腎疾患または尿路疾患が疑われる場合の評価 腎臓および尿路疾患の評価 医師は、患者への問診によって病歴を聴取します。例えば、症状、既往歴(過去にかかった病気)、薬歴(処方薬、市販薬、レクリエーショナルドラッグ)、飲酒歴、喫煙歴、アレルギー、家族の病歴などについて医師から質問があります。腎臓や尿路に病気がある可能性がある人は、通常は以下の点について尋ねられます。... さらに読む には、様々な検査が用いられます。(尿路の概要 尿路の概要 人体には通常、2つの 腎臓があります。尿路の残りの部分は以下の要素で構成されています。 2本の 尿管(それぞれ左右の腎臓を膀胱につなぐ管) 膀胱(拡張して尿を貯めておくことのできる筋肉でできた袋状の臓器) 尿道(膀胱から出て体外に開口する管) 尿は2つの腎臓で絶えず作られていて、尿管を通って緩やかに膀胱に流れ込みます。そして膀胱から尿道を... さらに読む も参照のこと。)
単純X線検査
尿路を評価する際、X線検査は通常役に立ちません。ある種の 腎結石 尿路結石 結石は尿路のいずれかの部位で形成される硬い固形物で、痛み、出血、または尿路の感染や閉塞の原因となることがあります。 小さな結石の場合は症状がみられませんが、大きな結石が発生すると、肋骨と腰の間の部分に耐えがたい激痛が生じることがあります。 結石の診断では通常、画像検査と尿検査が行われます。... さらに読む の検出と腎結石の位置や大きさの確認には、X線検査が役立つことがあります。単純X線検査では撮影されないタイプの腎結石もあります。
超音波検査
超音波検査 超音波検査 超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を用いて内臓などの組織の画像を描出する検査です。プローブと呼ばれる装置で電流を音波に変換し、この音波を体の組織に向けて発信すると、音波は体内の構造で跳ね返ってプローブに戻ります。これは再度、電気信号に変換されます。コンピュータが、この電気信号のパターンをさらに画像に変換してモニター上に表示するとともに、コンピュータ上のデジタル画像として記録します。X線は使用しないため、超音波検査で放射線にさらされ... さらに読む は以下の点で有用な画像検査です。
電離放射線や造影剤の静脈内投与(ときに腎臓の損傷につながります)が不要である
安価に行える
リアルタイムで画像が見られるため、状況に応じて撮影を追加することができる。
超音波検査の一般的な用途は、 尿路結石 尿路結石 結石は尿路のいずれかの部位で形成される硬い固形物で、痛み、出血、または尿路の感染や閉塞の原因となることがあります。 小さな結石の場合は症状がみられませんが、大きな結石が発生すると、肋骨と腰の間の部分に耐えがたい激痛が生じることがあります。 結石の診断では通常、画像検査と尿検査が行われます。... さらに読む のほか、泌尿生殖器(腎臓、膀胱、陰嚢と精巣、陰茎、尿道など)の腫れや腫瘤(かたまり)の画像を撮影することです。超音波検査では、腎臓や膀胱の閉塞部位を探したり、排尿後に膀胱に尿が残っているかどうか判断したり、前立腺の大きさを調べたりできるほか、前立腺や腎臓から生検のサンプルを採取する際の位置確認として超音波を用いることもできます。ドプラ超音波検査では、音波の反響を解析することで画像が作成されます。ドプラ超音波検査は、血流に関する情報を得ることができ、 勃起障害 勃起障害(ED) 勃起障害(ED)とは、性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できないことです。 ( 男性の性機能障害の概要も参照のこと。) どんな男性でもときに勃起に至らない問題を抱えることがあり、そのような問題の発生は正常なことと考えられています。勃起障害(ED)は男性が次のような場合に起こります。 一切勃起できない 繰り返し短時間は勃起するが、性交に十分な時間ではない さらに読む や精巣の病気(精巣捻転 精巣捻転 精巣捻転(せいそうねんてん)とは、精巣が回転して精索がねじれてしまった状態で、精巣への血流が妨げられます。 精巣捻転が起きると、激しい痛みが突然起きた後、捻転が起きた側の精巣が腫れ上がります。 精巣捻転の診断には、医師による診察のほか、ときに超音波検査が必要になります。 