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感染症が起こる仕組み

執筆者:

Allan R. Tunkel

, MD, PhD, Warren Alpert Medical School of Brown University

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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通常、感染症は微生物が体内に侵入し、増殖することによって起こります。

体内に侵入した微生物が感染症を引き起こすには、まず増殖しなければなりません。微生物が増殖を始めると、以下の3つのパターンのどれかが起こります。

  • 微生物が増え続けて人体の防御機構に打ち勝ってしまう。

  • 均衡状態に達して、慢性感染の状態になる。

  • 人体の免疫機能により、またときに治療の効果も加わって、侵入した微生物が排除される。

ほとんどの微生物は、人体の細胞に付着することによって侵入を開始します。どの微生物が人体のどの細胞に付着するかは、ちょうど「鍵と鍵穴」の関係のように決まっています。微生物が細胞の表面に付着すると、そこを足場にして微生物が組織に侵入できるようになります。

微生物が侵入部位の近くにとどまるか別の部位にまで広がるかどうか、また感染の重症度がどのくらいになるかは、次のような因子によって決まります。

病気を引き起こす微生物の多くは、引き起こす病気の強さ(毒性)を高める性質や、人体の防御機構に抵抗するのに有利な性質を備えています。具体的には以下のような性質があります。

  • 毒性物質(毒素)

  • 酵素

  • 人体の防御機構を妨げる手段

毒素や酵素などの物質の産生

体内に侵入する微生物の中には、毒素を作るものがあります。例えば、傷口に感染した 破傷風菌 Clostridium tetaniという細菌は、破傷風の原因となる毒素を作ります。また微生物が体外で作る毒素により起きる病気もあります。例えば、食べものの中でブドウ球菌という細菌が毒素を作り出すと、その後ブドウ球菌が死滅しても、その食べものを口にした人は食中毒になることがあります。多くの毒素には、特定の細胞(標的細胞)の表面上にある分子とだけ結合する部分があります。破傷風 破傷風 破傷風は、嫌気性細菌の破傷風菌 Clostridium tetaniが作り出す毒素によって引き起こされる病気です。この毒素によって筋肉が不随意に収縮し、硬くなって動かせなくなります。 破傷風は米国においてはまれですが、発展途上国ではよくみられます。 診断は症状に基づいて下されます。 ワクチン接種と適切な創傷ケアにより破傷風を予防できます。 治療では、破傷風免疫グロブリンを投与して毒素を中和し、治まるまで症状を治療します。 さらに読む 毒素性ショック症候群 毒素性ショック症候群 毒素性ショック症候群とは、発熱、発疹、危険な低血圧、複数の臓器不全など、進行が速い重度の症状の一群を指します。これは、黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureusやA群レンサ球菌といったグラム陽性球菌が作る毒素によって引き起こされます。 高吸水性のタンポンの使用や黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureusまたはA群レンサ球菌の感染症は、毒素性ショック症候群のリスクを高めます。... さらに読む ボツリヌス症 ボツリヌス症 ボツリヌス症は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)という細菌が作り出す毒素による中毒で、まれな病気ですが発生すると生命を脅かします。 ボツリヌス毒素は通常、食べものと一緒に体内に侵入し、筋力の低下や麻痺を引き起こします。 最初に、口腔乾燥、複視、眼の焦点が合わないなどの症状が現れます。あるいは、下痢、嘔吐、腹部けいれんといった消化管症状が最初に生じることもあります。... さらに読む 炭疽 炭疽 炭疽(たんそ)は、炭疽菌 Bacillus anthracisという棒状のグラム陽性細菌による感染症で、死に至る場合があります。炭疽は皮膚や肺のほか、まれに消化管(胃腸)に感染します。 人間が感染する通常の原因は皮膚接触ですが、炭疽菌の芽胞を吸い込んだり、汚染された肉を食べたりしても感染します。 炭疽菌の芽胞は生物兵器に使用される可能性があります。 症状としては、皮膚の隆起と水疱(皮膚接触後)、呼吸困難、胸の痛み(芽胞吸入後)、腹痛と出... さらに読む 炭疽 (たんそ)、コレラ コレラ コレラは、コレラ菌 Vibrio choleraeというグラム陰性細菌によって引き起こされる重篤な腸の感染症で、重度の下痢がみられ、治療を行わないと死に至る可能性があります。 汚染された食べもの(海産物が多い)や水によって感染が起こります。 衛生状態が不十分な地域以外でコレラが起こることはまれです。 水様性下痢と嘔吐が生じますが、発熱は起こらないのが通常です。 便のサンプル中でこの細菌が特定されれば、診断が確定します。 さらに読む などの病気では、毒素が中心的な役割を果たします。

細菌の中には人体の組織を破壊する酵素を作り出せるものがあり、その作用により組織内での感染の拡大を速めています。また、細胞に侵入してその中を移動できるようにする酵素を作り出す細菌もあります。

人体の防御機構を妨げる仕組み

  • その微生物を攻撃する能力をもった抗体やT細胞(白血球の一種)が体内で作り出されるプロセスを妨害する。

  • 白血球に食べられないように莢膜(きょうまく)という外皮で身を包む(実際、クリプトコッカス Cryptococcusという真菌は肺に侵入した後、人体の防御機構に耐えるために莢膜をさらに厚くします。)

  • 血液中に含まれる物質による破壊(溶解)に耐えるようになる。

  • 抗菌薬の作用を打ち消す物質を作り出す。

医療器具からの感染

感染というと、普通は微生物が体内に侵入し、特定の細胞に付着することで生じるものが想像されますが、体内に入れる医療器具(カテーテル、人工関節、人工心臓弁など)に微生物が付着することもあります。

医療器具が何かのはずみで汚染されていれば、その器具を体内に入れる時点で微生物が付着している可能性があります。また、体内の別の部位から血流に乗って感染性の微生物が運ばれ、体内に埋め込まれた医療器具にすみつく場合もあります。こうした人工物には感染に対する防御機能がないため、微生物が容易に増殖して病気を引き起こします。

免疫系の機能不全

免疫系が十分に機能していないと(易感染性と呼ばれます)、より感染しやすくなります。以下の理由で免疫系が正常に機能しないことがあります。

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