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心臓の聴診

執筆者:

Michael J. Shea

, MD, Michigan Medicine at the University of Michigan

最終査読/改訂年月 2019年 6月
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心臓の聴診には,優れた聴力と音の高さおよびタイミングの微妙な相違を識別する能力が必要とされる。聴覚障害がある医療従事者は電子聴診器を使用できる。高音は膜型の聴診器で最もよく聴取できる。低音はベル型で最もよく聴取できる。ベル型を使用するときは,ごく小さな力で当てるべきである。当てる力が強すぎると,下にある皮膚が膜として作用することで,非常に低調な成分が除去されてしまう。

前胸部全体を系統的に調べるが,一般的には,患者に左側臥位をとらせて心尖拍動の聴取から始める。次に仰臥位をとらせてから胸骨左縁下部で聴診を再開し,頭側に進みながら各肋間部を聴診した後,胸骨右縁上部から尾側に進む。左側の腋窩および鎖骨上部も聴診する。背部の聴診では,患者に起座位をとらせた後,大動脈および肺動脈の拡張期雑音や心膜摩擦音の聴診がしやすくなるように前傾姿勢をとらせる。

主要な聴診所見としては以下のものがある:

  • 心音

  • 雑音

  • 摩擦音

心音は弁の開閉によって生じる一過性の短い音で,収縮期心音と拡張期心音に分けられる。

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摩擦音は,ひっかくような高調な音で,しばしば2つまたは3つの成分に分かれ,頻拍時にはほぼ連続することもある。

聴診では,個々の心音と心雑音に注意しながら,心周期の各時相に順次意識を集中する。音の強さ,高さ,持続時間,時相,および間隔を分析することで,しばしば正確な診断が得られる。心血管系の診察を行う際には,前胸部の聴診および触診で得られた主な所見 触診 心疾患が末梢および全身に及ぼす影響と心臓に影響を及ぼしうる心臓以外の疾患の所見を検出するため,全ての器官系をくまなく診察することが不可欠である。診察には以下を含める: バイタルサインの測定 脈拍の触診および聴診 静脈の視診 胸部の視診および触診 さらに読む  触診 を毎回図にまとめて,患者のカルテに記録すべきである(身体所見を示した図 大動脈弁狭窄症と僧帽弁逆流症を合併した患者の身体所見を示した図 心臓の聴診には,優れた聴力と音の高さおよびタイミングの微妙な相違を識別する能力が必要とされる。聴覚障害がある医療従事者は電子聴診器を使用できる。高音は膜型の聴診器で最もよく聴取できる。低音はベル型で最もよく聴取できる。ベル型を使用するときは,ごく小さな力で当てるべきである。当てる力が強すぎると,下にある皮膚が膜として作用することで,非常に低調な成分が除去されてしまう。 前胸部全体を系統的に調べるが,一般的には,患者に左側臥位をとらせて心... さらに読む を参照)。そのような図があれば,毎回の診察で得られた所見を比較できる。

大動脈弁狭窄症と僧帽弁逆流症を合併した患者の身体所見を示した図

雑音,特徴,強度,放散を図示した。肺動脈弁閉鎖音が大動脈弁閉鎖音より大きくなっている。左室の突出と右室の挙上(それぞれ太い矢印)を明示している。IV音(S4)と収縮期振戦(TS)を認める。a = 大動脈弁閉鎖音;p = 肺動脈弁閉鎖音;S1 = I音;S2 = II音;3/6 = 漸増漸減性雑音の強度(両側頸部に放散);2/6 = 心尖部で聴取された漸増性の全収縮期雑音の強度;1+ = 肥大した右室の前胸部における軽度の挙上(矢印は挙上の方向を示す);2+ = 中等度の左室の突出(矢印は突出の方向を示す)。

大動脈弁狭窄症と僧帽弁逆流症を合併した患者の身体所見を示した図

収縮期心音

収縮期心音としては以下のものがある:

  • I音(S1)

