脂肪酸は心臓で優先的に使用されるエネルギー源であり,長時間の労作時には骨格筋の重要なエネルギー源にもなる。また空腹時には,身体のエネルギー需要の大部分を脂肪代謝によって供給しなければならなくなる。脂質をエネルギー源として使用するには,脂肪組織を異化して遊離脂肪酸とグリセロールに変換する必要がある。遊離脂肪酸は,肝臓および末梢組織においてβ酸化により代謝されてアセチルCoAとなり,グリセロールは肝臓においてトリグリセリド合成または糖新生に利用される。カルニチンは,長鎖脂肪酸の酸化に必要である。 カルニチン欠乏症 カルニチン欠乏症 カルニチン欠乏症は,アミノ酸のカルニチンの摂取不足または代謝異常に起因する。多様な疾患群を引き起こしうる。筋肉代謝が障害され,ミオパチー,低血糖,または心筋症が生じる。乳児では典型的に低血糖,低ケトン性の脳症を呈する。ほとんどの場合,治療は食物性L‐カルニチンによる。 ( 低栄養の概要も参照のこと。) アミノ酸のカルニチンは,長鎖脂肪アシル補酵素A(CoA)エステルを筋細胞のミトコンドリアに輸送するために必要であり,エステルはミトコンド... さらに読む には,一次性のものと二次性のものがある。二次性カルニチン欠乏症は,多くの有機酸血症および脂肪酸酸化障害による二次的な生化学的異常である。
脂肪酸およびグリセロールの代謝異常には,他にも以下の物質が関与するいくつかの疾患がある:
遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチ 遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチ 遺伝性代謝疾患(先天性代謝異常症)は大半がまれであるため,診断するには強く疑う必要がある。適切な時期に診断を下すことができれば,早期治療が可能となり,急性および慢性の合併症や発達障害,さらには死を回避できる可能性がある。 症状と徴候は非特異的となる傾向があり,それらは遺伝性代謝疾患以外の原因(例,感染)によって生じることの方が多いため,そうしたより可能性の高い原因も検討すべきである。... さらに読む も参照のこと。