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ベーカー嚢胞

(ベーカー嚢腫;膝窩嚢胞)

執筆者:

Deepan S. Dalal

, MD, MPH, Brown University

レビュー/改訂 2022年 4月
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やさしくわかる病気事典

ベーカー嚢胞は、膝の裏側の関節包の延長部分にできる、関節液(滑液)で満たされた小さな袋です。

ベーカー嚢胞は、関節液がたまって、膝の裏側の関節包から袋状に突出した結果生じます。関節液がたまる原因としては、 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチは炎症性関節炎の1つで、関節(普通は手足の関節を含む)が炎症を起こし、その結果、関節に腫れと痛みが生じ、しばしば関節が破壊されます。 免疫の働きによって、関節と結合組織に損傷が生じます。 関節(典型的には腕や脚の小さな関節)が痛くなり、起床時やしばらく動かずにいた後に、60分以上持続するこわばりがみられます。 発熱、筋力低下、他の臓器の損傷が起こることもあります。... さらに読む 関節リウマチ(RA) 変形性関節症 変形性関節症 変形性関節症は軟骨と周囲の組織の損傷を引き起こす慢性疾患で、痛み、関節のこわばり、機能障害を特徴とします。 関節の軟骨と周囲の組織の損傷による関節炎は、加齢に伴い、非常によくみられるようになります。 痛みや腫れ、骨の過剰な増殖がよくみられ、起床時や動かずにいた後に生じて30分以内に治まるこわばり(特に関節を動かしていると治まりやすい)も一般的です。 診断は症状とX線所見に基づいて下されます。... さらに読む 変形性関節症 、その他の炎症性関節疾患、膝の使いすぎなどがあります。ベーカー嚢胞があると、しばしば膝の裏側に不快感が生じますが、症状が現れないことも多いです。この嚢胞は、野球のボールほどの大きさになって、下の方に広がりふくらはぎの筋肉に入り込むこともあります。

嚢胞の中の液の量が急速に増えて内圧が高まると破裂することがあります。嚢胞から漏れ出た液によって周囲の組織が炎症を起こすことがあり、その結果、ふくらはぎの血栓に類似した症状が生じます(深部静脈血栓症[DVT] 深部静脈血栓症 深部静脈血栓症は、深部静脈に血栓(血液のかたまり)が形成される病気で、通常は脚で発生します。 血栓は、静脈の損傷や血液の凝固を引き起こす病気により形成される場合や、何らかの原因で心臓に戻る血流が遅くなることで形成される場合があります。 血栓によって、脚や腕の腫れが生じることがあります。 血栓が剥がれて血流に乗り、肺に到達すると、 肺塞栓症を引き起こします。 深部静脈血栓症を発見するために、ドプラ超音波検査や血液検査を行います。 さらに読む 深部静脈血栓症 )。さらに、ベーカー嚢胞の膨らみや破裂したベーカー嚢胞がまれに、膝の後ろを通っている膝窩静脈を圧迫するために、その静脈に実際に血栓性静脈炎を引き起こすことがあります。

ベーカー嚢胞の診断

  • 医師による評価

  • ときに画像検査

通常、医師は、症状に関する具体的な質問を行い、膝の裏やふくらはぎの腫れに触れることによってベーカー嚢胞を診断することができます。

必要であれば、 超音波検査 超音波検査 超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を用いて内臓などの組織の画像を描出する検査です。プローブと呼ばれる装置で電流を音波に変換し、この音波を体の組織に向けて発信すると、音波は体内の構造で跳ね返ってプローブに戻ります。これは再度、電気信号に変換されます。コンピュータが、この電気信号のパターンをさらに画像に変換してモニター上に表示するとともに、コンピュータ上のデジタル画像として記録します。X線は使用しないため、超音波検査で放射線にさらされ... さらに読む 超音波検査 MRI検査 MRI検査 MRI検査は、強い磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強い磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置の中で発生するような強い磁場の中に... さらに読む MRI検査 関節造影検査 X線検査 筋骨格系の病気は、病歴と 診察の結果に基づいて診断されることがよくあります。医師が診断を下したり確定したりするのを助けるために、 臨床検査や 画像検査、 その他の診断方法が必要になることがあります。 筋骨格系の病気の診断には、臨床検査がしばしば役立ちます。例えば、赤血球沈降速度(赤沈)は、血液が入った試験管の中で赤血球が底に沈んでいく速さを測定する検査です。炎症が起きていると、通常は赤沈の値が上昇します。しかし、炎症は非常に多くの病態で... さらに読む X線検査 が診断に役立ち、嚢胞を深部静脈の血栓(深部静脈血栓症 深部静脈血栓症 深部静脈血栓症は、深部静脈に血栓(血液のかたまり)が形成される病気で、通常は脚で発生します。 血栓は、静脈の損傷や血液の凝固を引き起こす病気により形成される場合や、何らかの原因で心臓に戻る血流が遅くなることで形成される場合があります。 血栓によって、脚や腕の腫れが生じることがあります。 血栓が剥がれて血流に乗り、肺に到達すると、 肺塞栓症を引き起こします。 深部静脈血栓症を発見するために、ドプラ超音波検査や血液検査を行います。 さらに読む 深部静脈血栓症 )と区別し、嚢胞の広がりを記録することができます。

ベーカー嚢胞の治療

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)

  • 関節穿刺または嚢胞吸引とコルチコステロイドの注射

  • ときに、手術による嚢胞の摘出

関節炎による慢性の膝関節の腫れがあれば、ベーカー嚢胞を小さくしたり形成を予防したりするために、医師は針を刺して滑液を抜き(関節穿刺 関節穿刺 筋骨格系の病気は、病歴と 診察の結果に基づいて診断されることがよくあります。医師が診断を下したり確定したりするのを助けるために、 臨床検査や 画像検査、 その他の診断方法が必要になることがあります。 筋骨格系の病気の診断には、臨床検査がしばしば役立ちます。例えば、赤血球沈降速度(赤沈)は、血液が入った試験管の中で赤血球が底に沈んでいく速さを測定する検査です。炎症が起きていると、通常は赤沈の値が上昇します。しかし、炎症は非常に多くの病態で... さらに読む 関節穿刺 と呼ばれる処置)、長時間作用型コルチコステロイド(トリアムシノロンアセトニドなど)を注射することが必要になる場合もあります。嚢胞を吸引して注射をすることもあります。他の治療法で効果がなければ、代わりに手術で嚢胞を切除します。

ときに嚢胞が破裂し、嚢胞液が体内に再吸収されます。嚢胞が破裂した場合は、NSAIDや別の痛み止めで痛みを治療します。嚢胞が破裂して膝窩静脈に血栓性静脈炎が起こった場合は、治療としては安静にし、患部の脚を高い位置に上げ、患部を温め、抗凝固薬(ワルファリンなど)を投与します。

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