新生児にとって母乳は理想的な栄養源です。乳児には母乳と人工乳のどちらを与えてもよいですが、世界保健機関(WHO)と米国小児科学会(AAP)は、およそ6カ月間は授乳のみとし、それから固形食を開始する方針を推奨しています。ほかにも、授乳を続けながら生後4カ月から6カ月の間に 固形食 乳児における固形食の開始 固形食を始める時期は、その乳児にとっての必要性と受け入れる準備の度合いによって決まります。一般には、乳児が十分大きくなって、 母乳や 人工乳より高カロリーの食品を必要とするようになった時期に、固形食が必要になります。目安としては、乳児が哺乳びんのミルクを飲み干して満足しても2~3時間でまた空腹になるようになったときや、1日に約1200ミリリットル以上の人工乳を飲むようになったときです。この段階には典型的には生後4~6カ月までに達します。... さらに読む を開始する方針を推奨している組織もあります。現在では、生後4カ月から6カ月の間に固形食を開始することが一部の食物アレルギーの発症予防につながる可能性を示唆した科学的証拠が増えてきています。1歳を過ぎた後、乳児と母親が望む限り母乳哺育を続けることができます。しかし、1歳以降も母乳を与える場合は、固形食や他の飲みもので足りない分を補うものとすべきです。
母乳の授乳はいつでも可能というわけではなく(母親が 授乳期間中にある種の薬を服用している場合 授乳期間中の薬剤の服用 新生児にとって母乳は理想的な栄養源です。乳児には母乳と人工乳のどちらを与えてもよいですが、世界保健機関(WHO)と米国小児科学会(AAP)は、およそ6カ月間は授乳のみとし、それから固形食を開始する方針を推奨しています。ほかにも、授乳を続けながら生後4カ月から6カ月の間に 固形食を開始する方針を推奨している組織もあります。現在では、生後4カ月から6カ月の間に固形食を開始することが一部の食物アレルギーの発症予防につながる可能性を示唆した科学... さらに読む など)、乳児用 人工乳 人工乳による授乳 病院では、一般に新生児には出生後すぐに授乳を行い、その後は、欲しがったときに授乳するのが理想的です。生後最初の1週間は、1回の授乳で約15~60ミリリットル飲みますが、その後は徐々に量が増えて、2週目までには1回に約90~120ミリリットルを、1日に6~8回飲むようになります。新生児には、毎回一定量を飲みきるよう無理強いせず、おなかがすいて欲しがったときに好きなだけ与えるようにします。成長するにしたがって乳児が飲む量は増え、3~4カ月頃... さらに読む でも多くの乳児が健康に育っています。
(新生児と乳児の栄養補給の概要 新生児と乳児の栄養補給の概要 正常な新生児には、母親の乳首を見つけ出して母乳を得るのに役立つ反射神経がみられます。それらは探索反射と吸啜(きゅうてつ)反射といいます。探索反射とは、口や口唇の片側をさわられると、さわられた方に頭を向け、口を開ける反応です。この反射により新生児は乳首を見つけることができます。吸啜反射とは、口の中に物(おしゃぶりなど)を入れられると、すぐにそれを吸い始める反応です。これらの反射が起こるおかげで、すぐに... さらに読む および 産褥期の概要 産褥期のケアの大まかな説明 妊娠を経て赤ちゃんを分娩してからの6週間の期間を、産褥期といい、これは母体が妊娠前の状態に戻るまでの期間です。 出産後に母体に起こる身体的な変化や症状はいくつかありますが、軽度で一時的なものがほとんどです。重度の健康上の問題はまれです。しかし、たいていの場合は医師や病院のスタッフによって、産後のフォローアップのための来院や往診を行う予定が... さらに読む も参照のこと。)
母乳哺育の利点
母乳哺育は、母親にも子にも利点があります。母乳には以下の特徴があります。
乳児に必要な栄養を最も消化しやすく吸収しやすい形で与えることができる
