太ももの筋肉が弱い、過度の回内が起こる、脚の筋肉や腱が硬いなどの原因により、膝の前部に痛みが生じます。
下り坂を走ると痛みを感じ、やがて歩行時にも痛むようになります。
診断にはMRI検査と関節鏡検査が必要な場合があります。
痛みがなくなるまで走ることをやめるべきであり、その後、膝の周りの筋肉を強化しバランスを整える運動を行います。
過度の回内が痛みの原因である場合は、靴に足底板(中敷き)を入れると助けになることがあります。
(スポーツ外傷の概要 スポーツ外傷の概要 スポーツ外傷は、運動選手やスポーツに参加する人によくみられます。従来からスポーツ外傷として捉えられがちな外傷の中には、スポーツをしていない人にも起こるものがあります。例えば、主婦や工場労働者は、テニスをしていなくてもしばしば テニス肘になることがあります。 スポーツへの参加には外傷のリスクがつきものです。適切なウォーミングアップ(激しい運... さらに読む も参照のこと。)
膝蓋骨は膝の周囲の靱帯や腱がつながっている円形の骨で、正常であれば走っているときに大腿骨の上や下に動きます。
膝の前部が痛むとき
正常な状態では、走っているときに膝蓋骨(膝の皿)は大腿骨の上や下に動いています。膝蓋骨に痛みが生じる理由としては、太ももの筋肉が弱いことや、足が過度に内転(回内)していることがあります。その結果、膝蓋骨と大腿骨が異常にすれ合い、損耗が進みます。 |
膝の前部の痛み(膝前部痛)が起こる原因としては、以下のものがあります。
膝関節前方で膝蓋骨の位置が高すぎるか低すぎる。
膝蓋骨周囲の筋肉の位置が中心からずれている。
ハムストリングの筋肉が硬く、短い。
アキレス腱が硬い。
太ももの筋肉(正常であれば膝を安定させる)が弱い。
ランナー膝
ランナー膝は膝前部の痛みを引き起こす治療可能な障害で、一般的な原因は太ももの筋肉が弱いことです。太ももの筋肉が弱いと、膝蓋骨が側方に動いて大腿骨と異常なこすれ方をします。ランナー膝になると、たいてい最初は下り坂を走っているときに膝が痛み始めます。そのうち、下り坂以外で走っているときや歩いているとき、特に階段を降りるときにも痛みが起こるようになります。
過度の回内
歩行時や走行時に足が過度の回内を起こしている(足が内側に傾いている)と、膝の痛みが起こる場合があります。回内によって太ももの筋肉(大腿四頭筋)が膝蓋骨を外側に引っ張り、その結果、膝蓋骨が大腿骨の端部とこすれ合う異常が生じます。
膝の痛みの診断
医師による評価
医師は症状について尋ね、診察を行います。MRI検査や関節鏡検査(観察用の柔軟な管状の機器で関節内を調べる検査)、またはその両方が必要になる場合もあります。
膝の痛みの治療
安静
リハビリテーション
走っても痛くなくなるまで、ランニングを控えます。患部の氷冷や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の投与、膝サポーターや弾性ストッキングの一時的な使用も助けになります。回復期間中に、膝を保護し体力を維持するために、フィットネスバイクをこいだり(シート位置を高く、反復回数と抵抗は少なくして行う)、水泳をしたり、他の運動を行うことができます。また、太ももの裏側の筋肉(ハムストリング)と表側の筋肉(大腿四頭筋)を強化し、バランスを整える運動が役に立ちます。
ランナー膝の場合は、運動前にストレッチを行うと、硬い筋肉により生じる異常な力のバランスを調整し、けがを減らすのに役立ちます。
足底板(靴の中敷き)は過度の回内を矯正するのに役立ちます。