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男性性腺機能低下症

執筆者:

Irvin H. Hirsch

, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University

医学的にレビューされた 2019年 7月
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性腺機能低下症は,関連する症候,精子産生の欠乏,またはそれらの両方を伴うテストステロンの欠乏と定義される。精巣の疾患に起因する場合(原発性性腺機能低下症)と,視床下部-下垂体系の疾患に起因する場合(続発性性腺機能低下症)がある。どちらも先天性の場合と,加齢,疾患,薬剤,その他の因子による後天性の場合がある。さらに,いくつかの先天的な酵素欠損症により標的器官で種々の程度のアンドロゲン抵抗性が惹起される。診断はホルモン濃度により確定される。治療は病因により異なるが,典型的にはゴナドトロピン放出ホルモン,ゴナドトロピン,テストステロン補充などが用いられる。

病因

原発性性腺機能低下症には,卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)に対する精巣の反応不全が関与する。原発性性腺機能低下症によりテストステロン産生が障害されると,FSHおよびLHの産生を阻害するテストステロンの働きが不十分となり,結果としてFSHおよびLH濃度が上昇する。原発性性腺機能低下症の最も頻度の高い遺伝学的な原因は, クラインフェルター症候群 クラインフェルター症候群(47,XXY) クラインフェルター症候群は,2つ以上のX染色体に加えて1つのY染色体が存在する異常であり,表現型は男性となる。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) クラインフェルター症候群は最も頻度の高い 性染色体異常で,出生男児の約1/500に発生する。過剰なX染色体は60%の症例で母親由来である。胚細胞が精巣内で生存できないため,精子およびアンドロゲンが減少する。 患児は高身長で上下肢が不自然に長い傾向がみられる。しばしば小さく硬い精巣がみられ... さらに読む クラインフェルター症候群(47,XXY) である。この症候群では精細管形成不全,精子形成不全,ライディッヒ細胞過形成,および47,XXY核型がみられる。

続発性性腺機能低下症は,特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症でみられるように視床下部でゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が産生されなくなるか,または下垂体でFSHおよびLHが十分に産生されなくなる病態である。続発性性腺機能低下症では,テストステロン濃度が低く,FSHおよびLH濃度は低値または正常境界域となる。一過性の続発性性腺機能低下症は,あらゆる急性全身性疾患により惹起される可能性がある。性腺機能低下症による一部の症候群は,原発性と続発性の両方の原因を有する(混合性性腺機能低下症)。 性腺機能低下症の原因 性腺機能低下症の原因* 性腺機能低下症の原因* の表に性腺機能低下症の一般的な原因の一部をカテゴリー別に示す。

性腺機能低下症による一部の症候群(例,停留精巣,一部の全身性疾患)は,テストステロン濃度よりも精子産生に対して大きな影響を及ぼす。

症状と徴候

性腺機能低下症の臨床像はテストステロン欠乏症の発症年齢により決定づけられる(先天性,小児期発症型,成人発症型)。

先天性性腺機能低下症は第1,第2,第3トリメスターのいずれにもみられる。第1トリメスターでの先天性性腺機能低下症の発生は,不十分な男性性分化につながる。テストステロンの作用が完全に欠如すると,正常な外見の女性外性器が形成される。テストステロンが部分的に欠乏すると,曖昧な外性器から 尿道下裂 尿道下裂 尿道の先天奇形は,男児では通常陰茎の解剖学的異常を伴い,その逆も真である。女児においては,尿道の先天奇形は他の外性器異常を伴わない場合が多い。機能障害がある場合や美容的矯正が希望される場合は,外科的修復が必要となる。 この奇形は陰茎が腹側,外側,および/または回転性に弯曲した状態であり,勃起時に最も明らかとなり,海綿体の通常の進路沿いにある線維組織,または2つの海綿体の間の大きさの相違が原因である。尿道索はしばしば... さらに読む  尿道下裂 までの種々の異常が生じる。第2または第3トリメスターでのテストステロン欠乏の発生は,小陰茎および 停留精巣 停留精巣 停留精巣とは,一側または両側の精巣が陰嚢まで下降していない状態であり,典型的には 鼠径ヘルニアを合併する。診断は診察によるが,ときに続いて腹腔鏡検査を行う。治療法は外科的な精巣固定術である。 停留精巣は,正期産児では約3%,早期産児では最大30%に発生し,停留した精巣の3分の2は生後4カ月以内に自然下降する。よって,男児の約0.8%のみが治療を必要とする。 停留精巣の80%は出生時に診断される。残りは小児期または青年期早期に診断され,通... さらに読む 停留精巣 につながる。