治療は精巣のねじれを解除することです。 精巣捻転は通常、12歳から18歳くらいの男児に起こり、ときに乳児期にも起こりますが、どの年齢でも起こる可能性があります。精巣を覆... さらに読む や 精巣上体炎 精巣上体炎と精巣精巣上体炎 精巣上体炎とは精巣上体(精巣の上にあるコイル状の管で、精子が成熟するための空間と環境を作っている)の炎症のことで、精巣精巣上体炎とは精巣上体と精巣の両方に炎症が生じた場合のことをいいます。 患部の腫れと圧痛や痛みがみられます。 精巣上体炎と精巣精巣上体炎の診断は、身体診察と尿検査のほか、ときにドプラ超音波検査を行うことで下されます。... さらに読む など)の原因を特定するのに役立ちます。
CT検査
CT検査 CT検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む では、尿路とその周囲にある構造物を撮影できます。 CT血管造影検査 CT血管造影 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む は、従来の 血管造影検査 血管造影検査 腎疾患または尿路疾患が疑われる場合の評価には、様々な検査が用いられます。( 尿路の概要も参照のこと。) 尿路を評価する際、X線検査は通常役に立ちません。ある種の 腎結石の検出と腎結石の位置や大きさの確認には、X線検査が役立つことがあります。単純X線検査では撮影されないタイプの腎結石もあります。 超音波検査は以下の点で有用な画像検査です。 電離放射線や造影剤の静脈内投与(ときに腎臓の損傷につながります)が不要である... さらに読む と比べて体への負担が少なく、多くの尿路疾患の評価に有用です。CT検査では造影剤を静脈から投与することもあります。造影剤を投与してからすぐに撮影を行うと、腎臓についてより詳細な画像が得られ、また10分待ってから撮影を行うと、尿管(腎臓から膀胱へ尿を流している筋肉でできた管)についてより詳細な画像が得られます。
CT検査の短所 CT検査の短所 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む は、電離放射線への被曝が無視できないことと、造影剤を使用した場合に腎障害とアレルギー反応が起きるリスクがあることです。
MRI検査
MRI検査 MRI検査 MRI検査は、強い磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強い磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置の中で発生するような強い磁場の中に... さらに読む でも、CT検査と同様、尿路とその周囲にある構造物を撮影できます。MRI検査では、CT検査と異なり、電離放射線への被曝はありません。MRIは血管の画像を撮影するために用いることもできます(MRアンギオグラフィー検査、あるいはMRアンギオグラフィー検査と呼ばれます)。一部の疾患では、CT検査よりMRI検査を用いた方が詳細な情報が得られます。しかし、MRI検査では、 尿路結石 尿路結石 結石は尿路のいずれかの部位で形成される硬い固形物で、痛み、出血、または尿路の感染や閉塞の原因となることがあります。 小さな結石の場合は症状がみられませんが、大きな結石が発生すると、肋骨と腰の間の部分に耐えがたい激痛が生じることがあります。 結石の診断では通常、画像検査と尿検査が行われます。... さらに読む に関する有用な情報はあまり得られません。
常磁性造影剤 常磁性造影剤 画像検査では、特定の組織または構造を周辺領域から区別したり、詳細な画像を撮影したりするために造影剤を使用することがあります。 造影剤には以下のものがあります。 放射線不透過性造影剤:X線画像に写る物質 常磁性造影剤: MRI検査で使用される物質 放射線不透過性造影剤はX線を吸収するため、X線画像上で白く見えます。典型的には以下のものを見るために用いられます。 さらに読む を静脈内投与することで、MRI画像はより鮮明になります。この造影剤は、CT検査で使用される造影剤とは大きく異なります。しかし、腎機能が低下している人では、常磁性造影剤を使用できないことがよくあります。そういった人にこの造影剤を使用すると、まれに腎性全身性線維症といって、皮膚やその他の臓器に影響が生じる重篤かつ不可逆的な副作用が起こることがあるからです。
