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消化管の異物

執筆者:

Zubair Malik

, MD, Lewis Katz School of Medicine at Temple University

レビュー/改訂 2021年 5月
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異物は飲み込まれた物体で、これが消化管で動かなくなったり、ときに消化管に穴をあけたりすることがあります(穿孔[せんこう])。

  • 異物は誤って飲み込まれる場合もあれば、意図的に飲み込まれる場合もあります。

  • 異物が詰まった場所に応じて、症状が出る場合もあれば、出ない場合もあります。

  • 診断は、X線検査や内視鏡検査、ときにCT検査を組み合わせた検査結果に基づいて下されます。

  • 大半の異物は治療をしなくても通り抜けていきますが、なかには内視鏡検査、手術、または手作業で取り除かなければならない場合もあります。

異物は、以下のような消化管の様々な部分で動かなくなることがあります。

異物を誤って飲み込んだ場合があります。小児では、小さな丸い食べもの(ブドウ、ピーナッツ、キャンディーなど)を飲み込んで、詰まらせる場合があります。さらに好奇心旺盛な乳幼児では、食べられない様々なもの(コインやボタン電池など)を誤って飲み込むことがよくあり、なかには食道で動かなくなるものもあります。入れ歯を使用している人、高齢者、酔っている成人では、十分に噛んでいない食べもの(特にステーキやホットドッグなどの肉類)を誤って飲み込んでしまい、食道に詰まらせてしまうリスクが高くなります。

消化されない異物が小さければ、消化管を通過して、便とともに排出されます。しかし、大きな異物や、爪ようじ、鶏肉や魚の骨のように鋭くとがった物は、食道や胃、または腸の鋭く曲がっている部分や狭くなっている部分(もともと狭くなっているか、病気や過去の手術、腫瘍や異常な構造物になどよって狭くなった部分)などで動かなくなることがあります。異物が腸内を通過したとしても、直腸で動かなくなる可能性もあります。

消化管の異物の症状

異物による症状は、異物の性質と異物が詰まった場所に応じて異なります。

食道の異物

とがった部分のない小さな物体を飲み込んだ場合は、食道に何かがとどまっているような感覚が生じ、 嚥下困難 嚥下困難 飲み込みに障害が生じること(嚥下[えんげ]困難)があります。嚥下困難では、食べものや飲みものがのど(咽頭)から胃へと正常に移動しません。のどと胃をつなぐ管(食道)の途中で食べものや飲みものが動かなくなったように感じます。嚥下困難を咽喉頭異常感(いんこうとういじょうかん)( 球感覚)と混同してはならず、球感覚ではのどにしこりがある感じがしますが、飲み込みに支障はありません。 嚥下困難によって、口腔分泌物や飲食物を肺に吸い込む誤嚥(ごえん)... さらに読む が起こることがあります。この感覚は、その物体が胃に入った後でも短時間続くことがあります。とがった小さな物体を飲み込んだ場合は、嚥下能力が正常な場合でも、食道に引っかかって痛みを引き起こすことがあります。食道が完全にふさがった場合は、いっさい何も、唾液さえも飲み込めなくなり、絶えず唾液が垂れたり唾液を吐き出したりします。唾液に血が混じり、むせたり、息ができなくなったりすることがあります。嘔吐しようとしてみても、何も吐き出せません。

胃腸の異物

直腸の異物

排便中に突然耐えがたい激痛が生じた場合、異物が 肛門 直腸と肛門 直腸は大腸の終わりのS状結腸に続く部分から始まり、最後は肛門へと続く管腔です( 肛門と直腸の概要)。普通、便は下行結腸にとどまっているため、直腸は空になっています。やがて、下行結腸がいっぱいになり、便が直腸に下りてくると便意が起こります(排便)。成人や年長児はトイレに行くまで便意を我慢することができます。乳児や幼児では、排便を遅らせるのに必要な筋肉の制御が足りません。 肛門は消化管の最後に位置する開口部で、体から便を排泄する場所です。肛... さらに読む 直腸 直腸と肛門 直腸は大腸の終わりのS状結腸に続く部分から始まり、最後は肛門へと続く管腔です( 肛門と直腸の概要)。普通、便は下行結腸にとどまっているため、直腸は空になっています。やがて、下行結腸がいっぱいになり、便が直腸に下りてくると便意が起こります(排便)。成人や年長児はトイレに行くまで便意を我慢することができます。乳児や幼児では、排便を遅らせるのに必要な筋肉の制御が足りません。 肛門は消化管の最後に位置する開口部で、体から便を排泄する場所です。肛... さらに読む の粘膜を突き破っている可能性が疑われます。便に血が混じることがあります。

消化管異物の合併症

とがった物体が食道に穴をあけると、深刻な事態を招くことがあります。食べものや食道内のその他の内容物が胸腔(縦隔)内に漏れ出し、生命を脅かす炎症(縦隔炎 縦隔炎 縦隔炎は、縦隔(心臓、胸腺、一部のリンパ節のほか、食道、大動脈、甲状腺、副甲状腺の一部が入っている胸部の空間)に起きる炎症です。 縦隔炎は通常、食道の裂傷または胸部の手術が原因で起こります。 強い胸痛、息切れ、発熱などの症状がみられます。 診断には、胸部X線検査またはCT検査が必要です。 治療には抗菌薬が使用されるほか、ときに手術が必要になります。 さらに読む )を引き起こすことがあります。ボタン電池を飲み込んだ場合は、電池が食道の内壁を侵食することで、食道の熱傷(やけど)が起こることがあります。

