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肺癌

(肺がん)

執筆者:

Robert L. Keith

, MD, Division of Pulmonary Sciences and Critial Care Medicine, Department of Medicine, Eastern Colorado VA Healthcare System, University of Colorado

最終査読/改訂年月 2018年 3月
本ページのリソース

肺癌は世界におけるがん関連死因の第1位である。約85%の症例に喫煙の関連がみられる。症状としては,咳嗽,胸部不快感または胸痛,体重減少などのほか,頻度は低いものの喀血もありうるが,多くの患者では何の臨床症状もないまま転移を来す。診断は,典型的には胸部X線またはCTによって行い,生検によって確定する。治療には,病期に応じ手術,化学療法,放射線療法,またはこれらの組合せなどがある。過去数十年間,肺癌患者の予後は不良であり,診断時から5年を超えて生存する患者はわずか15%であった。IV期(転移)の患者は,5年全生存率が < 1%であった。しかしながら,治療の標的となりうる特定の変異が同定されたことにより,転帰は改善している。

疫学

2014年には,米国だけで224,210例の肺癌が新たに診断され,159,260人が肺癌により死亡したと推定されている。過去20年間における肺癌の発生率は,男性においては低下し続けており,女性においては横ばいであった後に,わずかに減少し始めた。

病因

肺癌の最も重要な原因として,症例の約85%を占めるのが以下のものである:

  • 喫煙

癌のリスクは年齢,喫煙強度,および喫煙期間によって異なる。

毒素および喫煙への複合曝露があれば,肺癌のリスクが増大する。確認されたものと可能性のあるものを含めたその他の危険因子としては,大気汚染,マリファナの喫煙,葉巻の煙への曝露および紙巻タバコの受動喫煙,発がん物質への曝露(例,アスベスト,放射線,ラドン,ヒ素,クロム酸塩,ニッケル,クロロメチルエーテル,多環芳香族炭化水素,マスタードガス,コークス炉排出物,原始的調理,薪ストーブ)などがある。電子ニコチン送達システム(例,電子タバコ)に伴う肺癌のリスクはまだ判定されていない。

癌のリスクは禁煙することで低下するが,喫煙開始前の水準に戻ることはない。肺癌を発症する患者の約15~20%は喫煙歴がないか,最小限の喫煙にとどまる。

家庭内でのラドンへの曝露が肺癌のリスクを高めるか否か,高めるとしてそれがどれほどかについては,議論がある。

COPD,α1-アンチトリプシン欠乏症,および肺線維症によって肺癌に対する感受性が高まる可能性が疑われている。その他の肺疾患(例,結核)により肺に瘢痕を有する患者は,肺癌のリスクが高い可能性がある。また,β-カロテンのサプリメントを摂取している現喫煙者では肺癌発生のリスクが高まっている可能性がある。

遺伝因子

呼吸上皮細胞が腫瘍化するには,発がんを促進する物質への長期曝露および複数の遺伝子変異の蓄積を要する(発がんの素地[field carcinogenesis]と呼ばれる効果)。

一部の肺癌患者では,細胞増殖を刺激する遺伝子(K-rasMYC)における二次的または付加的変異が,増殖因子受容体のシグナル伝達(EGFRHER2/neu)に異常をもたらし,アポトーシスを阻害して,異常細胞の無制限な増殖の一因となることがある。また,がん抑制遺伝子(例,p53 APC)を阻害する変異も発がんにつながる可能性がある。原因である可能性があるその他の変異としては,EML-4-ALK転座やROS-1BRAFPI3KCAの変異などがある。このように肺癌の一次的な原因となる遺伝子の変異は,発がんドライバー変異(oncogenic driver mutation)と呼ばれる。発がんドライバー変異は,喫煙者において肺癌の原因や寄与因子となりうるが,それらの変異は非喫煙者において肺癌の原因となる可能性が特に高い。2014年のLung Cancer Mutation Consortium(LCMC)による研究では,喫煙者および非喫煙者の肺に発生した肺癌733例の64%でドライバー変異が認められた(K-ras変異が25%,EGFR変異が17%,EML-4-ALKが8%,BRAF変異が2%[1])。現在その他の変異も報告されており,発がんドライバー変異を標的とする新たな治療法が開発中である。

病因論に関する参考文献

  • 1.Kris MG, Johnson BE, Berry LD, et al: Using multiplexed assays of oncogenic drivers in lung cancers to select targeted drugs.JAMA 311 (19):1998–2006, 2014.doi: 10.1001/jama.2014.3741.

