閉塞性睡眠時無呼吸症候群

執筆者:Kingman P. Strohl, MD, Case School of Medicine, Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2020年 9月
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閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は,睡眠時に生じ呼吸停止(10秒を超える無呼吸または低呼吸と定義される)を引き起こす部分的または完全な上気道閉塞エピソードから成る。症状としては,日中の過度の眠気,不穏状態,いびき,反復性覚醒,起床時の頭痛などがある。診断は睡眠歴および睡眠ポリグラフ検査に基づく。治療は,持続陽圧呼吸療法(CPAP),口腔内装置,および難治例では手術による。治療を行えば予後は良好である。ほとんどの症例は未診断かつ未治療のままであり,しばしば高血圧,心房細動およびその他の不整脈,心不全,ならびに過度の眠気による自動車およびその他の事故に起因する外傷や死亡に関連する。

小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群も参照のこと。)

リスクのある患者では,睡眠により上気道の開存性が不安定になり,上咽頭または中咽頭もしくはその両方が部分的または完全に閉塞する。

閉塞性睡眠時低呼吸は,呼吸がないわけではないが,減弱している場合に生じる。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の有病率は成人で2~9%である;この病態は十分認識されておらず,症状のある患者でさえ未診断であることが多い。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は男性で4倍多く,肥満患者(すなわち,BMI[body mass index] > 30)で7倍多い。重症OSA(無呼吸低呼吸指数[AHI] > 30/時)は中年男性の死亡リスクを上昇させる。

医学計算ツール(学習用)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は,日中の過度の眠気(ときに覚醒中の眠気と呼ばれる)の原因として最多であり,自動車衝突事故,雇用の喪失や性機能障害のリスクを高める。ベッドパートナー,ルームメイト,同居者も睡眠困難に陥る可能性があるため,これらの人々との関係にも悪影響を及ぼすことがある。

無治療のOSAで長期的に生じうる心血管系の続発症として,コントロール不良の高血圧心不全心房細動(カテーテルアブレーション後にも生じる),その他の不整脈などがある(1)。OSAは非アルコール性脂肪性肝疾患のリスクも高めるが,これは夜間の間欠的な低酸素症と睡眠障害が原因である可能性が高い(2)。

総論の参考文献

  1. 1.Zinchuk AV, Jeon S, Koo BB, et al: Polysomnographic phenotypes and their cardiovascular implications in obstructive sleep apnoea.Thorax 2018 73(5):472–480, 2018.doi: 10.1136/thoraxjnl-2017-210431

  2. 2.Musso G, Cassader M, Olivetti C, et al: Association of obstructive sleep apnoea with the presence and severity of non-alcoholic fatty liver disease.A systematic review and meta-analysis. Obes Rev 14:417–431, 2013.

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の病因

閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する解剖学的な危険因子には以下のものがある:

  • 短いか後退した下顎のために「混み合っている」中咽頭

  • 舌根部および扁桃の肥大

  • 丸い頭部および短い首

  • > 43cm超(17インチ超)の首周囲径

  • 咽頭側壁の肥厚

  • 副咽頭側方の間隙にある脂肪組織

解剖学的危険因子は肥満患者によくみられる。

その他危険因子として同定されているものには,閉経後であること,加齢,および飲酒または鎮静薬の使用などがある。25~40%の症例で閉塞性睡眠時無呼吸症候群の家族歴がみられるが,このことはおそらく,換気ドライブまたは頭蓋顔面構造に影響を与える遺伝因子の存在を反映している。ある家系員のOSAのリスクは,家系の患者数に比例する。

先端巨大症甲状腺機能低下症,およびときに脳卒中がOSAの原因または寄与因子となることがある。OSA患者で比較的高頻度に生じる疾患には,高血圧脳卒中糖尿病高脂血症胃食道逆流症,夜間狭心症,心不全,および心房細動またはその他の不整脈などがある。

肥満は閉塞性睡眠時無呼吸症候群および肥満低換気症候群の共通の危険因子であるため,この2つの病態は併存することが多い。

上気道閉塞に対抗する吸気努力により,発作的な吸気,ガス交換の減少,正常な睡眠構築の乱れ,および睡眠からの不完全なまたは完全な覚醒を来す。これらの因子が相互作用し,低酸素症,高炭酸ガス血症,ならびに睡眠の分断化による合併症および死亡をもたらす(1)。