  • クリック

I音およびII音(S2,拡張期心音)は心周期の正常な成分であり,よく知られた「ドクン」という音に相当する。

I音は収縮期の開始直後に発生し,主に僧帽弁閉鎖によるが,三尖弁閉鎖の成分を含んでいることもある。しばしば分裂し,高調である。僧帽弁狭窄 僧帽弁狭窄症 僧帽弁狭窄症(MS)は,僧帽弁口が狭小化することによって,左房から左室への血流が妨げられる病態である。原因は(ほぼ)常にリウマチ熱である。一般的な合併症は,肺高血圧症,心房細動,および血栓塞栓症である。症状は心不全と同じであり,徴候としては開放音や拡張期雑音などがある。診断は身体診察および心エコー検査による。予後は良好である。内科的治療としては,利尿薬,β遮断薬,心拍数低下作用のあるカルシウム拮抗薬,抗凝固薬などがある。より重症例に効果... さらに読む ではI音が大きくなる。弁尖の硬化や硬直による僧帽弁逆流 僧帽弁逆流症 僧帽弁逆流症(MR)は,僧帽弁の閉鎖不全により,心室収縮期に左室から左房に向かって逆流が生じる病態である。MRは一次性(一般的な原因は僧帽弁逸脱およびリウマチ熱)または左室拡大もしくは心筋梗塞による二次性の可能性がある。合併症としては進行性心不全,不整脈,心内膜炎がある。症状と徴候には動悸,呼吸困難,全収縮期の心尖部雑音がある。診断は身体診察および心エコー検査による。予後は左室機能およびMRの病因,重症度,期間によって異なる。軽度で症状... さらに読む では減弱または聴取不能となる場合があるが,僧帽弁装置の粘液腫様変性や心室心筋の異常(例,乳頭筋機能不全,心室拡大)による僧帽弁逆流では,しばしば明瞭に聴取される。

クリックは収縮期にのみ生じる音で,より高調で持続時間が短いことから,I音およびII音と区別できる。収縮期内でクリックが生じる時相は,血行動態の変化に応じて異なってくる。クリックは1つのこともあれば,複数のこともある。

大動脈弁または肺動脈弁の先天性狭窄で聴かれるクリックは,異常な心室壁張力により生じると考えられている。これらのクリックは,収縮早期(I音に非常に近い時相)に発生し,血行動態の変化から影響を受けない。同様のクリックが重度の肺高血圧症でも生じる。僧帽弁または三尖弁逸脱で聴かれるクリックは,典型的には収縮中期から後期に発生し,余剰に伸長した腱索または弁尖にかかる異常な張力によってもたらされると考えられる。

弁組織の粘液腫様変性によるクリックは,収縮期のいずれの時相でも生じうるが,心室充満量を一時的に減少させる手技(例,立位,バルサルバ手技)を行わせている間は,I音の方向に移動する。心室充満量が増大すると(例,仰臥位による),クリックはII音の方向に移動し,特に僧帽弁逸脱症で著明である。理由は不明であるが,クリックは診察のたびに特徴が大きく変化することがあり,前回は聴取されたクリックがなくなることもある。

収縮期心音

拡張期心音

拡張期心音としては以下のものがある:

  • II音,III音,IV音(S2,S3,S4)

  • 心膜ノック音

  • 僧帽弁音

拡張期心音は,収縮期心音とは異なり低調であり,より弱く,持続時間は長い。II音を除き,通常これらの心音は成人では異常であるが,III音は40歳以下の成人と妊娠中の女性では生理的なものである場合がある。

