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骨粗鬆症

執筆者:

Marcy B. Bolster

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2015年 10月
本ページのリソース

骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよびビタミンDの補給,骨および筋肉の力を最大化し,バランスを改善し,転倒のリスクを最小限にするための運動,ならびに骨量を温存するまたは骨新生を促進する薬物療法がある。

病態生理

骨は絶えず形成および吸収されている。正常では,骨形成と骨吸収は非常によく均衡している。骨芽細胞(骨の有機基質を形成して骨を無機化する細胞)および破骨細胞(骨を吸収する細胞)は,副甲状腺ホルモン(PTH), カルシトニン エストロゲン,ビタミンD,様々なサイトカイン,およびプロスタグランジンなどのその他の局所因子によって調節されている。

骨量は男女において30歳頃にピークに達する。黒人は白人およびアジア人より骨量のピークが高く,ヒスパニックは中間の値である。男性は女性よりも骨量が多い。骨量がピークに達した後,プラトーが約10年間続き,その間骨形成量は骨吸収量とほぼ等しい。その後,1年に0.3~0.5%のペースで骨量の減少が発生する。女性の骨量減少は閉経とともに開始し,5~7年の間約3~5%/年まで加速して,その後減少率が鈍る。

骨粗鬆症の骨量減少は,皮質骨および骨梁骨(海綿骨)に影響を及ぼす。皮質骨の厚さと海綿骨の骨梁の数とサイズが減少し,結果として多孔性が増す。海綿骨骨梁が途切れたり,または完全に欠如することがある。海綿骨骨梁の減少は,骨梁がより多孔性で骨の代謝回転率がより高いため,皮質骨の減少よりも急速に起こる。しかし,両方のタイプの減少が骨格の脆弱性の一因となる。

脆弱性骨折

脆弱性骨折は,正常な骨が折れると予想されうる外傷よりも軽い外傷の後に起こる。立った状態以下の高さからの転倒(ベッドからの転落を含む)による骨折は一般的に脆弱性骨折と考えられる。脆弱性骨折の頻度が最も高いのは以下の部位である:

  • 橈骨遠位端

  • 脊椎(脊椎圧迫骨折,最も一般的な骨粗鬆症関連骨折)

  • 大腿骨頸部

  • 大転子

他の部位には,上腕骨近位部および骨盤などがある。

分類

骨粗鬆症は原発性疾患として,または何らかの他の因子により二次的に発生することがある。骨折の部位は,原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症で同様である。

原発性骨粗鬆症

女性の骨粗鬆症の95%以上および男性の骨粗鬆症の約80%が原発性である。ほとんどの症例は,閉経後女性および高齢男性で発生する。性腺機能不全が男女の両方において重要な因子である。他の寄与因子としては,カルシウム摂取量の減少,ビタミンDの低値,特定の薬剤,および副甲状腺機能亢進症などがありうる。一部の患者は,青年期の骨成長の時期にカルシウム摂取が不十分であり,そのため骨量がピークに達しない。

骨量減少の主な機序は,骨量の低下および微細構造の劣化に至る骨吸収の亢進であるが,ときに骨形成が障害される。骨量減少の機序には以下のものが挙げられる:

  • 骨吸収を促すサイトカインの増加など,骨吸収性サイトカイン産生の局所的変化

  • 骨リモデリング時の骨形成反応の障害(おそらく加齢に伴う骨芽細胞の減少および活動性低下に起因する)

  • その他の要因(局所および全身の成長因子の低下など)

性腺機能が正常で二次的な原因が認められない小児,青年,閉経前女性,または50歳未満の男性において,また骨量が少ない(二重エネルギーX線吸収法[DXA]でZスコアが低い)人においてさえも,まれに脆弱性骨折が起こる。そのようなまれな症例は特発性骨粗鬆症とみなされる。

続発性骨粗鬆症

続発性骨粗鬆症は女性における骨粗鬆症の5%未満を占め,男性では約20%を占める。原因( 続発性骨粗鬆症の原因)がさらに骨量減少を加速させ,原発性骨粗鬆症患者の骨折リスクを増大させる可能性がある。

