性器の先天異常

執筆者:Ronald Rabinowitz, MD, University of Rochester Medical Center;
Jimena Cubillos, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2022年 8月
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性器の先天異常は、男児では陰茎、陰嚢、精巣、女児では腟と陰唇に生じます。ときとして、性器が女性のものか男性のものかがはっきりしない性別不明性器であることがあります。

  • 性器の異常の原因としては、胎児の発育中に性ホルモンの濃度が異常であったこと、染色体の異常、環境的な要因、遺伝的な要因があります。

  • 外性器が男性か女性かはっきりしない場合があり(性別不明性器)、このような状態は先天性副腎過形成症の女児で最もよくみられます。

  • 性器の性別が不明である乳児の性を判定するため、身体診察、画像検査、染色体を分析するための血液検査を行い、ホルモンの血中濃度を測定します。

  • 性器の異常の多くは手術を必要とします。

  • 性器の性別が不明なまま生まれた新生児の性別を親が決定する前に、考慮するべき要因が数多くあります。

腎臓と尿路の先天異常の概要も参照のこと。)

性器の先天異常の原因

男性と女性の性器は同じような胚組織から発生します。この組織が男女どちらの性器に発育するかは、いくつかの要因に左右されます。1つの要因は、X染色体またはY染色体と呼ばれる性染色体です。正常な男性はX染色体を1本とY染色体を1本もっています。正常な女性はX染色体を2本もっています。Y染色体をもつ胎児では、胎内での発育の初期に精巣ができ、そこから男性ホルモンのテストステロンが分泌されます。テストステロンは陰嚢、陰茎、陰茎尿道(陰茎内の尿の通り道)を発育させる仕組みを活性化します。テストステロンが分泌されない場合(正常な女性の胎児ではそうなります)、性器が陰核大陰唇になり、腟と尿道が分離します。テストステロンに加えて、発育中の胎児の体内で作られて、性器の発育のコントロールを助ける物質がほかにもあります。

性器の正常な発育を妨げる可能性がある要因としては、以下のものがあります。

  • 性染色体異常

  • 遺伝子(体の機能を指示するDNAの配列)の異常または欠失

  • 性器の発育を妨げる物質(特定の薬やホルモンなど)に胎児がさらされる

これらの要因の多くに共通してみられる問題は、出生前の胎児の性ホルモン値が異常になることであり、特に女児のテストステロン(またはテストステロン様物質)過剰や男児のテストステロン不足が一般的です。

性器の異常を引き起こす病気によって、他の臓器にも異常が生じることがあります。

性器の先天異常の症状

性器の見た目に異常があっても、男性のものか女性のものかがはっきりしていることがあります。そのような男児にみられる異常としては、尿道口の異常(例えば、陰茎の底部や、まれに陰茎の上側にある)、陰茎の形状の異常(尿道索)、停留精巣などがあります。女児にみられる異常としては、処女膜の開口部の欠損(処女膜閉鎖症)や、腟の欠損または短縮などがあります。

他の異常の結果として、性器が男性のものか女性のものかがはっきりしなくなります。これらは性別不明性器と呼ばれます。女児でみられる性別不明性器の最も一般的な原因は先天性副腎過形成症です。先天性副腎過形成症は遺伝性の副腎の異常で、副腎がテストステロンを過剰に分泌するようになります(健康な女児の副腎が自然に分泌するテストステロンはごく少量です)。

性器の異常がある小児には、排尿の問題がみられることがあります。後に、性交を行うのが困難になったり、不妊や社会的・精神的な問題が生じたり、それらが複合して現れることがあります。

知っていますか?

  • 生まれた小児の性器が男性か女性かはっきりしないことがあります。これらは性別不明性器と呼ばれます。

性器の先天異常の診断

  • 身体診察

  • ときに超音波検査やMRI検査などの画像検査

  • ときに、染色体の分析とホルモン濃度の測定を行うための血液検査

医師は性器の身体診察を行い、他の先天異常がないか調べます。

多くの場合、精巣、卵巣、腟の有無を確認するために超音波検査や、ときにMRI検査を行います。異常を検出するために、逆流性生殖器造影を行って尿道の輪郭を描き出したり、膀胱鏡(観察用の管状の機器)を使用して尿道口や腟の中を観察したりすることもあります。これらの検査の結果がはっきりしない場合は、腹腔鏡検査を行って内視鏡で腹腔内を観察することがあります。

通常は、乳児がどの性染色体をもっているかを調べ、ホルモン濃度を測定するために、血液検査を行います。

性器の先天異常の治療

  • 性器の異常に対して、手術

  • 性別不明性器に対して、ときに性別を決定する手術およびホルモンの投与

性器の異常がある小児のほとんどでは、異常を是正するための手術が必要です。一部の軽微な異常には手術は不要です。

性器の性別が不明である小児において、小児の性染色体(すなわち、XX染色体をもつ遺伝学上の女性であるかXY染色体をもつ遺伝学上の男性であるか)は重要な要因ですが、他の点も考慮しなければなりません。例えば、胎児が子宮内でさらされたホルモンが大きな影響を与えることがあります。しかし、小児が十分成長し、どちらかの性として振る舞うようになるか、自分をどちらかの性であると考える(ジェンダーアイデンティティ)ようになるまで、この影響は明らかにならないこともあります。

小児の行動やジェンダーアイデンティティは遺伝学上の性と必ずしも一致しないため、性別の決定を早期にしすぎないことが重要です。乳児期に必ず性別を決定しなければならないわけではないため、待つことに害はありません。小児科医、内分泌医(ホルモンの病気の専門医)、遺伝専門医、泌尿器科医、および場合により精神科医で構成される集学的ケアのチームは、この困難な決定に直面する患児の親に助言をすることができます。

適切かつ必要であれば、手術が行われ、小児にホルモンが投与されます。生涯にわたってホルモンの投与を受け続けなければならないこともあります。

女性性器の異常

女性性器の異常にはいくつか原因がありますが、その大半には、出生前に胎児の血液中の性ホルモン量が異常であることが関与しています。

女児にみられる主な性器の先天異常としては以下のものがあります。

まれに、腟の欠損や短縮がみられることがあります。

性器の先天異常を診断するために、医師は身体診察と検査を行います。

女性の外性器

男性性器の異常

男性性器の異常にはいくつか原因がありますが、その大半には、出生前に胎児の血液中の性ホルモン量が異常であることが関与しています。

陰茎の異常は、男児が立った状態で尿の方向を制御する能力を妨げることがあります。年長男性では、こうした異常によって性交の能力や精子の排出が妨げられることがあり、子どもを作る能力(妊よう性)が損なわれる可能性があります。それらの異常は、その見た目ゆえに自尊心の問題も引き起こす可能性があります。

男児にみられる一般的な性器の先天異常としては以下のものがあります。

生まれた男児の性器が男性か女性かはっきりしないことがあります(性別不明性器)。男児の性別不明性器の一般的な原因は、妊娠初期のテストステロン不足です(小児の男性性腺機能低下症も参照)。

性器の先天異常を診断するために、医師は身体診察と検査を行います。

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