II音は,拡張期の開始時に大動脈弁と肺動脈弁の閉鎖により生じる。大動脈弁の閉鎖(A2)は遅延や肺動脈弁の早期閉鎖がない限り,正常では大動脈弁閉鎖が肺動脈弁閉鎖(P2)に先行する。左脚ブロックや大動脈弁狭窄では大動脈弁の閉鎖が遅延し,ある種の早期興奮現象があると肺動脈弁の閉鎖が早まる。肺動脈弁の閉鎖遅延は,右室からの血流量増加(例,二次孔欠損型の心房中隔欠損症 心房中隔欠損症(ASD) 心房中隔欠損症(ASD)は,心房中隔が開口している状態であり,左右短絡と右房および右室の容量負荷を引き起こす。小児期に症状が出現することはまれであるが,20歳以降に生じる長期合併症として,肺高血圧,心不全,心房性不整脈などがある。成人期とまれに青年期には,運動耐容能低下,呼吸困難,疲労,心房性不整脈などを呈することがある。II音の大幅な固定性分裂を伴って,胸骨左縁上部で弱い収縮中期雑音がよく聴取される。診断は心エコー検査による。治療法は... さらに読む )または完全右脚ブロック 脚ブロックおよび束枝ブロック 脚ブロックは,脚枝における興奮伝導が部分的または完全に途絶する状態であり,束枝ブロックは,脚枝の分枝において同様の途絶が生じる状態である。これら2つの障害はしばしば併存する。通常は無症状であるが,いずれの存在も心疾患を示唆する。診断は心電図検査による。適応となる特異的な治療法はない。 (不整脈の概要も参照のこと。) 伝導ブロック(心臓内の電気刺激の伝導経路の図を参照)は多くの心疾患によって発生する可能性があり,これには他に心疾患の合併が... さらに読む により生じることがある。心房中隔欠損症における右室血流量の増加も,大動脈弁および肺動脈弁閉鎖における正常の呼吸性変動を消失させ,II音の固定性分裂を生じさせる。右室容積が正常な左右短絡(例,膜様部心室中隔欠損症 心室中隔欠損症(VSD) 心室中隔欠損症(VSD)は,心室中隔が開口している状態であり,両心室間の短絡を引き起こす。欠損孔が大きい場合,有意な左右短絡の発生につながり,乳児期に哺乳時の呼吸困難および発育不良を来す。胸骨左縁下部で粗大な全収縮期雑音が聴取されることが多い。繰り返す呼吸器感染症や心不全を来すことがある。診断は心エコー検査による。欠損孔は乳児期に自然閉鎖する場合もあれば,外科的修復が必要になる場合もある。... さらに読む 心室中隔欠損症(VSD) )では,固定性分裂は起こらない。単一のII音は,大動脈弁に逆流,高度狭窄,または閉鎖(共通弁が存在する場合の総動脈幹)が生じたときに発生することがある。

拡張期心音

III音は,心室が拡大してコンプライアンスが低下した状態で,拡張早期に生じる。拡張期の受動的な心室充満時に発生し,成人では通常重篤な心室機能不全を示唆するが,小児では正常の可能性があり,ときには40歳まで持続することもある。III音は妊娠中も正常である可能性がある。右室III音は,仰臥位での吸気時(胸腔内の陰圧により右室充満量が増大するため)に最もよく(ときに吸気時のみ)聴取できる。左室III音は,左側臥位での呼気時に(心臓が胸壁に近づくため)最もよく聴取される。

IV音は,拡張末期付近で(心房収縮により)心室充満が増強することで発生する。III音と同様に,ベル型の聴診器で最もよく聴取でき,ベル型でしか聴こえないこともある。吸気時には,右室IV音は増強し,左室IV音は減弱する。IV音はIII音と比べてはるかに高い頻度で聴取され,より軽度の(通常は拡張期)心室機能不全を示唆する。IV音は心房細動では(心房が収縮しないため)聴取されないが,心筋虚血が生じている場合や心筋梗塞の直後には,ほぼ常に聴取される

有意な左室収縮機能障害では通常III音が聴取され(IV音を伴うこともある),左室拡張機能障害では通常IV音が聴取され,III音は認められない。

重合奔馬調律は,頻拍のある患者でIII音およびIV音がある場合に聴取され,頻拍により拡張期が短縮することで2つの音が重なり合う。強いIII音およびIV音は,左側臥位にすることで心尖部で触知可能となることがある。