慢性腎臓病患者は,二次性副甲状腺機能亢進症,腎性骨異栄養症,および無形成骨など,骨量低下の理由をいくつか有していることがある。

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続発性骨粗鬆症の原因

悪性腫瘍(例,多発性骨髄腫)

COPD(喫煙および/またはグルココルチコイドによる治療だけでなく,疾患そのものも原因)

慢性腎臓病

薬剤(例,グルココルチコイド,抗てんかん薬,メドロキシプロゲステロン,アロマターゼ阻害薬,ロシグリタゾン,ピオグリタゾン,甲状腺ホルモン補充療法,ヘパリン,エタノール,タバコ)

内分泌疾患(例,グルココルチコイド過剰,副甲状腺機能亢進症,甲状腺機能亢進症,性腺機能低下症,高プロラクチン血症,糖尿病)

高カルシウム尿症

ビタミンA過剰症

低ホスファターゼ症

不動状態

肝疾患

吸収不良症候群

長期の無重力状態(宇宙飛行で起こる)

RA

危険因子

骨成長には荷重負荷などのストレスが必要なため,不動状態または長時間の座位は骨量減少を招く。BMIが低いと骨量が減少しやすい。白人およびアジア人など,特定の民族では骨粗鬆症のリスクがより高い。食事によるカルシウム,リン,マグネシウム,およびビタミンDの摂取が不十分であることは,内因性のアシドーシスと同様に,骨量減少の素因となる。喫煙および飲酒も骨量に悪影響を及ぼす。骨粗鬆症の家族歴(特に親の股関節骨折の既往)もリスクを増加する。一度脆弱性骨折を起こしたことがある患者では,別の臨床的な(症候性の)骨折および臨床的に無症状の脊椎圧迫骨折のリスクが高い。

症状と徴候

骨粗鬆症患者は,骨折が起こらない限り無症状である。脊椎以外の骨折は典型的には症状を伴うが,脊椎圧迫骨折の約3分の2は無症状である(ただし,患者は変形性関節症など他の原因のために基礎にある慢性の背部痛を有することがある)。症状を伴う脊椎圧迫骨折は,痛み(通常は放散しない)が急性に発症することで始まり,荷重負荷で悪化し,脊椎に圧痛点を伴うことがあり,典型的には1週間で軽快し始める。しかし,残存する痛みが数カ月続くかまたは絶えず続くことがある。

多発性の胸椎圧迫骨折は,最終的に頸椎前弯の増強を伴う背部の脊柱後弯症(dowager's hump)を引き起こす。脊柱の筋肉および靱帯にかかる異常なストレスが,慢性のうずくような鈍痛を引き起こすことがある(特に腰部で)。胸郭内の容積減少による息切れ,および/または胸郭が骨盤に近づくにつれ腹腔が圧迫されることによる腹部不快感を来すことがある。

診断

  • 二重エネルギーX線吸収法(DXA)

リスクを有する個人のスクリーニングおよび骨密度の低下が確認された患者(治療中の患者を含む)の経過観察のために,DXAを用いて骨密度を測定すべきである。

DXAは以下の患者に推奨される:

  • 65歳以上の全ての女性

  • 危険因子(骨粗鬆症の家族歴,BMI低値[例,以前は体重57.6kg未満と定義されていた],ならびに喫煙および/または骨量減少のリスクが高い薬剤[例,グルココルチコイド]の使用など)を有する閉経後から65歳までの女性

  • 脆弱性骨折を経験したあらゆる年齢の患者(男女とも)

  • 画像検査で骨密度低下の所見があるか,または無症状の脊椎圧迫骨折が偶然見つかった患者

  • 続発性骨粗鬆症のリスクがある患者

骨密度の低下(およびそれに伴う骨折のリスク増加)が単純X線により示唆されることがあるが,骨密度測定によって確定すべきである。どのくらいの頻度でDXAを繰り返すべきかは明らかでない。例えば,骨粗鬆症の治療を受けているまたはリスクの高い女性では頻回に(例,2~3年毎),リスクの低い(例,Tスコアが-2.00より高く危険因子がない)女性ではより低い頻度で,ときにはずっと低い頻度で行ってよい。

