結核

執筆者:Edward A. Nardell, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2022年 9月
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やさしくわかる病気事典

結核は、空気感染する細菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。結核は肺を侵しますが、ほぼすべての臓器に影響が及ぼす可能性があります。

  • 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。

  • 最もよくみられる症状はせきですが、発熱や寝汗、体重減少、体調不良を感じることもあります。また結核が別の臓器を侵している場合は、ほかにも様々な症状が出ます。

  • 診断を下すには、通常、ツベルクリン検査または血液検査、胸部X線検査、たんサンプルの観察と培養検査を行います。

  • 結核菌に耐性が生じる可能性を減らすために、必ず2つ以上の抗菌薬を投与します。

  • 結核の伝染を防ぐには、早期に診断を下して治療を行い、活動性結核の患者を治療の効果がみられるまで隔離することが役立ちます。

新生児の結核も参照のこと。)

通常、結核は肺を侵しますが、ほぼすべての臓器に影響が及ぶ可能性があります。

結核は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)と呼ばれる細菌によって引き起こされます。ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)やマイコバクテリウム・アフリカナム(Mycobacterium africanum)のような他の関連菌(抗酸菌)も、似たような病気を起こすことがあります。これらの細菌と結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、さらに他のいくつかの細菌をあわせて結核菌群と呼びます。

他の種類の抗酸菌、特にマイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)と呼ばれる細菌群も病気を引き起こします。この抗酸菌が引き起こす病気は、結核とは異なります。

ハンセン病も別の抗酸菌によって引き起こされます。

結核に関する世界的状況

結核は長い間、公衆衛生上の深刻な問題であり続けています。1800年代の欧州では、死者数全体の30%以上が結核によって死亡していました。1940年代後半に抗結核用の抗菌薬が登場したことで、人類は結核との闘いに勝利を収めたかのようにみえました。しかし、公衆衛生対策の不備、HIV感染症/エイズによる免疫反応の低下、薬剤耐性の出現、世界各地に残る極度の貧困などの要因により、結核は今もなお世界中で命を脅かす病気です。2020年の統計によると、次のような状況があります。

  • 推定990万人が新たに症状を伴う結核の患者になり、推定150万人が死亡しています。

  • 新しい症例のほとんどは、インドとパキスタンを含む東南アジア(43%)で発生し、アフリカ(25%)や西太平洋地域(18%、中国、日本、フィリピン、オーストラリアを含む)がそれに続きます。

  • 新たに生じた症例数は国、年齢、人種、性別、社会経済的状況によって大きく異なります。新規症例全体の2/3が8カ国で発生しました。新規症例の大半がインドで発生し、インドネシア、中国、フィリピン、パキスタン、ナイジェリア、バングラデシュ、南アフリカがそれに続きました。

世界人口の約4分の1が結核菌に感染しているとみられています。そのほとんどは休眠型(非活動性または潜在性)の結核感染症です。こうした感染者のうち、活動性結核を発症するのはごくわずかです。世界中で常に約1500万人が活動性結核を患っています。

世界的に見ると、結核は主要な死因の1つになっています。2020年には、結核による死亡者数は全世界で約150万人でしたが、その大半は低所得国や中所得国の人々です。

HIV感染症と結核の両方が流行している地域では、HIV感染症やエイズであることが、結核になるリスクと結核により死亡するリスクを大幅に引き上げています。2020年には、HIV感染者の結核による死亡が約214,000例ありました。

知っていますか?

  • 2020年には、結核によって全世界で150万人が死亡しました。

米国における結核

2021年の米国では、7860例(10万人当たり約2.4例)の症例が報告されています。ただし、発生率は州によって異なります。例えば、2020年の症例数は、ハワイ州では10万人当たり6.5例、モンタナ州では10万人当たり0.4例でした。

2020年には、米国の新規患者の71%は、結核が比較的よくみられる米国外の地域(アフリカ、アジア、中南米など)で生まれた人に起こりました。シェルター、長期療養施設、拘置所、または刑務所などのグループ施設にいる人、また過去1年間ホームレスだった人は、感染するリスクが高くなります。米国では、マイノリティの人々で感染者数が不釣り合いに多くなっています。例えば、10万人当たりの症例数を白人と比較すると、黒人の8倍からアジア系の33倍までの範囲で高くなっています。

結核はどのように起こるのか

レンサ球菌咽頭炎や肺炎をはじめとする感染症のほとんどでは、微生物が体内に侵入した直後から体調が悪くなり、1~2週間以内にはっきりした症状が出ます。 しかし、結核はこのような経過をたどりません。

