Brief, Resolved, Unexplained Event(BRUE)と乳幼児突発性危急事態(ALTE)

執筆者:Christopher P. Raab, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2021年 8月 | 修正済み 2022年 12月
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BRUE(brief, resolved, unexplained event)および乳幼児突発性危急事態(apparent life-threatening event:ALTE)とは、無呼吸、体の色や筋緊張の変化、せき込み、空嘔吐などの緊急の症状が1歳未満の小児に突然発現する事態をさします。

  • 徹底的な病歴聴取と身体診察、およびときに検査を行っても原因が特定されない場合、その事象はBRUEに分類されます。

  • 特定された場合の既知の原因としては、消化管、神経系、呼吸器、感染、心臓、代謝、または外傷性の病気などがあります。

  • 養育者の話、身体診察、およびときに特定の臨床検査の結果に基づいて診断を下します。

  • 予後(経過の見通し)は、特定された事象の原因によって異なります。

  • 原因が特定できれば、それに対する治療を行います。

この用語は、最近変更されたものです。以前は、「ALTE」(乳幼児突発性危急事態)という用語を用いて、根底にある原因が最終的に特定されたかどうかにかかわらず、乳児が突然に緊急症状を起こした事象をすべてこのように呼んでいました。現在、根本的な原因がない場合、医師はその事象をBRUE(brief, resolved, unexplained event)と呼びます。一部の医師は現在でも、最初に原因を調べている間や、後で原因が特定されてからも「ALTE」という用語を使います。

BRUEとALTEは乳児突然死症候群(SIDS)と関係があるように思えるかもしれませんが、SIDSとこれらの間に明らかな関係は認められていません。

原因

半数を超える症例で、緊急症状の原因を特定できません。このような症例は、BRUEと呼ばれます。

原因がある場合、最も一般的な原因には以下のものがあります。

あまり一般的でない原因には以下のものがあります。

症状

BRUE(またはALTE)は、乳児の呼吸が突然予期しない変化を起こし、親や養育者に危急を告げる事態を特徴とします。そのような事態には以下のものがあります。

  • 20秒以上呼吸が止まる

  • 体の色の変化(通常は青または蒼白になりますが赤くなることもあります)

  • 筋緊張の変化(通常はだらんとなります)

  • 窒息または空嘔吐

診断

  • 医師による評価

  • 評価の結果に応じて、他の検査

BRUEが起こった場合、医師は以下のような重要な質問をします。

  • 養育者はどのような事態を目撃しましたか(呼吸、体の色、筋緊張、眼の変化のほか、乳幼児から発生した音、エピソードの持続時間、事象の前に起こった症状の説明を含めて)。

  • その際、養育者はどんな対処をしましたか(やさしく刺激した、口対口(マウスツーマウス)人工呼吸をした、または心肺蘇生をしたなど)。

  • 母親が妊娠中に薬剤を使用していましたか。現在、家族に薬を使用している、喫煙している、飲酒している人はいますか。

  • 子どもの在胎期間(受精後から出産まで子宮内で経過した期間)は何週でしたか。出生時に何か合併症がありましたか。出生後に無呼吸で入院したことがありますか。

  • 哺乳中に空嘔吐をしたり、せきをしたり、吐いたりしますか。体重の増加に問題はありましたか。

  • すべての面において月齢相応の発達を示していましたか。

  • 以前にBRUEになったことがありますか、または最近けがをしましたか。

  • 家族に同様の事象を起こした人や乳幼児期に亡くなった人はいますか。

医師は身体診察をして、明らかな異常、特に筋緊張の亢進(体がこわばっている)や筋緊張の低下(だらんとしている)といった神経系の異常、および感染症やけが、虐待が疑われる徴候についてチェックします。

医師は、養育者との話や身体診察に基づいて、小児が重篤な病気ではないことを確認するのに十分な情報を得ることができます。しかし不確かな場合には、これらの診察所見に基づいて、臨床検査(血液[肝臓の検査を含む]、便、尿、髄液の検査)、画像検査(胸部X線、頭部CTなど)、心電図検査や、これらの組合せを行います。 けいれん発作の可能性をチェックするため、その他の検査(脳波検査など)が行われる場合もあります。

予後(経過の見通し)

予後は、特定された原因によって異なります。例えば原因が重篤な神経疾患である場合には、死亡や障害のリスクが高くなります。BRUEやALTEそのものには、小児の発達に対する長期的影響はないと考えられています。

BRUEやALTEとSIDSとの関係は不明ですが、2回以上の事象がみられた小児ではSIDSのリスクが高くなります。

治療

  • 特定された原因の治療

  • ときに在宅モニタリング装置

原因が特定されれば、それに対する治療を行います。心肺蘇生を必要とした乳児、診察または最初の臨床検査で何らかの異常が特定された乳児、または懸念すべき病歴がある乳児は、入院させ、モニタリングとさらなる評価を行います。

親や養育者は、乳児への心肺蘇生の方法と安全な養育法一般(あお向けに寝かせる[putting infants to sleep on their back]、タバコの煙を避けるなど)について訓練を受ける必要があります。ある一定の期間、家庭での無呼吸モニタリング装置の使用を勧める場合もあります。その際、単に警報を鳴らすだけのモニターよりも、乳児の呼吸パターンと心拍数を記録するモニターの方が推奨されます。記録機能の付いたモニタリング装置は、医師が実際に起こった事象と警報の誤作動とを区別する上で役立ちます。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 安全な寝かせ方(Safe to Sleep®):乳児の安全な睡眠習慣に関する親や養育者向けの情報

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