単純X線

骨は放射線透過性の亢進および骨梁構造の消失を示すが,骨の約30%が失われるまでは示されない。椎体高の減少および椎体上下の陥凹の増大が脊椎圧迫骨折の特徴である。胸椎骨折により,椎体前方の楔状化が生じることがある。長管骨では,皮質が薄い場合もあるが,骨膜の表面は滑らかなままである。T4またはそれより上位の脊椎骨折では,骨粗鬆症よりもむしろ悪性腫瘍が懸念される。重度の背部痛および限局的な棘突起圧痛がある高齢患者では,脊椎の単純X線を考慮すべきである。

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症は肋骨骨折を引き起こす可能性が高く,また,骨粗鬆症性骨折が好発する他の部位で骨折を引き起こす可能性も高い。骨軟化症により,骨粗鬆症におけるものと類似した画像検査上の異常が生じることがある( 骨減少症:骨粗鬆症と骨軟化症の鑑別)。副甲状腺機能亢進症は,それにより骨膜下吸収または嚢胞性骨病変(まれ)が生じる場合に鑑別できる。

骨減少症:骨粗鬆症と骨軟化症の鑑別

骨減少症は骨量の減少である。2つの代謝性骨疾患(骨粗鬆症および骨軟化症)が骨量を減少させる。

骨粗鬆症では,骨量は減少するが,骨基質量に対する骨塩量の比率は正常である。

骨軟化症では,骨基質量に対する骨塩量の比率が低い。

骨粗鬆症は,低い骨量のピーク,骨吸収の増加,および骨形成の障害の組合せに起因する。骨軟化症は,通常は重度のビタミンD欠乏症または異常なビタミンD代謝のために石灰化が障害されることに起因する(ビタミンDを参照のこと)。米国では骨軟化症よりも骨粗鬆症がはるかに多くみられる。2つの疾患は併存することがあり,それらの臨床的発現は類似している;さらに,骨粗鬆症で軽度から中等度のビタミンD欠乏症が起こりうる。

ビタミンD濃度が継続して非常に低い場合は,骨軟化症を疑うべきである。2つの疾患を決定的に鑑別するために,テトラサイクリンで標識する骨生検を行うことがある。

骨密度測定

骨密度(g/cm2)の測定にはDXAが用いられる;これにより骨減少症または骨粗鬆症(骨軟化症がない場合)が示唆され,骨折のリスクが予測され,また,治療に対する反応の経過観察にも使用可能である。腰椎,股関節,橈骨遠位端,または全身の骨密度を測定できる。(定量的CTでは,脊椎または股関節の同様の測定値が得られるが,現在のところ広く普及してはいない。)骨密度は理想的には2部位(腰椎および片側の股関節など)で測定するが,一部の施設では脊椎および両股関節で測定する。

脊椎または股関節が検査に使用できない場合(例,先行する人工股関節全置換術による金属類のため),橈骨遠位端を測定することがある(DXAの結果で「橈骨遠位端1/3」と呼ばれる)。橈骨遠位端は,副甲状腺機能亢進症で骨量減少が最もよくみられる部位であるため,副甲状腺機能亢進症患者でも測定すべきである。

DXAの結果はTスコアおよびZスコアとして報告される。Tスコアは,患者の骨密度が同性かつ同じ民族の健康な若年者の骨量ピークから異なっている標準偏差の値に相当する。WHOは骨減少症および骨粗鬆症を定義するTスコアのカットオフ値を規定している。-1.0未満で-2.5を超えるTスコアは骨減少症と定義される。-2.5以下のTスコアは骨粗鬆症と定義される。

Zスコアは,患者の骨密度が同年齢で同性の人の骨密度から異なる標準偏差の値に相当し,小児,閉経前女性,または50歳未満の男性に用いるべきである。Zスコアが-2.0以下であれば,骨密度は患者の年齢にしては低く,骨量減少の二次的な原因を考慮すべきである。

