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黒色腫

(悪性黒色腫)

執筆者:

Gregory L. Wells

, MD, Ada West Dermatology and Dermatopathology

レビュー/改訂 2022年 9月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

黒色腫(メラノーマとも呼ばれます)は、色素を作り出す皮膚細胞(メラノサイト)から発生する皮膚がんです。

メラノサイトは、皮膚にあり、色素を作り出して皮膚に特有の色をもたらす細胞です。日光がメラノサイトを刺激すると、メラニンという皮膚の色を濃くする色素がたくさん作られ、黒色腫の発生リスクが高まります。

黒色腫は離れた部位に転移しやすく、転移した先でも増殖を続けて組織を破壊します。

黒色腫の最も一般的なタイプは次の2種類です。

  • 表在拡大型黒色腫:このタイプは黒色腫全体の70%を占め、多くは女性の脚と男性の体幹に発生します。腫瘍細胞では一般的にBRAF遺伝子に突然変異がみられます。

  • 結節型黒色腫:このタイプは黒色腫全体の15~30%を占め、全身のあらゆる部位に発生し、急速に増殖します。

黒色腫の危険因子

黒色腫の危険因としては以下のものがあります。

黒色腫を発症した人では、新たな黒色腫が発生するリスクが高くなります。

黒色腫は皮膚の色が濃いほど少なくなります。皮膚の色が濃い人に黒色腫ができる場合は、しばしば爪床や手のひら、足の裏に発生します。

小児期に黒色腫を発症することは非常にまれです。しかし、先天性色素性母斑は皮膚の濃い色の斑で、ほくろやあざのように、出生時から存在します。例えば大きさが約20センチメートルを超えるほど大きい場合、先天性色素性母斑は悪性黒色腫の危険因子です。

黒色腫は妊娠中にも発生しますが、妊娠によってほくろが黒色腫になる可能性が高まるわけではありません。妊娠中にはしばしばほくろの大きさが変わったり、色が濃くなったりします。

すべての人が、 黒色腫のABCDE 黒色腫のABCDE 黒色腫のABCDE について知り、自分のほくろに悪性の変化がみられないか確認する必要があります。

黒色腫の症状

黒色腫の外観は様々です。小さな黒い斑点を伴う、平坦で不規則な形をした褐色の皮疹として現れる場合もあれば、赤色、白色、黒色、または青色の斑点を伴う、隆起した褐色の皮疹として現れる場合もあります。ときに黒色腫は、赤色、黒色、または灰色の硬い隆起として現れる場合もあります。

最大10%の黒色腫は色素を作りません。それらは無色素性黒色腫と呼ばれるもので、色はピンク色、赤色、またはやや明るい褐色で、外観は良性腫瘍や黒色腫以外の皮膚がんのように見えることがあります。

黒色腫の診断

  • 生検

新しくほくろができた、またはすでにあるほくろが大きくなる(特に縁が不規則な形になる)、色が濃くなる、炎症を起こす、点状に変色した、出血している、かゆみ、圧痛、痛みがある、などの変化をみせた場合は、悪性黒色腫について警戒すべき徴候であり、 黒色腫のABCDE 黒色腫のABCDE 黒色腫のABCDE も同様です。このような所見がみられる場合、医師は黒色腫を疑って生検を行います。

黒色腫のABCDE

以下のものは黒色腫のABCDEとして知られる警戒すべき徴候です。

  • A(Asymmetry) = 非対称性:非対称的(不規則)な外観(ほくろの両半分が同じではない)

  • B(Border) = 境界:不規則な境界(境界が周囲の皮膚と混ざっているように見えたり、円形や楕円形ではなかったりする)

  • C(Color) = 色:元からあるほくろが変色した。特に、周囲の皮膚に褐色、黒色、赤色、白色、青色の色素が広がったか、患者の他のほくろと比べて色が大きく異なるか、濃い

  • D(Diameter) = 直径:幅が約6ミリメートルを超え、鉛筆の端に付いた消しゴムと同じくらいの大きさである

  • E(Evolution) = 変化:30歳以上の人で新しいほくろが現れたり、ほくろが変化した

生検用に切除される色の濃い増殖性変化のほとんどは、黒色腫ではなく ただのほくろ ほくろ ほくろは、皮膚にできる小さな増殖物で、通常は濃い色をしており、皮膚の色素を作る細胞(メラノサイト)から生じます。 ほくろはほとんどの人にみられますが、異型母斑のできやすさは遺伝による場合があります。 大きく変化するほくろや異型母斑は生検を行い、黒色腫かどうかを調べる必要があります。 がんではない(良性の)ほくろの大半は治療が不要ですが、不快なほくろや美容上の問題となるほくろはメスと局所麻酔により切除することができます。... さらに読む ほくろ です。にもかかわらず、がんを1つ大きくさせるよりは、無害なほくろを多数切除する方が選ばれます。一部には、単なるほくろでも黒色腫でもなく、その中間のようなものもあります。それらは 異型母斑 異型母斑 ほくろは、皮膚にできる小さな増殖物で、通常は濃い色をしており、皮膚の色素を作る細胞(メラノサイト)から生じます。 ほくろはほとんどの人にみられますが、異型母斑のできやすさは遺伝による場合があります。 大きく変化するほくろや異型母斑は生検を行い、黒色腫かどうかを調べる必要があります。 がんではない(良性の)ほくろの大半は治療が不要ですが、不快なほくろや美容上の問題となるほくろはメスと局所麻酔により切除することができます。... さらに読む 異型母斑 と呼ばれ、後に黒色腫に変化するものもあります。

