(骨折の概要 骨折の概要 骨折とは,骨が破損することである。ほとんどの骨折は,正常な骨に単一の大きな力が加わることで生じる。 骨折以外の筋骨格系損傷には以下のものがある: 関節脱臼および亜脱臼(部分的な関節脱臼) 靱帯捻挫,筋挫傷,および腱損傷 筋骨格系の損傷はよくみられる現象であるが,その受傷機転,重症度,および治療法は様々である。四肢,脊椎,骨盤のいずれにも発... さらに読む も参照のこと。)
足関節骨折は一般的であり,様々な受傷機転により起こりうるが,ランニングまたは跳躍時の内反損傷が最も多い。
足関節の骨および靱帯は,脛骨および腓骨を距骨および踵骨につなげる1つの輪を形成している。その輪の中では,以下のものにより安定性を得ている:
輪の1カ所に破綻がみられる骨折では,しばしば別の箇所でも破綻が生じる(例,1つの骨だけに骨折がある場合,しばしば1つの靱帯が同時かつ重度に断裂する)。足関節の輪を安定化させている複数の構造が骨折により破綻すると,足関節が不安定になる。内側の三角靱帯の破綻も不安定性を引き起こす。
内果が骨折し,果間関節窩(脛骨と距骨の間の関節)が開いているが,腓骨遠位端は骨折していないときには,腓骨近位部も骨折していることがある(Maisonneuve骨折と呼ばれる)。ときに腓骨近位部の骨折時に起こるように,脛骨と腓骨の間の靱帯が裂けた場合に限り,腓骨遠位部の骨折なしに関節が離断される可能性がある。
足関節の靱帯
|
損傷部位の疼痛および腫脹が最初に起こり,次に足関節周辺にびまん性に広がることが多い。
診断
X線
ときにストレスX線および/またはMRI
足関節X線の前後像,側面像,斜位(果間関節窩)像を撮影する。骨折のある可能性が低い患者に対するX線撮影を避けるために,しばしば特異的な基準(例,オタワ足関節ルール[Ottawa ankle rule])が用いられる。オタワ足関節ルールに基づくと,足関節X線は,足関節痛がみられ,かつ以下のいずれかに該当する場合にのみ必要とされる:
55歳以上
損傷直後および救急診療部で,跛行の有無にかかわらず補助なしで体重を支えられない(4歩の間)
内外果いずれかの後方の縁または先端から6cm以内に骨の圧痛がある
足関節骨折は通常,X線上で明らかとなる。
安定性の判定は治療方針の決定に役立つ。足関節を視診または愛護的に触診すると,不安定性が明らかな場合がある。随伴するMaisonneuve骨折を検索するため,膝関節,特に腓骨近位部も診察すべきである。
内果および外果の両方が骨折した場合,おそらく損傷は不安定型である。
腓骨のみ骨折し,脛距関節は正常にみえる場合,外旋させたストレスX線を行ってもよい;脛距関節の亜脱臼が検出される可能性があり,これは三角靱帯および足関節の不安定性を示唆する。
腓骨近位端骨折の可能性があると考えられる場合,膝関節のX線も撮影すべきである。
治療
ウォーキングブーツまたはギプス固定
ときに観血的整復内固定術(ORIF)
ほとんどの安定型の足関節骨折は,ウォーキングブーツまたはギプスを用いて非外科的に治療できる。
不安定型の足関節損傷では,骨片のアライメントを正しく整え骨折治癒中のアライメントをよりよく保つために,ORIFを行うことが多い。
足関節が安定な場合,治療により正しいアライメントが得られれば,通常予後は良好である。骨片のアライメントが正しく保たれない場合,関節炎が発生し,再度骨折する可能性がある。
Maisonneuve骨折は,ORIFを必要とする重大な靱帯結合の損傷である。
要点
足関節骨折により足関節の輪(足関節の骨と靱帯で形成される)が1カ所で破綻すると別の箇所も破綻することが多く,足関節の輪を安定化させている複数の構造が破綻すれば,足関節が不安定になる。
オタワ足関節ルール(Ottawa ankle rule)を用いて,骨折がある可能性の高い患者に対するX線の制限を試みる。
身体診察により足関節の安定性(これにより治療が決定される)を評価し,必要であればX線を施行する。
ほとんどの安定型の足関節骨折はウォーキングブーツまたはギプスで,多くの不安定型骨折はORIFで治療する。