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拘束型心筋症

執筆者:

Thomas D. Stamos

, MD, University of Illinois at Chicago

最終査読/改訂年月 2018年 12月
本ページのリソース

拘束型心筋症は,コンプライアンスが低下して拡張期充満に抵抗するようになった心室壁を特徴とし,片方の心室(大抵は左室)が侵される場合と両心室が侵される場合がある。症状としては,疲労や労作時呼吸困難などがある。診断は,心エコー検査および心臓カテーテル検査による。治療では満足のいく効果は得られない場合が多く,原因に向けた治療が最善である。手術がときに有用である。

拘束型心筋症は,最も有病率の低い病型の心筋症である。拘束型心筋症は以下のように分類される:

  • 非閉塞性(異常物質による心筋の浸潤)

  • 閉塞性(心内膜および心内膜下の線維化)

どちらも,びまん性の場合と非びまん性の場合(障害が片方の心室のみ,または片方の心室の一部を不均等に侵す場合)がある。

病因

拘束型心筋症は常に原発性の心疾患であるとは限らない。原因は通常不明であるが,全身性または遺伝性疾患の結果として生じることがあり,これまでに同定された原因の一覧を拘束型心筋症の原因 拘束型心筋症の原因 拘束型心筋症は,コンプライアンスが低下して拡張期充満に抵抗するようになった心室壁を特徴とし,片方の心室(大抵は左室)が侵される場合と両心室が侵される場合がある。症状としては,疲労や労作時呼吸困難などがある。診断は,心エコー検査および心臓カテーテル検査による。治療では満足のいく効果は得られない場合が多く,原因に向けた治療が最善である。手術がときに有用である。 心筋症は心筋の原発性疾患である(心筋症の概要も参照)。... さらに読む の表に示す。拘束型心筋症の原因となる疾患の一部では,他の組織も侵される(例,アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは,異常凝集したタンパク質から成る不溶性線維の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらのタンパク質は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染症,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。診... さらに読む アミロイドーシス ヘモクロマトーシス 遺伝性ヘモクロマトーシス 遺伝性ヘモクロマトーシスは,過剰な鉄(Fe)蓄積を特徴とする遺伝性疾患で,組織障害を引き起こす。所見としては,全身症状,肝疾患,心筋症,糖尿病,勃起障害,および関節障害がみられることがある。診断は,血清フェリチン,鉄,およびトランスフェリン飽和度の高値により行い,遺伝子検査により確定する。連続的な瀉血による治療が一般的である。 (鉄過剰症の概要も参照のこと。) 遺伝性ヘモクロマトーシスには,変異した遺伝子に応じて,以下に示す1~4型の4... さらに読む 遺伝性ヘモクロマトーシス )。また心筋浸潤性疾患の一部では,他の心臓組織も侵される。まれに,アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは,異常凝集したタンパク質から成る不溶性線維の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらのタンパク質は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染症,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。診... さらに読む アミロイドーシス によって冠動脈が侵されることがある。サルコイドーシス サルコイドーシス サルコイドーシスは単一または複数の臓器および組織に生じる非乾酪性肉芽腫を特徴とする炎症性疾患であり,病因は不明である。肺およびリンパ系が侵される頻度が最も高いが,サルコイドーシスはどの臓器にも生じうる。肺症状は,無症状から咳嗽,労作時呼吸困難,および,まれであるが肺または他臓器の機能不全に至るまで様々である。通常まず肺病変をきっかけに診断... さらに読む サルコイドーシス およびファブリー病 ファブリー病 ファブリー病は,αガラクトシダーゼAの欠損に起因するスフィンゴリピドーシス(遺伝性代謝疾患の1つ)で,被角血管腫,四肢末端の異常感覚,角膜混濁,反復性の発熱発作,および腎または心不全を引き起こす。 詳細については,スフィンゴリピドーシスの表を参照のこと。 遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。 ファブリー病は,トリヘキソシルセラミドの正常な異化に必要なライソゾーム酵素であるα-ガラクトシダーゼAのX連鎖遺伝性の欠損症で... さらに読む ファブリー病 では,刺激伝導系組織が侵されることがある。レフレル症候群 レフレル症候群 レフレル症候群は,好酸球性肺疾患の一病型であり,ないかもしあっても軽度の呼吸器症状(乾性咳嗽が最も多い),移動する一過性の肺陰影,および末梢血好酸球増多を特徴とする。 (間質性肺疾患の概要も参照のこと。) 寄生虫感染,特にヒト回虫が原因のこともあるが,患者の最大3分の1では病原体が同定できない。 レフレル症候群の診断は,特徴的でかつ多くの場合一過性の呼吸器症状,胸部X線所見,および末梢血中好酸球増多に基づく。他の種類の好酸球性肺疾患を除... さらに読む (一次的に心臓を侵す好酸球増多症候群の下位カテゴリーの1つ)は,熱帯地域でみられる病態で,好酸球増多を伴う急性動脈炎として始まった後,心内膜上,腱索上,および房室弁上の血栓形成から,さらに進行して線維化へと至る。心内膜線維弾性症(EFE)は,温帯地域で発生する疾患であり,左室のみに影響を及ぼす。