排泄性尿路造影検査
排泄性尿路造影検査(静脈性尿路造影検査や静脈性腎盂造影検査とも呼ばれます)では、造影剤を静脈から投与して腎臓、尿管、膀胱のX線画像を撮影します。今日では行われることはまれで、通常はこの検査の代わりに造影剤を使用したCT検査が行われます。
逆行性尿路造影検査
逆行性尿路造影検査では、造影剤を膀胱から尿管または腎臓の集合管まで直接注入します。この処置は一般に、 膀胱鏡検査 膀胱鏡検査 膀胱および尿道の病気(例えば、 膀胱腫瘍、 膀胱結石、 前立腺肥大症)の中には、観察用の柔軟な管状の機器(膀胱鏡という内視鏡の一種)による観察で診断できるものもあります。膀胱鏡は鉛筆ほどの太さをした内視鏡で、実際に尿道と膀胱の内部に挿入されるのは15~30センチメートルほどの部分です。膀胱鏡の多くはライトと小さなカメラが内蔵されているファイバースコープで、それにより膀胱と尿道の内部を観察することができます。先端部に物をはさむための器具が... さらに読む 、通常行われるその他の泌尿器科的処置(尿管鏡という器具を尿管に挿入する尿管鏡検査など)、尿管または腎臓へのステント留置などの最中に行われます。この検査では、腎臓内で尿がろ過される部分を含め、尿路全体を調べることができます。
逆行性尿路造影検査を行うことで、瘢痕(はんこん)、腫瘍、尿路と他の構造との間に形成された異常な通路(瘻孔[ろうこう])を診断することができます。逆行性尿路造影検査は、造影剤を使用できない人(例えば、腎臓の機能が低下している人)でも行えます。
経皮的順行性尿路造影検査
経皮的順行性尿路造影検査では、尿を排出するために背中にあけられた穴(腎瘻[じんろう])から造影剤を直接注入します。この検査は、逆行性尿路造影検査が行えない患者(器具を挿入する経路に閉塞がある場合など)や、腫瘍や尿路結石などの病気に対する治療ですでに腎瘻チューブが留置されている人に行われます。
膀胱造影検査と膀胱尿道造影検査
膀胱造影検査は、造影剤を膀胱鏡やカテーテルなどを通して尿道から膀胱内に注入してから、膀胱の画像を撮影する検査です。主に、膀胱にあいた穴(けがや手術の後など)を見つけるために行われます。
膀胱尿道造影検査(ときに逆行性膀胱尿道造影とも呼ばれます)では、 造影剤 放射線不透過性造影剤 画像検査では、特定の組織または構造を周辺領域から区別したり、詳細な画像を撮影したりするために造影剤を使用することがあります。 造影剤には以下のものがあります。 放射線不透過性造影剤:X線画像に写る物質 常磁性造影剤: MRI検査で使用される物質 放射線不透過性造影剤はX線を吸収するため、X線画像上で白く見えます。典型的には以下のものを見るために用いられます。 さらに読む を尿道から膀胱に注入します。この処置は、尿道の異常(瘢痕や、けがによる裂傷など)を特定するために行われます。排尿中と排尿直後に膀胱と尿道のX線画像を撮影する場合は、排尿時膀胱尿道造影検査と呼ばれます。排尿時膀胱尿道造影検査は、膀胱から尿管への尿の逆流を防ぐ弁が正常に機能しているかを評価したり、尿道後部(膀胱に最も近い部分)の狭窄などの異常を見つけたりするのに用いられます。
逆行性尿路造影検査
逆行性尿路造影検査では、尿道の末端から 造影剤 放射線不透過性造影剤 画像検査では、特定の組織または構造を周辺領域から区別したり、詳細な画像を撮影したりするために造影剤を使用することがあります。 造影剤には以下のものがあります。 放射線不透過性造影剤:X線画像に写る物質 常磁性造影剤: MRI検査で使用される物質 放射線不透過性造影剤はX線を吸収するため、X線画像上で白く見えます。典型的には以下のものを見るために用いられます。 さらに読む を直接注入しますが、その際には特殊なアタプターを付けた注射器を使用して注入するか、尿道カテーテルを尿道内に数センチメートルだけ入れて、バルーンを少し膨らませて適度にフィットさせてから注入します。造影剤を尿道内に注入して尿道全体に充満させることにより、損傷や 狭窄 尿道狭窄 尿道狭窄とは、瘢痕によって尿道が狭くなった状態です。 尿道狭窄は以下の場合があります。 出生時からみられる 感染症やけがの後に発生する 尿道狭窄の原因で最も多いのは過去の外傷です。性感染症などの過去の感染は、今では原因になることはまれです。原因が分からないケースもよくあります。 さらに読む を画像上で見えるようにします。この検査は一般的に、尿道に損傷が起きる可能性のある外傷を負ったことがある人に用いられます。逆行性尿路造影検査を行う目的は、尿道カテーテルを尿道に入れても安全であり、尿道が傷つかないことを確認することにあります。