異型母斑と黒色腫を見分けるのに有用な道具はほかにもあります。そのような道具として偏光フィルターやダーモスコープなどがあり、増殖性病変をより詳細に評価するのに役立ちます。

黒色腫の予後(経過の見通し)

黒色腫は素早く転移し、診断から数カ月以内に死に至ることもあります。皮膚内で黒色腫が増殖している範囲が浅いほど、手術で根治できる可能性が高くなります。初期段階の、最も浅い黒色腫であれば、手術でほぼ100%が治ります。しかし、皮膚の中に約1ミリメートルを超えて浸潤している黒色腫の場合、リンパ管や血管へ転移する可能性が高くなります。

黒色腫がリンパ節に転移した場合の5年生存率には、腫瘍がある部分の皮膚が破れている(潰瘍化している)程度と転移が起きたリンパ節の数に応じて、31.9%~70.6%の幅がみられます。

黒色腫が離れた部位に転移すると、5年生存率は31.9%になります。余命が9カ月より短い場合もあります。しかし、病気の経過は非常に多様であり、免疫系の防御能力によっても変わってきます。黒色腫が転移しても、見かけ上健康な状態で数年生存する人もいます。

黒色腫の予防

これらの対策をとることで黒色腫の発生や黒色腫による死亡のリスクを減らせるかどうかは、明確には分かっていません。しかし、日焼けマシーンの使用、特に若年者による使用は、黒色腫のリスクを確かに高めるとみられています。

黒色腫を発症した人は、さらに別の黒色腫が発生するリスクが高くなります。そのため、そのような人は皮膚の診察を定期的に受ける必要があります。ほくろが多い人も、全身の皮膚の診察を年1回以上の頻度で受けるようにします。元からあるほくろの変化を発見し、 黒色腫を示唆する特徴を見つける 黒色腫のABCDE 黒色腫のABCDE ことのできるように本人を指導することもあります。危険因子がない人については、毎年行う皮膚の診察で黒色腫による死者数を減らせるかどうかは分かっていません。

黒色腫の治療

  • 腫瘍の切除

  • 場合によってイミキモド、凍結療法、または放射線療法

  • 転移を起こした腫瘍に対しては、免疫療法、分子標的療法、または放射線療法

黒色腫の手術では、腫瘍とその周囲の皮膚組織を腫瘍の縁から1センチメートル程度余分に切除します(ときに モース顕微鏡手術 モース顕微鏡手術 モース顕微鏡手術 を行うこともあります)。

黒色腫最も浅い層にとどまっている場合(表皮を越える浸潤がない場合のことで、表皮内黒色腫と呼ばれます)や、手術ができない場合(健康状態が非常に悪い場合など)、または患者が手術を受けないことを選んだ場合(黒色腫が美容上重要な部分にある場合など)は、イミキモドクリームによる治療や極度の低温で黒色腫を破壊する治療(凍結手術)が用いられます。

知っていますか?

  • 早期に診断されれば、浅い黒色腫は手術でほぼ100%根治させることができます。

転移した黒色腫

黒色腫が離れた部位に転移している場合は、一般に手術は選択肢から外れますが、ときに、がんが限局している領域(例えば、転移がみられるリンパ節)を外科的に切除することもあります。

新しい 免疫療法 がんの免疫療法 免疫療法は、がんに対抗するために体の 免疫系を活性化するために行われます。そのような治療では、腫瘍細胞の特定の遺伝学的特徴を標的にします。腫瘍の遺伝学的特徴は、がんが発生する器官に左右されません。そのため、このような薬は多くの種類のがんに対して効果的な可能性があります。( がん治療の原則も参照のこと。) 免疫系を刺激するために使用される治療にはいくつかの種類があります。また、がん治療のこの領域は精力的に研究されています。米国国立がん研究... さらに読む 薬であるペムブロリズマブやニボルマブを使用すると、がん細胞を破壊する免疫系の能力を高めることができます。このような薬剤は、プログラム細胞死タンパク質1と呼ばれる、がん細胞の表面にあるタンパク質の作用を阻害することから、PD-1阻害薬と呼ばれます。このタンパク質はがん細胞を免疫系の作用から保護しています。PD-1阻害薬によってこのタンパク質が阻害されると、免疫系はがん細胞を攻撃し、殺すことができるようになります。PD-1阻害薬は転移性黒色腫に対する非常に有効な治療法となりつつあります。イピリムマブは別の免疫療法薬であり、ある種の白血球を活性化し、がん細胞を攻撃させて、生存を改善します。ニボルマブイピリムマブの併用がしばしば最善の治療法になります。ニボルマブは、レラトリマブ(relatlimab)と呼ばれる別の免疫療法薬と併用することもできます。

分子標的療法では、がん細胞に固有の生物学的機構を攻撃する薬剤を使用します。分子標的療法の薬剤は、がん細胞だけにある異常な遺伝子を標的として作用します。転移を起こした黒色腫患者の生存率を改善することができる種類の分子標的療法の薬剤として、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ、ベムラフェニブなどがあります。これらの薬剤は多くの場合、旧来の化学療法薬よりも正確に、がん細胞を標的にすることができます。免疫療法を受けられない人には、トラメチニブやコビメチニブ、ビニメチニブなど、別の種類の分子標的薬と併用することができます。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

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