OSAは,睡眠に関連する上気道抵抗上昇に伴う症候群である。酸素飽和度低下を引き起こさない,より軽症の病態には以下のものがある:

  • いびき症

  • 吸気時雑音を生じるが睡眠覚醒を伴わない上気道の気流抵抗の上昇

  • 上気道抵抗症候群(呼吸努力関連覚醒[RERA]により止む漸増性のいびきを特徴とする)

上気道抵抗症候群の患者は,典型的にはOSA患者より若年で肥満度が低く,原発性のいびき症患者よりも日中の眠気をよく訴える。頻回に覚醒が生じるが,無呼吸および低呼吸の厳密な基準は満たさないことがある。いびき症および上気道抵抗症候群の症状,診断評価,および治療は,その他の点では閉塞性睡眠時無呼吸症候群と同様である。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Zinchuk AV, Jeon S, Koo BB, et al: Polysomnographic phenotypes and their cardiovascular implications in obstructive sleep apnoea.Thorax 73(5):472–480, 2018.doi: 10.1136/thoraxjnl-2017-210431

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状と徴候

大きな激しいいびきは閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者の85%で報告されているものの,いびきがみられる人のほとんどは閉塞性睡眠時無呼吸症候群ではない。閉塞性睡眠時無呼吸症候群のその他の症状としては以下のものがある:

  • 睡眠中の息詰まり,喘ぎ,または鼻鳴らし

  • 浅くて休息感の得られない睡眠

  • 熟睡できない

患者の大半は(症状が睡眠中に生じるため)これらの症状に気づかないが,ベッドパートナー,ルームメイト,同居者によって知らされる。朝になって咽頭痛,口腔乾燥,または頭痛がみられる患者もいる。

日々の活動中に強烈な眠気,疲労,集中力の低下が生じることもある。睡眠愁訴の頻度および日中の眠気の程度は,イベントまたは睡眠からの覚醒の回数とあまり相関しない。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断

  • 症状による基準

  • 睡眠検査

危険因子,症状,またはその両方が同定できる場合,閉塞性睡眠時無呼吸症候群が疑われる。

リスクを評価するのに,STOP-Bang,Berlin Questionnaire,エプワース眠気スケール(Epworth Sleepiness Scale)などの質問票を使用することができる。ただし,睡眠検査による精度の高い結果と比較すると,これらの質問票は特異度が低く,したがって,偽陽性率が高い(1, 2)。複数の手法を用いるSTOP-BANGとBerlin Questionnaireは,エプワース眠気スケールと比べて特異度が高い(3)。

診断基準は日中の症状,夜間の症状,および睡眠モニタリングの項目で構成されており,睡眠モニタリングでは,1時間に5回を超える低呼吸および/または無呼吸エピソードが認められ,症状を伴っている場合と,症状を伴わないが1時間に15回を超える無呼吸エピソードが認められる場合が記録される。具体的には,症状に関して,次のうち1つ以上を認める必要がある:

  • 日中の眠気,意図しない睡眠エピソード,休息感の得られない睡眠,疲労,または睡眠の継続困難

  • 息こらえ,喘ぎ,または息詰まりによる覚醒

  • 患者の睡眠中の大きないびき,呼吸の中断,またはその両方をベッドパートナーが報告

医学計算ツール(学習用)

患者だけでなく,ベッドパートナー,ルームメイト,同居者がいる場合は,その全員を臨床的なリスク評価の情報源とする。

OSAは日中の過度の眠気を引き起こす最も一般的な内科疾患であるが,その鑑別診断は範囲が広く,以下のものが含まれる:

  • 睡眠衛生不良による睡眠の量または質の低下

  • 薬剤,慢性疾患(心血管疾患や呼吸器疾患など),または代謝性障害とそれに伴う治療による鎮静または精神状態の変化

  • うつ病(これもしばしばOSAの認識を混乱させる)