分類

肺癌は2つの大きなカテゴリーに分類される:

  • 小細胞肺癌(SCLC),症例の約15%

  • 非小細胞肺癌(NSCLC),症例の約85%

SCLCは極めて進行が速く,ほぼ常に喫煙者に起こる。増殖が速く,患者のおよそ80%に診断時に転移がみられる。

NSCLCの臨床像はより多様であり,組織型によって異なるが,約40%の患者で診断時に胸郭外への転移がみられる。発がんドライバー変異は主に腺癌で同定されているが,同様の変異を扁平上皮癌で同定する試みが続けられている。

これら2つのカテゴリーには,その他の特徴(例,部位,リスク,治療,合併症)についても差がみられる(Professional.see table 肺癌の特徴)。

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肺癌の特徴

特徴

小細胞肺癌

非小細胞肺癌

腺癌

扁平上皮癌

大細胞癌

肺癌全体に対する割合

13~15%

35~40%

25~30%

10~15%

部位

気道の粘膜下,肺門周囲の腫瘤

末梢の結節または腫瘤

中枢,気管支内

末梢の結節または腫瘤

危険因子

喫煙

喫煙(患者の80~85%;15~20%は喫煙歴がないか最小限の喫煙である):喫煙者および特に非喫煙者ではしばしば発がんドライバー変異がみられる

環境性および職業曝露(主にラドン,アスベスト,放射線,副流煙,多環芳香族炭化水素,ヒ素,クロム酸塩,ニッケル)

治療

エトポシドにシスプラチンまたはカルボプラチンを併用

進展型の症例では,ときにエトポシドよりもイリノテカンまたはノギテカン

限局型の症例では,同時に放射線療法

手術は行わない

I期およびII期:手術,アジュバント化学療法を併用または非併用

IIIA期:治療法の選択は,進展度および局在によって異なり,以下のものが考えられる:手術 + アジュバント療法(化学療法および/または放射線療法);ネオアジュバント療法(化学療法および/または放射線療法)+ 反応がある場合は手術;手術なしの化学療法 + 放射線療法;これらのレジメンにさらに免疫療法が追加されることがある

IIIB期:放射線療法および/または化学療法;免疫療法が追加されることがある

IV期:分子標的療法,化学療法,または免疫療法―いずれの場合も緩和的放射線療法を併用することがある

合併症

上態静脈症候群

腫瘍随伴症候群

喀血,気道閉塞,肺炎,疼痛を伴う胸膜浸潤,胸水,上大静脈症候群,パンコースト腫瘍(肩または腕の疼痛を引き起こす),喉頭神経浸潤による嗄声,脳転移による神経症状,骨転移による病的骨折,肝転移による黄疸

治療を行った場合の5年生存率

限局型:20%

進展型:< 1%

I期:60~70%

II期:39~55%

III期:5~25%

IV期:< 1%

SVC = 上大静脈。

症状と徴候

肺癌の約25%は無症状で,胸部画像検査で偶然発見される。症状および徴候は,局所の腫瘍の進行,所属リンパ節転移,および遠隔転移によって生じうる。腫瘍随伴症候群および全身症状は,あらゆる病期で生じる可能性がある。症状は癌の分類や組織型に特異的ではないが,癌の種類によって特定の合併症が生じやすい場合がある(Professional.see table 肺癌の特徴)。

局所腫瘍

局所腫瘍は,咳嗽および,より頻度は低いが,気道閉塞による呼吸困難,閉塞後の無気肺または肺炎,およびリンパ管浸潤による肺実質の喪失を引き起こすことがある。閉塞後の肺炎に伴い,発熱が生じることもある。最大で患者の半数が,漠然とした胸痛または限局性の胸痛を訴える。腫瘍が主要動脈を侵食し,大出血およびしばしば窒息死または失血死を引き起こすまれな症例は除き,喀血はより頻度が低く,失血は最小限である。

局所浸潤

腫瘍の局所浸潤は,胸水の発生による胸膜性胸痛または呼吸困難,腫瘍の反回神経への浸潤による嗄声,ならびに横隔神経への浸潤による横隔膜麻痺に起因する呼吸困難および低酸素症を引き起こすことがある。

上大静脈症候群は,上大静脈への圧迫または浸潤に起因し,頭痛または頭部充満感,顔面または上肢の腫脹,仰臥位での息切れ,頸,顔,および体幹上部の静脈怒張,ならびに顔面および体幹の紅潮(多血)を引き起こす。

パンコースト症候群は,肺尖部の腫瘍(通常はNSCLC[パンコースト腫瘍])が腕神経叢,胸膜,または肋骨に浸潤して,肩関節および上肢の疼痛と同側の手の筋力低下または萎縮を引き起こすことで発生する。パンコースト症候群にはホルネル症候群が含まれる場合もある。

ホルネル症候群(眼瞼下垂,縮瞳,無汗症)は,傍脊椎交感神経鎖または頸部星状神経節が侵されることで生じる。

腫瘍の心膜への浸潤は,無症状のこともあるが,収縮性心膜炎または心タンポナーデを引き起こすこともある。まれに,腫瘍による食道圧迫が嚥下困難を引き起こす。

転移

転移巣は,最終的には部位によって異なる症状を引き起こす。転移は以下の部位に起こりうる:

  • 肝臓:疼痛,悪心,早期満腹感,および最終的に肝機能不全を引き起こす。

  • 脳:行動変化,錯乱,失語,痙攣発作,不全麻痺または麻痺,悪心および嘔吐,ならびに最終的に昏睡および死を引き起こす。

  • 骨:重度の疼痛と病的骨折を引き起こす。

  • 副腎:まれに副腎機能不全を引き起こす。

腫瘍随伴症候群

腫瘍随伴症候群とは,腫瘍またはその転移巣から離れた部位で生じる症状である。肺癌患者でよくみられる腫瘍随伴症候群としては,以下のものがある:

その他の神経症候群としては,神経障害,脳症,脳炎,脊髄症,小脳疾患などがある。神経筋症候群の機序には,腫瘍による自己抗原の発現とそれに伴う自己抗体の産生が関係するが,その他の大半の症候群は原因不明である。

