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晩発性皮膚ポルフィリン症

執筆者:

Herbert L. Bonkovsky

, MD, Wake Forest University School of Medicine;


Sean R. Rudnick

, MD, Wake Forest University School of Medicine

レビュー/改訂 2020年 12月
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本ページのリソース
  • 体の日光のあたる部分で慢性的に繰り返し水疱が発生します。

  • 肝臓に鉄が過剰に蓄積して、肝傷害を引き起こすことがあります。

  • 尿と便のサンプルを検査して、高濃度のポルフィリンがみられないか調べます。

  • 血液の排出(瀉血[しゃけつ])やクロロキン(またはヒドロキシクロロキン)の投与が有用です。

晩発性皮膚ポルフィリン症は世界中でみられます。大きく分けて次の2種類があります。

  • 1型:後天性または散発性(患者の約75~80%)

  • 2型:遺伝性または家族性(患者の約20~25%)

これまで知られている限り、このポルフィリン症の散発性のものは、ヘム生産に必要な酵素が遺伝的に欠如していない人にも起こる唯一のポルフィリン症です。

晩発性皮膚ポルフィリン症では、ウロポルフィリノーゲンデ脱炭酸酵素の活性が不十分なため、肝臓にポルフィリンが蓄積します。肝疾患がよくみられ、約35%が 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む 肝硬変 になり、約7~24%が 肝臓がん 原発性肝臓がん 原発性肝臓がんとは、肝臓から発生するがんのことです。最もよくみられる原発性肝臓がんは 肝細胞がんです。肝臓がんの初期には、通常は漠然とした症状(体重減少、食欲不振、疲労など)しかみられません。そのために診断が遅れることがよくあり、多くの場合、予後(経過の見通し)は不良です。 ( 肝腫瘍の概要も参照のこと。) その他の原発性肝臓がんはまれです。診断には通常、 生検が必要です。この種のがんを発症した人の予後(経過の見込み)は、ほとんどの場合... さらに読む になります。皮膚が損傷するのは、肝臓で過剰につくられたポルフィリンが血液によって皮膚へ運ばれるからです。

晩発性皮膚ポルフィリン症には、よくみられる誘発因子がいくつかあります。このような因子には以下のものがあります。

偽性ポルフィリン症(pseudoporphyria)

腎不全、紫外線照射(UVA)および特定の薬剤によって、肝臓におけるポルフィリンの濃度上昇を伴わない晩発性皮膚ポルフィリン症に似た症状(偽性ポルフィリン症と呼ばれます)が引き起こされる場合があります。

ポルフィリンは透析であまり除去されないため、長期にわたり血液透析を受けている場合、晩発性皮膚ポルフィリン症に似た皮膚症状が生じることがあります。この状態は、末期腎臓病における偽性ポルフィリン症と呼ばれます。

晩発性皮膚ポルフィリン症の症状

散発性の場合、中年になるまで症状がみられない場合があります。家族性の場合、症状は小児期からみられる場合があります。

日光を浴びてもすぐには症状が現れないことがあるため、日光によって症状が引き起こされることに気が付かない場合があります。

晩発性皮膚ポルフィリン症では、腕や顔面、特に手の甲などの日光のあたる部分に様々な大きさの水疱ができ、慢性的に再発を繰り返します。水疱の後にかさぶたができて瘢痕(はんこん)が残り、治るのに時間がかかります。皮膚(特に手)がもろくなり、ささいな傷でも重症化しやすくなります。

ときに日光を浴びることによって腫れ、かゆみ、発赤が生じることがあります。顔面などの日光のあたる部分で体毛が濃くなることもあります。皮膚に黒ずんだあるいは色の薄い斑点が生じることがあります。

晩発性皮膚ポルフィリン症の診断

  • 血液検査、尿検査、便検査によるポルフィリン値の測定

晩発性皮膚ポルフィリン症を診断するには、血液、尿、便を検査してポルフィリン濃度の異常な上昇がないかを調べます。特定のポルフィリンの増加パターンから、晩発性皮膚ポルフィリン症と他のポルフィリン症を区別することができます。

通常は、晩発性皮膚ポルフィリン症の発生を促す因子を判定する検査や肝臓の鉄過剰を確認する検査が行われます。C型肝炎やHIV感染の有無がまだ確認されていない場合は、これらの病気の検査が行われます。

晩発性皮膚ポルフィリン症の治療

  • 血液の除去(瀉血)

  • ポルフィリンの尿中への排泄を増やす

晩発性皮膚ポルフィリン症の治療は、ポルフィリン症のなかで最も簡単です。飲酒などの誘発因子を避けることが有益です。帽子、保護用の衣服を着用し、できるだけ日光を浴びないようにします。酸化亜鉛や酸化チタンを含有する日焼け止めが役立ちます。紫外線を遮断する典型的な日焼け止めは無効ですが、ジベンジルメタンを含有するものなど紫外線A波を吸収する日焼け止めは効果的な可能性があります。

C型肝炎ウイルス感染症またはHIV感染症の患者では、これらの病気を治療することがポルフィリン症にも役立ちます。

瀉血

500ミリリットルほどの血液を抜き取る瀉血と呼ばれる処置が、最も推奨されている治療法です。典型的には2~4週間の間隔で6~10回の瀉血が行われます。瀉血によって過剰な鉄が徐々に取り除かれ、肝臓のウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素の活性が正常に戻り、肝臓と血液中のポルフィリン濃度が徐々に低下します。皮膚症状は回復します。

やや鉄不足になった(または鉄不足に近づいた)時点で、瀉血を中止します。瀉血を大量にまたは頻繁に行うと、貧血が起こる場合があります。

エストロゲンを服用している人では、瀉血が終了してポルフィリン値が正常になるまで、エストロゲン療法を中止します(エストロゲン療法はポルフィリン症の誘発因子であるため)。

ポルフィリンの排泄量を増加させる薬

晩発性皮膚ポルフィリン症の治療には、微量のクロロキンやヒドロキシクロロキンも効果があります。これらの薬は、ポルフィリンの尿への排泄を増加させることで、肝臓から余分なポルフィリンを取り除きます。しかし用量が多すぎると、ポルフィリンが急激に取り除かれるため、一時的な病気の悪化と肝臓の損傷を引き起こします。

C型慢性肝炎を治療する薬

過去5年以内に、C型慢性肝炎の治療と治癒に非常に効果的ないくつかの薬と薬の組合せによる併用療法が使用可能となりました。それらの薬を使用するとともに、飲酒を減らし、禁煙することで、通常は肝炎と晩発性皮膚ポルフィリン症の両方を治療および治癒できます。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • 米国ポルフィリン症基金(American Porphyria Foundation):ポルフィリン症の患者および家族の教育と支援を目的としています

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