  • アルコールまたは薬物乱用

  • ナルコレプシーとその他の原発性の過眠症候群

  • その他の原発性睡眠障害(例,レストレスレッグス症候群周期性四肢運動障害

以下に該当する全ての患者で,詳細な睡眠歴を聴取すべきである:

  • 年齢が約65歳以上

  • 日中の疲労,眠気,または睡眠の継続困難を訴える

  • 過体重

  • コントロール不良の高血圧(OSAによって引き起こされるまたは悪化することがある),心房細動もしくはその他の不整脈,心不全(OSAの原因となりうる),脳卒中,または糖尿病

いびきのみを報告する患者の大半では,他の症状や心血管系のリスクがなければ,閉塞性睡眠時無呼吸症候群の広範な評価は不要である。

症状と併存症に基づいて患者を臨床的に分類する研究は,OSAに対する個別化アプローチにつながることから,現在注目を集めている領域となっている(4–8)。

身体診察には,解剖学的評価(鼻閉,扁桃肥大,および咽頭構造)と甲状腺機能低下症および先端巨大症の臨床的特徴の同定を含めるべきである。

睡眠ポリグラフ検査は,閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断を確定し,OSAの重症度を定量化するのに理想的な検査である。睡眠ポリグラフ検査では,プレチスモグラフィーで呼吸努力,流量センサーで鼻および口の気流量,オキシメトリーで酸素飽和度,脳波検査で睡眠構築,顎筋電図(筋緊張低下をみる),ならびに急速眼球運動の発生を評価するための眼電図などを持続的に測定する。睡眠ポリグラフ検査は,睡眠段階,無呼吸および低呼吸の出現ならびに持続時間を記録し,それらの分類に役立つ。また患者をビデオ撮影し,心電図モニタリングを使用して不整脈が無呼吸エピソードに同期して起こるかどうかを判定する。その他に評価するものには,四肢の筋活動(レストレスレッグス症候群および周期性四肢運動障害などの,睡眠覚醒の非呼吸性の原因を評価するため)および体位(無呼吸は仰臥位でのみ起こりうる)などがある。

無呼吸‐低呼吸指数(AHI)は,睡眠中に起きた無呼吸および低呼吸エピソードの総数を睡眠時間で割って得られるもので,睡眠中の呼吸障害,ひいては睡眠時無呼吸症候群の重症度を説明するのに用いられる一般的な要約指標である。AHI値は異なる睡眠段階毎に計算が可能である。睡眠時無呼吸症候群は以下に分類されることがある:

  • 軽症:AHI 5~15

  • 中等症:AHI 15~30

  • 重症:AHI > 30

呼吸障害指数(RDI)は類似の尺度で,呼吸努力に関連した特定の覚醒エピソード(呼吸努力関連覚醒またはRERAと呼ばれる)の回数に,睡眠1時間当たりの無呼吸および低呼吸エピソードの回数を加えたものを表す。

覚醒指数(AI)は睡眠1時間当たりの覚醒回数であり,脳波モニタリングを用いれば計算することができる。覚醒指数は無呼吸低呼吸指数または呼吸障害指数と相関する場合があるが,無呼吸および酸素飽和度低下エピソードの約20%は,覚醒を伴わないか,他の覚醒原因が存在する。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断には無呼吸低呼吸指数 > 5である必要があり,AHI > 15は中等度の睡眠時無呼吸を,> 30は重度の睡眠時無呼吸を示唆する。隣室でも聞こえるほどの大きないびきでは,無呼吸低呼吸指数 > 5である可能性が10倍増加する。覚醒指数および呼吸障害指数は,患者の症状と中程度にしか相関しない。しかしながら,転帰を臨床データと睡眠ポリグラフデータの両方と関連付けて検討した最近の研究では,(AHIだけでなく)複数の変数を複合した指標が死亡率に影響を及ぼすことが示唆された(9)。