結核は次の段階を経て発生します。

  • 初感染

  • 潜在性(非活動性)感染

  • 活動性結核

非常に年少の小児や免疫機能が低下している人を除けば、結核菌が体内に入ってすぐに体調が悪くなる人は少数にすぎません(この最初の段階は初感染と呼ばれます)。ほとんどの場合、肺に侵入した結核菌は体の防御機能によって直ちに死滅し、生き残った菌はマクロファージと呼ばれる白血球に飲み込まれます。飲み込まれた菌は、何年も休眠状態で生き続けることができます(この段階は潜在性感染と呼ばれます)。それらの菌は、大半の感染者では生涯問題を引き起こしませんが、少数の感染者では、やがて増殖を開始して、活動性結核を引き起こします。この段階になると、感染者は実際に体調が悪くなり、他者に結核をうつす可能性があります。

初感染

感染してから数週間のうちに、一部の菌が肺から付近のリンパ節まで移動することがあります。これらのリンパ節は肺のすぐ外の、気管支が肺につながる位置にあります。ほとんどの人では、結核がこれ以上進行することはなく、結核菌は休眠型(非活動性)になり、何の症状も引き起こしません。

しかし、非常に年少の小児(感染に対する防御力が弱い)や免疫機能が低下している人では、初感染から肺炎や肺以外の部位の結核(肺外結核)が発生することがあります。また幼児の場合は、侵されたリンパ節が大きく腫れて気管支を圧迫し、症状が生じることがあります。

通常、初感染期に他者に感染することはありません。

潜在性感染

潜在性感染の間は、細菌は生存しているもののマクロファージ内で何年も休眠状態になっています。体内では、細菌が一群の細胞の中に取り囲まれ、それによって微小な瘢痕(はんこん)ができます。休眠状態の細菌は増殖することも、症状を引き起こすこともありません。大半の感染者では、それらの細菌は休眠し続け、それ以上の問題を引き起こすことはありません。

潜在性感染の間は、ほかの人に感染することはありません。

活動性結核

感染者のごく一部では、休眠していた結核菌がやがて増殖し始め、活動性結核を引き起こします。この休眠状態からの変化を再活性化と呼びます。この段階になると、感染者は実際に体調が悪くなり、他者に結核をうつす可能性があります。

休眠状態の細菌が再活性化する場合、その半数以上が初感染から2年以内に起きていますが、非常に長く休眠が続き、数十年後に再活性化するケースもあります。

休眠状態の細菌が再活性化する理由は、通常は医師にも分かりませんが、再活性化は(特にHIV感染のために)免疫系に異常がある人でよく起こります。

このほかに再活性化の可能性を高める危険因子として、以下のものがあります。

  • 糖尿病を患っている

  • 頭頸部がんがある

  • 胃の一部を切除するか全部を摘出する手術を受けたことがある

  • 重い慢性腎臓障害を抱えている

  • 喫煙している

  • 大幅に体重が減少した

  • 免疫系を抑制する薬を使用している(コルチコステロイドのほか、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブなど)

  • 非常に高齢である

他の多くの感染症と同じく、免疫機能が低下していると、結核は急速に広がり、危険性が大幅に高まります。そうした人の場合、結核が生命を脅かすこともあります。

感染経路

結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は人間にのみ感染します。この菌は通常、動物、虫、土、または他の無生物によって運ばれることはありません。ほぼすべての感染は、活動性結核の人から出た結核菌で汚染された空気を吸い込むことで発生します。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の感染経路はほぼ例外なく空気感染であるため、活動性結核の患者に触れただけでは感染しません。

肺または喉頭に活動性結核がある患者は、せきやくしゃみによって、さらには話したり歌ったりするだけでも、空気を細菌で汚染することがあります。この菌は空気中で数時間生存するため、別の人がこれを吸い込むと、感染する可能性があります。このため、活動性結核の人と接触する人々(家族や患者を治療する医療従事者)は、感染するリスクが高くなります。しかし、患者が効果的な治療を受け始めると、通常は約2週間後に、感染が広がるリスクが急速に低下します。

潜在性感染や肺もしくは喉頭以外の結核の場合は、菌が空気中に放出されないため、感染が広がることはありません。

結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は人の体内でのみ生きられますが、動物に感染する近縁の細菌(抗酸菌)も存在します。ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)は、そうした近縁の抗酸菌の1つです。基本的にはウシに感染しますが、ときに感染したウシから採られた牛乳を殺菌せずに飲んだ人に感染症を引き起こすことがあります。ウシに対する結核検査と牛乳の殺菌が行われている国では、この種の細菌による感染症が問題になるのはまれです。しかし、感染したウシから採れた牛乳を殺菌せずに原料にしたチーズが、ときおり不法に米国にもち込まれ、感染症の原因になることがあります。ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)が肺に感染した人が、せきやくしゃみをすると、この細菌をほかの人に広める可能性があります。食肉処理場で働いている人も感染のリスクがあります。

知っていますか?