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病態生理

心内膜肥厚または心筋浸潤(ときに心筋細胞壊死,乳頭筋浸潤,代償性心筋肥大,および線維化を伴う)が片方(典型的には左室)または両方の心室に起こりうる。結果として,僧坊弁または三尖弁が機能不全を起こし,逆流を来すことがある。機能性の房室弁逆流は,心筋浸潤が原因の場合と心内膜肥厚が原因の場合がある。結節および刺激伝導系組織が侵された場合には,洞房結節と房室結節が機能不全に陥り,ときに様々な程度の洞房ブロック 洞不全症候群 洞不全症候群とは,生理学的に適切でないレートで心房興奮が引き起こされる,いくつかの病態を指す。症状はほとんどないか,脱力感,運動耐容能低下,動悸,失神が生じる場合がある。診断は心電図検査による。症状がある患者にはペースメーカーが必要である。 (不整脈の概要も参照のこと。) 洞不全症候群としては以下のものがある: 不適切な洞徐脈 交互に生じる徐脈と心房性頻拍性不整脈(徐脈頻脈症候群) さらに読む 房室ブロック 房室ブロック 房室ブロックとは,心房から心室への興奮伝導が部分的または完全に途絶する状態である。最も一般的な原因は,伝導系に生じる特発性の線維化および硬化である。診断は心電図検査による;症状および治療はブロックの程度に依存するが,治療が必要な場合は通常,ペーシングが行われる。 (不整脈の概要も参照のこと。) 房室ブロックの最も一般的な原因は以下のものである: 伝導系に生じる特発性の線維化および硬化(約50%の患者)... さらに読む 房室ブロック が生じる。

血行動態上の主な所見は,コンプライアンスの低下した硬い心室,拡張期充満障害,および充満圧上昇を伴う拡張機能障害 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む であり,肺静脈性肺高血圧症につながる。浸潤や線維化が生じた心室で代償性肥大が不十分になると,収縮機能が悪化していく。壁在血栓が形成され,その結果,全身性塞栓症につながることもある。

症状と徴候

身体診察では,前胸部の心音減弱,低容量で速い頸動脈拍動,肺の断続性ラ音,および急峻なy谷を伴う著明な頸静脈怒張が検出される(正常な頸静脈波 正常な頸静脈波 心疾患が末梢および全身に及ぼす影響と心臓に影響を及ぼしうる心臓以外の疾患の所見を検出するため,全ての器官系をくまなく診察することが不可欠である。診察には以下を含める: バイタルサインの測定 脈拍の触診および聴診 静脈の視診 胸部の視診および触診 さらに読む 正常な頸静脈波 の図を参照)。III音および/または IV音が聴取されることもあり,収縮性心膜炎で前胸部に聴取される心膜ノック音との鑑別が必要である。一部の症例では,心筋または心内膜の浸潤や線維化により腱索または心室の形態が変化するため,僧帽弁または三尖弁の機能性逆流の雑音が聴取される。奇脈は起こらない。