小児期発症型テストステロン欠乏症(小児における男性性腺機能低下症 小児における男性性腺機能低下症 男性性腺機能低下症は,テストステロン,精子,またはその両方の産生の減少,またはまれにテストステロンに対する反応の低下であり,結果として 思春期遅発,生殖不全またはその両方が生じる。診断は,テストステロン,黄体形成ホルモン,卵胞刺激ホルモンの血清中濃度の測定およびヒト絨毛性ゴナドトロピンまたはゴナドトロピン放出ホルモンによる刺激試験により行われる。治療は原因に応じて異なる。 (成人における... さらに読む を参照)は,ほとんど影響がなく,通常は思春期の遅延がみられるまで認識されない。無治療の性腺機能低下症は,第二次性徴の発現を障害する。成人患者では,筋発達不良,高い声,小さな陰嚢,陰茎および精巣の発育不良,薄い陰毛と腋毛,ならびに体毛の欠如がみられる。女性化乳房がみられることもあり,骨端線閉鎖の遅れと長管骨の成長持続によってeunuchoid体型(指極が身長より5cm以上長く,恥骨から床面までの高さが頭頂から恥骨までの高さより5cm以上長い)を呈する可能性もある。

成人発症型テストステロン欠乏症は,欠乏の程度および持続期間によって臨床像が変わってくる。性欲減退, 勃起障害 勃起障害 勃起障害とは,性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できない状態である。大半の勃起障害は血管,神経,精神,または内分泌疾患に関連したものであり,さらに薬剤使用も原因となりうる。評価は典型的には基礎疾患のスクリーニングとテストステロン濃度の測定である。治療選択肢としては,ホスホジエステラーゼ阻害薬の服用,プロスタグランジンの尿道内または海綿体内投与,陰圧式勃起補助具,外科的インプラントなどがある。... さらに読む ,認知技能(視空間認知など)の低下,睡眠障害,血管運動障害(急性かつ重度の男性性腺機能低下症),および気分変化(抑うつや怒りなど)がよくみられる。除脂肪体重の減少,内臓脂肪の増加,精巣萎縮,骨減少症,女性化乳房,および薄い体毛が出現するには典型的には数カ月から数年を要する。テストステロンの欠乏は, 冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血, 狭心症, 急性冠症候群( 不安定狭心症, 心筋梗塞), 心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の... さらに読む 冠動脈疾患の概要 および前立腺癌のリスクを高める可能性がある。

診断

  • 検査はFSH,LH,およびテストステロン値の測定から開始する

先天性および小児期発症型性腺機能低下症は,しばしば発達異常または思春期遅発により疑われる。成人発症型性腺機能低下症は症状または徴候に基づいて疑うべきであるが,これらの臨床マーカーは感度も特異度も低いため,見逃されることが多い。思春期が遅れている青年男性,性腺機能低下症を呈する若年成人男性,および精巣が非常に小さい全ての成人男性では, クラインフェルター症候群 クラインフェルター症候群(47,XXY) クラインフェルター症候群は,2つ以上のX染色体に加えて1つのY染色体が存在する異常であり,表現型は男性となる。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) クラインフェルター症候群は最も頻度の高い 性染色体異常で,出生男児の約1/500に発生する。過剰なX染色体は60%の症例で母親由来である。胚細胞が精巣内で生存できないため,精子およびアンドロゲンが減少する。 患児は高身長で上下肢が不自然に長い傾向がみられる。しばしば小さく硬い精巣がみられ... さらに読む クラインフェルター症候群(47,XXY) を考慮すべきである。性腺機能低下症には確定診断検査が必要である(男性性腺機能低下症の臨床検査 男性性腺機能低下症の臨床検査 男性性腺機能低下症の臨床検査 の図を参照)。