現在の中心的なDXAシステムでは下位胸椎および腰椎における脊椎変形も評価でき,この方法をvertebral fracture analysis(VFA)と称する。脊椎変形は,臨床的に無症状のものでも,骨粗鬆症の診断に役立ち,将来の骨折リスク増加が予測される。VFAは3cm以上身長が低下した患者で有用である可能性がより高い。

薬物療法の必要性は骨折の確率(DXAの結果および他の因子に依存する)に基づく。骨折リスク評価(FRAX)スコアWHO Fracture Risk Assessment Tool)は,未治療の患者における主要な骨粗鬆症性骨折(股関節,脊椎,前腕,または上腕骨)および股関節骨折の10年間の発生確率を予測する。スコアは骨量減少および骨折の重要な危険因子を表している。FRAXスコアが特定の閾値(米国では,主要な骨粗鬆症性骨折の確率20%以上または股関節骨折の確率3%)を超える場合,薬物療法を推奨すべきである。

一連のDXAによる,進行中の骨量減少または治療に対する反応のモニタリングは,同じDXA装置を用いて行うべきであり,比較にはTスコアではなく実際の骨密度(g/cm2)を用いるべきである。骨粗鬆症の治療を受けている患者では,DXA検査を通常2~3年毎に繰り返すべきであるが,ときにグルココルチコイドの投与を受けている患者ではより頻回に行うべきである。骨密度が安定または改善すれば骨折リスクの低下が予測される。連続的なDXAで骨密度が有意に低下している患者では,アドヒアランスと骨量減少の二次的な原因を評価すべきである。

その他の検査

Zスコアが-2.0以下の患者の場合または二次的な骨量減少の原因が臨床的に疑われる場合は,骨量減少の二次的な原因の評価を考慮すべきである。臨床検査には通常は以下を含めるべきである:

  • 血清カルシウム,マグネシウム,およびリン

  • 25-ヒドロキシビタミンD濃度

  • アルカリホスファターゼ(低ホスファターゼ症)を含む肝機能検査

  • インタクトPTH値(副甲状腺機能亢進症)

  • 男性で血清 テストステロン(性腺機能低下症)

  • カルシウムおよびクレアチニンに関する24時間尿(高カルシウム尿症)

その他の検査(甲状腺機能亢進症を調べる甲状腺刺激ホルモンまたは遊離サイロキシン,尿中の遊離 コルチゾールの測定,ならびに癌[特に骨髄腫]を除外するための血算およびその他の検査[例,血清および尿タンパク電気泳動]など)を,臨床像に応じて考慮すべきである。慢性腎臓病患者は,副甲状腺機能亢進症,腎性骨異栄養症,および無形成骨のために骨量が低いことがあるため,その他の検査が必要になることがある。

体重減少がある患者については,悪性腫瘍だけでなく消化管疾患(例,吸収不良,セリアック病,炎症性腸疾患)のスクリーニングを行うべきである。骨生検は,まれな症例に限り行う(例,明らかな原因のない若年の脆弱性骨折患者,他の骨疾患に罹患している可能性がある慢性腎臓病患者,持続的にビタミンD濃度が非常に低く骨軟化症の罹患が疑われる患者)。

空腹時における血清中の架橋C-テロペプチド(CTX)または尿中の架橋N-テロペプチド(NTX)の値は骨吸収の亢進を反映し,ルーチンに臨床的に使用するには信頼度は様々であるが,CTXおよびNTXは治療に対する反応のモニタリングまたは休薬日の時期設定に役立つことがある。

治療

  • 危険因子の是正

  • カルシウムおよびビタミンDの補給

  • 骨吸収抑制薬(例,ビスホスホネート系薬剤,ホルモン補充療法,選択的 エストロゲン受容体モジュレーター,RANKL[receptor activator of nuclear factor κβ ligand]阻害薬)

  • タンパク同化薬

治療の目標は,骨量の温存,骨折の予防,痛みの軽減,および機能の維持である。

骨量の温存

骨量減少の速度は,薬剤により遅らせることができる。十分なカルシウムおよびビタミンDならびに身体活動が,最適な骨密度を維持する鍵である。是正可能な危険因子にも対処すべきである。