最初に生産される乳汁は薄黄色の液体で、初乳と呼ばれます。初乳の カロリー カロリー カロリーはエネルギーの単位です。食物にはカロリーがあります。つまり、食物は消化され分解される過程で生じるエネルギーを体に供給します。エネルギーによって体内の細胞は、タンパク質などの体に必要な物質の生成をはじめとする、すべての機能を果たすことができます。エネルギーはすぐに使うことも、蓄えておいて後で使うこともできます。 食物は完全には吸収されないこともあります。その場合、食物に含まれるカロリーのすべてを体がエネルギーとして利用できないこと... さらに読む は特に高く、 タンパク質 タンパク質 炭水化物、タンパク質、および脂肪は、食物に含まれている主要な多量栄養素(毎日大量に必要とされる栄養素)です。食物の乾燥重量の90%を占め、食物のエネルギーの100%を供給しています。3つともエネルギー(単位はカロリー)を供給しますが、1グラム当たりのエネルギーの量は次のように異なります。 炭水化物とタンパク質は1グラムにつき4キロカロリー 脂肪は1グラムにつき9キロカロリー これらの栄養素はエネルギーを供給する速度も異なります。最も速い... さらに読む 、白血球、抗体も特に豊富に含まれています。
また初乳後に生産される母乳は、便のpHを調整し、腸内細菌のバランスを適切な状態に保つため、乳児を細菌性の下痢から守ります。こうした母乳の防御的な特性により、母乳で育っている乳児は、人工乳で育っている乳児よりも感染症にかかりにくい傾向があります。母乳哺育は、アレルギー、 糖尿病 小児と青年における糖尿病 糖尿病は、体が必要とするインスリンが十分に産生されない、または産生されたインスリンに体が正常に反応しないため、血糖(ブドウ糖)値が異常に高くなる病気です。 糖尿病とは、インスリンの生産量低下、またはインスリンの効果低下、あるいはその両方が原因で、血糖値が上昇(高血糖)し、それに伴って生じる一連の病態のことをいいます。... さらに読む 、 肥満 肥満 肥満とは、体重が過剰な状態です。 複数の要因が組み合わさって肥満に影響を及ぼします。複数の要因が組み合わさった結果、体に必要な量よりも多くの カロリーを摂取することになります。 そうした要因には、運動不足、食事、遺伝子、生活習慣、民族的背景、社会経済的背景、ある種の化学物質への曝露、特定の病気、特定の薬の使用などがあります。... さらに読む 、 クローン病 クローン病 クローン病は、炎症性腸疾患の一種で、一般的には小腸の下部、大腸、またはその両方に慢性炎症が生じますが、炎症は消化管のどの部分にも現れる可能性があります。 正確な原因は分かっていませんが、免疫系の不適切な活性化がクローン病の発生につながっている可能性があります。 典型的な症状としては、慢性の下痢(血性となることもある)、けいれん性の腹痛、発熱、食欲不振、体重減少などがあります。... さらに読む などのある種の慢性疾患の発症を予防すると考えられています。ほとんどの市販の人工乳は、母乳により近くなるよう、ある種の脂肪酸(アラキドン酸[ARA]およびドコサヘキサエン酸[DHA])が添加されており、人工乳で育っている乳児でおそらく理想的な神経発達が促されます。
母乳哺育は、母親にも以下のような利点があります。
人工栄養で育てる場合に比べ、子どもとのきずなを強く感じることができる
出産後の回復が早くなる
長期的な健康上の利点がもたらされる
母乳哺育の長期的な健康上の利点には、 肥満 肥満 肥満とは、体重が過剰な状態です。 複数の要因が組み合わさって肥満に影響を及ぼします。複数の要因が組み合わさった結果、体に必要な量よりも多くの カロリーを摂取することになります。 そうした要因には、運動不足、食事、遺伝子、生活習慣、民族的背景、社会経済的背景、ある種の化学物質への曝露、特定の病気、特定の薬の使用などがあります。... さらに読む 、 骨粗しょう症 骨粗しょう症 骨粗しょう症とは、骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。 