とがった物体は、 消化管穿孔 消化管穿孔 中空の消化器はいずれも穿孔(せんこう)が生じる可能性があり、穿孔が生じると消化管の内容物が漏出し、すぐに手術を行わなければ 敗血症(生命を脅かす血流感染症)や死亡に至ることがあります。 症状としては胸部や腹部に突然重度の痛みが生じ、腹部に触れると圧痛がみられます。 診断はX線検査とCT検査によって下されます。 直ちに手術が必要です。 ( 消化管救急疾患の概要も参照のこと。) さらに読む も引き起こす可能性があります。穿孔が起きると、食べもの、消化液、腸の内容物(便など)が腹腔内に漏れ出します。こうした漏れは 腹膜炎 腹膜炎 腹痛はよく起こりますが、多くの場合軽度です。しかし、強い腹痛が急に起きた場合は、ほとんどが重大な問題であることを示しています。このような腹痛は、手術が必要であることを示す唯一の徴候であるかもしれず、速やかに診察を受ける必要があります。高齢者やHIV感染者、免疫抑制薬(コルチコステロイドなど)を使用している人では、同じ病気の若い成人や健康な成人よりも腹痛が弱いことがあり、病状が重篤な場合でも腹痛がよりゆっくり発症することがあります。幼い子... さらに読む (腹腔の炎症)の原因になるため、緊急の治療を要する事態です。

ときに異物が原因で便に血が混じることもあります。

薬物を詰めた物体を飲み込んだ人では、包みが破れることで、薬物の過剰摂取に至ることがあります。

消化管の異物の診断

  • 画像検査(典型的にはX線検査)

  • 内視鏡検査

多くの場合、異物は腹部のX線検査やときに胸部のX線検査で確認できます。異物の特定やその位置の確認のために、ときに他の画像検査(CT検査など)を行うこともあります。

消化管の異物を診断するための画像検査

直腸にとどまっている異物は多くの場合、医師が手袋をした指を直腸に挿入して診察する直腸指診の際に触れることができます。

携帯型金属探知機を用いて、金属製の異物(コインや電池など)を検出することもあり、これは特に小児で役立ちます。しかし、そうした金属製の異物は、通常はX線検査、ときにCT検査で検出されます。

消化管の異物の治療

  • 食道の異物には、グルカゴンまたは内視鏡検査

  • 胃の異物には、内視鏡検査

  • 腸の異物には、ときに内視鏡または手術による除去

  • 直腸の異物には、内視鏡または手作業による除去

自然に通過する異物もあり、その場合は治療の必要はありません。異物の排出を促すために、水分を多く摂取するよう医師に勧められることもあります。爪ようじや魚の骨などの小さなものは、症状を引き起こすことなく長年にわたって消化管に残っていることがあります。

食道の異物

閉塞の症状がなく、とがった物体やボタン電池を飲み込んでいない場合は、異物が自然に通過するかどうかを医師が最長24時間観察します。食べもののかけらが食道にとどまっていることが疑われる場合は、食道を弛緩(しかん)させ、そのかけらが自然に消化管を通過するように、グルカゴンという薬を静脈から投与することがあります。

医師は通常、24時間以内に食道から出ていかない異物を取り除きますが、これは、除去が遅れると穿孔などの合併症のリスクが高まり、また除去が成功する可能性が低くなるためです。

食道にとどまっている物体の一部は、内視鏡を用いて胃内に押し込むか、内視鏡経由で挿入した鉗子やネット、かご状の容器を使って取り除くことができます。

胃腸の異物

とがった物体は穿孔を引き起こす可能性があるため、医師は通常、それを胃から除去するために内視鏡検査を行います。以下のものも内視鏡検査を行って除去します。

  • 3~4週間以上胃にとどまっている異物

  • 48時間以上胃にとどまっているが、胃に損傷を起こしていない電池

  • 胃の中にある直径約2.5センチメートルを超える異物

  • 内視鏡が届くところにある磁石

コインなどの小さくて丸い異物は、自然に排出される可能性があります。異物が排出されたかどうかを確認するために、医師は患者に便を確認するように指示します。異物が便と一緒に出てこない場合は、異物が通過したかどうかを確認するために再びX線検査を行います。

胃から出て小腸に入った異物は、通常は消化管を問題なく通過します。しかし、先のとがっていない短い物体が1週間以上小腸にとどまっていて、内視鏡で除去できない場合や腸閉塞の症状がある場合は、手術で除去することがあります。

  • 腸閉塞の症状がある

  • 薬物の過剰摂取の症状がある(異物から薬物が漏れていることを示唆します)

  • かなりの時間が経過しても異物が排出されない

医師は通常、薬物を詰めた異物を除去するために内視鏡検査を行うことはなく、これは、除去している間に包みが破れることで、重篤な過剰摂取が起きるリスクが高いためです。

直腸の異物

直腸の異物は、異物の種類に応じて内視鏡検査または手作業で除去することがあります。ときに手作業で除去する場合には、 局所麻酔薬 局所麻酔と区域麻酔 手術とは、従来、病気やけが、体の変形を治療する目的で組織を手作業で切ったり塗ったりする処置(外科的処置といいます)を指すのに用いられてきた用語です。しかし、手術手技の進歩により、この定義はより複雑になっています。組織を切るのにメスではなくレーザーや放射線、その他の手法が用いられることもあれば、縫合せずに傷口を閉じることもあります。... さらに読む を注射して肛門の感覚を麻痺させた上で、特殊な器具で肛門を開いた状態にする必要があります。そうすれば、鉗子を使って異物をつかみ、取り出すことができます。この処置では深い鎮静が必要になる場合もあります。

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