無呼吸を検出して重症度を判定する目的で携帯型の診断ツール(自宅睡眠検査)を使用することが増えてきている。携帯式モニターは,心拍数,パルスオキシメトリー,呼吸努力,体位,および鼻の気流量を測定できるため,患者が自己申告する睡眠中に生じた呼吸障害を適切に推定することができ,それによりモニター装着中のAHI/RDIの推移を推定することが可能になる。検査中に睡眠がみられない場合には,睡眠呼吸障害の頻度および重症度が過小評価される。携帯型の診断ツールは,患者のリスクを算出する質問票(例,STOP-Bang,Berlin Questionnaire)とともにしばしば用いられる(検査の感度および特異度は検査前確率に依存する)。携帯式ツールを用いる場合,併存する睡眠障害(例,レストレスレッグス症候群)は除外されない。異なる睡眠段階および体位の変更に伴うAHI/RDI値を測定するには,睡眠ポリグラフのフォローアップ検査が引き続き必要となることがあり,手術または陽圧呼吸療法以外の治療が検討されている場合には,これが特に重要である。

臨床的な疑いに基づき,甲状腺刺激ホルモンの測定を行ってもよい。他の補助検査(例,上気道の画像検査)で,ルーチンに推奨されるほどの診断精度をもつものはない。

診断に関する参考文献

  1. 1.Chung F, Yegneswaran B, Liao P, et al: STOP questionnaire: A tool to screen patients for obstructive sleep apnea.Anesthesiology2008;108:812–821, 2008.

  2. 2.Netzer NC, Stoohs RA, Netzer CM, et al: Using the Berlin Questionnaire to identify patients at risk for the sleep apnea syndrome.Ann Intern Med 131(7):485–491, 1999.

  3. 3.Luo J, Huang R, Zhong X, et al: STOP-Bang questionnaire is superior to Epworth sleepiness scales, Berlin questionnaire, and STOP questionnaire in screening obstructive sleep apnea hypopnea syndrome patients.Chin Med J (Engl)127(17):3065–3070, 2014.

  4. 4.Keenan BT, Kim J, Singh B, et al: Recognizable clinical subtypes of obstructive sleep apnea across international sleep centers: a cluster analysis.Sleep 41(3):zsx214, 2018.doi: 10.1093/sleep/zsx214

  5. 5.Kim J, Keenan BT, Lim DC, et al: Symptom-based subgroups of Koreans with obstructive sleep apnea.J Clin Sleep Med 14(3):437–443, 2018.doi: 10.5664/jcsm.6994

  6. 6.Keenan BT, Kim J, Singh B, et al: Recognizable clinical subtypes of obstructive sleep apnea across international sleep centers: A cluster analysis.Sleep 41(3):zsx214, 2018.doi: 10.1093/sleep/zsx214

  7. 7.Keenan BT, Kirchner HL, Veatch OJ, et al: Multisite validation of a simple electronic health record algorithm for identifying diagnosed obstructive sleep apnea.J Clin Sleep Med 16(2):175–183, 2020.doi: 10.5664/jcsm.8160

  8. 8.Mazzotti DR, Keenan BT, Lim DC, et al: Symptom subtypes of obstructive sleep apnea predict incidence of cardiovascular outcomes.Am J Respir Crit Care Med 200(4):493–506, 2019.doi: 10.1164/rccm.201808-1509OC

  9. 9.Zinchuk AV, Jeon S, Koo BB, et al: Polysomnographic phenotypes and their cardiovascular implications in obstructive sleep apnoea.Thorax 73(5):472–480, 2018.doi: 10.1136/thoraxjnl-2017-210431

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の予後

効果的な治療が開始された場合の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の予後は極めて良好である。

未治療または未診断の閉塞性睡眠時無呼吸症候群は,睡眠不足による認知障害をもたらす可能性があり,これが事故,特に自動車事故による重度の損傷または死亡につながりうる。眠気のある患者には,自動車の運転,重機の操作,またはその他意図しない睡眠エピソードが生じると危険である活動に従事することのリスクについて警告すべきである。

有害作用として生じる過度の眠気は,失業や性機能障害など,家族に大きな影響を及ぼす可能性がある。

さらに,心停止などの周術期合併症はOSAによるものとされており,これはおそらくエアウェイ抜去後に麻酔を原因として気道閉塞が生じることがあるためと考えられる。それゆえ,患者はOSAであることを全ての手術前に麻酔医に知らせ,また,術前薬物治療を受ける際および回復期にCPAPを受けることを求めるべきである。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療

