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乳房のしこり

執筆者:

Mary Ann Kosir

, MD, Wayne State University School of Medicine

レビュー/改訂 2022年 6月
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やさしくわかる病気事典

乳房のしこり(腫瘤)とは、周囲の乳房組織と違って感じられる肥厚または膨らみのことです。しこりは患者自身が気づいたり、医師による定期的な身体診察中に見つかることもあります。

乳房のしこりは比較的よくみられますが、その多くはがんではありません。

知っていますか?

  • 乳房のしこりのほとんどはがんではありませんが、良性(がんではない)のしこりと悪性(がん)のしこりの区別は重要であるため、検査が必要です。

乳房のしこりの原因

乳房のしこりの一般的な原因

最も一般的な原因は、以下のような乳房の線維腺組織(線維性結合組織と腺で構成される)が関与するものです。

  • 線維腺腫

  • 線維嚢胞性変化

典型的な 線維腺腫 乳房の線維腺腫 乳房の線維腺腫は小さく、滑らかで充実性の、丸い良性のしこりで、線維組織と腺組織からできています。 ( 乳房の病気の概要および 乳房のしこりも参照のこと。) 乳房の線維腺腫は青年期の女性を含む若い女性に多くみられます。原因は不明です。成人では、乳房の線維腺腫は時間とともに小さくなることがありますが、青年期には、線維腺腫は大きくなり続ける傾向にあります。 線維腺腫は 乳がんと間違えられることがありますが、がんではありません。線維腺腫の中には... さらに読む は、滑らかで丸く、動くしこりで、痛みはありません。妊娠可能年齢の女性に多く発生し、時間とともに小さくなることがあります。線維腺腫は乳がんと間違えられることがありますが、がんではありません。線維腺腫の種類の中には、乳がんのリスクを上昇させるとは考えられていないものがあります。また、乳がんのリスクをわずかに高くする可能性のある線維腺腫もあります。

ほとんどの女性では、線維嚢胞性変化は女性ホルモンのエストロゲンプロゲステロンの濃度の毎月の変動と関係しています。これらのホルモンは乳房の組織を刺激します。症状は閉経後に軽減する傾向があります。

線維嚢胞性変化は乳がんのリスクを上昇させることはありません。

乳房のしこりの他の原因

以下の原因からしこりが生じることがあります。

感染症、乳瘤、瘢痕組織の形成は乳がんのリスクを上昇させません。

乳房のしこりの評価

警戒すべき徴候

以下の症状や特徴には注意が必要です。

  • しこりが皮膚または胸壁に張り付いている

  • しこりが硬く、表面が不規則

  • しこり近くの皮膚にくぼみがある

  • 乳房の皮膚が厚くなり、赤くなっている

  • 乳頭からの分泌物に血が混じっている

  • 複数のリンパ節が融合しているか、皮膚または胸壁に張り付いている

受診のタイミング

乳房のしこりは(通常はがんではありませんが)がんの可能性があるため、およそ3~7日以内に医師の診察を受ける必要があります。

発赤、腫れ、膿の排出といった感染症の徴候がみられない限り、1週間程度の遅れは問題になりません。これらの症状がある場合は、1~2日以内に受診すべきです。

医師が行うこと

医師は、患者にしこりについて、どれくらい前からあるか、現れたり消えたりするか、痛みがあるかなどを質問します。医師はまた、 乳頭からの分泌物 乳頭からの分泌物 片方または両方の乳頭から漏れ出す液体を乳頭からの分泌物と呼びます。それぞれの乳房には多数(15~20)の乳管があります。分泌物はこれらの乳管の1本または複数から生じます。 ( 乳房の病気の概要も参照のこと。) 母乳が分泌される妊娠の最後の数週間および出産後に起こる乳頭からの分泌物は正常です。妊娠していない女性や、授乳中でない女性でも、特に生殖可能年齢の間は乳房が刺激されることで乳頭からの分泌物がみられる可能性があります。ただし、男性にお... さらに読む や、体重減少、疲労、骨痛といった全身症状などの他の症状についても質問します。医師は患者に、過去に乳がんが診断されているかどうかや 乳がんの危険因子 乳がんの危険因子 乳がんは、乳房の細胞が異常をきたし制御不能に分裂することで発生します。通常は、乳汁を作る乳腺(小葉)または乳腺から乳頭(乳首)へ乳汁を運ぶ乳管にがんが発生します。 乳がんは、女性がかかるがんの中で発症数が最も多く、がんによる死亡の中では第2位を占めています。 通常、最初に現れる症状は痛みのないしこりで、自分で気づくことがほとんどです。 乳がんスクリーニングの推奨は様々で、定期的なマンモグラフィー、医師による乳房の診察、乳房自己検診などが... さらに読む 乳がんの危険因子 など、病歴と家族歴についても質問します。

