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上腕骨遠位端骨折

(上腕骨顆上骨折)

執筆者:

Danielle Campagne

, MD, University of California, San Francisco

レビュー/改訂 2021年 1月
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本ページのリソース

上腕骨遠位端骨折は通常伸ばした腕から落ちる転倒または直接的な力により起こり,神経血管損傷を伴う場合がある。

上腕骨遠位端骨折は,3~11歳の小児によくみられる。通常の受傷機転は,肘関節を伸ばした状態の腕から落ちる転倒または直接的な力によるものであり,しばしば後方転位または屈曲を引き起こす。

上腕動脈または正中神経もしくは橈骨神経が損傷を受けることがあり,特に骨折が後方に転位または屈曲している場合にその可能性が高い。神経血管損傷はときに前腕のコンパートメント症候群につながるが,これはVolkmann阻血性拘縮(かぎ爪状の手の変形を来す手関節の屈曲拘縮)を引き起こすことがある。骨折は通常は関節内であり,関節血腫を引き起こす。

症状と徴候

肘関節部に疼痛と腫脹がみられ,肘関節の可動域が制限される。

前腕前内側の斑状出血は上腕動脈損傷を示唆する。

診断

  • 前後および側面X線

骨折線が認められないことがあるが,その他のX線所見により骨折が示唆されることがある。そのような所見としては以下のものがある:

  • 後方fat pad

  • 前方fat pad(sail sign)

  • 異常なanterior humeral line

  • 異常なradiocapitellar line

肘関節の真のX線側面像での後方fat padは,常に異常である;この所見は関節液貯留に特異的であるが,感度は非常に高いわけではない。

変位した前方fat padが関節液貯留を示すことがあるが,特異的ではない。

しかし,後方脂肪体がみられる場合,または大きい前方fat pad(sail sign)が存在する場合,不顕性骨折があるものと想定し,それに対して治療すべきである。

Anterior humeral line Anterior humeral lineおよびradiocapitellar line Anterior humeral lineおよびradiocapitellar line は,X線の真の側面(true lateral)像上で上腕骨前縁に沿って引いた線である。この線は,正常では上腕骨小頭の中央を横断する。この線が何も横断しないか,上腕骨小頭前部のみを横断する場合,後方転位のある上腕骨遠位端骨折の可能性があり,そのため斜位像を撮影し,他の画像検査を施行することもある。

Radiocapitellar lineは,肘関節の真のX線側面像上で橈骨の骨幹中央部を通して引いた線であり,正常では上腕骨小頭を二分する。そうでない場合,不顕性骨折を疑うべきである。

パール&ピットフォール

  • 小児における所見が上腕骨遠位端骨折に一致する場合,X線像を詳細に見直して,不顕性骨折の所見(例,後方fat pad,異常なanterior humeral lineまたはradiocapitellar line)がないか確認する。

小児における所見が上腕骨遠位端骨折に一致する場合,X線像を詳細に見直して,不顕性骨折の所見(例,後方fat pad,異常なanterior humeral lineまたはradiocapitellar line)がないか確認すべきである。

骨折が疑われる場合は,徹底的な神経血管系の診察を行う。特に正中神経,橈骨神経,および尺骨神経に注意すべきである。末梢の脈拍を対側肢と比較するべきであり,斑状出血または増大する腫脹(上腕動脈損傷を示唆する)が前腕前面の内側にある場合は特にこれを行う。

Anterior humeral lineおよびradiocapitellar line

正常では,X線側面像上で上腕骨前縁に沿って引いたanterior humeral lineが上腕骨小頭の中央を横断する。線が何も横断しないか,上腕骨小頭前部のみを横断する場合,後方転位のある上腕骨遠位端骨折が存在する可能性がある。

Radiocapitellar lineは,橈骨の骨幹中央部を通して引いた線であり,正常では上腕骨小頭を二分する。そうでない場合,不顕性骨折を疑うべきである。

Anterior humeral lineおよびradiocapitellar line

治療

  • 早期の整形外科医のコンサルテーション

  • 転位のない骨折または不顕性骨折では,副子固定

  • 転位骨折では,しばしば観血的整復内固定術(ORIF)

  • 臨床的に疑いのある骨折では,副子固定および綿密なフォローアップ

転位のある上腕骨顆上骨折は,そのままの位置で副子固定するべきであり,整復してはならない。

長期合併症のリスクがあるため,ほとんどの骨折は整形外科医が管理する。ほとんどの患者は神経血管の観察のために入院させるが,転位のない骨折の患者で,翌日フォローアップのために再受診すると信頼できる場合は,一部の医師は副子固定を行い退院させる。

特に後方への転位または屈曲のある上腕骨遠位端骨折は,整復中に神経および/または橈骨動脈が損傷する可能性があるため,整形外科医が整復すべきである。非観血的整復を併用するギプス固定を試してもよいが,通常はORIFが必要であるため,一般的には推奨されない。

臨床的に骨折が疑われ(例,小児が肘関節を正常な可動域で動かすことができない)X線が正常に見える場合は,関節を副子固定し綿密なフォローアップを手配すべきである。

パール&ピットフォール

  • 転位のある上腕骨顆上骨折は,そのままの位置で副子固定し,整復しようとしてはならない。

要点

  • 上腕骨遠位端骨折は小児でより一般的である。

  • この骨折は橈骨動脈または正中神経を損傷する可能性がある。

  • 後方および前方fat padがないかX線を確認し,anterior humeral lineおよびradiocapitellar lineを用いて不顕性骨折の可能性が高いかどうかを判定する。

  • 治療のために,整形外科医へのコンサルテーションを行う。

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