診断

  • 心エコー検査

  • MRI

  • ときに左心および右心カテーテル検査(心筋生検を含む)

  • 臨床検査と必要に応じて他の器官系の生検

駆出率が保持された心不全の患者では,拘束型心筋症を考慮すべきであり,特に拘束型心筋症の発生につながる全身性疾患がすでに診断されている場合は,その可能性が高くなる。一方で,受診時には基礎疾患が明らかでない場合もある。

心電図,胸部X線,および心エコー検査が必要である。

胸部X線では,心臓の大きさはしばしば正常または小さいが,アミロイドーシスまたはヘモクロマトーシスの後期には拡大しうる。

それでも診断が疑わしい場合は,心筋浸潤(例,アミロイドまたは鉄によるもの)を伴う疾患では,MRI MRI 心臓の画像検査によって,心臓の構造および機能を描出することができる。標準的な画像検査としては以下のものがある: 心エコー検査 胸部X線 CT MRI さらに読む MRI により心筋の形態異常を確認することが可能である。MRIと心臓CTでは心外膜肥厚を検出することができ,その情報は,臨床的に拘束型心筋症に酷似することのある心外膜収縮の診断に役立つ可能性がある。

非侵襲的検査で確定診断が得られない場合は,心臓カテーテル検査 心臓カテーテル法 心臓カテーテル法とは,末梢の動脈または静脈から心腔,肺動脈,冠動脈,および冠静脈までカテーテルを挿入する手技である。 心臓カテーテル法は,以下のものを含む様々な検査に用いることができる: 血管造影 血管内超音波検査(IVUS) 心拍出量(CO)の測定 さらに読む 心臓カテーテル法 と心内膜心筋生検による侵襲的な精査を考慮すべきである。拘束型心筋症患者にカテーテル検査を施行すると,心房圧の上昇が検出され,さらに心室内圧曲線で著明なy谷と拡張早期dipに続く高い拡張期plateauを認める。拡張期血圧は通常,両心室の圧が等しくなる収縮性心膜炎とは対照的に,右室よりも左室が数mmHg高くなる。生検では,心内膜の線維化および肥厚,鉄またはアミロイドによる心筋浸潤,慢性の心筋線維化のほか,ファブリー病であれば血管内皮細胞内の封入体を検出することができる。冠動脈造影は,アミロイドーシスにより心外膜冠動脈が侵されている場合を除いて,正常である。

拘束型心筋症の原因として最も頻度の高い病態を踏まえた臨床検査と他の器官系の生検(例,アミロイドーシスに対する直腸生検,ヘモクロマトーシスに対する鉄検査または肝生検)を行うべきである。

予後

進行してから診断される場合が多いため,予後は不良である(心筋症の診断と治療 心筋症の診断と治療 心筋症は心筋の原発性疾患である。冠動脈疾患や弁膜症,先天性心疾患といった構造的心疾患とは明確に異なる疾患概念である。心筋症は病理学的特徴に基づき,以下に示す3つの主な病型に分類される(心筋症の病型の図を参照): 拡張型 肥大型 拘束型 虚血性心筋症という用語は,重症冠動脈疾患の患者で(梗塞領域の有無にかかわらず)発生することがある,心筋が... さらに読む の表を参照)。選択可能な治療法がない患者が大半を占めるが,対症的に支持療法を行うことが可能である。拡張型心筋症に対する標準治療(例,アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬,ジゴキシン,β遮断薬)は,拘束型心筋症の患者には耐えられない場合が多い。この病態(特にアミロイド心筋症)の患者では,自律神経機能障害や全身血圧の低下もみられることがある。刺激伝導系の疾患,心ブロック,および突然死の頻度が高い。

