(骨折の概要 骨折の概要 骨折とは,骨が破損することである。ほとんどの骨折は,正常な骨に単一の大きな力が加わることで生じる。 骨折以外の筋骨格系損傷には以下のものがある: 関節脱臼および亜脱臼(部分的な関節脱臼) 靱帯捻挫,筋挫傷,および腱損傷 筋骨格系の損傷はよくみられる現象であるが,その受傷機転,重症度,および治療法は様々である。四肢,脊椎,骨盤のいずれにも発... さらに読む も参照のこと。)
中手骨頸部骨折はよくみられる。疼痛,腫脹,圧痛,およびときに変形を引き起こす。 回旋変形 手の骨折による回旋変形 が起こることがある。第5中手骨が最も殴打による損傷(ボクサー骨折)を受ける頻度が高い。この骨折が人の口を殴打した結果生じた場合,ヒトの口腔細菌叢により創傷が汚染されることがあり,ときに感染症を引き起こす。喧嘩による咬傷がある患者には抗菌薬が必要である。
手の骨折による回旋変形
近位指節間関節を90°曲げると,正常では末節骨からの線が近位手根骨上の1点に収束する。この線のうち1本が偏位していると,中手骨骨折が示唆される。 |
診断
X線
一般的には,前後像,側面像,および斜位像が診断に役立つ。
治療
開放創に対して,ときに抗菌薬の予防投与
副子固定
特定の骨折に対して,整復
中手指節関節近くに創傷(特に直線的な穿刺)がある場合,誰かの口を殴打したかどうかについて具体的に質問すべきである。口を殴打していた場合,ヒトの口腔細菌叢による汚染の可能性があり,感染を予防する対策(例,創傷探索および洗浄, 抗菌薬の予防投与 抗菌薬 ヒトおよびその他の哺乳類(ほとんどがイヌとネコであるが,他にリス,スナネズミ,ウサギ,モルモット,サルもある)による咬傷はよくみられ,ときに深刻な病態および障害を引き起こす。手,四肢,顔面が好発部位であるが,ヒト咬傷はときに乳房や性器に生じることがある。 大型哺乳類による咬傷はときに重大な組織損傷を引き起こし,米国では毎年およそ10~20人(大半が小児)がイヌ咬傷で死亡している。しかしながら,大半の咬傷で生じる創傷は比較的軽度である。... さらに読む )がしばしば必要である。
中手骨頸部骨折の治療は副子により(例,第4または第5中手骨骨折に対する ulnar gutter splint Ulnar gutter splint ),通常は少なくとも数週間用いる。副子の装着前に整復が必要か否かは,骨折によって異なる。
以下の背側または掌側屈曲に対しては整復の必要はない:
第4中手骨では35°未満
第5中手骨では45°未満
以下に対しては整復が必要である:
いずれかの中手骨の回旋変形
屈曲を伴う第2および第3中手骨骨折
通常,非観血的整復が可能である。血腫内局所麻酔薬浸潤麻酔(hematoma block)または尺骨神経ブロックを用いると,整復時の疼痛軽減に役立つことがある。
副子を外した後,患者は徐々に関節可動域訓練を開始してもよい。
Ulnar gutter splint
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要点
中手骨頸部骨折は疼痛,腫脹,圧痛,およびときに変形(例,回旋変形)を引き起こす。
X線前後像,側面像,および斜位像を撮影する。
中手指節関節近くに創傷がある場合,誰かの口を殴打したかどうか質問し,殴打していた場合は感染を予防する対策を行う(例,抗菌薬の予防投与)。
中手骨頸部骨折は副子により治療し,屈曲が大きい場合または回旋変形がある場合は,通常は非観血的整復によってまず骨折を整復する。