  • 活動性結核の患者は、せきやくしゃみによって、さらには話したり歌ったりするだけでも、しばしば空気を汚染します。

感染症の進行と伝染

結核の潜在性感染から活動性結核への進行の仕方は、人によって大きく異なります。HIV感染症やその他の危険因子がある人では、活動性結核に進行する可能性がはるかに高く、より速くもなります。HIV感染者が結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染して適切なHIV治療を受けない場合、活動性結核に進行する可能性は1年当たり10%になります。一方、潜在性結核があるものの、HIVには感染していない人の場合、活動性結核を発症する可能性は生涯で5~10%ほどです。

免疫系の機能が健全であれば、通常は肺にのみ活動性結核が発生します(肺結核)。

肺外結核(肺以外の部位の結核)は通常、肺結核の原因菌が血液を介して肺の外に広がり、他の部位に感染することで起こります。この場合も肺結核と同様に、菌が病気を起こさず、ごく小さな瘢痕組織の中で休眠したままとどまることがあります。このように休眠している菌は後に再活性化し、その臓器に症状を引き起こすことがあります。

粟粒結核は、多数の細菌が血流を介して移動し、全身に広がることで発生します。この種の結核は生命を脅かすことがあります。

結核の症状と合併症

初感染

初感染で症状が現れることはまれですが、出現する場合の典型的な症状としては、疲労、せき、微熱などがあります。肺を覆っている2層の薄い膜が炎症を起こし、胸痛を引き起こすこともあります。

潜在性感染

潜在性感染の状態では症状はみられません。

活動性肺結核

活動性肺結核の人の中には、けん怠感、疲労、食欲不振、体重減少を除いて症状がみられない人もいます。これらの症状は、数週間かけて徐々に現れます。また、せきなどの肺感染症を示唆する症状もあります。

肺結核で最もよくみられる症状はせきです。結核はゆっくりと発生するため、感染者は最初、せきの原因を喫煙や最近かかったインフルエンザ、かぜ(感冒)、喘息のせいと考えることがあります。朝起きたときなどに、せきに黄色または緑色のたんが少量混じることがあります。やがてたんに血が混じるようにもなりますが、大量の出血はまれです。

夜中に大量の寝汗をかき目が覚めることがあり、その際に発熱を伴うことも伴わないこともあります。結核患者は寝間着やシーツさえ取り換えなければならないほど汗をかくこともありますが、必ず寝汗をかくわけではなく、また寝汗の原因となる病気は、ほかにもたくさんあります。

急に息切れがして胸痛がある場合は、肺と胸壁の間のすき間に空気(気胸)や体液(胸水)がたまっている可能性があります。結核感染者の約3分の1では、最初に胸水が認められます。治療せずに放置すると、やがて感染が肺に広がるにつれ息切れがひどくなります。

肺外結核

肺以外では、次の部位に結核がよく生じます。

  • リンパ節

  • 腎臓

結核は骨、脳、腹腔、心膜(心臓の外側を覆っている2層の膜)、関節(特に股関節や膝などの体重を支える関節)、生殖器にも生じます。 このような部位の結核は診断が難しくなりがちです。

肺外結核の症状は漠然としており、疲労、食欲減退、断続的な発熱、発汗がよくみられ、場合によっては体重が減少します。

以下のように、侵されている部位によって、痛み、不快感、膿の蓄積(膿瘍)などの症状がみられます。

  • リンパ節:新しい結核感染症の場合、菌が肺から付近のリンパ節まで移動することがあります。体に本来備わっている防御機能が感染症を制御できれば、そこで感染症は止まり、菌は休眠状態になります。しかし、非常に年少の小児の場合は防御機能が万全ではありません。そのため、肺につながるリンパ節が大きく腫れて気管支を圧迫し、金属的な音のせきが出て、場合によっては肺虚脱が起こります。菌がリンパ管をつたって、首のリンパ節に広がることもあります。首のリンパ節が感染すると、皮膚が破れて膿が出ることがあります。ときとして、細菌が血流を介して他の部位のリンパ節に移動することがあります。