診断

  • 胸部X線

  • CTまたはPET–CT

  • 胸水または喀痰の細胞診

  • 通常,気管支鏡ガイド下生検およびコア生検

  • ときに開胸肺生検

画像検査

胸部X線がしばしば最初に行われる画像検査である。胸部X線では明瞭な病変がみられることがあり,例として単一の腫瘤または多巣性腫瘤もしくは孤立性肺結節,肺門部の拡大,縦隔拡大,気管気管支の狭小化,無気肺,消退しない実質の浸潤影,空洞性病変,もしくは原因不明の胸膜肥厚または胸水などがある。これらの所見は示唆的であるが肺癌の診断に有用ではなく,CTまたはPET–CTによるフォローアップおよび細胞診による診断確定が必要である。

CTでは,本疾患を強く示唆する多くの特徴的な解剖学的パターンや所見がみられる。CTは,到達可能な病変のコア針生検のガイドも可能であり,病期診断に有用である。単純X線上で認められた病変が肺癌である可能性が非常に高い場合,診断および病期診断のための補助検査としてPET–CTを使用することもある。この検査はCTによる解剖学的画像検査およびPETによる機能的画像検査を統合したものである。PET画像は炎症と悪性病変の鑑別に役立つ可能性がある。

細胞診

診断確定のための細胞採取または組織採取に用いられる方法は,組織への到達しやすさ,および病変の位置に依存する。喀痰または胸水の細胞診は,最も侵襲性が低い方法である。湿性咳嗽を有する患者において,起床時に採取された喀痰検体は悪性細胞を高濃度に含む可能性があるが,この方法による診断率は全体で < 50%である。胸水はもう1つの利用しやすい細胞採取源である;悪性胸水は予後不良の徴候であり,進行した病期であることを示す。

一般的に,早い時間帯に喀痰または胸水を可能な限り多く採取し,その検体を病理検査室に直ちに送って遅れを最小限にすることによって(処理の遅れが細胞の崩壊につながるため),細胞診での偽陰性を最小限に減らすことができる。胸水をスピンダウンし,細胞ペレットをタイミングよく保存していれば,胸水から得た腫瘍細胞ペレットをパラフィン包埋し,分子生物学的(遺伝学的)検査を行うこともできる。

手技

経皮的生検は次に侵襲性の低い手技である。肺病変よりも転移巣(例,鎖骨上またはその他の末梢リンパ節,胸膜,肝,副腎)に対してより有用である。20~25%で気胸を起こすリスクがあり(主に著明な気腫を有する患者),また結果が偽陰性となるリスクもある。

気管支鏡検査は,肺癌の診断に最もよく用いられる方法である。理論的には,組織の採取では最も侵襲性の低い方法を最初に選択すべきであるが,実際には,診断率がより高いことから,また病期診断に重要であるため,気管支鏡検査がより低侵襲の方法に加えて,あるいはそれに代わって施行される場合が多い。洗浄,擦過,および生検(視認できる気管支内病変,ならびに気管傍,気管分岐部,縦隔,および肺門リンパ節)を組み合わせて行うことで,しばしば組織診断が得られる。気管支鏡のガイド技術の進歩により,診断率が高まり,より多くの末梢病変を採取できる精度が向上した。超音波気管支鏡(EBUS)ガイド下生検は気管支鏡検査中に施行でき,診断精度が極めて高い。解剖学的な理由によりリンパ節を採取できない場合を除き,EBUSは現在,縦隔病変の病期分類に選択される方法である。

縦隔鏡検査は縦隔リンパ節評価のための標準検査であるが,よりリスクの高い手技であり,通常は胸部手術の前に,腫脹した縦隔リンパ節内の腫瘍の存在を確定または除外するために使用される。

開胸肺生検は,開胸,または胸腔鏡補助を用いて行われるが,臨床的特徴およびX線の特徴から腫瘍が切除可能であることが強く示唆される患者において,より侵襲性の低い方法で診断が得られない場合に適応となる。

穿刺吸引生検で得られる組織は,正確な遺伝子検査を行うには少なすぎるため,コア生検【訳注:太い針を用いて大きな組織サンプルを採取すること】の方が望ましい。

スクリーニング

肺癌のスクリーニングは早期患者に有益と考えられており,特に外科的切除で治療可能な早期のNSCLCに対する有益性が大きく,現在は高リスク集団に推奨されている。ある大規模な研究(1)では,低線量ヘリカルCT(LDCT)を使用した年1回のスクリーニングは,胸部X線を使用したスクリーニングと比べて肺癌による死亡率を20%減少させた。この研究が対象とした高リスク集団は30 pack-year以上の元喫煙者(禁煙後15年以内)または現喫煙者と定義され,主な年齢層は55~74歳であった。しかしながら,LDCTによるスクリーニングはリスクが高くない患者には適切でない可能性がある。