危険因子の是正法としては,荷重運動の増加,カフェインおよびアルコール摂取の制限,禁煙などが考えられる。至適な荷重運動の量は確立されていないが,1日平均30分間が推奨される。理学療法士は,安全な運動プログラムを作成し,日常活動を安全に行う方法を実地に説明して転倒および脊椎骨折のリスクを最小化できる。

全ての男女が少なくとも1000mgのカルシウム元素を毎日摂取すべきである。閉経後女性および高齢男性,ならびに思春期の成長期,妊娠期,および授乳期などカルシウムの必要量が増加する時期には,1200~1500mg/日(食事からの摂取量を含む)の摂取が推奨される。カルシウムは理想的には食事から摂取すべきであり,食事からの摂取が不十分な場合にサプリメントを用いる。カルシウムのサプリメントは,炭酸カルシウムまたはクエン酸カルシウムの形で摂取されることが最も多い。無酸症患者ではクエン酸カルシウムの方がよく吸収されるが,どちらも食事とともに摂取すればよく吸収される。プロトンポンプ阻害薬の投与を受けている患者または胃バイパス術を受けたことのある患者は,クエン酸カルシウムを摂取して最大の吸収量を確保すべきである。カルシウムは500~600mgに分割した量で1日2回または1日3回服用すべきである。

ビタミンDの補給は800~1000 IU/日が推奨される。ビタミンD欠乏症の患者には,さらに高い用量が必要になることがある。ビタミンDの補給は,植物由来の合成型であるエルゴカルシフェロールもおそらく容認されるが,通常は天然型ビタミンDのコレカルシフェロールとして投与される。25-ヒドロキシビタミンDの濃度は30ng/mL以上であるべきである。

ビスホスホネート系薬剤が,薬物療法の第1選択薬である。骨吸収を阻害することにより,ビスホスホネート系薬剤は骨量を温存し,脊椎骨折および股関節骨折を最大で50%減少しうる。ビスホスホネート療法を3カ月行うと骨の代謝回転が低下し,治療開始から1年後という早い段階で明らかに骨折リスクが低下する。DXAは,治療への反応をモニタリングするために連続的に行う場合,通常は2年未満の間隔で行う必要はない。ビスホスホネート系薬剤は経口投与または静脈内投与が可能である。ビスホスホネート系薬剤には以下のものなどがある:

  • アレンドロン酸(10mgの1日1回または70mgの週1回経口投与)

  • リセドロン酸(5mgの1日1回経口投与,35mgの週1回経口投与,または150mgの月1回経口投与)

  • ゾレドロン酸(5mgの年1回静脈内投与)。

  • イバンドロン酸の経口投与(1カ月毎に150mg)または静脈内投与(3カ月毎に3mg)

経口投与のビスホスホネート系薬剤は,空腹時にコップ1杯(8オンス[250mL])の水とともに服用する必要があり,服用後少なくとも30分間(イバンドロン酸では60分間)は体を起こした状態を保たなければならず,その間は何も口から摂取してはならない。これらの薬剤は,クレアチニンクリアランスが35mL/minを超す患者で安全に使用できる。ビスホスホネート系薬剤は食道への刺激を引き起こすことがある。通過時間を遅らせる食道疾患,および上部消化管疾患の症状は,経口投与のビスホスホネート系薬剤に対する相対的禁忌である。患者が経口のビスホスホネート系薬剤に耐えられないまたは遵守しない場合はビスホスホネート系薬剤の静注が適応となる。

顎骨壊死がビスホスホネート系薬剤の使用と関連しているが,この病態は経口のビスホスホネート系薬剤を服用している患者ではまれである。危険因子には,侵襲的歯科処置,静注のビスホスホネート系薬剤の使用,および癌などがある。骨粗鬆症関連骨折を減らすベネフィットは,この小さなリスクをはるかに上回る。

長期にわたるビスホスホネート系薬剤の使用はまた,非定型大腿骨骨折のリスクを増加させることもある。非定型大腿骨骨折は,軽微な外傷により,または外傷なしに,大腿骨骨幹部中1/3に生じ,数週間または数カ月間の大腿部痛が先行することがある。骨折は両側性の場合もある。骨折の発生を最小限に抑えるために,次の場合にビスホスホネート系薬剤の中止(ビスホスホネート系薬剤の休薬期間)を考慮すべきである:

  • 骨粗鬆症(DXAによる)であるが骨量減少に対する他の危険因子がほとんどまたは全くない患者での約3~5年間の使用後(ゾレドロン酸の静脈内投与で3年,ビスホスホネート系薬剤の経口投与で5年)

  • 骨粗鬆症(DXAによる)でさらに危険因子がある患者での約5~10年間の使用後

ビスホスホネート系薬剤の休薬期間中の患者については,新たな骨折またはDXAでの明らかな骨量減少の加速がないか,注意深くモニタリングすべきである。ビスホスホネート系薬剤などの骨吸収抑制薬による治療中は,骨代謝回転が抑制される(空腹時の架橋N-テロペプチド[< 40 nmol/L]または架橋C-テロペプチドの低値で証明される)。これらのマーカーは2年以上の休薬期間の間低いままである場合がある。

未治療の患者では,骨代謝回転マーカーの値が上昇すれば,骨折のリスク増加が示唆される。しかし,いつ休薬を開始または終了すべきかの基準として,骨代謝回転マーカーの値を用いるべきかどうかは明らかでない。休薬の開始または終了の判断は複雑であり,患者の危険因子を考慮に入れるべきである。

骨粗鬆症の治療にサケカルシトニンの鼻腔内投与を定期的に用いてはならない。サケカルシトニンにより,痛みを伴う脊椎骨折などの急性の骨折の後に,エンドルフィンの効果による短期的な鎮痛が得られることがある。骨折を減らすことは証明されていない。

エストロゲンは骨密度を維持し骨折を予防しうる。 エストロゲンは閉経して4~6年以内に開始すると最も効果的であり,それよりもはるかに後に開始した場合でさえ,骨量減少を遅らせ,おそらく骨折を減らす可能性がある。 エストロゲンの使用は血栓塞栓症および子宮内膜癌のリスクを増大させ,さらに乳癌のリスクを増大させる可能性がある。子宮が正常な女性では エストロゲンと一緒にプロゲスチンを服用することにより子宮内膜癌のリスクが低下する可能性がある(ホルモン療法を参照のこと)。しかし,プロゲスチンと エストロゲンを組み合わせて服用すると,乳癌,冠動脈疾患,脳卒中,および胆管疾患のリスクが増大する。これらのリスクがあること,および骨粗鬆症には他の治療法があることから,骨粗鬆症の治療に エストロゲンを使用する場合には,大半の女性においてリスクが便益を上回る;治療を開始する場合は,綿密なモニタリングを行いつつ治療期間を短くすることを考慮すべきである。

ラロキシフェンは,ビスホスホネート系薬剤を服用できない女性の骨粗鬆症の治療に適切な場合がある選択的 エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である。脊椎骨折を約50%減少させるが,股関節骨折を減少させることは証明されていない。ラロキシフェンは子宮を刺激せず,乳房における エストロゲンの効果と拮抗する。浸潤性乳癌のリスクを減少させることが示されている。

PTH(骨新生を促す)は,一般に以下の特徴を有する患者において適応となる:

  • 骨吸収抑制薬に耐えられないまたはその使用に対する禁忌がある

  • カルシウム,ビタミンD,および運動だけでなく,骨吸収抑制薬にも反応しない(例,新たな骨折を発症するまたは骨密度が減少する)

  • 重症骨粗鬆症(例,Tスコアが-3.5未満)または多発性の脊椎の脆弱性骨折を有する可能性がある

  • グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症がある

合成PTH(PTH 1-34;テリパラチド)を平均20カ月間毎日注射すると,骨量が増加し骨折のリスクが減少する。テリパラチドの投与を受ける患者は,クレアチニンクリアランスが35mL/minを超えているべきである。

骨折の予防

多くの高齢患者では,協調運動能力の低下,視力低下,筋力低下,錯乱,および起立性低血圧または知覚の変化を引き起こす薬剤の使用により転倒のリスクを有する。筋力強化運動により安定性が増す可能性がある。骨折の予防には,転倒および骨折のリスクについての患者教育,安全のための自宅の環境改善,および身体の安定性を増しリスクを減らす個別プログラムの開発が重要である。