  • 腎臓と膀胱:腎臓の感染症は発熱、背部痛、膿尿、血尿を引き起こします。感染症が膀胱に広がることも多く、その場合、頻尿や排尿時の痛みが生じます。

  • 性器:結核は性器に広がることもあります。男性では、性器結核により陰嚢が大きくなります。女性では、慢性骨盤痛や不妊症が生じ、異所性妊娠(異常な位置で妊娠が起こること)のリスクが増大します。

  • 脳:脳や脊髄を覆う組織に感染する結核(結核性髄膜炎)は生命を脅かす病気です。米国をはじめとする先進国では、結核性髄膜炎は高齢者や免疫機能が低下している人によくみられます。小児に結核が多くみられる地域では、結核性髄膜炎は出生から5歳までの小児に最も多くみられます。症状としては、発熱、持続的な頭痛、項部硬直、吐き気、錯乱、昏睡に至りうる眠気などがあります。 結核が脳そのものに感染し、結核腫というかたまりができる場合があります。結核腫は、頭痛、けいれん発作、筋力低下などの症状を引き起こします。結核腫は、HIV感染症の人によくみられ、破壊的な影響をもたらします。

  • 心膜:結核性心膜炎では、心膜(心臓の外側を覆っている2層の膜)が厚くなり、心膜と心臓の間のすき間に体液が漏れてたまることがあります。こうなると、心臓のポンプ機能が損なわれ、発熱、胸痛、首の静脈の膨張(頸静脈怒張)、呼吸困難が現れます。世界の結核が多い地域で、結核性心膜炎は心不全の一般的な原因の1つとなっています。

  • 腸:腸結核は主にウシの結核が問題になっている国で発生しています。ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)が混入した無殺菌の乳製品を食べたり飲んだりすることで感染します。この感染症は、痛み、下痢、腸の閉塞、肛門からの鮮血の排泄をもたらします。腹部の組織が腫れ、この腫れががんと間違われることがあります。

  • 皮膚:結核は、リンパ節や骨などの別の部位から皮膚に広がる場合があります(皮膚結核と呼ばれます)。その結果、痛みのない硬いしこりができることがあります。それらのしこりは最終的に大きくなって潰瘍になります。体内の感染部位と皮膚の間に通路が形成され、そこから膿が排出されます。

結核の診断

  • 胸部X線検査

  • たんのサンプルの顕微鏡による観察と培養検査

  • 可能なら、核酸増幅検査

  • ツベルクリン検査または結核の血液検査

  • 結核のリスクが高い人に対するスクリーニング検査

ときとして、スクリーニング検査で陽性の結果が出るまで結核が示唆されないことがあります。結核のスクリーニング検査は、結核のリスクが高い人に対して定期的に行われます。

医師は発熱、2~3週間以上続くせき、血を伴うせき、寝汗、体重減少、胸痛、呼吸困難などの症状に基づいて結核を疑います。

結核が疑われる場合、まず以下の検査が行われます。

  • 胸部X線検査

  • たんのサンプルの顕微鏡による観察と培養検査

  • たんのサンプル中の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の遺伝物質(DNA)を迅速に確認する核酸増幅検査

それでも診断がはっきりしない場合は、次の検査が行われます。

  • ツベルクリン検査

  • 結核の血液検査

結核と診断された場合、HIV感染症(結核の危険因子)やB型およびC型肝炎の有無を確認する血液検査が行われることがあります。

結核についての胸部X線検査

結核を患っている人では一般に、胸部X線検査で異常が見つかります。しかし、結核によるそうした異常所見は他の病気のものと似ていることが多いため、ツベルクリン検査の結果と結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の有無を確認するたんの観察の結果に基づいて下されることもあります。

結核についてのたんの検査

たんのサンプルを対象として、結核菌の有無を顕微鏡で調べ、菌の培養検査を行います。顕微鏡で観察すると、培養検査に比べてはるかに早く結果が得られますが、精度は劣り、培養検査で確認される結核の半分程度しか発見できません。しかし、結核菌は増殖が遅いため、従来の培養検査では結果が出るまでに何週間もかかります。このため結核にかかっている可能性のある人には、たんの観察や培養検査の結果を待つ間に治療を始めることがよくあります。広く用いられている培養検査では、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の増殖を通常21日以内に確認することができます。