治療

  • 原因の治療

  • 利尿薬を考慮

利尿薬は浮腫または肺血管うっ血を呈する患者に使用できるが,前負荷を低下させる可能性があり,コンプライアンスが低下した心室では心拍出量の維持を前負荷に頼っているため,慎重に使用する必要がある。ジゴキシンは血行動態の異常をほとんど変化させず,アミロイドーシスに起因する心筋症(ジギタリス感受性が極めて高いことが多い)では,重篤な不整脈を惹起する可能性がある。心拍数が上昇している場合,β遮断薬または心拍数低下作用を有するカルシウム拮抗薬を低用量で慎重に使用することができる。後負荷軽減薬(例,硝酸薬)は,著しい低血圧を引き起こすことがあり,通常は有用でない。

早期に診断されれば,一部の病型のアミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは,異常凝集したタンパク質から成る不溶性線維の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらのタンパク質は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染症,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。診... さらに読む アミロイドーシス ヘモクロマトーシス 治療 遺伝性ヘモクロマトーシスは,過剰な鉄(Fe)蓄積を特徴とする遺伝性疾患で,組織障害を引き起こす。所見としては,全身症状,肝疾患,心筋症,糖尿病,勃起障害,および関節障害がみられることがある。診断は,血清フェリチン,鉄,およびトランスフェリン飽和度の高値により行い,遺伝子検査により確定する。連続的な瀉血による治療が一般的である。 (鉄過剰症の概要も参照のこと。) 遺伝性ヘモクロマトーシスには,変異した遺伝子に応じて,以下に示す1~4型の4... さらに読む 治療 サルコイドーシス サルコイドーシス サルコイドーシスは単一または複数の臓器および組織に生じる非乾酪性肉芽腫を特徴とする炎症性疾患であり,病因は不明である。肺およびリンパ系が侵される頻度が最も高いが,サルコイドーシスはどの臓器にも生じうる。肺症状は,無症状から咳嗽,労作時呼吸困難,および,まれであるが肺または他臓器の機能不全に至るまで様々である。通常まず肺病変をきっかけに診断... さらに読む サルコイドーシス ,およびレフレル症候群 レフレル症候群 レフレル症候群は,好酸球性肺疾患の一病型であり,ないかもしあっても軽度の呼吸器症状(乾性咳嗽が最も多い),移動する一過性の肺陰影,および末梢血好酸球増多を特徴とする。 (間質性肺疾患の概要も参照のこと。) 寄生虫感染,特にヒト回虫が原因のこともあるが,患者の最大3分の1では病原体が同定できない。 レフレル症候群の診断は,特徴的でかつ多くの場合一過性の呼吸器症状,胸部X線所見,および末梢血中好酸球増多に基づく。他の種類の好酸球性肺疾患を除... さらに読む には特異的治療が助けとなる。

移植は,移植された心臓で同じ疾患が発生する可能性があることから,推奨されない。

要点

  • 拘束型心筋症では,心内膜の肥厚または心筋浸潤により心室が硬化してコンプライアンスの低下を来し,その結果として拡張機能障害がもたらされる;収縮機能は後期まで正常で維持される。

  • ときに,弁組織または刺激伝導系が侵され,弁逆流や心ブロックおよび不整脈がもたらされる。

  • 病因は通常不明であるが,一部の症例はアミロイドーシス,ヘモクロマトーシス,またはサルコイドーシスに起因する。

  • 診断は心エコー検査と原因に対する検査による。

  • 治療では,原因の対処が可能でない限り,満足のいく効果は得られない場合が多い;利尿薬は浮腫または肺血管うっ血を呈している患者に有益となりうるが,前負荷の低下を避けるため,慎重に使用する必要がある。

  • 拡張型心筋症に対する標準治療(例,ACE阻害薬,ジゴキシン,β遮断薬)は,拘束型心筋症の患者には耐えられない場合が多い。

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