心膜ノック音は,拡張早期にIII音と同じタイミングで発生する。IV音は伴わず,より強勢な鈍い音であり,コンプライアンスが低下した収縮する心膜によって心室充満が急激に停止したことを意味する。

開放音(OS)は,僧帽弁狭窄またはまれに三尖弁狭窄において,拡張早期に生じることがある。僧帽弁開放音は非常に高調な短い音であり,膜型の聴診器で最もよく聴取される。僧帽弁狭窄が高度であるほど(すなわち左房圧が高いほど),開放音はII音の肺動脈弁成分に接近する。強度は弁尖のコンプライアンスと関係しており,開放音は弁尖が弾性を維持している場合は強く聴取されるが,弁尖の硬化,線維化,および石灰化が進行するにつれて次第に弱くなり,最終的には消失する。僧帽弁開放音は,ときに心尖部でも聴取されるが,多くの場合,胸骨左縁下部で最もよく聴取され,そこでしか聴取されないことも多い。

心雑音へのアプローチ

心周期内で雑音が聴取されるタイミングは原因と相関し(時相別に見た心雑音の病因 時相別に見た心雑音の病因 心臓の聴診には,優れた聴力と音の高さおよびタイミングの微妙な相違を識別する能力が必要とされる。聴覚障害がある医療従事者は電子聴診器を使用できる。高音は膜型の聴診器で最もよく聴取できる。低音はベル型で最もよく聴取できる。ベル型を使用するときは,ごく小さな力で当てるべきである。当てる力が強すぎると,下にある皮膚が膜として作用することで,非常に低調な成分が除去されてしまう。 前胸部全体を系統的に調べるが,一般的には,患者に左側臥位をとらせて心... さらに読む の表を参照),聴診所見は具体的な心臓弁膜症と相関する。様々な手技(例,吸気,バルサルバ法,ハンドグリップ,蹲踞,硝酸アミルの吸入)で心臓の生理学的状態をわずかに変化させることができ,それにより心雑音の原因の鑑別が可能になる(心雑音の診断を補助する手技 心雑音の診断を補助する手技 心臓の聴診には,優れた聴力と音の高さおよびタイミングの微妙な相違を識別する能力が必要とされる。聴覚障害がある医療従事者は電子聴診器を使用できる。高音は膜型の聴診器で最もよく聴取できる。低音はベル型で最もよく聴取できる。ベル型を使用するときは,ごく小さな力で当てるべきである。当てる力が強すぎると,下にある皮膚が膜として作用することで,非常に低調な成分が除去されてしまう。 前胸部全体を系統的に調べるが,一般的には,患者に左側臥位をとらせて心... さらに読む の表を参照)。

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収縮期雑音

収縮期雑音は正常の場合と異常の場合がある。収縮早期,収縮中期,収縮後期雑音と全収縮期(汎収縮期)雑音がある。収縮期雑音は駆出性,逆流性,短絡性に分類することができる。

駆出性雑音は,狭小化または不整化を来した弁または流出路を通過する前方に向かう乱流によって生じる(例,大動脈弁狭窄 大動脈弁狭窄症 大動脈弁狭窄症(AS)は,大動脈弁が狭小化することによって,収縮期の左室から上行大動脈への血流が妨げられる病態である。原因としては,先天性二尖弁,石灰化を伴う特発性の変性硬化,リウマチ熱などがある。無治療のASは進行して症候性となり,古典的三徴(失神,狭心症,労作時呼吸困難)のうち1つまたは複数が生じ,心不全および不整脈を来すこともある。漸増漸減性の駆出性雑音が特徴である。診断は身体診察および心エコー検査による。成人の無症候性ASは通常... さらに読む 大動脈弁狭窄症 または肺動脈弁狭窄 肺動脈弁狭窄症 肺動脈弁狭窄症(PS)は,肺動脈流出路が狭小化することによって,収縮期の右室から肺動脈への血流が妨げられる病態である。ほとんどの症例が先天性であり,多くは成人期まで無症状である。徴候としては漸増漸減性の駆出性雑音などがある。診断は心エコー検査による。症状がみられる患者と圧較差が大きい患者には,バルーン弁形成術が必要である。 (心臓弁膜症の概要も参照のこと。) 肺動脈弁狭窄症は先天性のことが最も多く,大半は小児に発生し,狭窄は弁に生じる場... さらに読む によるもの)。駆出性雑音は典型的には収縮中期に生じ,通常は血流の閉塞が進むにつれてより大きく持続の長い音になる漸増漸減性の特徴を示す。狭窄と乱流が強くなるほど,漸増相が長く,漸減相が短くなる。

