,結合組織炎,腱鞘炎,筋攣縮,筋炎,背部痛,むち打ち症,様々な関節炎,関節痛,神経痛)を一時的に緩和する。温熱は,血流および結合組織の伸長を促進し,関節のこわばり,疼痛,筋攣縮を減少させ,炎症,浮腫,滲出液の軽減に役立つ。温熱は表層に適用することもあれば(赤外線治療,ホットパック,パラフィン浴,水治療法など),深部に適用することもある(超音波など)。生理学的な効果の程度と持続性は,主として患部組織の温度,温度上昇率,治療部位によって異なる。

赤外線治療では,通常1日20分間加熱ランプを使用する。禁忌としては,金属製の植込み型器具や皮膚感覚障害(特に温痛覚障害)などがある。熱傷を避けるための予防措置が必要である。

ホットパックは,ケイ酸ゲルを詰めた綿布の入れ物で,沸騰した湯または電子レンジで温めてから皮膚に当てる。パックが熱すぎてはならない。パックをタオルに何重にも包むことで,皮膚の熱傷を防ぐのに役立てられる。禁忌は赤外線治療の場合と同じである。

パラフィン浴では,49℃に熱した溶融ワックスに患部を浸したり沈めたり,あるいはそれを患部に塗布したりする。患部を20分間タオルで包むことで,温熱が保たれる。パラフィンは通常,小関節に使用される。一般的に,手であれば浸したり沈めたりすることによって,膝または肘には塗布することによって使用する。パラフィンは開放創やパラフィンアレルギーの患者に使用すべきでない。パラフィン浴は手の変形性関節症に特に有用である。

水治療法は,創傷治癒を早めるために施行される。攪拌された湯は血流を刺激し,熱傷や傷を清拭する。この治療法は35.5~37.7℃の温水を入れたハバードタンク(大きな工業用渦流浴槽)を用いて行われることが多い。37.7~40℃に温めた湯に全身を浸けると,筋肉の弛緩に役立ち,痛みが和らぐ可能性もある。水治療法は関節可動域訓練とともに行うと特に有用である。

ジアテルミーは,短波またはマイクロ波を発振する高周波電磁場を用いて患部組織を温熱治療する。この治療法は,他のより単純な治療法より優れているとは思われないため,現在ほとんど使用されない。

低出力レーザー療法

低出力レーザー療法(コールドレーザーとしても知られる)は,光エネルギーをより深部の組織に照射する治療法であり,捻挫,挫傷,頸部痛,背部痛,肩関節痛,線維筋痛症などの様々な病態に対して鎮痛をもたらす可能性がある。眼に用いるべきではなく,適切な保護眼鏡が必要である。悪性腫瘍がある部位,胎児,ペースメーカーや他の植込み型機器,および甲状腺にも用いるべきではない。また,低出力レーザー療法は,光感受性てんかんの患者において痙攣発作を誘発する可能性があるため,そのような患者には注意して使用すべきである。筋骨格系の特定の問題に対する低出力レーザー療法の潜在的な便益を示唆するエビデンスもあるが,治療対象となる特定の問題および比較する治療法によって結果は様々である。

超音波

超音波治療では,組織の深部(4~10cm)にまで到達する高周波の音波を使用し,温熱的,物理的,化学的,生物学的な作用を及ぼす。腱炎,滑液包炎,拘縮,変形性関節症,骨損傷,および複合性局所疼痛症候群に対して適応がある。超音波は,虚血性の組織,局所麻酔施行部位,急性感染部位や,出血性素因またはがんの治療に用いるべきではない。また,眼,脳,脊髄,耳,心臓,生殖器,腕神経叢,癒合しつつある骨にも用いるべきではない。

冷却

温熱療法と寒冷療法のいずれを選択するかは,経験的に判断することが多い。温熱でうまくいかない場合,冷却が用いられる。しかしながら,急性の損傷または疼痛には,温熱よりも冷却の方が適しているようである。冷却は筋攣縮,筋筋膜痛,外傷性の疼痛,腰痛,急性炎症の軽減に役立ち,また局所麻酔の導入の助けにもなる可能性がある。冷却は通常,損傷直後の数時間または当日に行われるため,理学療法で行われることはめったにない。

冷却の際は,患部に氷バッグやアイスパックを使用するか,または揮発性の液体(例,エチルクロライド,冷却スプレー)を用い,蒸発作用によって患部を冷やす。皮膚上での冷却の広がりは,表皮の厚さ,その下の脂肪と筋肉の量,組織の水分含有量,および血流速度によって左右される。組織の損傷および低体温症を避けるための注意が必要である。血液灌流の悪い場所を冷却してはならない。

電気刺激

経皮的電気神経刺激(TENS)では,低周波の低電流を用いて痛みを緩和する。患者は,筋緊張の増大を伴わない,軽いピリピリした感覚を覚える。疼痛の重症度に応じて20分から数時間の刺激を1日に数回与える。患者にTENS装置の使用法および治療のタイミングを教えることが多い。TENSは電子機器の誤作動を引き起こす可能性があるため,電子機器の植込み部位の上または付近でTENS療法を行ってはならない。眼に用いることも厳禁である。

頸椎牽引

頸椎牽引は,頸椎症,頸部神経根障害,むち打ち症,または斜頸による慢性的な頸部痛に適応となることが多い。垂直牽引(患者は座位)は水平牽引(患者はベッド上に横臥位)よりも効果的である。自動間欠牽引装置でのリズミカルな牽引と持続牽引のどちらの場合も,使用するウェイトの量は様々であるが,一般に頸部の筋肉を愛護的に伸展させるべきであり,疼痛を引き起こさないようにすべきである。椎間孔内での神経根の圧迫を増大させないよう,一般に頸部の過伸展は避けるべきである。牽引は通常,体操や徒手ストレッチなど他の理学療法と併用される。長期にわたる関節リウマチまたは頸椎を侵すその他の炎症性関節疾患を有する患者では,一般に牽引は回避される。

マッサージ

マッサージにより,拘縮した組織の可動性が増し,疼痛が緩和し,外傷(例,骨折,関節損傷,捻挫,挫傷,皮下出血)に伴う腫脹および硬結が軽減する。マッサージの適応は,腰痛,線維筋痛症,片麻痺,筋筋膜性疼痛,脳性麻痺,および肢切断などで考慮すべきである。感染や血栓性静脈炎の治療にマッサージを用いるべきではない。マッサージ師の訓練方法や技術にはばらつきがあるため,資格をもつまたは認定されているマッサージ師のみが損傷の治療にあたってマッサージを行うべきである。

鍼治療

鍼治療では,特定の部位(多くは疼痛部位から離れた部位)の皮膚に細い針を刺す。鍼治療はときに,急性および慢性疼痛の管理するため,他の治療と併用して施行される。

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