結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の遺伝物質の量を増加させる検査(核酸増幅検査)では、24~48時間で結核菌の存在を確認することができます。この検査の新しいバージョンでは、2時間で結果が得られます。たんのサンプルがよく使用されますが、必要に応じて、リンパ節などの他の組織をサンプルとすることもできます。

また遺伝子検査も、結核の原因菌が通常の結核治療薬に耐性をもっているかどうかを迅速に確認でき、そのため効果的な治療薬を選択するのに役立つ可能性があります。この種の検査では、菌に特定の治療薬に対する耐性をもたせる遺伝子変異を検出します。

ツベルクリン検査

精製ツベルクリン(PPD)を使用するツベルクリン検査(マントー試験とも呼ばれます)では、結核菌の菌体から調製されたタンパク質を皮膚内(通常は前腕部)に少量注射します。注射後すぐに皮膚が青白く膨れ、その後数時間で元に戻ります。この現象は検査が正しく行われたことを意味するだけです。約2~3日後に注射した部分を調べます。触れると硬く感じられ、ある大きさ以上に腫れていれば、陽性と判定されます。赤くなるだけで腫れのない場合は陽性とはみなされません。

非常に体調が悪かったり、免疫機能が低下していたりする人(HIV感染症の人など)では、結核に感染していてもツベルクリン検査に反応しないことがあります。

ツベルクリン検査は結核を診断する上で最も有効な検査の1つですが、その結果は、その人が過去に結核菌(Mycobacterium tuberculosis)または近縁の細菌に感染したことがあるか、結核ワクチンの接種を受けたことがあることを示すにすぎません。この検査では、起きている感染症が本当に結核かどうかも、その感染症がその時点で活動性かどうかも判断できません。

つまり、近縁の細菌(通常は無害です)に感染している人や、結核の予防接種を受けて間もない人では、実際は結核ではないのに結核と判定されることがあります(偽陽性)。

逆に、実際に結核であるのに結核ではないと判定されることもあります(偽陰性)。しかし、偽陰性の結果が出るのは通常、以下の場合に限られます。

  • 発熱がある

  • 体調が非常に悪い

  • 高齢である

  • HIV感染症など、免疫機能を低下させる病気がある

  • コルチコステロイドなどの免疫系を抑制する薬を服用している

結核についての血液検査

インターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)は結核を検出できる血液検査です。この検査では、血液のサンプルに結核菌が作り出すものと似た合成タンパク質を混ぜます。結核菌に感染している場合は、合成タンパク質に反応して白血球がある種の物質(インターフェロン)を作り出します。その後インターフェロンの有無について血液を調べ、結核に感染しているかどうかを判断します。

この検査はツベルクリン検査とは異なり、結核の予防接種を受けたことがある人で偽陽性の判定が出ることがありません。

その他の検査

たんのサンプルで十分なことが多いのですが、診断のために肺の体液や組織のサンプルを採取しなければならない場合もあります。これには気管支鏡という器具を口か鼻から気道へと挿入し、気管支を観察して肺の体液や組織のサンプルを採取します。これは肺がんなど他の病気の疑いがあるときに最もよく行われる手法です。

結核性髄膜炎を疑わせる症状があるときは、腰椎穿刺を行って髄液のサンプルを採取して分析しなければならないことがあります。髄液中に結核菌を見つけるのは難しく、また培養には通常何週間もかかるため、サンプルを使ってPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を行うことがあります。これは遺伝子のコピーを多数作るもので、菌のDNAが確認しやすくなります。検査結果はすぐに得られますが、結核性髄膜炎の疑いが少しでもある場合、通常は抗菌薬で治療をすぐに開始します。早期に治療を行うことで死を回避し、脳の損傷を最小限に食い止めることができます。

結核のスクリーニング検査

結核のリスクが高い人には、特定の検査が定期的に行われます。そのような検査には、ツベルクリン検査インターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)と呼ばれる血液検査などがあります。

結核のリスクが高い人は、以下のような人です。

  • 活動性結核の人と暮らしている人、または一緒に働いている人(スクリーニングは毎年行われる)

  • 結核の流行地域から移住してきたばかりの人

  • 免疫機能を低下させ、潜在性結核を再活性化させるおそれのある薬(例えば、コルチコステロイドやがんの化学療法薬)の使用を開始した人

  • 他の理由で行われた胸部X線検査で結核の疑いが生じた人

  • 免疫機能が低下している人(HIV感染症などによる)

