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膀胱外傷

執筆者:

Noel A. Armenakas

, MD, Weill Cornell Medical School

レビュー/改訂 2020年 12月
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外的要因による膀胱損傷は下腹部,骨盤,または会陰部の鈍的または穿通性外傷のいずれかによって生じる。鈍的外傷の方がより多くみられ,通常は高速での交通事故や転落など,突然の減速または外部からの下腹部への打撃に起因する。最も頻度が高い合併損傷は 骨盤骨折 骨盤骨折 骨盤骨折は,恥骨結合,寛骨,寛骨臼,仙腸関節または仙骨に生じることがある。低エネルギーの転倒によるごくわずかの転位のある安定型損傷から,大量出血を引き起こしうる著しい転位のある不安定型損傷まで様々である。泌尿生殖器,腸管,および神経の損傷も起こる可能性がある。診断は単純X線および通常はCTによる。軽微な安定型骨折では対症療法のみが必要とな... さらに読む 骨盤骨折 であり,鈍的外傷に起因する膀胱破裂の95%を上回る症例で認められる。その他の合併損傷としては,長管骨骨折,中枢神経系損傷,胸部損傷などがある。穿通性損傷(銃創が最も多い)は膀胱損傷の10%未満を占める。

膀胱は骨盤内手術中に最も損傷が起きやすい臓器である。そのような損傷は,経尿道的手術,婦人科処置(最も頻度が高いのは腹式子宮摘出術, 帝王切開術 帝王切開 帝王切開は,子宮を切開する外科手術による分娩である。 米国では最大30%の分娩が帝王切開による。帝王切開率は変動する。帝王切開率は最近上昇しており,これは一部には帝王切開後の経腟分娩(VBAC)を試みる女性での子宮破裂のリスク上昇についての懸念による。 帝王切開における合併症発生率および死亡率は低いが,依然として経腟分娩のそれよりは数倍高... さらに読む ,骨盤腫瘤摘出術),または大腸切除術の施行中に発生しうる。素因としては,過去の手術または放射線療法による瘢痕や,炎症,大きな腫瘍などがある。

膀胱損傷はX線検査で認められた損傷の程度に基づき,挫傷と破裂に分類される。破裂には腹膜外破裂,腹膜内破裂,または両方が混在する場合があるが;大半は腹膜外破裂である。

外傷に起因する膀胱破裂の死亡率は20%にも達しうるが,これは膀胱損傷自体よりも合併する臓器損傷に由来する。

症状と徴候

膀胱外傷の症状としては恥骨上部痛や排尿不能などがみられ,徴候としては血尿,恥骨上部圧痛,膀胱拡張,循環血液量減少性ショック(出血に起因),腹膜内破裂での腹膜刺激徴候などが挙げられる。鈍的外力に起因する膀胱破裂では,ほぼ常に骨盤骨折および肉眼的血尿を呈する。

診断

  • 逆行性膀胱造影および単純X線またはCT

膀胱外傷を示唆する症状および徴候は,わずかであるか非特異的なことが多く,そのため,診断するには高い水準をもって周到に疑うことが求められる。診断は病歴,身体診察,X線所見,および血尿(主に肉眼的)の有無に基づいて疑う。確定診断は,希釈した造影剤350mLを膀胱に直接充満させる逆行性膀胱造影による。 単純X線検査 造影剤を使用しない単純X線撮影 腎疾患および泌尿器疾患患者の評価には,しばしば画像検査が用いられる。 放射線不透過性造影剤を使用しない腹部X線撮影は,尿管ステントの位置確認や腎結石の位置および成長のモニタリングを目的として施行されることがある。しかしながら, 尿路結石症の初期診断においては,単純X線はCTより感度が低く,詳細な解剖学的情報も得られないことから,第1選択の... さらに読む 造影剤を使用しない単純X線撮影 または CT CT 腎疾患および泌尿器疾患患者の評価には,しばしば画像検査が用いられる。 放射線不透過性造影剤を使用しない腹部X線撮影は,尿管ステントの位置確認や腎結石の位置および成長のモニタリングを目的として施行されることがある。しかしながら, 尿路結石症の初期診断においては,単純X線はCTより感度が低く,詳細な解剖学的情報も得られないことから,第1選択の... さらに読む CT が可能であるが,CTには合併した腹腔内損傷や骨盤骨折を評価できるという付加的な利点がある。単純X線検査を用いる場合のみ,drainage filmを撮るべきである。男性で尿道断裂が疑われる場合は,尿道カテーテル挿入前に尿道造影を施行する。

鈍的または穿通性の損傷がある患者では,出血について評価するために全例で直腸診を行うべきであり,出血がみられた場合は腸管損傷の合併が強く示唆される。さらに,女性患者では腟損傷の評価のために念入りな内診を行うべきである。

治療

  • カテーテル留置

  • ときに外科的修復

膀胱挫傷は,肉眼的血尿が消失するまでのカテーテル留置のみで治療できる。腹膜外破裂症例の大半では,尿が自由に排出していて,かつ膀胱頸部に損傷がなければ,カテーテル留置のみで治療できる。損傷が膀胱頸部にも及んでいる場合は,失禁の可能性を制限するために外科的な検索および修復が必要である。同様に,持続性の肉眼的血尿,血餅の残留(clot retention),または直腸もしくは膣の外傷が合併している場合には外科的管理が適応となる。穿通性外傷の全症例と鈍的外傷に起因する腹膜内破裂症例には,外科的な検索が必要となる。手術中に発生する膀胱損傷の大半は,術中に同定および修復される。

要点

  • 外傷に起因する膀胱損傷の大半は鈍的外力によって発生し,骨盤骨折および肉眼的血尿を伴う。

  • 損傷と一致する受傷機転が確認でき,かつ恥骨上部の疼痛および圧痛,排尿不能,血尿,膀胱拡張,または原因不明のショックもしくは腹膜刺激徴候がみられる場合には,本症を考慮する。

  • 逆行性膀胱造影により診断を確定する。

  • 挫傷および腹膜外破裂症例の大半は,カテーテル留置のみで管理できる。腹腔内破裂の場合は外科的に検索すべきである。

  • 手術中に発生する膀胱損傷の大半は,術中に同定および修復される。

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