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肝疾患における全身性の異常

執筆者:

Steven K. Herrine

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 1月

肝疾患はしばしば全身性の症状や異常を引き起こす。

循環異常

進行した肝不全では,低血圧によって腎機能障害が生じることがある。進行した肝不全または肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には,門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む で生じる血流亢進(心拍出量および心拍数の増加)と低血圧の発生機序については,ほとんど解明されていない。しかしながら,おそらくは両方とも末梢動脈の拡張が寄与していると考えられている。肝硬変に寄与しうる因子としては,交感神経緊張の変化,一酸化窒素やその他の内因性血管拡張物質の産生,液性因子(例,グルカゴン)の活性促進などがある。

内分泌異常

肝硬変の患者では,耐糖能障害,高インスリン血症,インスリン抵抗性,および高グルカゴン血症がしばしば認められるが,インスリン値の上昇は分泌量の増加よりも肝臓での分解量の減少を反映したもので,高グルカゴン血症はその逆である。甲状腺機能検査での異常は,甲状腺の異常というより,むしろ肝臓での甲状腺ホルモンの処理の変化と血漿中の結合タンパク質の変化によるものと考えられる。

性的な影響がよくみられる。慢性肝疾患では月経および妊孕性が障害されるのが一般的である。肝硬変の男性患者(特にアルコール依存症患者)では,しばしば性腺機能低下症(精巣萎縮,勃起障害,精子形成能低下を含む)と女性化(女性化乳房,女性体型)の両方がみられる。生化学的機序は十分には解明されていない。視床下部-下垂体系のゴナドトロピン分泌の予備能がしばしば低下している。循環血中のテストステロン濃度が低く,その原因は主に合成の減少であるが,末梢でのエストロゲンへの変換の増加も一因となっている。エストラジオール以外のエストロゲン濃度は通常上昇するが,エストロゲンと女性化との関係は複雑である。これらの変化は,他の病因による肝硬変よりアルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患 欧米諸国の大半ではアルコール摂取量が高くなっている。精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)によると,米国では任意の12カ月という期間で8... さらに読む アルコール性肝疾患 に多くみられることから,原因としては肝疾患よりアルコールが示唆される。実際,アルコール自体に精巣毒性があることを示唆するエビデンスがある。

血液学的異常

貧血は肝疾患患者でよくみられる。明確な寄与因子としては,失血,葉酸の欠乏,溶血,アルコールによる骨髄抑制,慢性肝疾患の直接的影響などがある。

白血球減少および血小板減少は,進行した門脈圧亢進症において脾腫に伴って発生することが多い。

凝固異常もよくみられ,複雑である。肝細胞機能障害やビタミンKの吸収が不十分な場合,肝臓における凝固因子の合成が障害される。PTの異常(肝細胞機能障害の重症度に依存する)は,フィトナジオン(ビタミンK1)5~10mgを1日1回,2~3日間静脈内投与することで改善することがある。血小板減少,播種性血管内凝固症候群,フィブリノーゲンの異常も多くの患者で凝固障害に寄与する。

腎臓および電解質の異常

腎臓および電解質の異常がよくみられ,特に腹水のある患者で多い。

低カリウム血症の原因としては,循環血中でアルドステロンが増加することによるカリウムの過剰な尿中排泄,カリウムと交換されるアンモニウムイオンの腎臓での貯留,続発性の尿細管性アシドーシス,利尿薬の使用などがある。管理としては,塩化カリウムを経口で補給するとともに,カリウム喪失性利尿薬の投与を控える。

低ナトリウム血症は,たとえ腎臓でナトリウムが十分に保持される状態でもよくみられ(Professional.see heading on page 病態生理 病態生理 腹水とは,腹腔内に液体が貯留した状態のことである。最も一般的な原因は門脈圧亢進症である。症状は通常,腹部膨隆により生じる。診断は身体診察のほか,しばしば超音波検査またはCTに基づく。治療法としては,食塩制限,利尿薬,腹水穿刺などがある。腹水に感染が起こることもあり(特発性細菌性腹膜炎),しばしば疼痛と発熱を伴う。感染の診断には腹水の分析および培養が必要である。感染は抗菌薬で治療する。... さらに読む ),通常は進行した肝細胞疾患で発生,是正は困難となる。全身性のナトリウム喪失より,相対的な水分過剰の方が原因となりやすく,またカリウムの枯渇も寄与することがある。水分制限とカリウムの補給が有用となりうるが,重症例や難治例では,自由水クリアランスを増加させる利尿薬を使用することができる。生理食塩水の静注は,著明な低ナトリウム血症により痙攣発作を生じた場合または全身性のナトリウム喪失が疑われる場合でのみ適応となり,体液貯留を伴う肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には,門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む 患者においては,腹水貯留を悪化させ,血清ナトリウム値の上昇も一過性に過ぎないため,控えるべきである。

肝疾患における腎不全は以下を反映している場合がある:

  • 腎臓と肝臓の両方に直接影響を及ぼすまれな疾患(例,四塩化炭素中毒)

  • 腎血流の低下を伴う循環不全(急性尿細管壊死を伴うこともある)

  • しばしば肝腎症候群と呼ばれる機能的腎不全

肝腎症候群

この症候群では,腎臓の構造的損傷を伴わずに,進行性の乏尿および高窒素血症がみられ,通常は劇症肝炎 劇症肝炎 劇症肝炎は,肝実質の広範な壊死と肝臓の縮小(急性黄色肝萎縮症)を特徴とし,通常は特定の肝炎ウイルスへの感染後,毒性物質への曝露後,または薬剤性肝障害の発生後にみられる,まれな症候群である。 (肝疾患を有する患者の評価と急性ウイルス性肝炎の概要も参照のこと。) B型肝炎ウイルスはときに劇症肝炎の原因とされるが,B型劇症肝炎症例の最大50%では,D型肝炎ウイルスの同時感染がみられる。A型肝炎ウイルスによる劇症肝炎はまれであるが,肝疾患の既往... さらに読む または腹水 腹水 腹水とは,腹腔内に液体が貯留した状態のことである。最も一般的な原因は門脈圧亢進症である。症状は通常,腹部膨隆により生じる。診断は身体診察のほか,しばしば超音波検査またはCTに基づく。治療法としては,食塩制限,利尿薬,腹水穿刺などがある。腹水に感染が起こることもあり(特発性細菌性腹膜炎),しばしば疼痛と発熱を伴う。感染の診断には腹水の分析および培養が必要である。感染は抗菌薬で治療する。... さらに読む のある進行した肝硬変患者で発生する。発生機序は不明であるが,おそらく内臓の動脈循環に極度の血管拡張が生じることで動脈容量の減少につながるものと考えられる。それに引き続き,神経性または液性の機序により腎皮質血流の減少が起こり,結果として糸球体濾過量が低下する。通常は尿中ナトリウム濃度が低く,沈渣所見が良性であれば,尿細管壊死と鑑別できるが,腎前性高窒素血症との鑑別はより難しく,判断が難しい症例では水分負荷に対する反応性を評価するべきである。

肝腎症候群が一旦成立してしまうと,腎不全は通常急速に進行し,致死的となるが(1型肝腎症候群),その他の例ではさほど重症ではなく,より軽度で安定した腎機能不全となる(2型)。

血管収縮薬(典型的にはミドドリン,オクトレオチド,テルリプレシン)と血漿増量薬(一般的にはアルブミン)の併用療法が効果的となりうる。

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