加齢、エストロゲンの不足、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、およびある種の病気によって、骨密度や骨の強度を維持する成分の量が減少することがあります。 骨粗しょう症による症状は、骨折が起こるまで現れないことがあります。... さらに読む 、 卵巣がん 卵巣がん、卵管がん、および腹膜がん 卵巣がんは、卵巣のがんです。卵巣と子宮をつなぐ管に発生する卵管がんおよび腹部の内側を覆う組織のがんである腹膜がんと関連があります。これらのがんは、通常、進行した段階で診断されます。 卵巣がんは、範囲が広がるまで症状がみられないことがあります。 卵巣がんの疑いがある場合は、血液検査、超音波検査、MRI検査、CT検査などを行います。 通常は、左右の卵巣および卵管と子宮を切除します。... さらに読む 、そして一部の 乳がん 乳がん 乳がんは、乳房の細胞が異常をきたし制御不能に分裂することで発生します。通常は、乳汁を作る乳腺(小葉)または乳腺から乳頭(乳首)へ乳汁を運ぶ乳管にがんが発生します。 乳がんは、女性がかかるがんの中で発症数が最も多く、がんによる死亡の中では第2位を占めています。 通常、最初に現れる症状は痛みのないしこりで、自分で気づくことがほとんどです。 乳がんスクリーニングの推奨は様々で、定期的なマンモグラフィー、医師による乳房の診察、乳房自己検診などが... さらに読む のリスクの低下があります。米国では母親の約60%が母乳を与えており、この比率は着実に高まっています。
母親が健康的で偏らない食事を摂取している場合、ほぼ予定日通りに生まれ母乳を飲んでいる乳児には、ビタミンDとフッ化物以外のビタミンやミネラルの補充は必要ではありません。母乳のみを飲んでいる乳児には、生後2カ月以降にビタミンD欠乏症のリスクがあり、早産児、皮膚の色が濃い乳児、日光をあまり浴びない(北方気候の場所に住む乳児など)乳児では特にその傾向が強くなります。このような乳児には、ビタミンDの補充を生後2カ月に開始します。生後6カ月を過ぎたら、十分なフッ素を(添加でも天然でも)含まない水を使用する家庭の乳児には、フッ化物液剤(fluoride drops)を与える必要があります。親は、水のフッ素含量の情報を居住地の歯科医や保健局から得ることができます。
生後6カ月未満の乳児には真水を追加で与えるべきではありません。真水は不要であり、真水を与えると乳児の血液中の塩分濃度が低くなりすぎることがあります(この病気は 低ナトリウム血症 低ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度が低いこと) 低ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が非常に低い状態をいいます。 大量の水分摂取、腎不全、心不全、肝硬変、利尿薬の使用など、多くの原因でナトリウム濃度が低下します。 症状は、脳の機能障害によるものです。 まず動作や反応が緩慢になり、錯乱がみられます。低ナトリウム血症が悪化するにつれて、筋肉のひきつりやけいれん発作が発生して無反応状態に進行します。 診断は、ナトリウム濃度を測定する血液検査に基づいて下されます。 さらに読む と呼ばれます)。
母乳の与え方
母乳による授乳を始めるときは、母親は快適でゆったりした姿勢をとり、座るかほぼ横になります。左右の乳房から授乳できるように、片方の乳房から反対の乳房へ楽に移行できるようにしておくべきです。乳児を母親と対面するように抱きます。母親は親指と人差し指を乳房の先端に、残りの指を乳房の下部にあてて乳房を支え、乳児の下唇の中心に乳首をこすりつけ、乳児が口を開け(探索反射 新生児でよくみられる3つの反射 )乳房をつかむように刺激します。乳首と乳輪を乳児の口に入れるときには、乳首が中央にくるように気をつければ、乳首が痛くなりづらくなります。乳児を乳房から離すときは、乳児の口に自分の指を入れて、乳児のあごをそっと押し下げ、吸いつきを外します。乳首の痛みは、授乳中の姿勢が悪いことによるもので、予防する方が治すよりも簡単です。
