ほとんどの外科手技は,抗菌薬の予防投与または術後投与を必要としない。しかしながら,特定の患者関連因子および手技関連因子によってリスク-便益比が変化し,それにより予防的使用が支持されることがある。
抗菌薬の必要性を示唆する患者側の危険因子としては以下のものがある:
免疫抑制
リスクの高い処置は,細菌感染の可能性が高い以下の部位の手術である:
口腔
消化管
気道
泌尿生殖器
いわゆる清潔な(無菌である可能性が高い)手技では,一般に予防投与は,人工材料または器具が挿入されているか,感染の結果が重篤と分かっている(例,冠動脈バイパス術後の縦隔炎)場合にのみ有益である。
抗菌薬の選択は,Surgical Care Improvement Project(SCIP)ガイドライン( Professional.see page 周術期管理 周術期管理 Surgical Care Improvement Project(SCIP)は,Surgical Infection Prevention(SIP)プロジェクトを元に2005年に開始された。このプロジェクトは,米国の複数年にわたるパートナーシップとして認識されており,周術期の合併症発生率および死亡率の低減を目的としている。 SCIPのガイドラインが採択され,Specifications... さらに読む )に基づく。抗菌薬の選択の標準化と,SCIPプロトコルまたは他の標準化され妥当性の確認されたプロトコルの遵守により,手術時の感染症のリスクが下がることを示す強いエビデンスがある。SCIPガイドラインを遵守した米国の一部の地域では,2006年から2010年までに手術部位感染症が25%減少した。薬剤の選択は,その手術中に創部を汚染する可能性が最も高い細菌に対する薬剤活性に基づいて行う( Professional.see table 特定の外科手技のための抗菌薬レジメン 特定の外科手技のための抗菌薬レジメン )。抗菌薬は,外科的切開を加える1時間前(バンコマイシンおよびフルオロキノロン系では2時間前)に投与する。抗菌薬は手技に応じて経口または静脈内に投与される。大抵のセファロスポリン系薬剤は,処置が4時間以上続くのであれば追加投与する。清潔処置の場合は追加投与は不要であるが,そうでない場合に追加投与が有益であるかどうかわかっていない。抗菌薬の投与は,手術中に活動性の感染巣が検出された場合のみ,術後24時間を超えて継続するが,その場合の抗菌薬投与は予防ではなく,治療とみなされる。
Center for Disease Controlは,局所および非薬物的な消毒方法(例,入浴,シーラント,洗浄,補綴具[人工器官,prosthetic devices]のための予防措置)を記載した手術部位感染予防のためのガイドラインを公表している。
より詳細な情報
以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。