収縮期駆出性雑音は,血行動態的に有意な流出路閉塞がなくとも生じうるため,必ずしも何らかの疾患を示唆するものではない。正常な乳児および小児では,しばしば軽い乱流がみられ,それにより弱い駆出性雑音が生じる。高齢者では,弁および血管の硬化のために,しばしば駆出性雑音が生じる。

妊娠中は,多くの女性で第2肋間胸骨左縁または右縁に弱い駆出性雑音が聴取される。この種の雑音は,血液量および心拍出量の生理的な増加により,正常構造物を通過する流速が上昇するために生じる。重度の貧血を合併した妊娠では,この雑音が大きく強調されることがある。このような雑音は,妊娠中に乳房の血管の充血によって引き起こされる静脈コマ音(乳房雑音)とは異なる。

逆流性雑音は,より抵抗の低い心腔への逆流または異常血流(例,僧帽弁逆流 僧帽弁逆流症 僧帽弁逆流症(MR)は,僧帽弁の閉鎖不全により,心室収縮期に左室から左房に向かって逆流が生じる病態である。MRは一次性(一般的な原因は僧帽弁逸脱およびリウマチ熱)または左室拡大もしくは心筋梗塞による二次性の可能性がある。合併症としては進行性心不全,不整脈,心内膜炎がある。症状と徴候には動悸,呼吸困難,全収縮期の心尖部雑音がある。診断は身体診察および心エコー検査による。予後は左室機能およびMRの病因,重症度,期間によって異なる。軽度で症状... さらに読む 三尖弁逆流 三尖弁逆流症 三尖弁逆流症(TR)は,三尖弁の閉鎖不全により,収縮期に右室から右房に向かって逆流が生じる病態である。最も一般的な原因は右室の拡大である。症状や徴候は通常みられないが,重症TRでは頸部の拍動,全収縮期雑音,および右室由来の心不全または心房細動が引き起こされる。診断は身体診察および心エコー検査による。TRは通常良性で治療を必要としないが,一部の患者では弁輪形成術,弁修復術,または弁置換術が必要になる。... さらに読む 心室中隔欠損 心室中隔欠損症(VSD) 心室中隔欠損症(VSD)は,心室中隔が開口している状態であり,両心室間の短絡を引き起こす。欠損孔が大きい場合,有意な左右短絡の発生につながり,乳児期に哺乳時の呼吸困難および発育不良を来す。胸骨左縁下部で粗大な全収縮期雑音が聴取されることが多い。繰り返す呼吸器感染症や心不全を来すことがある。診断は心エコー検査による。欠損孔は乳児期に自然閉鎖する場合もあれば,外科的修復が必要になる場合もある。... さらに読む 心室中隔欠損症(VSD) によるもの)を反映する。逆流性雑音は典型的には全収縮期雑音であり,高速かつ少量の逆流または短絡でより大きくなり,多量の逆流や短絡ではより弱くなる傾向がある。収縮後期雑音にはクリックが先行する場合とそうでない場合があり,僧帽弁逸脱や乳頭筋機能不全で典型的にみられる。雑音の時相と種類をより正確に診断するには,通常は様々な手技が必要となる(心雑音の診断を補助する手技 心雑音の診断を補助する手技 心臓の聴診には,優れた聴力と音の高さおよびタイミングの微妙な相違を識別する能力が必要とされる。聴覚障害がある医療従事者は電子聴診器を使用できる。高音は膜型の聴診器で最もよく聴取できる。低音はベル型で最もよく聴取できる。ベル型を使用するときは,ごく小さな力で当てるべきである。当てる力が強すぎると,下にある皮膚が膜として作用することで,非常に低調な成分が除去されてしまう。 前胸部全体を系統的に調べるが,一般的には,患者に左側臥位をとらせて心... さらに読む の表を参照)。

