(肝臓の血管の病気の概要 肝臓の血管の病気の概要 肝臓は必要とする酸素と栄養素を次の2つの太い血管から得ています。 門脈 肝動脈 門脈は、肝臓への血液供給の3分の2を担っています。その血液には酸素のほか、肝臓で処理するために腸から運ばれる多くの栄養素が含まれています。肝動脈は、残る3分の1の血液供給を担っています。その血液は、心臓から流れてきた酸素を豊富に含む血液で、肝臓に供給される酸素... さらに読む も参照のこと。)
肝臓とは異なり、胆管(肝管や総胆管など)には肝動脈という太い血管からのみ血液が供給されています。したがって、肝動脈からの血流が遮断されると、胆管に酸素が十分に行き渡らなくなります。その結果、胆管の内側を覆う細胞に損傷や壊死が生じ、この病気は虚血性胆管障害と呼ばれています。血流は、以下の場合に遮断されることがあります。
移植した肝臓に対して拒絶反応が起きたとき
肝移植の手術中や腹腔鏡で胆嚢を摘出する手術中に血管が傷ついてしまったとき
放射線療法によって血管が損傷したとき
化学塞栓療法と呼ばれる、肝臓の腫瘍に流れる血液を遮断する処置により、健康な組織への血流が遮断されたとき
虚血性胆管障害は、 肝移植 肝移植 肝移植とは、健康な肝臓またはときに生きている人から肝臓の一部を手術で摘出し、肝臓が機能しなくなった人に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 肝移植は2番目に多い臓器移植です。肝臓が機能しなくなった人々に残された唯一の選択肢です。 完全な形の肝臓は死亡した人からしか提供を受けられませんが、肝臓の一部であれば生きているドナーでも提供できます。移植用の肝臓は摘出後、最長で18時間保存できます。... さらに読む を受けた人で最もよく起こります。
虚血性胆管障害の症状
損傷した胆管は、炎症や狭窄(狭くなること)を起こします。すると、胆汁の流れが遅くなるか遮断されます。胆汁が肝臓や胆管を速やかに通過できなければ、胆汁中の色素(ビリルビン)が血液中に蓄積して、皮膚に沈着します。その結果、皮膚や白眼の部分が黄色くなります(黄疸 成人の黄疸 黄疸では、皮膚や白眼が黄色くなります。黄疸は、血中にビリルビン(黄色の色素)が多すぎる場合に起こります。この病態を高ビリルビン血症と呼びます。 ( 肝疾患の概要と 新生児黄疸も参照のこと。) 写真では、黄色に変色した眼と皮膚(黄疸)がみられます。 ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成されます。ビリルビンは血流によって肝臓に運ばれ、胆汁... さらに読む )。狭窄や閉塞があると、胆汁(ビリルビンなどの色素を含む)が小腸に入って便中に排泄される流れが妨げられることがあります。その結果、便の色は薄くなり、胆汁が尿中に、より多く排泄されるために尿の色が濃くなります。
かゆみ(そう痒)がよくみられ、最初は手や足に生じることが多いですが、たいてい全身に広がります。かゆみは特に夜間にひどくなります。さらに、胆管の感染症(胆管炎 症状 原発性硬化性胆管炎では肝臓内外の胆管に炎症が生じ、瘢痕化や胆管の狭窄が進行します。最終的には影響を受けた胆管が完全に詰まります。肝硬変、肝不全、またときには胆管がんが発生します。 症状は徐々に現れ、疲労やかゆみの悪化がみられるほか、後に黄疸が生じます。 画像検査で診断を確定します。 治療では、症状の緩和に重点が置かれますが、肝移植によって余命を延長することも可能です。 胆汁は、肝臓で作られ消化を助ける液体です。胆汁は、胆汁を送り出すため... さらに読む )が起こることもあり、これが腹痛、悪寒、発熱を引き起こします。
虚血性胆管障害の診断
可能性を高める条件(例えば、肝移植を受けたことがある)
医師による評価
血液検査と画像検査
診断は症状と血液検査での異常に基づいて下され、特に虚血性胆管障害が起こりやすい状態の人(肝移植 肝移植 肝移植とは、健康な肝臓またはときに生きている人から肝臓の一部を手術で摘出し、肝臓が機能しなくなった人に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 肝移植は2番目に多い臓器移植です。肝臓が機能しなくなった人々に残された唯一の選択肢です。 完全な形の肝臓は死亡した人からしか提供を受けられませんが、肝臓の一部であれば生きているドナーでも提供できます。移植用の肝臓は摘出後、最長で18時間保存できます。... さらに読む を受けた人など)では、血液検査での異常が重視されます。
超音波検査は胆管の様子を可視化しますが、決定的な結果が得られないことがあります。より解像度の高い画像を得るには、たいてい胆管のMRI検査(磁気共鳴胆道膵管造影[MRCP]検査と呼ばれます)または 内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査 肝臓と胆嚢の画像検査 肝臓、胆嚢、胆管の画像検査には、超音波検査、核医学検査、CT検査、MRI検査、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査、経皮経肝胆道造影検査、術中胆道造影検査、単純X線検査などがあります。 ( 肝臓と胆嚢の概要も参照のこと。) 超音波検査では、音波を利用して肝臓や胆嚢、胆管を画像化します。経腹超音波検査は、 肝硬変(肝臓の重度の瘢痕化)や 脂肪肝(肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態)など肝臓全体を一様に侵す異常よりも、腫瘍など肝臓の特... さらに読む (ERCP検査)検査を必要とします。ERCPでは、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を口から挿入して小腸に到達させ、胆管系に造影剤を注入します。
虚血性胆管障害の治療
内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査とステントの留置
薬の変更(肝移植を受けた人の場合)
ERCPは、胆管の狭窄を検出するだけでなく、狭窄の治療に用いられることもあります。その場合は、先端にしぼんだ風船(バルーン)の付いたワイヤーを内視鏡を介して挿入し、狭窄のある部分に到達させます。その位置でバルーンを膨らませて、狭窄部を広げ(拡張させ)ます。そしてメッシュ状の管(ステント)を挿入し、胆管が広がった状態を維持します。
肝移植 肝移植 肝移植とは、健康な肝臓またはときに生きている人から肝臓の一部を手術で摘出し、肝臓が機能しなくなった人に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 肝移植は2番目に多い臓器移植です。肝臓が機能しなくなった人々に残された唯一の選択肢です。 完全な形の肝臓は死亡した人からしか提供を受けられませんが、肝臓の一部であれば生きているドナーでも提供できます。移植用の肝臓は摘出後、最長で18時間保存できます。... さらに読む を受けたことがある患者では、拒絶反応を予防するために服用する薬を変えるか、再度移植が必要になることがあります。