また,米国Preventive Services Task Force(USPSTF)は,「中等度の純利益」を根拠として,30 pack-year以上の喫煙歴を有し,現在も喫煙しているか禁煙期間が15年未満である55~80歳の無症状の喫煙者を対象とした年1回のLDCTスクリーニングを推奨している(2)。スクリーニングの前に,医療提供者と患者が共同での意思決定を行うべきである。スクリーニングでは,治療を拒否すると予想される患者や重篤な併存症のために治療を完了できないと予想される患者など,早期発見が有益とならない見込みのある患者を対象から除外すべきである。さらに,LDCTスクリーニングは,LDCTへの習熟が確認されていて,かつフォローアップのための確立された診断・治療プロトコールを遵守している施設で実施するよう推奨されている。

将来的には,肺癌のスクリーニングには,遺伝子マーカー(例,K-rasp53EGFR)の分子解析,喀痰細胞診,および呼気中のがん関連の揮発性有機化合物(例,アルカン,ベンゼン)の検出が組み合わせて用いられる可能性がある。

診断に関する参考文献

病期分類

SCLCには2つの病期がある

  • 限局型

  • 進展型

限局型SCLCは片側胸郭(同側のリンパ節を含む)に限定される癌で,胸水も心嚢液もなく,放射線療法で耐容可能な1つの照射野内に収まるものである。

進展型は,片側胸郭の範囲を超える癌,もしくは胸水または心嚢液中に悪性細胞が検出されるものである。SCLC患者の3分の1未満が限局型の症例である;それ以外の患者はしばしば広汎な遠隔転移を有する。

NSCLCには,I期からIV期までの4つの病期がある(TNM分類を用いる)。TNM分類は,腫瘍の大きさ,腫瘍および転移リンパ節の位置,ならびに遠隔転移の有無に基づいた病期分類である(Professional.see table 肺癌の新しい国際病期分類)。

初期評価および病期分類のための検査

全ての肺癌患者において,画像診断により癌が広がっているかどうかを判断する必要がある。様々な組合せの検査を行える。ルーチンに行われる検査もあれば,結果が治療の決定に影響するかどうかに基づいて行われる検査もある:

  • PETまたはPET–CT

  • 頸部から骨盤までのCTおよび骨シンチグラフィー(PET–CTが行えない場合)

  • 胸部MRI(肺尖部または横隔膜に近い腫瘍に対し,血管供給を評価するため)

  • 疑わしいリンパ節の生検(PETではっきりしない場合)

  • 頭部CTまたは脳MRI

PET–CTが行えない場合は,頸部から上腹部までの薄層高分解能CT(HRCT―頸部,鎖骨上,肝臓,および副腎への転移を検出するため)が,SCLCおよびNSCLCの病期診断で最初に行う検査の1つとなる。しかしながら,CTではしばしば,胸腔内リンパ節腫大が炎症後のものか悪性のものかの鑑別,また肝臓または副腎の病変が良性であるか悪性であるかの鑑別(病期決定にかかわる鑑別)ができない。したがって,これらの領域に異常がある場合は,通常その他の検査が行われる。

PETはかなり正確で非侵襲的な検査であり,縦隔リンパ節の悪性病変およびその他の遠隔転移を同定するために用いられる(代謝による病期診断)。PET-CT複合機では,単一のガントリー内でスキャンすることにより,PETとCTの画像が組み合わされて1枚の画像として提供されるため,別々の機械で撮影した2枚のCTとMRIの画像を視覚的に比較するより正確にNSCLCの病理診断が行える。PETおよびPET–CTには費用,利用可能性,および特異度の点で限界がある(すなわち,この検査はかなり感度が高く陰性適中率は極めて高いが,陽性適中率はそれほど高くない)。

PETの結果で診断がはっきりしない場合,気管支鏡検査,縦隔鏡検査,または胸腔鏡下手術(VATS)が転移が疑わしい縦隔リンパ節の生検に用いられることがある。PETを行わない場合,針生検によって疑わしい肝臓または副腎の病変を評価しなければならない。

胸部MRIは,肺尖部の(パンコースト)腫瘍および横隔膜周辺の悪性腫瘍(例,中皮腫)の病期分類において胸部高分解能CTよりも若干正確性が高く,また腫瘍周囲の脈管構造の評価が得られる。

血液検査が通常行われる。カルシウムとアルカリホスファターゼの測定値が上昇していれば,骨転移の可能性が示唆される。血算,血清アルブミン値,AST,ALT,総ビリルビン,電解質,クレアチニン濃度など,その他の血液検査は,病期診断には役立たないが,患者が治療にどれだけ耐えられるかについて重要な予後情報をもたらし,また腫瘍随伴症候群の存在を確認できる可能性がある。

診断後,全ての肺癌患者は脳画像検査を受けるべきである;CTよりMRIが好ましい。脳画像検査は頭痛または神経学的異常のある患者において特に必要である。

骨痛やカルシウムまたはアルカリホスファターゼの血清値上昇がみられる患者はPET-CTを受けるべきであり,PET-CTが受けられない場合は骨シンチグラフィーを受けるべきである。

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肺癌の新しい国際病期分類

分類

説明

原発腫瘍(T)

Tis

上皮内癌(carcinoma in situ)

T1

腫瘍の大きさが 3cmで,かつ葉気管支より中枢への浸潤がない

T1a

腫瘍の大きさが 2cm

T1b

腫瘍の大きさが > 2cmかつ 3cm

T2

腫瘍の大きさが > 3cmかつ 7cmまたは以下のいずれかに当てはまる:

  • 気管分岐部から 2cm遠位の主気管支への浸潤

  • 臓側胸膜への浸潤

  • 肺門部に及ぶが肺全体には広がってない無気肺または閉塞性肺炎を伴う

T2a

腫瘍の大きさが > 3cmかつ 5cm

T2b

腫瘍の大きさが > 5cmかつ 7cm

T3

腫瘍の大きさが > 7cmまたは以下のいずれかに当てはまる:

  • 胸壁,横隔膜,横隔神経,縦隔胸膜,壁側心膜,または気管分岐部から遠位 < 2cmの主気管支への浸潤があるが,気管分岐部への浸潤はない

  • 肺全体の無気肺または閉塞性肺炎

  • 同一肺葉内に離れた腫瘍結節が複数ある

T4

腫瘍の大きさに関係なく以下のいずれかに当てはまる:

  • 縦隔,心臓,大血管,気管,反回神経,食道,椎体,または気管分岐部への浸潤

  • 同側の異なる葉に1つ以上の衛星腫瘍

所属リンパ節(N)

N0

所属リンパ節転移なし

N1

同側気管支周囲または同側肺門リンパ節またはその両方への転移,および原発腫瘍の直接浸潤によるものを含む肺内リンパ節転移

N2

同側縦隔リンパ節または気管分岐部リンパ節またはその両方への転移

N3

対側縦隔リンパ節,対側肺門リンパ節,同側もしくは対側前斜角筋リンパ節,または鎖骨上リンパ節への転移,またはこれらの組合せ

遠隔転移(M)

M0

遠隔転移なし

M1

遠隔転移あり

M1a

以下のいずれかを伴う腫瘍:

  • 対側肺に1つ以上の腫瘍結節

  • 胸膜結節

  • 悪性胸水または悪性心嚢液

M1b

遠隔転移(胸郭外)

病期分類

  • 0期:Tis N0 M0

  • IA期:T1a–T1b N0 M0

  • IB期:T2a N0 M0

  • IIA期:T1a–T2a N1 M0またはT2b N0 M0

  • IIB期:T2b N1 M0またはT3 N0 M0

  • IIIA期:T1a–T2b N2 M0またはT3 N1–N2 M0またはT4 N0–N1 M0

  • IIIB期:T1a–T3 N3 M0またはT4 N2–N3 M0

  • IV期:T(不問)N(不問)M1a~M1b

Adapted from Edge SB, Byrd DR, Compton CC, et al: AJCC Cancer Staging Manual, 7th edition. New York, Springer, 2010.

予後

SCLCは全体的に予後不良である。限局型SCLCの生存期間の中央値は20カ月で,5年生存率は20%である。進展型SCLCの患者は特に予後不良で,5年生存率は1%を下回っている。

NSCLCでは,5年生存率が病期によって異なり,I期の患者では60~70%,IV期の患者では1%未満である。転移のあるNSCLC患者では,無治療での生存期間が平均6カ月であるのに対し,治療を受けた場合の生存期間の中央値は約9カ月である。近年,NSCLC患者の生存期間は,早期および晩期においてともに改善している。早期症例(IB~IIIB期)において,外科的切除後プラチナ製剤をベースとする化学療法レジメンを用いた場合,生存期間が改善することをエビデンスが示している。さらに,IV期患者,特にEGFR変異,EML-4-ALK転座,またはROS-1転座がある患者において,分子標的療法により生存期間の改善が得られている。5年全生存率は約17%である。

治療

  • 手術(細胞の種類および病期に依存)

  • 化学療法

  • 放射線療法

  • 免疫療法

肺癌の治療は細胞の種類および病期によって異なる。腫瘍とは関係のない多くの患者因子も治療の選択に影響する。積極的な治療による治癒が技術的には可能かもしれない場合でも,低い心肺予備能,低栄養,フレイルまたは全身状態不良(例えばKarnofsky performance status[PS]やEastern Cooperative Oncology Group[ECOG] PSで評価する),併存症(血球減少症を含む),および精神障害または認知障害は全て,根治的治療よりも緩和治療を選択する,または全く治療しないという決定につながる可能性がある。

放射線療法は,肺の広範囲が高線量の放射線に長期間曝露する場合,放射線肺炎のリスクを伴う。放射線肺炎は治療終了から3カ月後まで生じる可能性がある。咳嗽,呼吸困難,微熱,または胸膜性胸痛は,放射線肺炎を示唆している可能性があり,胸部の聴診で認められる断続性ラ音または胸膜摩擦音も同様である。胸部X線では非特異的な所見がみられる可能性がある;CTでは明瞭な腫瘤を伴わない非特異的な浸潤影がみられる可能性がある。診断はしばしば除外診断の1つである。放射線肺炎は,コルチコステロイドの数週間にわたる漸減投与および症状緩和のために気管支拡張薬を用いた治療が可能である。

腫瘍細胞の破壊に高周波電流を用いるラジオ波焼灼術は,早期の小さな腫瘍または以前放射線療法を受けた胸部に再発した小さな腫瘍を有する患者に対してときに使用される手法である。この手技は,開胸手術に比べ肺機能をより温存できる可能性があり,また侵襲性がより低いため,開胸手術の適応がない患者で適切となりうる。