授乳時の赤ちゃんの抱き方
母親は快適でゆったりした姿勢をとります。座ってもよいですし、ほぼ横になってもよく、何通りかの姿勢で抱いてみるのもよいでしょう。そうすれば、自分と乳児に最も合った姿勢が分かります。姿勢を何度か変えてみるのもよいでしょう。 一般的な姿勢としては、母親と対面し、おなかとおなかを合わせるように乳児を太ももの上で抱きます。乳児が左の乳房を吸っている間、母親は左手で乳児の首と頭を支えます。乳房を乳児のところにもっていくのではなく、乳児を乳房の位置までもってきます。母親と乳児を支えるものも重要です。母親の背中や腕の下にまくらを置いてもよいでしょう。足台やコーヒーテーブルに足をのせておくと、母親が乳児の上に前かがみにならなくて済みます。母親が前かがみになると、母親の背中を痛めたり、乳首を痛める原因になります。まくらや折りたたんだ毛布を乳児の下に置いても支えになります。 |
最初は、それぞれの乳房から数分ずつ母乳を飲ませるべきです。そうすることで、母親の体に催乳反射という反射が起き、母乳の分泌が刺激されます。母乳の分泌量は吸わせている時間が十分かどうかにかかっているため、十分な母乳の分泌を確立するためには、授乳時間をしっかりとる必要があります。最初の数週間は、授乳のたびに両方の乳房から飲ませるようにすべきです。しかし、先に吸わせた乳房で授乳しているうちに眠ってしまう乳児もいます。乳児にげっぷをさせもう片方の乳房へ移動させると眠るのを防ぐ助けになります。次回の授乳では前回の授乳で最後に吸わせた方の乳房から先に吸わせるようにします。
第1子の場合、十分な母乳の分泌が確立されるまでに通常は72~96時間かかります。第2子以降では、母乳の分泌はより速やかに確立されます。母乳の分泌を刺激するために、最初の数日間は授乳間隔を6時間以内にすべきです。授乳は時間を決めてするのではなく、乳児が欲しがったときに行うべきです。同様に、毎回の授乳の長さも、乳児の要求を満たせるように調整するべきです。授乳は必要に応じて行うべきで、一般的な頻度は24時間で8~12回ですが、この目安にも大きな個人差があります。
仕事をもつ母親は、家にいる間は母乳を与え、仕事に出ている間は搾っておいた母乳を哺乳びんで与えることができます。搾った母乳は、2日以内に飲ませる場合はすぐに冷蔵し、2日以降に飲ませる場合はすぐに冷凍するべきです。冷蔵して4日以内に飲ませなかった母乳は、細菌で汚染されているリスクが高いため、捨ててください。冷凍した母乳は、ぬるま湯の中に置いて解凍するべきです。母乳を電子レンジで温めてはいけません。
乳児にみられる母乳哺育の合併症
母乳哺育による主な合併症は以下のものです。
授乳不足
乳児がどのくらいの量の母乳を飲んでいるか母親には正確には分からないため、出産後3~5日たったら乳児を連れて医師を受診する必要があります。そこで医師は、授乳がうまくいっているかどうかを確かめ、乳児の体重を測り、育児についてのどんな質問にも答えてくれます。乳児が24時間以内に退院した場合や、授乳がうまくいっていない場合、あるいは両親が何か気になることがあると思っている場合は、もう少し早く受診した方がよいでしょう。
医師は、母乳がきちんと出ているかどうかを授乳回数、尿と便によるおむつ替えの回数、体重の増加から判断します。親は乳児が十分な量を飲めているか、おむつの数を数えて大まかに知ることができます。生後5日までに、尿によるおむつの濡れが1日6回未満、もしくは排便が1日4回未満、またはその両方がみられる場合、十分な量が飲めていません。おなかをすかせていて1~2時間毎に授乳しているにもかかわらず、月齢や体格に比べて体重が増えていない乳児は、十分な量の母乳を飲んでいないと考えられます。十分な量の母乳を飲めていない乳児は、脱水になり、 高ビリルビン血症 新生児黄疸 黄疸とは、血流中のビリルビンの増加が原因で、皮膚や眼が黄色くなることです。ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成される、黄色い物質です。