原発性および続発性性腺機能低下症の診断

原発性性腺機能低下症では,テストステロン濃度の低下よりも卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)濃度の上昇の方が高感度である。FSHおよびLH濃度はまた,性腺機能低下症が原発性か続発性かを判定する上でも有用である。ゴナドトロピン濃度の高値は,たとえテストステロン濃度が正常低値でも,原発性性腺機能低下症を示唆する一方,ゴナドトロピン濃度が低値であるか,テストステロン濃度から予想される水準より低い場合は,続発性性腺機能低下症が示唆される。あるいは,思春期遅発を呈する低身長の男児においては,テストステロン低値とゴナドトロピン低値の併発は体質的な思春期遅発が原因である場合がある。テストステロンおよびLHの血清中濃度が正常な患者における血清FSH濃度の上昇は,精子形成に障害があるがテストステロン産生は正常である場合に多くみられる。性腺機能低下症の原因はしばしば臨床的に明らかである。原発性性腺機能低下症にはさらなる検査は必要ないが,クラインフェルター症候群の確定診断を目的として核型分析を行う臨床医もいる。

血清総テストステロン濃度(および可能であれば遊離テストステロン濃度),血清FSH濃度,および血清LH濃度を同時に測定する。総テストステロンの正常範囲は300~1000ng/dL(10.5~35nmol/L)である。性腺機能低下症の確定診断のためには,テストステロン濃度を午前(午前10時前)に測定すべきである。加齢に伴い性ホルモン結合グロブリン(SHBG)が増加してくるため,50歳以降の性腺機能低下症の指標としては総テストステロンは感度が不十分である。血清遊離テストステロン濃度は機能的テストステロン濃度をより正確に反映するが,その測定には平衡透析法が必要で,これは技術的に困難であり,あまり普及していない。

アナログ遊離テストステロンアッセイなどの一部の市販キットが血清遊離テストステロン濃度測定を試みているが,その結果はしばしば不正確であり,特にSHBG濃度を変化させる病態(2型糖尿病,肥満,甲状腺機能低下症など)では不正確になりやすい。遊離テストステロン濃度は,SHBG,アルブミン,およびテストステロンの測定値から算出することが可能であり,ウェブ上で公開された計算プログラムを利用できる。 Free and Bioavailable Testosterone Calculatorを参照のこと。

FSHおよびLHの分泌がパルス状であることから,これらのホルモンはときに,20分間隔で3回の静脈穿刺で採取した検体をプールして測定されるが,単一の血液検体と比較して,これらのプール検体から新たに臨床的に重要な情報が得られることはまれである。FSHおよびLHの血清中濃度は通常,思春期前は5mIU/mL(5IU/L)以下,成人期は5~15mIU/mLである。

不妊治療を希望する男性では,全例で精液検査を行うべきである。青年または成人では,2日間の射精禁止後に自慰により採取した精液検体によって精細管機能を極めて良好に評価することができる。正常な精液検体(世界保健機関[World Health Organization:WHO]の基準)は,体積が1.5 mLを超え,精子数が1500万個/mL以上であり,そのうち50%が正常な形態および運動能力を有する(精子異常 精子異常 精子異常には,作られた精子の質または量の障害および射精障害が含まれる。診断は,精液検査および遺伝子検査による。最も効果的な治療法は通常,卵細胞質内精子注入法による体外受精である。 ( 不妊症の概要も参照のこと。) 精子形成は絶え間なく起きている。個々の生殖細胞は,完全に成熟するのに約72~74日を必要とする。精子形成は34℃で最も効率的に行われる。精細管内で,セルトリ細胞が成熟を制御し,ライディッヒ細胞が必要なテストステロンを産生する。... さらに読む も参照)。

男性性腺機能低下症の臨床検査

男性性腺機能低下症の臨床検査

* 総テストステロンは,50歳以上の男性における性腺機能低下症に対しては感度が低い。Free and weakly bound testosteroneの検査が可能であれば,その値を測定する。可能でなければ,値を算出する。