短絡性雑音は,短絡部位(例,動脈管開存 動脈管開存症(PDA) 動脈管開存症(PDA)とは,大動脈と肺動脈をつなぐ胎児期の交通路(動脈管)が出生後も開存している状態である。心臓に他の構造的異常がなく,肺血管抵抗の上昇もない場合,PDAにおける短絡は左右方向(大動脈から肺動脈)となる。症状としては,発育不良,哺乳不良,頻拍,頻呼吸などがある。胸骨左縁上部に連続性雑音が聴取されることが多い。診断は心エコー検査による。有意な短絡のある早産児には,シクロオキシゲナーゼ阻害薬(イブプロフェン... さらに読む 動脈管開存症(PDA) 心室中隔欠損 心室中隔欠損症(VSD) 心室中隔欠損症(VSD)は,心室中隔が開口している状態であり,両心室間の短絡を引き起こす。欠損孔が大きい場合,有意な左右短絡の発生につながり,乳児期に哺乳時の呼吸困難および発育不良を来す。胸骨左縁下部で粗大な全収縮期雑音が聴取されることが多い。繰り返す呼吸器感染症や心不全を来すことがある。診断は心エコー検査による。欠損孔は乳児期に自然閉鎖する場合もあれば,外科的修復が必要になる場合もある。... さらに読む 心室中隔欠損症(VSD) )で生じることもあれば,短絡部位から離れた位置での血行動態の変化により生じることもある(例,左右短絡を伴う心房中隔欠損による肺動脈弁の収縮期雑音)。

収縮期雑音

拡張期雑音

拡張期雑音は常に異常であり,ほとんどが拡張早期または中期に生じるが,拡張後期(前収縮期)のこともある。拡張早期雑音は,典型的には大動脈弁逆流 大動脈弁逆流症 大動脈弁逆流症(AR)は,大動脈弁の閉鎖不全により,拡張期に大動脈から左室に向かって逆流が生じる病態である。原因としては,弁変性および大動脈基部拡張(二尖弁の合併を含む),リウマチ熱,心内膜炎,粘液腫様変性,大動脈基部解離,結合組織疾患(例,マルファン症候群),リウマチ性疾患などがある。症状としては,労作時呼吸困難,起座呼吸,発作性夜間呼吸困難,動悸,胸痛などがある。徴候としては,脈圧増大や拡張早期雑音などがある。診断は身体診察および心... さらに読む 大動脈弁逆流症 または肺動脈弁逆流 肺動脈弁逆流症 肺動脈弁逆流症(PR)は,肺動脈弁の閉鎖不全により,拡張期に肺動脈から右室に向かって逆流が生じる病態である。最も一般的な原因は肺高血圧症である。PRは通常,無症状である。徴候としては漸減性の拡張期雑音などがある。診断は心エコー検査による。通常,肺高血圧症の管理以外に特異的な治療は必要ない。 (心臓弁膜症の概要も参照のこと。) 肺動脈弁逆流症の最も一般的な原因で圧倒的に多いのは以下のものである:... さらに読む により生じる。拡張中期(または拡張早期~中期)雑音は,典型的には僧帽弁狭窄 僧帽弁狭窄症 僧帽弁狭窄症(MS)は,僧帽弁口が狭小化することによって,左房から左室への血流が妨げられる病態である。原因は(ほぼ)常にリウマチ熱である。一般的な合併症は,肺高血圧症,心房細動,および血栓塞栓症である。症状は心不全と同じであり,徴候としては開放音や拡張期雑音などがある。診断は身体診察および心エコー検査による。予後は良好である。内科的治療としては,利尿薬,β遮断薬,心拍数低下作用のあるカルシウム拮抗薬,抗凝固薬などがある。より重症例に効果... さらに読む または三尖弁狭窄 三尖弁狭窄症 三尖弁狭窄症(TS)は,三尖弁口が狭小化することによって,右房から右室への血流が妨げられる病態である。原因はほぼ全例でリウマチ熱である。症状としては,頸部のはためくような不快感,疲労,皮膚冷感,右上腹部不快感などがある。頸静脈拍動が著明となり,前収縮期雑音がしばしば第4肋間胸骨左縁で聴取され,吸気時に増強する。診断は心エコー検査による。TSは通常は良性であり,特異的な治療を必要としないが,症状のある患者では手術が有益となることがある。... さらに読む により生じる。拡張後期雑音は,洞調律の患者においてリウマチ性僧帽弁狭窄症により生じることがある。