  • 糖尿病、腎臓病、頭頸部がんなどの特定の病気がある人

  • 70歳以上の人

  • 違法薬物を注射している人

ツベルクリン検査または血液検査の結果が陽性だった人は、医師による評価と胸部X線検査を受けます。胸部X線検査の結果が正常で、結核を疑わせる症状のない人は、おそらく潜在性結核です。潜在性結核の人は、抗菌薬による治療を受けます( see page 結核の早期治療)。胸部X線検査で異常が見つかった人は、活動性結核についての評価を受けます( see page 診断)。

結核の治療

  • 隔離

  • 抗菌薬

  • ときに手術またはコルチコステロイド

ほとんどの感染者は治療のために入院する必要はありません。以下に当てはまる人は入院が必要です。

  • 結核があって重篤な状態にある

  • 別に重篤な病気がある

  • 診断のための検査を受ける必要がある

  • 適切な行き場所がない(ホームレスの人など)

  • 結核にさらされていない人たちと定期的に顔を合わせる集団的な環境(介護施設など)で生活している人など、隔離の必要がある

隔離

入院して治療を受ける肺結核患者は、感染が空気中に広がるリスクが最小限に抑えられるように設計された部屋に隔離されます。ドアはできるだけ閉められ、換気により室内の空気は1時間に6~12回のペースで入れ替わります。隔離された人は、せきをするときに口を覆う方法の指導を受け、それに従うことができれば、外科用のフェイスマスク(サージカルマスク)を着用しなくてもかまいません。ただし、病室に入る他の人は、必ずレスピレーターマスク(単なるサージカルマスクではなく、適切な専用フィルターが付いたマスク)をつけなければなりません。

治療への明らかな反応がみられた場合(通常は次のすべてを満たした場合)、患者は隔離された病棟から一般病棟に移ることができます。

  • たんのサンプルが、一定期間陰性(結核菌がみられない状態)となった

  • 解熱した

  • 食欲や体調が回復した

抗菌薬

結核に対して効果的な抗菌薬はいくつかあります。しかし、結核菌は増殖が非常に遅いため、抗菌薬の投与は4~6カ月以上の長期にわたって行う必要があります。治療は、患者自身が完全によくなったと思った後も長期にわたって継続しなければなりません。これを怠ると、結核菌が完全に死滅せず、結核が再発しがちです。また、結核菌が抗菌薬に対する耐性を獲得する可能性もあります。

そのような長期間にわたって、毎日忘れずに薬を服用することは、ほとんどの人にとって困難です。様々な理由から、具合がよくなるとすぐに治療をやめてしまう人もいます。このような問題があるため、結核患者が医療従事者から薬を受け取り、その監視のもとで服薬することを多くの専門家が推奨しています。この方法は直接服薬確認療法(DOT)と呼ばれます。DOTでは患者が確実に薬を服用できるため、最初の2週間以降は、薬の投与が週に2~3回で済むこともよくあります。

1つの薬だけで治療すると、その薬に耐性をもつ菌が少数残る可能性があるため、必ず作用の異なる2つ以上の抗菌薬が用いられます。他の細菌の大半では、少数の菌では再発しませんが、結核の治療を1つの薬だけで行うと、結核菌はすぐにその薬に対する耐性を獲得します。

最近までは、過去に治療を受けたことのない患者には、次のような2段階の治療が行われていました。

  • 集中段階:4つの抗菌薬を2カ月にわたり服用します。

  • 継続段階:たんの検査と胸部X線検査の結果に応じて、2つの抗菌薬だけをさらに4~7カ月にわたり服用します。

今日では、特定の条件を満たす人々を対象として、2剤のみを含む4カ月間の治療計画が選択可能になっています。

最もよく使用される抗菌薬は以下のものです。

  • イソニアジド

  • リファンピシン

  • ピラジナミド

  • エタンブトール

これら4つの薬は一緒に使用することができ、最初に使用されます(第1選択薬と呼ばれます)。これらの薬にはどれも副作用がありますが、大半の結核患者は、これらの薬を使用して、重篤な副作用を経験することなく根治します。

これらの薬には、様々な組合せや投与スケジュールがあります。イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミドの3つを1つのカプセルに入れることもあり、これは、毎日服用しなければならない錠剤の数を減らし、薬剤耐性を生じにくくするのに役立ちます。他の抗菌薬とは異なり、結核治療用の薬は、通常すべてをまとめて1日に1回、または週に2、3回服用します。

第2選択薬とは、結核の原因菌が第1選択薬に対する耐性をもっているか、第1選択薬に患者が耐えられない場合に通常使用される薬です。その他の抗菌薬は第2選択薬として使用されます。具体的には、アミノグリコシド系薬剤(ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシンなど)、カプレオマイシン(アミノグリコシド系薬剤と非常に近い)、フルオロキノロン系薬剤(レボフロキサシンやモキシフロキサシンなど)などがあります。

そのほかにも、通常の薬に対して耐性を獲得した結核の治療を補助するべく、より新しい薬が開発されています。そのような薬としては、ベダキリン、デラマニド、プレトマニド(pretomanid)などがあります。

知っていますか?