† 一部の医師が推奨している。

Fe = 鉄,FSH = 卵胞刺激ホルモン,GnRH = ゴナドトロピン放出ホルモン,LH = 黄体形成ホルモン。

続発性性腺機能低下症の評価

テストステロン,卵胞刺激ホルモン(FSH),および黄体形成ホルモン(LH)濃度は,あらゆる全身性疾患で一時的に低下する可能性があるため,続発性性腺機能低下症の確定診断としては,全身性疾患の消失後4週間以上が経過してから,これらの濃度を再度測定すべきである。青年の続発性性腺機能低下症の確定診断には,ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)刺激試験を考慮してもよい。GnRHの静脈内投与に反応してFSHおよびLH濃度が上昇する場合は,単に思春期が遅れているだけである。測定値が上昇しない場合は,真の性腺機能低下症である可能性が高い。

  • 年齢60歳未満で,その他に性腺機能低下症の原因が同定されていない

  • テストステロン濃度が非常に低い(200ng/dL[6.94nmol/L]未満)

  • プロラクチン濃度が高い

  • 下垂体腫瘍と一致する症状(例,頭痛,視覚症状)が認められる

治療

  • テストステロン補充療法

  • 続発性性腺機能低下症による不妊症を治療するためのゴナドトロピン補充療法

治療は十分なアンドロゲンをタイミングよく安全に補充することに向けられる。原発性性腺機能低下症の患者では,いかなる内分泌療法を行っても妊孕性が得られない場合があるが,続発性性腺機能低下症の患者では,しばしばゴナドトロピン療法により妊孕性が回復する。ここで考察しているテストステロン製剤は,米国で入手可能なものである。他の国では他の製剤が利用できる場合がある。

テストステロン補充療法(TRT)

TRTは以下の条件を満たす男性に用いることができる:

  • 思春期の徴候が認められない

  • 年齢が15歳に近い

  • 続発性性腺機能低下症が除外されている

該当する患者には長時間作用型のテストステロンエナント酸エステルを50mg,筋注,月1回で4~8カ月投与することができる。この低用量の投与により,ある程度の男性化が得られ,成人身長は制限されない。テストステロン欠乏症のある年長の青年では,長時間作用型のテストステロンエナント酸エステルまたはシピオン酸テストステロン(testosterone cypionate)を,18~24カ月間かけて50mgから100~200mgまで漸増しながら,1~2週間毎に筋肉内投与する。経皮吸収ゲルも使用できるが,より高価であり,親密な接触時に他者に移行する可能性もあり,また正確な用量での投与がより困難である。年長の青年に対する筋肉内投与の用量が100~200mg,2週毎相当に達した時点で,成人用量のテストステロンゲル製剤に切り替えることは妥当である。

テストステロン欠乏症が確定診断された成人には,補充療法が有益となる可能性がある。治療により,骨減少症,筋量低下,血管運動障害, 性欲減退 性欲 男性性機能は主に以下の4つの要素で構成される: 性欲 勃起 射精 オルガスム さらに読む うつ病 抑うつ障害群 抑うつ障害群は,機能を妨げるほど重度または持続的な悲しみ,および興味または喜びが減退することにより特徴づけられる。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。通常,治療は薬物療法,精神療法,またはその両方,および電気痙攣療法から成る。 うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部はDiagnostic... さらに読む の経過のほか,ときに 勃起障害 勃起障害 勃起障害とは,性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できない状態である。大半の勃起障害は血管,神経,精神,または内分泌疾患に関連したものであり,さらに薬剤使用も原因となりうる。評価は典型的には基礎疾患のスクリーニングとテストステロン濃度の測定である。治療選択肢としては,ホスホジエステラーゼ阻害薬の服用,プロスタグランジンの尿道内または海綿体内投与,陰圧式勃起補助具,外科的インプラントなどがある。... さらに読む の経過も遅延する。テストステロン冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血, 狭心症, 急性冠症候群( 不安定狭心症, 心筋梗塞), 心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の... さらに読む 冠動脈疾患の概要 に及ぼす影響は十分には解明されていない。TRTは冠動脈血流量を改善して冠動脈疾患のリスクを低下させる可能性がある。TRTにより心血管イベントのリスクが上昇する懸念が,最近の少数の研究で提起されている。しかしながら,専門家の意見の大多数はそのような懸念を否定している。テストステロンによる治療の利点を個々の患者において心血管系リスクが高まる可能性と比較考量する必要がある。