  • 肥満,高血圧,飲酒,鎮静薬の使用などの危険因子の管理

  • 持続陽圧呼吸療法(CPAP)または口腔内装置

  • デバイスに反応しない解剖学的狭窄または疾患に対して,手術または神経刺激

治療の目標は,低酸素および睡眠分断化の回数を減少させることであり,患者の状態や障害の程度に合わせて治療を調整する。治療の成功は,症状が消失するとともに,AHIが閾値(通常10回/時)未満まで低下した場合と定義されている。

治療は危険因子と閉塞性睡眠時無呼吸症候群それ自体の両方に対して行う。具体的な閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療法としては,持続陽圧呼吸療法(CPAP),口腔内装置,気道の外科手術などがある。

危険因子の管理

初期治療は,肥満,高血圧,飲酒,鎮静薬使用,甲状腺機能低下症,先端巨大症,その他の慢性疾患など,閉塞性睡眠時無呼吸症候群の是正可能な危険因子の至適管理を目標とする。適度の減量(15%)を行うことで臨床的に有意な改善をみることがあるものの,大半の患者,特に疲労困憊している患者または眠気のある患者にとって減量は極めて困難である。病的肥満(BMI > 40)の患者においては,肥満外科手術により症状およびAHIの改善がしばしばみられる;しかしながら,手術による減量の程度ほど顕著な改善はみられない可能性がある。肥満外科手術をするか否かにかかわらず,減量をOSAの治療法とみなすべきではない。

持続陽圧呼吸療法(CPAP)

経鼻的持続陽圧呼吸療法は,日中の眠気を自覚するOSA患者の大半で選択すべき治療法であるが,眠気のない患者ではアドヒアランスが低くなる。CPAPは上気道で虚脱する可能性のある部位に陽圧をかけることで,上気道の開存性を改善する。効果的な陽圧の範囲は,典型的には3~15cmH2Oである。疾患の重症度は陽圧の必要量と相関しない。多くのCPAP装置が,CPAPの効果をモニタリングし,規定のアルゴリズムに従って圧を自動的に調整する。臨床的に明らかな改善がみられなければ,CPAPの効果を再検討し,患者に別の睡眠障害(例,上気道閉塞)または合併症がないか再評価すべきである。必要であれば,繰り返しの睡眠ポリグラフ検査によるモニタリングを行いながら手動で圧を設定することも可能である。AHIが改善するか否かにかかわらず,CPAPは認知障害を低減し生活の質を改善するのに加え,血圧を低下させる可能性がある。CPAPから離脱すると,数日にわたって症状が再発するが,急性病態に対する治療のための短期的な中断は通常よく耐えられる。治療期間は確立されていない(1–4)。

経鼻的CPAPの有害作用としては,乾燥や鼻の刺激感(症例によっては加温加湿した空気の使用で軽減できる),よくフィットしていないマスクによる不快感などがある。ただし,新しいデザインのマスクでは,快適性と使いやすさが改善されている。

経鼻的CPAPによる治療は不成功に終わることが多い。固有のバイアスを克服することによるアドヒアランスの改善,問題やマスクフィットへの早期からの配慮,ならびに献身的な介護者による綿密なフォローアップに注意を払うべきである。また,肥満ではないものの,呼吸に関連する覚醒閾値の低下に関連して覚醒の増加や呼吸の不規則化の傾向が高まっている患者では長期的CPAPのアドヒアランスが低いことも認識して,対応を講じる必要がある(5)。

肥満低換気症候群を併発している患者では,1回換気量を増やすために,吸気補助(二相性陽圧換気[bilevel positive airway pressure])を用いてCPAPを増強することができる。

口腔内装置

口腔内装置は,下顎を前出させるように,または少なくとも睡眠中の下顎後退を予防するように設計されている。舌を前方に引き出すよう設計された装置もある。いびきおよび軽症から中等症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療にこれらの装具を使用することが受け入れられつつある。口腔内装具とCPAPを比較した研究では,軽症から中等症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群において同等性が示されているが,費用対効果を検討した結果はない。