免疫療法は,体の免疫系を利用して癌を排除する技術であり,PD-1またはPDL-1の発現が高い場合,進行(IV)期の非小細胞肺癌の治療に使用される(Professional.see table 非小細胞肺癌に対する主な分子標的療法薬)。

SCLC

SCLCはいずれの病期でも典型的に最初は治療に反応するが,通常すぐに反応しなくなる。病期に応じて放射線療法併用または非併用の化学療法が行われる。多くの患者において,化学療法は生存期間の延長およびQOLの改善をもたらすため,その実施には十分なレベルの正当性がある。手術は一般にSCLCの治療には役に立たないものの,腫瘍が小さく局所性で浸潤を伴わず(例えば孤立性肺結節),腫瘍がSCLCと同定される前に外科的切除が行われたまれな症例では,手術により治癒することがある。

エトポシドとプラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチンのいずれか)の化学療法レジメンが一般的に使用され,また,イリノテカン,ノギテカン,ビンカアルカロイド系(ビンブラスチン,ビンクリスチン,ビノレルビン),アルキル化薬(シクロホスファミド,イホスファミド),ドキソルビシン,タキサン系(ドセタキセル,パクリタキセル),およびゲムシタビンなど,その他の薬剤の使用も一般的である。

限局型では,病変が片側胸郭に限定されている場合,放射線療法によって臨床転帰がさらに改善する;放射線療法に対するこのような反応性が限局型の定義の基礎となった。一部の症例では,脳転移を予防するための予防的頭蓋照射も推奨される;SCLCでは微小転移がよくみられること,また,化学療法の薬物が血液脳関門を通過しにくいことによる。

進展型では,治療は放射線療法よりも化学療法が中心であるが,骨または脳への転移に対する緩和治療として放射線療法がしばしば用いられる。化学療法に対し極めて反応のよい患者には,限局型SCLCと同様,脳内のSCLC増殖を防ぐため,ときに予防的放射線頭蓋照射が用いられる。化学療法で完全奏効に近い反応が得られた一部のまれな患者では,ときに胸部放射線療法によって病勢コントロールが改善されるようである。エトポシドの代わりにトポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカンまたはノギテカン)を用いることで,生存期間が延長するかどうかは不明である。これらの薬物の単独投与または他の薬物との併用投与は,難治例および再発例(病期は問わない)でも一般的に使用される。

一般的に,再発SCLCは予後不良であるが,PS(performance status)が良好に保たれている患者には臨床試験におけるさらなる治療を勧めるべきである。

NSCLC

NSCLCの治療では典型的には手術の適格性が評価され,それに続いて腫瘍の種類および病期に基づき,必要に応じて手術,化学療法,放射線療法,またはこれらの組合せが選択される。

I期およびII期における標準的な治療アプローチは,肺葉切除または肺全摘除いずれかの外科的切除と同時に,縦隔リンパ節の検体採取または完全なリンパ節郭清を行うことである。区域切除および楔状切除などのより小範囲の切除は,肺予備能が乏しい患者に対して考慮される。手術で治癒が得られるのは,I期の患者で約55~70%,およびII期の患者で約35~55%である。肺癌に熟練した胸部腫瘍外科医が外科的切除を行った場合,予後はより優れているようである(1, 2)。外科的切除の候補者で,リスクの高い早期肺癌の患者には,手術の代わりに(定位または通常の)放射線療法または高周波アブレーションなどの局所的な非外科治療が行われることがある。

術前肺機能が評価される。NSCLCにおける手術は,一葉または片肺を切除しても十分な肺予備能が期待される場合にのみ行われる。術前の1秒量(FEV1)が > 2Lである患者は,一般的に肺全摘除術に耐えうる。FEV1< 2Lの患者は,切除の結果失うと考えられる肺機能の程度を判定するため,キセノン放射性核種による定量的血流シンチグラフィーを受けるべきである。術後のFEV1は,切除されない肺の血流の割合に術前のFEV1を乗じることによって予測できる。予測FEV1> 800mLまたはFEV1予測正常値の40%を超えれば,術後の肺機能が十分であることが示唆されるが,COPD患者における肺容量減少手術の研究では,FEV1 < 800mLの患者でも,ほぼ機能していないブラの肺領域(一般的に肺尖部)に癌がある場合は切除に耐えうることが示唆されている。

アジュバント化学療法は現在のところII期またはIII期の患者に対する標準治療であり,IB期で腫瘍の大きさが > 4cmの患者に行われることもある。臨床試験では,アジュバント化学療法を用いることで5年生存率が上昇することが証明されている。しかしながら,アジュバント化学療法を用いるかどうかは,患者の併存疾患およびリスク評価によって決まる。一般的に用いられる化学療法のレジメンは,シスプラチンを含む2剤併用(シスプラチンと,その他の化学療法薬[ビノレルビン,ドセタキセル,パクリタキセルなど]の併用)である。早期NSCLCにおけるネオアジュバント(術前)化学療法もよく用いられ,これはシスプラチンを含む2剤併用4サイクルによる。シスプラチンを投与できない患者では,カルボプラチンに置き換えてもよい。複数の試験で免疫療法薬によるネオアジュバント療法が検討されている。