補充療法の選択肢としては以下のものがある:

  • テストステロンゲル1%または1.62%(テストステロンを1日当たり5~10mgを送達するために1日当たりゲル5~10gを適用する)

  • 腋窩用経皮吸収溶液(60mg,1日1回)

  • バッカル錠(30mg,1日2回)

  • テストステロン経皮パッチ(4mg,1日1回)

  • 新規の点鼻製剤(各鼻腔に5.5mgの噴霧を1回ずつ,1日3回)

  • テストステロン皮下インプラント(75mg/ペレット)を4~6単位で3~6カ月毎に埋め込み

  • テストステロンエナント酸エステルまたはtestosterone cypionateの筋肉内投与(100mgを7日毎または200mgを10~14日毎);自己注射で使用可能

テストステロンゲルは,その他の治療法と比べて,生理的な血中濃度をより一貫して維持するが,より安価である筋注製剤やパッチ製剤の方がときに好まれる。経口製剤は吸収を予測できない。

テストステロンやそのアナログで発生しうる有害作用としては以下のものがある:

ごくまれに前立腺が腫大することもある。これについては,血清テストステロン濃度の正常化に起因する生理的なペースの成長と考えられている。前立腺閉塞症状はまれである。現在では,生理的レベルまでのテストステロン補充であれば,前立腺癌の新たな発生や限局性前立腺癌の増殖または進展を促進することはないと考えられている。 前立腺肥大症 前立腺肥大症(BPH) 前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia:BPH)は,前立腺尿道周囲部が良性腺腫として増大した状態である。症状は下部尿路閉塞の症状である(尿勢低下,排尿遅延,頻尿,尿意切迫,夜間頻尿,残尿,終末時滴下,溢流性または切迫性尿失禁,完全尿閉)。診断は主に直腸指診と症状に基づき,膀胱鏡検査,経直腸的超音波検査,尿流... さらに読む の男性や前立腺癌の治療を受けた男性における血清前立腺特異抗原(PSA)値にTRTが及ぼす影響も最小限と考えられている。しかしながら,各製品の添付文書には, 前立腺癌 前立腺癌 前立腺癌は通常腺癌である。典型的には,腫瘍の増殖によって血尿や疼痛を伴う閉塞が引き起こされるまで,症状はみられない。診断は直腸指診または前立腺特異抗原測定によって示唆され,経直腸的超音波生検によって確定される。スクリーニングについては議論があり,意思決定の共有が行われるべきである。大部分の前立腺癌患者の予後は,特に癌が限局または局在する場合(通常は症状の発生前),非常に良好であり,前立腺癌で死亡する患者と比較してそれ以外の原因で死亡する... さらに読む の患者ではTRTは禁忌であり,前立腺癌に罹患しているか前立腺癌のリスクが高い男性はカウンセリングを受けるべきであり,TRTの実施中は直腸指診およびPSA測定により綿密なフォローアップを行うべきと記載されている。TRTの中止後もPSAの上昇が持続する場合は, 前立腺生検 前立腺生検 生検は訓練を受けた専門医(腎臓専門医,泌尿器科医,またはIVR専門医)が行う必要がある。 診断を目的とする生検の適応としては,原因不明の 腎炎または ネフローゼ症候群や 急性腎障害などがある。ときに,治療効果の判定を目的として生検が施行されることもある。相対的禁忌には,出血性素因やコントロール不良の 高血圧などがある。ベンゾジアゼピン系薬剤による軽度の術前鎮静が必要になる場合がある。合併症はまれであるが,輸血や放射線学的または外科的介入... さらに読む が必要である可能性がある。前立腺癌に対して効果的な治療を受けたか,前立腺癌が疑われる性腺機能低下症の男性は,専門医の診察を受けるべきである。テストステロンの経口製剤には肝細胞機能障害および肝腺腫のリスクがある。