心房内の腫瘍または血栓による僧帽弁または三尖弁雑音は消退することがあり,また,心臓内の腫瘤の位置が変わるために,体位の変換や診察のたびに変化することがある。

連続性雑音

連続性雑音は心周期全体を通じて発生する。連続性雑音は常に異常であり,収縮期および拡張期全体を通じた連続的な短絡血流の存在を示唆する。様々な心奇形により生じることがある(時相別に見た心雑音の病因 時相別に見た心雑音の病因 心臓の聴診には,優れた聴力と音の高さおよびタイミングの微妙な相違を識別する能力が必要とされる。聴覚障害がある医療従事者は電子聴診器を使用できる。高音は膜型の聴診器で最もよく聴取できる。低音はベル型で最もよく聴取できる。ベル型を使用するときは,ごく小さな力で当てるべきである。当てる力が強すぎると,下にある皮膚が膜として作用することで,非常に低調な成分が除去されてしまう。 前胸部全体を系統的に調べるが,一般的には,患者に左側臥位をとらせて心... さらに読む の表を参照)。なかには振戦を伴うものもあり,多くは右室肥大および左室肥大の徴候を認める。短絡病変において肺動脈抵抗が上昇するにつれ,連続性雑音の拡張期成分は徐々に弱くなる。肺循環と体循環の抵抗が等しい場合,雑音が消失することがある。

動脈管開存症で生じる雑音は,左鎖骨内側端直下の第2肋間が最強点となる。大動脈肺動脈窓で生じる雑音は中央にあり,第3肋間レベルで聴取される。体循環の動静脈瘻の雑音は,病変部の直上で最もよく聴取され,肺循環の動静脈瘻および肺動脈分枝狭窄の雑音は,よりびまん性に胸部全体で聴取される。

妊娠中,貧血,甲状腺機能亢進症などで循環血液量が増加している場合,しばしば連続性の静脈コマ音が右鎖骨上窩で聴取されるが,この静脈コマ音は正常な小児でも発生する。この雑音は拡張した内胸動脈内の血流量が増加することにより発生し(乳房雑音),連続性心雑音と間違われることがある。乳房雑音(mammary souffle)は典型的には右側,左側または両側乳房上の第2または第3肋間レベルで最もよく聴取され,しばしば連続性と分類されるが,通常は収縮期により大きい。

心膜摩擦音

心膜摩擦音は,臓側心膜と壁側心膜の間で炎症性癒着部にずれが生じることで発生する。心膜摩擦音は高調またはひっかくような音(squeaking)で,収縮期,拡張期と収縮期,または三相性(心房収縮により拡張後期の拡張期成分が強調される場合)に聴取される。この摩擦音は,なめし皮をこすり合わせたときに生じるような音である。摩擦音は,患者が呼気で息を止め,前傾または四つん這いの姿勢をとったときに最もよく聴こえる。

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