痛みの治療および機能の維持

脊椎圧迫骨折に起因する急性の背部痛は,整形外科的な支持,鎮痛薬,ならびに(筋攣縮が顕著な場合)温熱およびマッサージにより治療すべきである( 疼痛および炎症の治療のためのリハビリテーション)。慢性の背部痛は,整形外科用の衣類および傍脊柱筋を強化する運動によって軽減しうる。重いものを持ち上げるのを避けることが有益である。床上安静は最小限にすべきであり,一貫性のある慎重に設計された荷重運動を奨励すべきである。

症例によっては,椎体形成術(vertebroplasty)またはバルーン椎体形成術(kyphoplasty)により脊椎の新たな脆弱性骨折による重度の痛みを緩和できる。椎体形成術(vertebroplasty)では,メチルメタクリレートを椎体に注入する。バルーン椎体形成術(kyphoplasty)では,まず椎体をバルーンで拡げ,その後メチルメタクリレートを注入する。これらの手技により,注入を行った脊椎の変形が軽減する可能性があるが,隣接する脊椎の骨折リスクは減少せず,増大することさえある。他のリスクとしては,肋骨骨折,セメントの漏出,および肺水腫または心筋梗塞などが挙げられる。これらの手技の適応を決定するためのさらなる研究が必要である。

予防

予防の目標には2つの要素(骨量の温存および骨折の予防)がある。予防策は以下に適応となる:

  • 閉経後女性

  • 高齢男性

  • 骨減少症患者

  • グルココルチコイドの全身投与を長期間受けている患者

  • 骨粗鬆症患者

  • 骨量減少の二次的な原因を有する患者

これらの患者全てに対する予防策には,適切なカルシウムおよびビタミンDの摂取,荷重運動,転倒予防,ならびにリスクを減じるその他の方法(例,喫煙の回避およびアルコールの制限)がある。さらに,骨粗鬆症の患者または骨減少症で骨折のリスクが高い患者(FRAXスコアが高い患者およびグルココルチコイドを投与されている患者など)には薬物療法が適応となる。薬物療法では,骨粗鬆症の治療で投与されるものと同じ薬剤が含まれる傾向がある。骨の健康の重要性について患者および地域社会を教育していくことが,依然として最も重要である。

要点

  • 骨は40歳以降,毎年0.3~0.5%が失われ,女性では閉経後の約5~7年間は約3~5%まで加速する。

  • 女性の骨粗鬆症の95%以上および男性の骨粗鬆症の約80%が原発性である。

  • 予想外に小さな力によって脊椎,橈骨遠位端,大腿骨頸部,または大転子を骨折(脆弱性骨折)した患者では,骨粗鬆症を疑う。

  • 65歳以上の女性;危険因子(例,骨粗鬆症の家族歴,BMI低値,ならびに喫煙および/または骨量減少のリスクが高い薬剤[例,グルココルチコイド]の使用)を有する閉経後から65歳までの女性;脆弱性骨折を経験したあらゆる年齢の男女;画像検査で骨密度低下の所見があるか,または無症状の脊椎圧迫骨折がある患者;および続発性骨粗鬆症のリスクがある患者で,DXAを用いて骨密度を測定する。

  • Zスコアが-2.0以下の場合または二次的な骨量減少の原因が臨床的に疑われる場合は,二次的な骨量減少の原因について,患者の検査を考慮すべきである。

  • 治療と予防には,必要であればサプリメントを用いて十分な量のカルシウムとビタミンDを摂取し,骨量の温存を助けるために危険因子を是正する(例,荷重運動ならびにカフェイン,アルコール,およびタバコの使用を最小化することによる)。

  • ほとんどの患者は骨吸収抑制薬(例,ビスホスホネート系薬剤,選択的 エストロゲン受容体モジュレーター,RANKL[receptor activator of nuclear factor κβ ligand]阻害薬,ホルモン補充療法に用いられる薬剤)またはタンパク同化薬(例,PTH)で治療する。

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