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尿閉

執筆者:

Patrick J. Shenot

, MD, Thomas Jefferson University Hospital

レビュー/改訂 2021年 10月
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やさしくわかる病気事典

尿閉とは、膀胱から尿をまったくまたはほとんど排出できなくなった状態のことです。

  • 排尿後に膀胱内に残尿がみられる人では、同時に頻尿や尿失禁がみられる場合があります。

  • 排尿が可能な場合は、排尿後に膀胱に残った尿の量を測定します。

  • カテーテルを用いて膀胱内の尿を除去した後、原因に対する治療を行います。

膀胱内に尿が残る理由としては、膀胱の筋肉の収縮の障害、 膀胱の開口部の閉塞 尿路閉塞 尿路閉塞とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道など、尿が通過する経路(尿路)のどこかが詰まり、尿の流れが遮断された状態のことです。 完全な閉塞(完全閉塞)と部分的な閉塞(部分閉塞)があります。 閉塞が起きると、腎傷害、腎結石、感染症などの原因になる可能性があります。 症状としては、側腹部痛、尿量の減少または増加、夜間頻尿などがあります。... さらに読む (下部尿路閉塞)、 膀胱の収縮と膀胱開口部を閉める筋肉(尿道括約筋)の弛緩 排尿のコントロール 腎臓では絶えず尿が作られており、尿は2本の管(尿管)を通って膀胱に流れ込み、そこで一時的に貯められます(図「 尿路の構造」を参照)。膀胱の一番下の頸部と呼ばれる部分は尿道括約筋という筋肉に囲まれていて、普段はこの筋肉が収縮した状態を維持することによって、尿が体外に排出される通路(尿道)が閉鎖されているため、膀胱が満杯になるまで尿を貯めるこ... さらに読む 排尿のコントロール との協調不全などがあります。尿閉は男性でより多くみられますが、これは 前立腺肥大症 前立腺肥大症 前立腺肥大症(BPH)とは、前立腺が大きくなる良性の病気で、排尿が困難になることがあります。 前立腺は年齢とともに大きくなります。 排尿が困難になることがあり、尿意がより頻繁に、より切迫して感じるようになることがあります。 通常、診断は直腸診の結果に基づいて下されますが、前立腺がんがないか確認するために血液サンプルを採取することもあります... さらに読む などによる前立腺の増大のために尿道(尿を体外に排出する経路)が狭くなる可能性があるためです。

薬、特に抗コリン作用のあるもの(抗ヒスタミンや一部の抗うつ薬など)は、男性と女性の両方で尿閉を引き起こすことがあります。その他の原因としては、便の硬いかたまりが直腸を満たすことによる尿道の圧迫(宿便 合併症 便秘は、排便しにくい、排便回数が少ない、便が硬い、または排便後に直腸が完全に空になっていない感覚(残便感)がある状態です。( 小児の便秘も参照のこと。) 便秘には急性のものと慢性のものがあります。急性便秘は突然起こり、はっきりと現れます。慢性便秘は、徐々に始まり数カ月ないし数年間持続することがあります。 毎日排便しなければ便秘だと思う人はたくさんいます。しかし、誰にとっても毎日排便があることが正常というわけではありません。1日1~3回の... さらに読む )や、 神経因性膀胱 神経因性膀胱 神経因性膀胱は、脳卒中、脊髄損傷、腫瘍などの神経の異常によって膀胱をコントロールできなくなった状態です。 最も重要な症状は尿失禁(排尿をコントロールできない状態)です。 膀胱カテーテルの挿入、画像検査、および尿の流れを測定する検査を行います。 治療の目標は、膀胱を定期的に空にすることです(間欠的導尿または薬の使用などによって)。 排尿をコントロールするには、いくつかの筋肉と神経が協調して働く必要があります。 さらに読む 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む 多発性硬化症 多発性硬化症(MS) 多発性硬化症では、脳、視神経、脊髄の髄鞘(ずいしょう)(ほとんどの神経線維を覆っている組織)とその下の神経線維が、まだら状に損傷または破壊されます。 原因は解明されていませんが、免疫系が自分の体の組織を攻撃する現象(自己免疫反応)が関与していると考えられています。 多発性硬化症の患者のほとんどは、健康状態が比較的良好な期間と症状が悪化する期間を交互に繰り返しますが、時間の経過とともに、多発性硬化症は徐々に悪化していきます。... さらに読む パーキンソン病 パーキンソン病 パーキンソン病は、脳の特定の領域がゆっくりと進行性に変性していく病気です。特徴として、筋肉が安静な状態にあるときに起こるふるえ(安静時振戦)、筋肉の緊張度の高まり(こわばり、筋強剛)、随意運動が遅くなる、バランス維持の困難(姿勢不安定)などがみられます。多くの患者では、思考が障害され、認知症が発生します。 パーキンソン病は、動きを協調させている脳領域の変性によって起こります。... さらに読む の患者や過去に受けた骨盤内手術で膀胱の神経に損傷が起きた人)が挙げられます。