  • 大きさ

  • 硬いか柔らかいか

  • 表面は滑らかか不規則か

  • 痛みがあるか

  • 押すと自由に動くか、皮膚または胸壁に張り付いているか

若い女性にみられるしこりで、痛みを伴う、ゴムのような感触のものは通常、線維嚢胞性変化で、以前に同様のしこりが生じたことがある場合は特にそうです。

医師は左右の乳房の形状と大きさが同程度かを判断し、各乳房について、異常(特に、警戒すべき徴候)がないか確認します。警戒すべき徴候がみられる場合、がんの可能性が高くなります。

医師はわきの下および鎖骨の上のリンパ節も触診し、リンパ節の腫れや痛みがないか確認します。

検査

身体診察中に乳房のしこりが悪性のもの(がん)かどうかを判断するのは難しく、がんを見逃すと深刻な結果につながるため、通常は検査が必要です。

充実性のしこりを嚢胞(がんであることはまれ)と区別するため、一般的にはまず超音波検査を行います。

しこりが嚢胞と考えられ、痛みや乳頭からの分泌物などの症状を引き起こしている場合、嚢胞にシリンジの付いた針を刺し、液体を抜き取って(吸引と呼ばれます)調べる場合があります。以下のいずれかの場合にのみ、液体にがん細胞が含まれていないか検査します。

  • 液体に血が混じっている、または濁っている

  • ほとんど液体が抜き取れない

  • 吸引後もしこりが残る。

これらがなければ、4~8週間後に再度受診します。このときに嚢胞が触知できなければ、良性と考えられます。また嚢胞ができていれば再度吸引し、その見た目にかかわらず液体を分析に出します。3回目に嚢胞がまたできている場合、または吸引してもなくならない場合は、しこりの組織サンプルを採取またはしこり全体を切除し、顕微鏡で検査します(生検)。

  • 穿刺吸引細胞診:細い針の付いたシリンジを使ってしこりから細胞を吸引します。

  • コア針生検:先端が特殊なより太い針を使用して、乳房組織の大きなサンプルを採取します。

  • 直視下(外科的)生検:医師が皮膚および乳房組織を小さく切開し、しこりの一部または全部を切除します。このタイプの生検は、針生検ができない場合(しこりが触知できないなど)に行われます。針生検でがんが検出されなかった後に、針生検でがんを見逃していないことを確かめるために行われる場合もあります。

超音波またはマンモグラフィーの画像を見ながら、針を目的の位置まで進めます。ほとんどの場合、これらの検査のために入院する必要はありません。通常は、局所麻酔のみで行われます。

乳房のしこりの治療

線維嚢胞性変化の治療は、原因および症状の有無によって異なります。

線維嚢胞性変化では、スポーツ用ブラジャーなどの柔らかいサポートブラジャーの着用や、アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの痛み止めの使用が、症状の緩和に役立つことがあります。

嚢胞の液体を抜き取ることもあります。

線維腺腫は、次第に大きくなっている場合や痛みがある場合、または患者の希望がある場合には通常、切除します。線維腺腫が小さい場合、低温を用いて破壊できる場合があります(凍結療法)。この処置は通常、局所麻酔のみで行われます。しかし、線維腺腫を1つ切除した後、乳房の他の部位にまた線維腺腫が生じる可能性があります。過去に何度もしこりを摘出して良性であることが判明している場合には、医師と相談して新しいしこりができても摘出せずに様子をみることもあります。線維腺腫を切除したかどうかにかかわらず、医師が変化を確認できるよう、定期的に健診を受けるべきです。

しこりが乳瘤(乳腺の詰まり)であれば、それを排出(吸引)します。この治療後に消失するのが典型的です。

要点

  • ほとんどの乳房のしこりはがんではありません。

  • 乳房にしこりのある女性は医療従事者の診察を受ける必要があり、診察では乳房の診察と、通常は追加検査が行われます。

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