III期は化学療法,放射線療法,手術,またはこれらの組合せによって治療する;治療の順序および選択は,病変の位置および併存疾患に依存する。一般に,化学療法と放射線療法の同時施行は,臨床病期IIIA期の切除不能例に対する標準治療と考えられているが,生存期間は依然不良である(生存期間の中央値は10~14カ月)。IIIB期で対側縦隔リンパ節転移または鎖骨上リンパ節転移を伴う患者には,放射線療法または化学療法もしくはそれらの併用が勧められる。局所進行例で心臓,大血管,縦隔,または脊椎への浸潤がみられる患者には,通常は放射線療法が施行される。一部の患者(例,T4 N0 M0の腫瘍を有する患者)では,外科的切除に加えて,化学療法と放射線療法の併用による術前またはアジュバント療法を施行できる場合がある。IIIB期の患者が治療を受けた場合の5年生存率は5%である。

IV期では,症状の緩和が治療の目標となる。腫瘍量を減らし,症状を緩和し,QOLを改善するために,化学療法,分子標的薬,および放射線療法が用いられることがある。しかしながら,分子標的薬で治療できる変異が同定されない場合,生存期間の中央値はわずか9カ月であり,1年以上生存する患者は < 25%である。緩和的外科手技が必要になることがあり,そうした手技には反復性の胸水に対する胸腔穿刺および胸膜癒着術,胸腔ドレーン留置,気管および主気管支に及ぶ腫瘍に対する気管支鏡下の高周波療法,気道閉塞を予防するためのステント留置,および一部の症例では,切迫した脊髄圧迫に対する脊椎の安定化などがある。

NSCLCに対する分子標的療法

NSCLCの治療は精密医療(precision medicine)に基づいて行われる。腺癌では分子生物学的解析により,治療の指針となる特定の変異が検索される(Professional.see table 非小細胞肺癌に対する主な分子標的療法薬)。この分野は急速に進歩を遂げており,現在新しい薬剤の評価が行われている。NSCLCの治療では,いくつかの免疫療法薬(ニボルマブ,ペンブロリズマブ,アテゾリズマブ)を利用できる。これらの薬剤は,免疫応答を刺激し,癌が異物と認識されるよう促し,自然免疫の反応を妨げる腫瘍の能力を阻害する。これらの薬剤は,化学療法(ほとんどの場合プラチナ製剤の2剤併用療法)を行っても腫瘍が進行する場合に使用され,この治療に反応する腫瘍の特性を判定するために広範な研究が行われている。例えば,PD-L1タンパク質の発現が高い腫瘍はペムブロリズマブに反応する。

発がんドライバー変異のある腫瘍に対しては,標的治療がまず使用される。IV期の患者で,EGFRの感受性変異(すなわち,エクソン19の欠損,エクソン21 L858変異)をもつ場合,EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が第1選択薬として投与されることがある;標準化学療法を用いた場合よりも奏効率および無増悪生存期間が良好である。EGFR TKIにはゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ,およびブリグチニブなどがある。オシメルチニブは,後天性のT790M変異を伴うEGFR変異NSCLCの第1選択薬である。発がんドライバー変異のない非扁平上皮NSCLC患者では,転帰を改善するため,血管内皮増殖因子阻害薬であるベバシズマブと標準的化学療法(例,カルボプラチン+パクリタキセルなどのプラチナ製剤の2剤併用)を併用できる。ネシツムマブは現在,NSCLC扁平上皮癌に対する一次治療として,シスプラチン+ゲムシタビンと組み合わせて利用できる。EML -4-ALK転座のある患者にはALKおよびROS-1阻害薬(クリゾチニブ,セリチニブ,またはアレクチニブ)を投与すべきである。ALK変異を有する患者には,アレクチニブまたはセリチニブが使用できる。BRAF変異を有する患者には,BRAF阻害薬(例,ダブラフェニブ,トラメチニブ)が有益である。他にも多くの標的生物製剤が研究段階にあり,その中には,腫瘍細胞のシグナル伝達経路や増殖する腫瘍細胞に酸素と栄養を供給する血管新生の経路を特異的に標的とするものなどがある。

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非小細胞肺癌に対する主な分子標的療法薬

標的

薬剤

NSCLC

ALKの遺伝子再構成

アレクチニブ

ブリグチニブ

セリチニブ

クリゾチニブ

腺癌

BRAF変異

ダブラフェニブ

トラメチニブ

腺癌

扁平上皮癌

EGFR変異

アファチニブ

エルロチニブ

ゲフィチニブ

ネシツムマブ

腺癌

扁平上皮癌

EGFR(T790M変異)

オシメルチニブ

腺癌

血管の増殖を阻害する

ベバシズマブ

ラムシルマブ

腺癌

免疫活性化(チェックポイント阻害薬)

アテゾリズマブ

ニボルマブ

ペムブロリズマブ

腺癌

扁平上皮癌

NSCLC = 非小細胞肺癌

再発肺癌

治療後に再発した肺癌に対する治療選択肢は部位によって異なり,転移に対する反復化学療法または分子標的薬,局所再発または転移による疼痛に対する放射線療法,および追加の体外照射療法に耐えられない場合の気管支内病変に対する密封小線源治療などがある。まれに,孤立性転移巣の外科的切除または緩和目的の外科的切除が考慮される。

局所再発したNSCLCの治療は,原発腫瘍のI期からIII期と同様のガイドラインに従う。最初に手術が行われた場合,放射線療法が主な治療法となる。再発が遠隔転移として現れる場合,患者はIV期の症例のように,症状緩和に重点を置いて治療される。