尿閉の症状

ときに、排尿がまったくできなくなることがあります。そのような場合、膀胱内に尿が充満するにつれ、膀胱が拡張して極めて激しい痛みが数時間にわたって起こり、下腹部が膨れます。

より多くの人では、ある程度の量は排尿できるものの、完全に膀胱を空にすることができなくなります。このような場合、膀胱は徐々に拡張し、痛みは伴いません。しかし、排尿開始困難、尿勢低下、残尿感などがみられる場合があります。膀胱が比較的満杯の状態であるため、尿漏れ(溢流性尿失禁 溢流性尿失禁 尿失禁とは、自分では意図せずに尿が漏れることです。 尿失禁は、男女とも年齢を問わず起きる可能性がありますが、女性と高齢者でより多くみられ、高齢女性の約30%、高齢男性の約15%が尿失禁を起こしています。尿失禁は高齢者でより多くみられるものの、加齢に伴う正常な変化の一部ではありません。尿失禁は、利尿効果のある薬を服用した場合のように突然で一時的なこともあれば、長期にわたって持続すること(慢性)もあります。慢性の尿失禁であっても、ときに軽減... さらに読む 溢流性尿失禁 )、夜間の排尿(夜間頻尿)、 頻尿 排尿回数の増加 1日当たりの排尿回数は大半の人で約4~6回(主に日中)です。健康な成人の1日当たりの排尿量は700ミリリットルから3リットル程度です。排尿の増加とは以下のいずれかを意味します。 尿の量が増加している(多尿) 尿の量は正常ながら、排尿の回数が増加している(頻尿) 両方 頻尿に強い尿意( 尿意切迫感)を伴うことがあります。多くの人は、夜間に排尿のために起きなければならなくなることで(夜間頻尿)、多尿を特に認識するようになります。夜間頻尿は、... さらに読む などがときに起こります。保持された尿は細菌の増殖に格好の場所となる可能性があるため、 尿路感染症 尿路感染症 (UTI) が起こる場合があります。

尿閉の診断

  • 排尿後に膀胱に残った尿の量を測定する検査

まったく排尿できない場合は、診断は明らかです。

その他の場合は、できる限り排尿した後に膀胱内に残っている尿の量を測定します。排尿の直後に、医師がカテーテルを膀胱に挿入して流出する尿の量を測定するか、膀胱の超音波検査を行って残存している尿の量を測定します。排尿後に残っている尿の量は、排尿後残尿量と呼ばれます。残尿量が半カップ以上の場合(高齢者ではそれよりも若干多い場合)、尿閉と診断されます。

医師は身体診察を行い、通常は直腸診も行います。男性では直腸診を行うことで、前立腺が大きくなっているかどうかを判定できます。男性と女性の両方において、直腸診は宿便を特定する上で有用です。尿のサンプルを採取し、感染症の検査を行うこともあります。尿閉の原因を特定するために、血液検査と画像検査が必要になる場合もあります。

尿閉の治療

  • カテーテル挿入

  • 原因の治療

  • ときに手術

まったく排尿できない人には、直ちに細いゴムチューブを膀胱に挿入して(尿道カテーテル)、残留している尿を除去して苦痛の緩和を図ります。

尿閉の原因を治療します。尿閉を引き起こす薬を使用している場合は、可能な限り使用を中止します。前立腺が肥大している男性では、前立腺手術または前立腺を縮小させる薬(フィナステリドやデュタステリドなど)か、膀胱頸部の筋肉を弛緩させる薬(テラゾシンやタムスロシンなど)が必要になる場合があります。神経に問題があり、そのせいで膀胱の収縮や機能に支障が出ている場合は、患者自身が定期的にカテーテルを挿入するか、カテーテルを恒久的に留置する処置が必要になることがあります。ときに、尿を膀胱から尿道を迂回して体外に排出する経路を作成するために、手術を行う必要があります。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • 泌尿器科医療財団(Urology Care Foundation):患者向け雑誌(Urology Health Extra®)や研究の最新情報など、泌尿器に関する最新の包括的な医学情報

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