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リンチ症候群

(遺伝性非ポリポーシス大腸癌[HNPCC])

執筆者:

Elliot M. Livstone

, MD, Sarasota Memorial Hospital, Sarasota, FL

最終査読/改訂年月 2017年 1月

リンチ症候群は,大腸癌症例の2~3%を占める常染色体優性遺伝疾患である。症状,初期診断,および治療は他の形態の大腸癌と同様である。リンチ症候群は病歴から疑われ,遺伝子検査により確定される。患者はまた他の悪性腫瘍,特に子宮内膜癌および卵巣癌のサーベイランスを必要とする。

リンチ症候群は,いくつかの既知の遺伝子変異の1つを有する患者のDNAミスマッチ修復を損なう常染色体優性遺伝疾患で,大腸癌を発症する生涯リスクが70~80%ある。散発性結腸癌と比較して,リンチ症候群はより若年(40代半ば)で発生し,その病変は脾弯曲部より口側にある可能性が高い。前駆病変は通常,単発性結腸腺腫であり,他の主要な遺伝性大腸癌である家族性大腸腺腫症(FAP)患者で認められる多発性腺腫とは異なる。

しかしながら,FAPと同様に,大腸以外にも多数の病変が生じる。良性の病変として,カフェオレ斑や皮脂腺腫瘍がみられる。悪性度の低い皮膚癌であるケラトアカントーマが生じることもある。その他に合併頻度の高い悪性腫瘍としては,子宮内膜腫瘍卵巣腫瘍などがある(70歳までのリスクは,子宮内膜腫瘍で39%,卵巣腫瘍で9%)。さらに尿路膵臓,胆道系,小腸,およびなど他の癌のリスクもが高まる。

症状と徴候

リンチ症候群の症状と徴候は他の種類の大腸癌と同様であり,腫瘍自体の診断および管理の流れは同じである。

診断

  • 詳細な家族歴

  • 臨床基準により,その後マイクロサテライト不安定性(MSI)または免疫組織化学(IHC)の検査

  • 確定診断のための遺伝子検査

(American Gastroenterological Associationのリンチ症候群の診断および管理に関するガイドラインも参照のこと。)

リンチ症候群の特異的診断は遺伝子検査で確定する。しかしながら,FAPとは異なり典型的な臨床所見がないため,検査対象者の決定が困難である。したがって,リンチ症候群を疑うためには詳細な家族歴が必要であり,大腸癌が確認された若年患者では全例で家族歴を聴取すべきである。

リンチ症候群のAmsterdam II診断基準を満たすためには,以下の3つの病歴を全て有している必要がある:

  • 大腸癌またはリンチ症候群関連癌を有する近親者が3人以上

  • 少なくとも2世代にわたる大腸癌

  • 50歳未満で診断された大腸癌症例が1例以上

他の予測モデル(例,PREMMモデルと他の基準(例,Bethesda基準[1])を用いている医師もいる。

これらの基準を満たす患者では,腫瘍組織でDNAミスマッチ修復に関わるタンパクを検出するためにMSIまたはIHCの検査のいずれかを行うべきであるが,大半の民間および病院の病理検査室は現在全ての大腸腺癌検体で本検査をルーチンに実施している。AGAのガイドライン(2015年版)では,全ての大腸癌患者の腫瘍はIHCまたはMSIのいずれかの検査を施行すべきであると推奨している(2)。MSIまたはIHCが陽性の場合には,リンチ症候群の特異的突然変異に対する遺伝子検査が適応となる。

リンチ症候群患者は1~2年毎に大腸内視鏡検査によるサーベイランスを受けるべきである(2)。リンチ症候群が確認された患者は,他の癌のスクリーニングを継続する必要がある。子宮内膜癌に対しては,年1回の子宮内膜吸引または経腟超音波検査が推奨される。卵巣癌に対しては,選択肢として年1回の経腟超音波検査および血清CA125値などがある。予防的子宮摘出術および卵巣摘出術も選択肢の1つである。腎腫瘍のスクリーニングに尿検査を用いることがある。

リンチ症候群患者の第1度近親者は,大腸内視鏡検査を20歳代から1~2年毎に行うべきであり,40歳以降は年1回とする。女性の第1度近親者では,子宮内膜癌および卵巣癌の検査を年1回行うべきである。血縁的により離れた近親者には遺伝子検査を行うべきであり,結果が陰性の場合は,大腸内視鏡検査を平均リスク患者と同じ頻度で行うべきである。

診断に関する参考文献

  • 1.Umar A, Boland CR, Terdiman JP, et al: Revised Bethesda guidelines for hereditary nonpolyposis colorectal cancer (Lynch syndrome) and microsatellite instability. J Natl Cancer Inst 96(4): 261–268, 2004.

  • 2.Rubenstein JH, Enns R, Heidelbaugh J, et al: American Gastroenterological Association Institute guideline on the diagnosis and management of Lynch syndrome. Gastroenterology 149:777-782, 2015. doi: 10.1053/j.gastro.2015.07.036.

治療

  • 外科的切除

最も頻用されるリンチ症候群の治療法は,指標病変(index lesion)の切除と他の結腸癌および他臓器の合併腫瘍に対する頻繁なサーベイランスである。リンチ症候群の腫瘍の大半は脾弯曲部より口側に発生するため,直腸S状結腸を温存する結腸亜全摘術が代替治療として提唱されている。いずれの場合でも,綿密なフォローアップが必要となる。

要点

  • 特定の常染色体優性変異を有する患者では,大腸癌の生涯リスクが70~80%となる。

  • 他の癌,特に子宮内膜および卵巣の癌のリスクも高まる。

  • 症状,初期診断,および治療は他の形態の大腸癌と同様である。

  • 特定の家族性危険因子を有する患者では,腫瘍組織のマイクロサテライト不安定性(MSI)の検査または免疫組織化学(IHC)検査を行うべきであり,陽性の場合には,遺伝子検査を行う。

  • 第1度近親者は,大腸内視鏡検査を20歳代から1~2年毎に行うべきであり,40歳以降は年1回とし,女性では,子宮内膜癌および卵巣癌の検査も年1回行うべきである。

  • 血縁的により遠い近親者は遺伝子検査を受けるべきである。

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