テストステロンの補充を受けている男性には,定期的にモニタリングを行うべきである。ヘマトクリット,PSA,およびテストステロン値を,TRT開始後1年間は年4回,その後は年2回の頻度で測定すべきである。同時に直腸指診を勧めるべきである。ヘマトクリットが54%以上の場合は,テストステロンの用量を減量すべきである。PSA値が有意に上昇した場合は,その他の点で前立腺癌の診断および治療の候補とされるであろう男性では,速やかに前立腺生検を考慮すべきである。

性腺機能低下症に起因する不妊症の治療

不妊症 不妊症の概要 不妊症とは通常,避妊なしの性交を1年間続けてもカップルが妊娠できないことと定義される。 不妊症は,WHOによって疾患として定義されている。 頻回の避妊なしの性交により,3カ月以内にカップルの50%,6カ月以内に75%,そして1年以内に90%が妊娠に至る。 不妊症の理由は以下の通りである:... さらに読む には性腺機能低下症以外にも多くの原因が考えられる。原発性性腺機能低下症(FSH高値)に起因する不妊症は,ホルモン療法に反応しない。原発性性腺機能低下症の男性では,ときに少量の精巣内精液が存在することがあり,顕微鏡下の様々な手技でこれを収集することで,生殖補助医療(例, 卵細胞質内精子注入法 卵細胞質内精子注入法(ICSI) 生殖補助医療(ART)では,妊娠の成立を目標とするin vitroでの精子と卵子または胚の操作が行われる。 ARTにより多胎妊娠が生じうるが,リスクは卵巣刺激法よりもはるかに低い。遺伝子異常のリスクが高い場合,しばしば移植および着床前に胚を検査して異常がないか調べる( 着床前遺伝子検査)。 IVFは,精子減少症,精子抗体,卵管機能障害,または子宮内膜症による不妊症,および原因不明の不妊症の治療に使用される。... さらに読む 卵細胞質内精子注入法(ICSI) )により卵子と受精させることが可能である。

続発性性腺機能低下症に起因する不妊症は通常,ゴナドトロピン補充療法に反応する。続発性性腺機能低下症のその他の症状についても,テストステロン補充療法単独で良好な反応が得られる。続発性性腺機能低下症が下垂体疾患に起因する場合は,ゴナドトロピン補充療法が通常奏効する。治療は黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の補充から開始する。黄体形成ホルモン補充療法はヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)で開始し,その用量は1500IU,皮下,週3回とする。卵胞刺激ホルモン補充療法は高価であるが,ヒト閉経期ゴナドトロピンまたはヒト組換えFSHを150IU,週3回の用量で使用する。用量は定期的な精液検査ならびにFSH,LH,およびテストステロンの血清中濃度測定の結果に基づいて調整することができる。十分な精子数が達成された後は,FSHは中止することができ,hCG単独療法を継続する。

視床下部の障害に起因する続発性性腺機能低下症(例,特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症, カルマン症候群 下垂体ホルモンの単独欠損症 )を呈するほとんどの男性では,精子数は低いものの(例,500万個/mL未満),治療により妊孕性が得られる。LHおよびFSHによる治療が無効の場合は,パルス状のゴナドトロピン放出ホルモン補充療法(プログラム可能なミニポンプにより2時間毎に皮下投与する)がより効果的と考えられるが,容易に利用することができない。ほとんどの男性(80~90%)がこれらのレジメンに良好に反応する。

要点

  • FSHおよびLHの濃度が原発性性腺機能低下症(高値)と続発性性腺機能低下症(低値または正常境界域)を鑑別する上で参考になる。

  • 男性性腺機能低下症の年齢に関連する症状としては,不十分な性分化(先天性)と思春期遅発(小児期発症型)のほか,性欲減退や勃起障害,認知機能低下,除脂肪体重の割合の低下,睡眠障害,気分の変化といった様々な非特異的症状(成人発症型)がある。

  • 遊離テストステロン濃度は,計算で求められるほか,ときに測定され,総テストステロン濃度よりも性腺機能をより的確に反映する。

  • 診断はアルゴリズムを用いて系統的にアプローチすることが可能である。

  • テストステロン補充療法では,性腺機能低下症の症状を軽減することはできるが,妊孕性の回復は得られない。

  • ゴナドトロピン補充療法では通常,続発性性腺機能低下症の男性の妊孕性を回復させることができる。

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