  • 結核の治療は、患者自身がよくなったと思った後も長期にわたって続ける必要があります。

薬剤耐性

結核菌は抗菌薬に対する耐性を獲得しやすい細菌であり、特に患者が服薬のスケジュールや指示された期間を守らなければ、耐性をもった菌が現れる可能性が高くなります。

抗菌薬に対する耐性をもつ菌によって引き起こされる結核(薬剤耐性結核)は、次第に増加しています。

薬剤耐性結核には非常に長期間の治療が必要になるため、薬剤耐性は深刻な問題です。そうした結核の患者には、4つから5つの薬を18~24カ月にわたって投与しなければなりません。また、薬剤耐性結核の治療に使用される薬は、しばしば効果が低く、毒性が強く、費用もかさみます。

抗菌薬に対して耐性をもつ結核菌は、耐性を示す薬に応じて、次のように分類されています。世界保健機関(WHO)の分類は以下の通りです。

  • 多剤耐性結核菌(MDR-TB):少なくともイソニアジドとリファンピシンに対して耐性を示す

  • 超多剤耐性前段階の結核菌(pre-XDR-TB):イソニアジドとリファンピシンのほか、いずれかのフルオロキノロン系薬剤に対して耐性を示す

  • 超多剤耐性結核菌(XDR-TB):イソニアジド、リファンピシン、いずれかのフルオロキノロン系薬剤に加えて、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ベダキリン、リネゾリドのうち少なくとも1つに対して耐性を示す

新しい結核治療薬であるベダキリン、デラマニド、プレトマニド(pretomanid)とフルオロキノロン系薬剤のモキシフロキサシンは、結核菌の耐性株に効果があり、薬剤耐性菌の流行を抑えるのに役立つと可能性があります。

その他の治療

薬による治療計画をしっかり守っている限り、手術で肺の一部を切除しなければならなくなることはほとんどありません。しかし、以下がみられる患者にはときには手術が必要になります。

  • 薬剤への耐性が非常に強い感染症

  • 持続的に血を伴うせき

  • 気道の閉塞

  • 膿の蓄積(膿を排出するため)

結核性心膜炎によって心臓の動きが大きく制限されている場合は、心膜を手術で除去しなければならないこともあります。結核のために脳の中にできたこぶ(結核腫)には、手術による摘出が必要になることがあります。

結核により激しい炎症が生じている場合、とりわけ髄膜炎や心膜炎、または肺の炎症を起こしている患者には、コルチコステロイド(デキサメタゾンなど)を投与することがあります。

結核の予防

結核の予防には次の3つの側面があります。

  • 感染の広がりを予防する

  • 活動性結核になる前にできるだけ早く治療する

  • ときにワクチンを接種する

結核の感染予防

結核菌は空気感染するため、換気を十分に行い新鮮な空気を取り入れることで、空気中の菌の量を減らし、感染を抑えることができます。またホームレスの保護施設、刑務所、通常の病院や救急医療機関の待合区域など、感染リスクの高い人々が集まる建物には、紫外線殺菌灯を設置して空気中の結核菌を死滅させることも予防策になります。感染組織や体液のサンプルを扱う医療従事者や、感染している可能性のある人と接触する人は、空気フィルターの付いた特殊マスク(レスピレーター)を着用すると予防に役立ちます。

ツベルクリン検査や血液検査で陽性であった場合でも、症状がなければ予防措置は不要です。

活動性結核の患者のほとんどに入院は必要ありません。ただし、結核の感染拡大を予防するために、以下の行動をとることが推奨されます。

  • 自宅で過ごす

  • 来客を避ける(すでに結核にさらされている家族を避ける必要はありません)