手術

上気道閉塞に寄与している扁桃腺肥大や鼻茸などの解剖学的因子を矯正するための外科的手技(anatomic procedure[解剖学的手技]と呼ばれる)を考慮すべきである。巨舌症または小顎症に対する手術も選択肢の1つである。解剖学的狭窄が同定されれば,手術が第1選択の治療となる。しかしながら,狭窄がない場合について手術を第1選択の治療として支持するエビデンスは乏しい。

口蓋垂口蓋咽頭形成術(UPPP)が最も頻用される術式であった。この術式では咽頭組織を切除する。現在では,UPPPはより侵襲性の低いアプローチにほぼ取って代わられており,それらの方法では,発語と嚥下に変化を生じさせることなく,咽頭の側壁を安定化させるか,鼻咽腔領域を拡大させることができる。CPAPを手術までのつなぎの治療として用いた1つの研究で,UPPPがCPAPと同等の効果をもつことが証明されたが,これらの介入の直接的な比較は行われていない。病的肥満の患者や解剖学的な気道狭小化がある患者では,UPPPを施行しても不成功に終わる可能性がある。さらに,UPPP後はいびきが消失するため,睡眠時無呼吸が気づかれにくくなる。このような症状がみられない閉塞は,外科的介入前に生じるものと同程度に重症の無呼吸エピソードを引き起こしうる。

その他の術式としては,舌正中切除術,舌骨前方移動術,上下顎前方移動術などがある。上下顎前方移動術は,UPPPで治癒が得られない場合の第2段階の術式の1つとして,ときに提案される。至適な多段階アプローチは不明である。

気管切開は,OSAに対する最も効果的な治療法であるが,最後の手段として行われる。これは閉塞部位をバイパスする手技であり,最重症の患者(例,肺性心を来した患者)で適応となる。

舌下神経刺激

上気道刺激療法(upper airway stimulation)はnonanatomic procedure(非系統的手技)である。上気道刺激療法では,植込み型の機器を用いて舌下神経の分枝を活性化する(6)。この治療法は,CPAP療法に耐えられない中等症から重症の高度に選択された患者と上下顎前方移動術が考慮されている患者において,成果をもたらす可能性がある。(7)。この治療法については,経験が集積されつつあるが,成功させるには適切な選択基準を適用することが極めて重要である。

補助的治療

補助的治療が一般的に用いられるが,閉塞性睡眠時無呼吸症候群の第1選択の治療としての効果は証明されていない。

CPAPを効果的に使用しているOSA患者の残存する眠気に対しては,モダフィニルが使用できる。

酸素投与は血液の酸素化を改善するが,有益な臨床的影響は予測できない。また,酸素は一部の患者で呼吸性アシドーシスおよび朝の頭痛を引き起こす。

いくつかの薬剤(例,三環系抗うつ薬,テオフィリン,ドロナビノール,アトモキセチン+オキシブチニンの併用)が試されているが,効力が限られている,治療係数が低い,結果を再現した研究がないといった理由から,ルーチンに推奨することはできない(8–11)。睡眠時無呼吸症候群の病型を判定する方法が改良されれば,この治療ラインでの成功および不成功の解釈が可能になる。

いびき用にOTCで販売されている鼻腔拡張用具や喉スプレーは,OSAに対する便益を証明するには研究が不十分である。

レーザーを用いた口蓋垂形成術,口蓋垂用のスプリント,およびラジオ波による組織焼灼は,閉塞性睡眠時無呼吸症候群を伴わない患者の大音量のいびきの治療として奨励されている。これらによりいびきの音量は一時的に小さくなる可能性があるが,効果は数カ月から数年かけて減衰する。

患者の教育および支援

説明を受けている患者および家族は,気管切開を含む治療戦略にうまく取り組むことができる。患者支援団体は,有益な情報を提供し,時宜を得た治療およびフォローアップを効果的に支援する。

治療に関する参考文献

  1. 1.McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, et al: CPAP for prevention of cardiovascular events in obstructive sleep apnea.N Engl J Med 375(10):919–931, 2016.doi: 10.1056/NEJMoa1606599

