多因子(複合)遺伝

執筆者:David N. Finegold, MD, University of Pittsburgh
レビュー/改訂 2019年 9月
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    多くの形質の発現には,複数の遺伝子が関与している可能性がある。このような形質の多く(例,身長)は,ベル型の曲線分布(正規分布)を示す。正常では,個々の遺伝子はそれぞれ独立して,特定の形質に正または負の影響を及ぼす。同じ方向に作用する複数の因子を同時に受け継ぐ可能性は低いため,分布の両端ほど少数となり,分布の中央ほど多数となる。環境因子も最終的な結果に正または負の影響を及ぼす。

    比較的頻度の高い先天異常および家族性疾患の多くは,多因子遺伝によるものである。罹患者では,その疾患は遺伝的影響と環境的影響の総和を反映する。このような形質が発現するリスクは,感受性遺伝子をごく少数しか受け継いでいない可能性の高い遠縁の近親者よりも,第1度近親者(罹患者と平均50%の遺伝子を共有する同胞,親,子)ではるかに高い。

    多因子遺伝を示す一般的な疾患としては,高血圧症冠動脈疾患2型糖尿病,がん,口蓋裂,関節炎などがある。変異の形質を示す個人と示さない個人に対して最も感度の高い利用可能な遺伝学的検査(次世代シークエンシング)を行うことにより,これらの形質に寄与する具体的な遺伝子が数多く同定されている。家族歴やしばしば分子マーカー(例,コレステロール高値)により同定される特異的な生化学的経路など,遺伝学的に規定される素因により,予防が有益となる可能性の高い高リスクの個人をときに同定できることがある。

    複数の遺伝子が関与する多因子性の形質が明確な遺伝パターンを示すことはほとんどないが,こうした形質は特定の民族および地域集団で,あるいは男女のいずれかでより高頻度に認められる傾向がある。

    遺伝学の概要も参照のこと。)

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