ビリルビンは血流によって肝臓に運ばれ、胆汁(肝臓で作られる消化液)の一部として肝臓から排泄されるように処理されます。肝臓でのビリルビンの処理において、ビリルビンは抱合と呼ばれる過程で別の化学物質に結合し... さらに読む を起こすおそれがあります。体格の小さい乳児、 早産児 早産児 早産児とは、在胎37週未満で生まれた新生児のことです。生まれた時期によっては、早産児の臓器は発達が不十分で、子宮外で機能する準備がまだできていないことがあります。 早産の既往、多胎妊娠、妊娠中の栄養不良、出生前ケアの遅れ、感染症、生殖補助医療(体外受精など)、高血圧などがある場合、早産のリスクが高くなります。 多くの臓器の発達が不十分であるため、早産児では呼吸したり哺乳したりすることが難しく、脳内出血、感染症や他の異常が起こりやすくなり... さらに読む 、母親の体調が悪い乳児、難産や手術が必要な分娩であった乳児には、授乳不足のリスクがあります。
母親にみられる母乳哺育の合併症
(産褥期の概要 産褥期のケアの大まかな説明 妊娠を経て赤ちゃんを分娩してからの6週間の期間を、産褥期といい、これは母体が妊娠前の状態に戻るまでの期間です。 出産後に母体に起こる身体的な変化や症状はいくつかありますが、軽度で一時的なものがほとんどです。重度の健康上の問題はまれです。しかし、たいていの場合は医師や病院のスタッフによって、産後のフォローアップのための来院や往診を行う予定が... さらに読む も参照のこと。)
母親の一般的な合併症には、乳房緊満、乳首の痛み、乳管の詰まり、乳腺炎、不安などがあります。
乳房緊満は、乳房に母乳がたまりすぎて痛みを伴う状態のことです。母乳が出始めて(授乳)すぐの時期に乳房緊満が起こります。症状を和らげる方法については 乳房緊満 乳房緊満 妊娠を経て赤ちゃんを分娩してからの6週間の期間を、産褥期といい、これは母体が妊娠前の状態に戻るまでの期間です。 出産後に母体に起こる身体的な変化や症状はいくつかありますが、軽度で一時的なものがほとんどです。重度の健康上の問題はまれです。しかし、たいていの場合は医師や病院のスタッフによって、産後のフォローアップのための来院や往診を行う予定が... さらに読む に記載しています。
乳首の痛みに対しては、授乳中の乳児の位置をチェックします。乳児が唇を巻きこんだ状態で乳首を吸うと、乳首がヒリヒリします。乳首の痛みを和らげる方法については 母乳哺育 母乳哺育 妊娠を経て赤ちゃんを分娩してからの6週間の期間を、産褥期といい、これは母体が妊娠前の状態に戻るまでの期間です。 出産後に母体に起こる身体的な変化や症状はいくつかありますが、軽度で一時的なものがほとんどです。重度の健康上の問題はまれです。しかし、たいていの場合は医師や病院のスタッフによって、産後のフォローアップのための来院や往診を行う予定が... さらに読む を参照してください。
乳管の詰まりは、定期的に乳房から乳汁が出しきれなかった場合に起こります。乳管が詰まると、授乳中の女性の乳房にさわると少し痛いしこりができます。母乳を与え続けることが詰まりを取る最良の方法です。詰まりのある側で授乳させると痛みを感じますが、乳房を出しきるには頻回に母乳を与えることが必要です。母乳を与える前に詰まりのある側に温湿布を当てたり、温マッサージを行ったりすれば助けになるでしょう。乳房に対する乳児の位置によって乳房からの出がよい領域が変わってくるため、母親は授乳する姿勢を変えてもよいでしょう。ワイヤーが下についている、または締めつけるようなストラップがある通常のブラジャーは乳管を圧迫するため、適切な授乳用ブラジャーが役に立ちます。
