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がんに対する体の防御

執筆者:

Robert Peter Gale

, MD, PhD, DSC(hc), Imperial College London

レビュー/改訂 2022年 10月
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やさしくわかる病気事典

体内では1つの細胞ががん化しても、増殖したり広がったりする前に、 免疫系 免疫系の概要 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む がその細胞の異常を認識して破壊できることが多くあります。がん細胞は完全に除去されることがあり、その場合はがんが現れることはありません。エイズ患者や免疫系を抑制する薬の投与を受けている人、ある種の 自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む のある人、また免疫系の働きが若い人に比べて低い高齢者のように、免疫系に異常や機能低下がある人では、特定のがんが進行する可能性が高くなります。免疫機能が低下している人によくみられるがんとしては、 黒色腫 黒色腫 黒色腫(メラノーマとも呼ばれます)は、色素を作り出す皮膚細胞(メラノサイト)から発生する皮膚がんです。 黒色腫は、正常な皮膚から発生する場合もあれば、すでにあった ほくろから発生する場合があります。 皮膚に様々な色の斑点を伴う平坦または隆起した褐色の不規則な皮疹、あるいは黒または灰色の硬い隆起が現れます。 黒色腫の診断を下すには、生検を行います。 黒色腫を切除します。 さらに読む 黒色腫 腎臓がん 腎臓がん 腎臓に発生する腫瘍のうち、充実性の腫瘍(内部が組織で詰まっているもの)の大半ががんであるのに対して、内部に液体だけが詰まった腫瘍(嚢胞[のうほう])は多くが良性の(がんではない)腫瘍です。腎臓がんの大半は腎細胞がんと呼ばれるものです。 ウィルムス腫瘍と呼ばれる別の種類の腎臓がんもあり、これは主に小児でみられます。 腎臓がんでは、血尿やわき腹(側腹部)の痛み、発熱などがみられます。... さらに読む リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です... さらに読む リンパ腫の概要 などがあります。免疫機能が低下している人でも肺がん、乳がん、前立腺がん、結腸がんなど、他の特定のがんがあまり多くみられない理由は、明らかにされていません。

腫瘍抗原

抗原とは、体の 免疫系 免疫系の概要 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む に認識され、攻撃の標的になる異物のことです。抗原はあらゆる細胞の表面にありますが、正常な場合、免疫系は自分自身の細胞には反応しません。細胞ががん化すると、体内の免疫系には知られていない新たな抗原ががん細胞の表面に現れます。免疫系は、腫瘍抗原と呼ばれるこの新しい抗原を異物として認識し、がん細胞を囲いこんだり破壊したりできます。異常細胞を破壊するこのようなメカニズムによって、多くの場合がん細胞を定着する前に破壊することができます。しかし、正常に機能している免疫系でさえ、常にすべてのがん細胞を破壊できるとは限りません。またがん化した細胞が増殖してがん細胞の大きなかたまり(悪性腫瘍)ができてしまうと、免疫系の能力を超えることがあります。

黒色腫、 乳がん 乳がん 乳がんは、乳房の細胞が異常をきたし制御不能に分裂することで発生します。通常は、乳汁を作る乳腺(小葉)または乳腺から乳頭(乳首)へ乳汁を運ぶ乳管にがんが発生します。 乳がんは、女性がかかるがんの中で発症数が最も多く、がんによる死亡の中では第2位を占めています。 通常、最初に現れる症状は痛みのないしこりで、自分で気づくことがほとんどです。 乳がんスクリーニングの推奨は様々で、定期的なマンモグラフィー、医師による乳房の診察、乳房自己検診などが... さらに読む 乳がん 卵巣がん 卵巣がん、卵管がん、および腹膜がん 卵巣がんは、卵巣のがんです。卵巣と子宮をつなぐ管に発生する卵管がんおよび腹部の内側を覆う組織のがんである腹膜がんと関連があります。これらのがんは、通常、進行した段階で診断されます。 卵巣がんは、範囲が広がるまで症状がみられないことがあります。 卵巣がんの疑いがある場合は、血液検査、超音波検査、MRI検査、CT検査などを行います。 通常は、左右の卵巣および卵管と子宮を切除します。... さらに読む 肝臓がん 肝腫瘍の概要 肝臓の腫瘍(肝腫瘍)には、がんではない良性腫瘍と、がんである悪性腫瘍があります。 肝臓の悪性腫瘍は、 原発性(肝臓から発生したもの)と 転移性(他の部位から肝臓に転移してきたもの)に分類されます。ほとんどの肝臓がんは転移性です。体の各部で発生した腫瘍から離れたがん細胞は、しばしば血流に入って全身に運ばれますが、肝臓では体全体に流れる血液の... さらに読む など、いくつかのがんでは、腫瘍抗原が特定されています。腫瘍抗原から作られたワクチンは、前立腺がんの治療に用いられており、免疫系を刺激することによって、他のがんの予防や治療ができる可能性があります。こうしたワクチンの研究には、大きな関心が寄せられています。

腫瘍抗原の中には血液検査で検出できるものもあります。これらの腫瘍抗原は、腫瘍マーカーと呼ばれることがあります。そうした腫瘍マーカーのいくつかの測定値が、治療の効果を評価するために利用できます(表「」を参照)。

免疫チェックポイント

免疫系が正常に機能している場合でも、がんがその防御網をすり抜けてしまうこともあります。

免疫系が通常は正常な細胞を攻撃しない理由の1つに、正常な細胞の表面にあるタンパク質が、血液中の免疫細胞(T細胞)に対して、そのタンパク質をもつ細胞が正常であり攻撃してはいけないという信号を出していることがあげられます。これらはチェックポイントタンパク質と呼ばれます。ときおり、がん細胞がこうしたチェックポイントタンパク質をつくるようになって、攻撃から逃れることがあります。免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる新しい種類の抗がん剤は、この信号を遮断して免疫系ががんを攻撃できるようにします。

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