脾臓の概要

執筆者:Harry S. Jacob, MD, DHC, University of Minnesota Medical School
レビュー/改訂 2021年 4月
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    脾臓(ひぞう)は、にぎりこぶしほどの大きさをしたスポンジ状の軟らかい臓器で、腹部の左上、肋骨のすぐ下に位置しています。心臓から脾臓へ血液を供給するのが脾動脈です。脾動脈によって脾臓へ運ばれた血液は、脾静脈によって脾臓から運び出され、より太い静脈である門脈を通じて肝臓へと運ばれます。脾臓は、血管とリンパ管を支えている線維組織(脾膜)で覆われています。

    脾臓は、基本的に以下の2種類の組織からできていて、それぞれ異なる機能を果たしています。

    • 白脾髄(はくひずい)

    • 赤脾髄(せきひずい)

    白脾髄は、感染に対する防御を担う器官系(免疫系)の一部です。リンパ球と呼ばれる白血球をつくっており、そのリンパ球は抗体(異物による侵入から守る特殊なタンパク質)をつくります。

    赤脾髄は血液をろ過することにより、不要な物質を取り除きます。赤脾髄には、細菌、真菌、ウイルスなどの微生物を消化する食細胞という白血球が含まれています。また、赤脾髄は赤血球の状態を監視し、異常があったり、古くなったり、傷ついたりして正常に機能しなくなった赤血球を破壊します。さらに、赤脾髄には、特に白血球血小板(血液の凝固に必要な細胞に似た粒子)といった様々な血液成分を貯蔵する働きもあります。しかし、これらの血液成分を放出することは、赤脾髄の主要な役割ではありません。

    脾臓の構造

    無脾症

    脾臓がなくても(無脾症と呼ばれる状態)、人間は生きていくことができます。

    無脾症とは、以下のような原因で脾臓の機能が失われる病気です。

    • 生まれつき脾臓がない

    • 脾臓の機能に影響を及ぼす病気(機能的無脾症)

    • 手術による脾臓の摘出(脾臓摘出術)

    生まれつき脾臓がないのは、まれな病気です。この病気の乳児では、多くの場合、心臓の異常を伴います。

    機能的無脾症の場合は、脾臓が適切に機能していません。機能的無脾症は、様々な病気が原因である可能性があります。一般的な原因としては、鎌状赤血球症セリアック病アルコール性肝疾患などがあります。機能的無脾症は、脾臓の動脈や静脈が損傷した後に生じることもあります。

    脾臓摘出術とは手術で脾臓を摘出することです。健康ではあるが自動車事故などによる脾損傷の後に脾臓摘出が必要な人、または脾腫を引き起こす病気があり脾臓摘出が必要な人に対して行うことがあります。

    脾臓を摘出したか、または脾臓が機能していないと、感染を防御する抗体をつくったり、望ましくない微生物を血液から取り除いたりする体の能力がある程度失われます。その結果、感染に対する防御能力が低下してしまいます。ただし、脾臓が失われても、他の臓器(主に肝臓)が感染に対する防御能力を高め、また、赤血球が異常になったり、寿命をすぎていたり、傷ついたりしていないか監視し、そのような赤血球があれば除去することによって、その機能を補います。

    脾臓には、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)といった特定の種類の細菌に対する防御の役割があるため、脾臓を摘出した場合は、感染リスクが特に高くなります。このようなリスクがあるため、これらの微生物の感染から体を守るためにワクチンを接種します。現在ではすべての患者に推奨されていますが、インフルエンザウイルスに対するワクチンの接種も必ず毎年受けるようにする必要があります。一部では感染予防に抗菌薬が毎日投与されており、特に感染のリスクを高める別の疾患(鎌状赤血球症やがんなど)がある場合や、小児と日常的に接する場合に使用されます。

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