  2. 2.Gottlieb DJ, Punjabi NM, Mehra R, et al: CPAP versus oxygen in obstructive sleep apnea.N Engl J Med 370(24):2276–2285, 2014.doi: 10.1056/NEJMoa1306766

  3. 3.Chirinos JA, Gurubhagavatula I, Teff K, et al: CPAP, weight loss, or both for obstructive sleep apnea.N Engl J Med 370(24):2265–2275, 2014.doi: 10.1056/NEJMoa1306187

  4. 4.Pépin JL, Tamisier R, Barone-Rochette G, et al: Comparison of continuous positive airway pressure and valsartan in hypertensive patients with sleep apnea.Am J Respir Crit Care Med 182(7):954–960, 2010.doi: 10.1164/rccm.200912-1803OC

  5. 5.Zinchuk A, Edwards BA, Jeon S, et al: Prevalence, associated clinical features, and impact on continuous positive airway pressure use of a low respiratory arousal threshold among male United States veterans with obstructive sleep apnea.J Clin Sleep Med 14(5):809–817, 2018.doi: 10.5664/jcsm.7112

  6. 6.Baptista PM, Costantino A, Moffa A, et al: Hypoglossal nerve stimulation in the treatment of obstructive sleep apnea: Patient selection and new perspectives.Nat Sci Sleep 12:151–159, 2020.doi: 10.2147/NSS.S221542

  7. 7.Woodson BT, Soose RJ, Gillespie MB, et al: Three-year outcomes of cranial nerve stimulation for obstructive sleep apnea: The STAR Trial.Otolaryngol Head Neck Surg154(1):181–188, 2016. doi: 10.1177/0194599815616618

  8. 8.Taranto-Montemurro L, Messineo L, Sands SA, et al: The combination of atomoxetine and oxybutynin greatly reduces obstructive sleep apnea severity: A randomized, placebo-controlled, double-blind crossover trial.Am J Respir Crit Care Med 199(10):1267–1276, 2018.doi: 10.1164/rccm.201808-1493OC

  9. 9.Carley DW, Prasad B, Reid KJ, et al: Pharmacotherapy of apnea by cannabimimetic enhancement, the PACE Clinical Trial: Effects of dronabinol in obstructive sleep apnea.Sleep 41(1):zsx184, 2018.doi: 10.1093/sleep/zsx184

  10. 10.Taranto-Montemurro L, Messineo L, Azarbarzin A, et al: Effects of the combination of atomoxetine and oxybutynin on OSA endotypic traits.Chest 2020 Jan 30.pii: S0012-3692(20)30135-5.doi: 10.1016/j.chest.2020.01.012 [Epub ahead of print]

  11. 11.Taranto-Montemurro L, Messineo L, Wellman A: Targeting endotypic traits with medications for the pharmacological treatment of obstructive sleep apnea.A review of the current literature.J Clin Med 8(11):1846, 2019.doi: 10.3390/jcm8111846

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の要点

  • 肥満,上気道の解剖学的異常,家族歴,特定の疾患(例,甲状腺機能低下症,脳卒中),およびアルコール摂取または鎮静薬の使用は,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)のリスクを高める。

  • 典型的に,患者にはいびきがあり,睡眠は疲れが取れず休息感がなく,またしばしば日中の眠気および疲労を感じる。

  • いびきがみられる個人のほとんどはOSAではない。

  • OSA患者に発生する頻度が比較的高い疾患には,高血圧,脳卒中,糖尿病,胃食道逆流症,非アルコール性脂肪肝炎,夜間狭心症,心不全,および心房細動またはその他の不整脈などがある。

  • 診断の確定は睡眠ポリグラフ検査により行い,合併症のない睡眠時無呼吸症候群の場合は自宅での睡眠検査を用いることができる。

  • 是正可能な危険因子を管理し,ほとんどの患者を持続陽圧呼吸療法および/または気道を開通するよう設計された口腔内装置により治療する。

  • 気道狭窄を引き起こす異常がある場合,または難治性の場合は手術を考慮する。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群についてのより詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. American Sleep Apnea Association: Provides consumer information, education, and support for patients with sleep apnea

  2. STOP-Bang Questionnaire: General information about sleep apnea and information about the STOP-Bang tool

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