PET検査
新しく使用可能になったPET検査用の検査薬は、体内のほかの部位に広がった(転移した)前立腺がんを検出することができます。この検査薬は、前立腺がんの細胞の表面にあるPMSA(前立腺特異的膜抗原)を標的とするもので、この物質がPET検査の画像に表示されます。
対照的に、通常のPET検査は前立腺がんの大半の症例であまり役立ちませんが、 腎臓がん 腎臓がん 腎臓に発生する腫瘍のうち、充実性の腫瘍(内部が組織で詰まっているもの)の大半ががんであるのに対して、内部に液体だけが詰まった腫瘍(嚢胞[のうほう])は多くが良性の(がんではない)腫瘍です。腎臓がんの大半は腎細胞がんと呼ばれるものです。 ウィルムス腫瘍と呼ばれる別の種類の腎臓がんもあり、これは主に小児でみられます。 腎臓がんでは、血尿やわき腹(側腹部)の痛み、発熱などがみられます。... さらに読む や 精巣腫瘍 精巣腫瘍 精巣腫瘍は、男性の精巣(精子を作る2つの小さな臓器)に発生します。 精巣腫瘍は若い男性によくみられますが、通常は治癒させることが可能です。 通常は痛みのないしこりができます。 超音波検査と血液検査を実施します。 精巣を除去し、放射線療法または化学療法を行う場合や、さらに手術を行う場合があります。 さらに読む など、他の泌尿生殖器腫瘍の検査には役立つ可能性があります。
核医学検査(シンチグラフィー)
腎臓の 核医学検査 核医学検査 核医学検査では、放射性核種を用いて画像を描出します。放射性核種とは放射線を出す元素のことで、エネルギーを放射線の形で放出することで、安定した状態になろうとする原子です。放射性核種の多くは高いエネルギーをガンマ線(人の手によらない、自然環境で発生するX線)または粒子( PET検査で使用される陽電子など)の形で放出します。( 放射線障害と 画像検査の概要も参照のこと。) 放射性核種は、甲状腺などの特定の臓器の病気を治療するのにも使用されます... さらに読む (腎シンチグラフィー)とは、まず放射性化合物を血管内に注射してから、ガンマカメラと呼ばれる専用の装置で微量の放射線を検出する画像検査法です。この検査は主に、腎臓の血流と尿の生産を評価するために行われます。
血管造影検査
血管造影検査 血管造影 血管造影検査は、X線を用いて血管の詳細な画像を描出する検査で、 CT血管造影検査や MRアンギオグラフィー検査(MRA)と区別するために「従来の血管造影」と呼ばれることもあります。血管造影の撮影を行いながら、医師が血管の異常を治療することも可能です。血管造影は体に負担をかける検査法ですが、それでも比較的安全です。 血管造影では静止画像だけでなく動画(シネアンギオグラフィーといいます)も撮影でき、血液が血管内を流れる速さを測ることも可能で... さらに読む (CT血管造影検査やMRアンギオグラフィー検査と区別するために「従来の血管造影」と呼ばれることもあります)では、動脈内に 造影剤 放射線不透過性造影剤 画像検査では、特定の組織または構造を周辺領域から区別したり、詳細な画像を撮影したりするために造影剤を使用することがあります。 造影剤には以下のものがあります。 放射線不透過性造影剤:X線画像に写る物質 常磁性造影剤: MRI検査で使用される物質 放射線不透過性造影剤はX線を吸収するため、X線画像上で白く見えます。典型的には以下のものを見るために用いられます。 さらに読む を注射します。この検査は、尿路の病気がある人で、重度の出血や血管同士の異常な吻合(動静脈瘻)などの血管の異常を修復する治療法と組み合わせて用いられます。
血管造影検査の合併症としては、造影剤を注射した動脈とその周辺臓器の損傷のほか、出血や造影剤に対する反応などがあります。