  • せきをするときは、ティッシュペーパーや肘の内側で口を覆う

治療が効いてせきが出なくなるまで、上記の点を守る必要があります。適切な抗菌薬で1~2週間治療するだけで、他者に結核をうつす可能性は低下します。ただし、幼児やエイズ患者といった感染リスクの高い人と暮らしているか、一緒の職場で働いている場合は、繰り返したんのサンプルの検査を受けて、感染させる危険がなくなったことを確認する必要があります。また、治療を受けてもせきが続く場合、指示通りに薬を服用しない場合、薬剤耐性の強い結核にかかっている場合も、結核の感染拡大を防ぐために、より長期にわたって上記の予防策を守る必要があります。

直接服薬確認療法(DOT)も感染の拡大を予防する手段の1つです。処方薬を指示通りに服用することを徹底すれば、細菌が根絶される可能性が高まります。

公衆衛生スタッフは結核患者から感染した疑いのある人を特定し、結核の検査を受けるよう勧めます。

結核の早期治療

結核のうち感染力をもつのは活動性結核だけであるため、潜在性結核を早期に発見し治療することが、感染拡大を抑止する上で最も重要な対策の1つです。

ツベルクリン検査や血液検査で陽性の結果が出た人では、ほとんどの場合、まだ発症していなくても治療を行います。

抗菌薬のイソニアジドは、活動性結核になる前に進行を阻止する上で非常に効果的です。この薬は9カ月間、毎日服用します。一部の患者には、リファンピシンのみを4カ月間にわたって毎日投与することもあります。国によっては、イソニアジドとリファペンチン(rifapentine)の併用を直接服薬確認療法にて週1回、3カ月間行います。

予防治療は、ツベルクリン検査で陽性と判定された若年者には確実に有益になります。また、例えば以下のいずれかに当てはまる場合など、結核のリスクが高い場合には、ツベルクリン検査陽性の高齢者にとっても助けになる可能性が高いです。

  • 最近、皮膚テストまたは血液検査の結果が陰性から陽性に変わった。

  • 最近、曝露があった。

  • 免疫機能が低下している。

長い間結核が潜在性感染の状態にある高齢者では、抗菌薬の毒性による害を受けるリスクが、結核が活動性に転じるリスクを上回る場合があります。このような場合、医師は予防治療を行うかどうかを判断する前に、この問題の専門家に相談することがよくあります。

ツベルクリン検査や血液検査で陽性と判定された人は、以下の状況におかれると、活動性結核の発生リスクが高くなります。

  • HIVに感染した

  • コルチコステロイドや免疫系の機能を抑制する他の薬(一部の新世代の抗炎症薬など)を服用している

このような人には通常、潜在性結核感染症の治療が必要です。

結核の予防接種

世界の結核流行地域では、BCG(カルメット-ゲラン桿菌)と呼ばれるワクチンが以下の目的で使用されています。

  • 髄膜炎などの重篤な合併症を予防する

  • 結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染するリスクが高い人(特に小児)の感染予防を補助する

通常、医師は米国に住む人にBCGワクチンを推奨しません。しかしこのワクチンは、医療従事者や2つ以上の薬に耐性をもつ結核にさらされている人(特に小児)に対して、予防面で一定の役割を果たすと考えられます。

現在、より効果の高いワクチン開発に向けて研究が行われています。

生後すぐにBCGを接種した場合、数年後にツベルクリン検査を行うと、結核菌に感染していなくても陽性を示すことがあります。BCGワクチン接種がツベルクリン検査に及ぼす影響は結核そのものが及ぼす影響よりも通常は小さく、時間が経過するにつれてさらに小さくなります。BCGワクチン接種から約15年後の検査で陽性と判定された場合は、BCGワクチン接種の影響よりも結核が原因である可能性がはるかに高いと考えられます。にもかかわらず、生後すぐに接種を受けた人が後年のツベルクリン検査で陽性になると、誤ってBCGワクチンのせいにされることがよくあります。ほとんどの国で、結核には差別を招くイメージがつきまとっているため、多くの人は潜在性結核でさえ感染していることを認めたがらず、活動性結核ではなおさらです。通常、予防接種を受けた小児がツベルクリン検査で陽性と判定された場合には、医師はそれが結核による結果と仮定して、治療を行います。未治療の潜在性感染は、重篤な合併症を引き起こす可能性があり、特に小児でよくみられます。

ただし、可能であれば、BCGワクチンの接種を受けた人はインターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)を受けるべきで、これは、IGRAではBCGの接種を受けたことがある人でも偽陽性にならないからです。この検査では、ツベルクリン検査での陽性判定が結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の感染によるものかどうかも判断できます。

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