乳腺炎 乳房の感染症 乳房の感染症( 乳腺炎)は、通常は出産後の6週間に発生し( 分娩後感染)、ほぼすべてが授乳している母親に起こります。授乳中の乳児の姿勢が適正でないと、ひび割れ(および痛み)が生じやすくなります。乳頭や乳頭周囲の皮膚にひび割れができると、皮膚にいる細菌が乳管に侵入して感染症が起こる可能性があります。 感染した乳房は通常、腫れて赤くなり、熱感と圧痛がみられます。乳房の一部だけが赤くなったり痛んだりすることもあります。発熱することもあります。... さらに読む は、母乳を与えている女性に起こりうる乳房の感染症で、乳房の張りや乳管の詰まりがある場合に特に起こりやすくなります。ひび割れや傷ができた乳首から細菌が乳房に入り、感染を引き起こします。感染した領域はさわると痛み、熱をもって赤くなり、全身症状として発熱、悪寒、インフルエンザの様な痛みが現れることがあります。症状が重い、または12~24時間以内に治らない場合は、母乳を飲んでいる乳児にとって安全な抗菌薬を母親に投与します。痛みが強い場合は、痛みを和らげるためアセトアミノフェンを服用することもあります。治療中も母乳を与え続けることが必要です。
不安、フラストレーション、および不適格感は、母乳哺育の経験不足、乳児を胸に抱き母乳を吸わせることの難しさ、疲労、母乳を十分に与えているかを判断することの難しさ、ならびに分娩後の生理的変化などによって生じます。これらの要因や感情が、母親が母乳哺育をやめる最もよくみられる理由です。母親は小児科医や母乳育児の専門家を受診し、自身の感情について相談することにより、早い時期に母乳哺育を止めてしまうことを防げる可能性があります。
授乳期間中の薬剤の服用
母乳期間中の母親は、できることなら薬の服用を避けるべきです。薬物療法が必要な場合は、特定の薬を避け、安全であることが分かっているものだけを使用すべきです(妊娠中の薬の使用 授乳期間中の薬の使用 授乳期間中に母親が薬剤を使用しなければならなくなると、授乳をやめるべきかどうか迷います。答えは以下の条件によって変わってきます。 母乳に移行する薬剤の量 薬剤が乳児に吸収されるかどうか 薬剤は乳児にどのような影響を与えるか 乳児の哺乳量はどのくらいか(乳児の月齢と母乳以外の食事や水分の摂取量により異なる) さらに読む を参照)。
離乳
授乳をやめる(離乳)タイミングは、母親と乳児の両方の必要性と希望に基づいて決めますが、少なくとも生後12カ月まで待つのが望ましいとされています。離乳は、固形食を開始しながら、数週間から数カ月かけて徐々に進めるのが最も一般的です。母親と乳児とも問題なく速やかにやめられる場合もありますが、1日1~2回の授乳を生後18~24カ月以上続ける場合もあります。正しいスケジュールや、より簡単なスケジュールはありません。
離乳の最初の段階では、まず1日の授乳のうち1~3回を、哺乳びんまたはコップに水か薄めた果物のジュース(生後6カ月未満の乳児には水や果物のジュースは使用しないこと)、搾った母乳、乳児用人工乳、あるいは(生後12カ月を過ぎたら)全乳を入れて飲ませる練習に切り替えます。コップから飲めるようになることは、発達上の非常に重要な段階の1つですので、生後10カ月までには、コップを使うことに慣れさせましょう。離乳の過程で哺乳びんの代わりに乳児用の蓋付きコップを使った乳児の場合は、哺乳びんからコップへ移行するプロセスを経ずに済みます。
特に食事時間にあたる回は、 固形食 乳児における固形食の開始 固形食を始める時期は、その乳児にとっての必要性と受け入れる準備の度合いによって決まります。一般には、乳児が十分大きくなって、 母乳や 人工乳より高カロリーの食品を必要とするようになった時期に、固形食が必要になります。目安としては、乳児が哺乳びんのミルクを飲み干して満足しても2~3時間でまた空腹になるようになったときや、1日に約1200ミリリットル以上の人工乳を飲むようになったときです。この段階には典型的には生後4~6カ月までに達します。... さらに読む を与えるようにしていくべきです。母親は母乳を徐々にその他のものに代えていきますが、多くの乳児は生後18~24カ月までは1日に1~2回は母乳を飲み続けます。なかには、もっと長い期間母乳を飲む子もいます。母乳を飲む期間が長く続く場合も、同時に固形食を食べさせ、コップから飲めるようにしなくてはなりません。