加齢に関連する注意点:高齢者における心不全の原因

加齢自体が心不全の原因になるわけではありません。しかし高齢者では、長期間続いている高血圧や冠動脈疾患による心臓発作など、心不全の一般的な原因が存在する可能性が高くなります。

心不全を引き起こす病気には、以下の2通りがあります。これらの病気は以下の心臓の機能を妨げます。

  • 血液を取り込む

  • 血液を送り出す

高齢者では、血液を取り込む機能の異常(拡張機能障害と呼ばれます)と血液を送り出す機能の異常(収縮機能障害と呼ばれます)は、同じくらいの頻度でみられます。

拡張機能障害

拡張機能障害は、心室の壁が硬くなることによって起こります。それにより心室は正常に血液を取り込むことができなくなり、少しの血液しか送り出せなくなります。高齢になるほど心筋が硬くなる傾向があるため、拡張機能障害により心不全が起きる可能性が高くなります。高血圧は、心筋を厚く硬く変化させるため、拡張機能障害を引き起こす可能性があります。

拡張機能障害には、心臓が硬くなること以外の原因もあります。例えば、心房細動(加齢とともに多くみられるようになる不整脈)の場合、心房の拍動は速く不規則になります。そのため、心房が心室に十分な血液を送ることができなくなります。高齢者では心房細動が突然起こり、心不全につながることもあります。

収縮機能障害

収縮機能障害は、通常は心筋の損傷によって起きます。損傷を受けた心臓は送り出せる血液が減り、心臓内の圧力が高まって心房や心室が拡大します。

高齢者における心臓の損傷の最も一般的な原因は、心臓に血液を供給する動脈の閉塞による心臓発作です。

心臓弁膜症も収縮機能障害を引き起こします。

大動脈弁狭窄症(心臓弁膜症の一種)では、左心室と大動脈の間の開口部(大動脈弁)が狭くなります。その結果、心臓が血液を送り出すときの負担が増えます。大動脈弁狭窄症は、高齢者における心不全の一般的な原因です。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)や瘢痕(肺線維症)などの肺疾患が長期化すると、肺の中の血圧が高くなります。その結果、右心室が肺に血液を送り出すことが困難になります。