再発または転移性のIV期のNSCLCに対する治療には,化学療法または新しい分子標的薬などがある。何を選択するかは,腫瘍の組織型,患者の身体機能状態,および患者の希望によって決定する。例えば,ゲフィチニブまたはエルロチニブなどのEGFR TKIは,例え患者がEGFRの感受性変異をもっていなくとも第2または第3選択の治療として用いることができる。NSCLCが進行した場合,一般に生検を繰り返し変異解析を繰り返し行うことで,先行きの治療の指針とすることができる。

肺癌の合併症

無症状の悪性胸水には治療の必要はない。症状のある胸水の初期治療は胸腔穿刺による。症状のある胸水で,複数回の胸腔穿刺にもかかわらず再発するものは,胸腔ドレーンによって排液する。胸腔内にタルク(あるいは,ときにテトラサイクリンまたはブレオマイシン)を注入する手技(胸膜癒着術)は,胸膜に瘢痕を生じさせ,胸腔の空間を消失させ,90%以上の症例で有効となる。胸膜癒着術は外科的に行うことも可能であり,その場合しばしばVATSが用いられる。

上大静脈症候群の治療は肺癌の治療と同じであり,化学療法(SCLC),放射線療法(NSCLC)またはそれらの併用(NSCLC)である。コルチコステロイドは広く使用されているが,有効性は証明されていない。

肺尖部の腫瘍により生じたホルネル症候群の治療には,術前放射線療法併用もしくは非併用の手術,またはアジュバント化学療法併用もしくは非併用の放射線療法である。

腫瘍随伴症候群の治療は,症候群の種類によって異なる。

終末期ケア

全生存率が低いため,終末期ケアの必要性を見越しておくべきである。研究では,早期の緩和ケア介入が終末期化学療法の使用を減らし,生存期間を延長させる可能性さえある(すなわち,積極的な治療の有害作用を避けることによる)ことが報告されている。

息切れの症状は酸素投与と気管支拡張薬によって治療できる。終末期前の息切れにはオピオイドで対処できる。

疼痛,不安,悪心,および食欲不振が特によくみられ,モルヒネの非経口投与;オピオイドの経口,経皮,または非経口投与;および制吐薬によって治療できる。

ホスピスプログラムにより提供されるケアは患者および家族に極めて広く受容されているにもかかわらず,使用が著しく少ない。

治療に関する参考文献

  • 1.Farjah F, Flum DR, Varghese TK Jr, et al: Surgeon specialty and long-term survival after pulmonary resection for lung cancer.Ann Thorac Surg 87 (4):995–1004, 2009.doi: 10.1016/j.athoracsur.2008.12.030.

    2.Schipper PH, Diggs BS, Ungerleider RM, Welke KF: The influence of surgeon specialty on outcomes in general thoracic surgery: A national sample 1996 to 2005.Ann Thorac Surg 88 (5):1566–1572, 2009.doi: 10.1016/j.athoracsur.2009.08.055.

予防

肺癌予防のための積極的介入には,禁煙を除いて,効果があると証明されているものはない。

個人住宅における高いラドン濃度を改善することで,既知の発がん性放射線を取り除くことはできるが,これが肺癌発生率を低下させることは証明されていない。

食事でレチノイドおよびβ-カロテンが豊富な果物および野菜の摂取量を増やすことは,肺癌発生率に影響がないようである。喫煙者におけるビタミン補給は,有効性が証明されていないか(ビタミンE),有害である(β-カロテン)。NSAIDおよびビタミンEの補給が元喫煙者を肺癌から保護しうることを示唆するエビデンスはいまだ確認されていない。禁煙以外の化学予防を行う場合は,必ず臨床試験の一環として行うべきである。

細胞シグナル伝達および細胞周期経路ならびに腫瘍関連抗原を標的とする新しい分子療法(精密化学予防[precision chemoprevention])が,現在研究中である。

要点

  • 肺癌に寄与する主要因は喫煙である。

  • 全肺癌患者のうち15%は喫煙歴が全くなく,ドライバー変異をもつ可能性が疑われる。

  • 肺癌は小細胞肺癌(SCLC)または非小細胞肺癌(NSCLC)のいずれかである。

  • NSCLCでは,分子標的薬に反応するドライバー変異がいくつか同定されている;新たに診断された腺癌では,EGFR,ALK,およびROS1の変異を調べるべきである。

  • 症候には,咳嗽,発熱,嗄声,胸水,肺炎,パンコースト腫瘍,腫瘍随伴症候群,上大静脈症候群,ホルネル症候群,ならびに脳,肝,および骨への転移などがありうる。

  • 診断は臨床情報および画像検査(例,CT,PET-CT)に基づいて疑い,組織学的に(例,喀痰または胸水の細胞診もしくはコア生検)確定する。

  • 高リスク群である ≥ 55歳の喫煙者には,毎年の低線量ヘリカルCTによるスクリーニングを考慮する。

  • 病期診断のため検査を行う(全身の画像検査から始める)。

  • 早期NSCLCは肺予備能が十分であれば切除により治療し,しばしば術後化学療法を併用する。

  • 進行型のSCLCおよびNSCLCは化学療法および/または免疫療法により治療する。

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