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結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC)

執筆者:

M. Cristina Victorio

, MD, Akron Children's Hospital

レビュー/改訂 2020年 3月
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結節性硬化症は,複数の臓器に腫瘍(通常は過誤腫)が発生する優性遺伝性疾患である。診断には,病変のある臓器の画像検査が必要である。治療は対症療法か,中枢神経系腫瘍が増大していれば,シロリムスまたはエベロリムスを使用する。合併症を検出するためにモニタリングを定期的に行わなければならない。

結節性硬化症(TSC)は,6000人に1人の小児で発生する神経皮膚症候群であり,85%の症例ではハマルチンの産生を制御するTSC1遺伝子(9q34)またはチュベリンの産生を制御するTSC2遺伝子(16p13.3)の変異が関与している。これらのタンパク質には増殖抑制作用がある。片方の親が本疾患を有する場合,児のリスクは50%である。しかしながら,症例の3分の2は新たな変異によって発生する。

TSCの患者には,様々な年齢で以下のような複数の臓器に腫瘍または異常が生じる:

  • 心臓

  • 腎臓

  • 皮膚

中枢神経系の結節が神経回路を遮断することにより,発達遅滞および認知障害が生じるほか, 点頭てんかん 点頭てんかん 点頭てんかんは,両上肢の突然の屈曲,体幹の前屈,下肢の伸展,および脳波上のヒプスアリスミアを特徴とするてんかん発作である。治療は副腎皮質刺激ホルモンまたは,ときにビガバトリンによる。 点頭てんかんの発作は数秒間続き,1日に何回も繰り返すことがある。通常は1歳未満の小児に発生する。発作は約5歳までに自然に消失するが,しばしば他の発作型に置き換わる。 病態生理は不明であるが,点頭てんかんは皮質と脳幹の異常な相互作用を反映している可能性がある... さらに読む などの痙攣発作が発生することもある。ときに結節が増大して側脳室からの髄液流が閉塞することにより,片側性 水頭症 水頭症 水頭症とは,過剰な量の髄液が集積した状態であり,脳室拡大および/または頭蓋内圧亢進が生じる。症状と徴候には,頭部拡大,泉門膨隆,易刺激性,嗜眠,嘔吐,痙攣などがある。診断は,閉鎖前の泉門がある新生児および幼若乳児では超音波検査により,月齢の高い乳児および小児ではCTまたはMRIによる。治療は重症度と症状の進行度に応じて,経過観察から外科的介入までに及ぶ。 水頭症では,頭蓋腔内の過剰な髄液に起因する内圧上昇により,頭蓋骨が異常に拡大するこ... さらに読む 水頭症 が引き起こされる。ときに結節が悪性化して 神経膠腫 神経膠腫 神経膠腫は脳実質に由来する原発性腫瘍である。症状は多様で部位によっても異なり,局所神経脱落症状,脳症,または痙攣発作として現れる。診断は主にMRIに基づき,標準的なT1およびT2強調画像の両方(できればガドリニウムで造影する)を施行した後,生検と分子プロファイリングを行う。治療には外科的切除,放射線療法などがあり,一部の腫瘍には化学療法を行うこともある。切除による治癒はまれである。... さらに読む 神経膠腫 (特に 上衣下巨細胞性星細胞腫 星細胞腫 星細胞腫は星細胞から生じる小児中枢神経系腫瘍である。診断はMRIに基づく。治療は外科的切除,放射線療法,化学療法の併用により行う。 星細胞腫の悪性度は,低悪性度(low-grade)の緩徐進行型腫瘍(最も頻度は高い)から,高悪性度(high-grade)の悪性腫瘍にまで様々である。星細胞腫は,1つの腫瘍群としては最も頻度の高い 小児脳腫瘍であり,脳腫瘍の約40%を占める。ほとんどが5歳から9歳までに発生する。この種の腫瘍は脳または脊髄の... さらに読む [SEGA])となる。

心臓の筋腫が出生前に発生することがあり,ときに新生児期に心不全を引き起こす。それらの筋腫は時間の経過とともに消失する傾向があり,通常は以降の小児期や成人期には症状を引き起こさない。

症状と徴候

臨床像の重症度は非常に多様である。典型的には皮膚病変がみられる。

中枢神経系病変のある乳児は, 点頭てんかん 点頭てんかん 点頭てんかんは,両上肢の突然の屈曲,体幹の前屈,下肢の伸展,および脳波上のヒプスアリスミアを特徴とするてんかん発作である。治療は副腎皮質刺激ホルモンまたは,ときにビガバトリンによる。 点頭てんかんの発作は数秒間続き,1日に何回も繰り返すことがある。通常は1歳未満の小児に発生する。発作は約5歳までに自然に消失するが,しばしば他の発作型に置き換わる。 病態生理は不明であるが,点頭てんかんは皮質と脳幹の異常な相互作用を反映している可能性がある... さらに読む と呼ばれる痙攣発作を呈することもある。患児は他の種類の痙攣発作, 知的障害 知的能力障害 知的能力障害は,平均を著しく下回る知的機能(しばしば知能指数で70~75未満と表現される)に加えて,適応機能(すなわち,コミュニケーション,自己主導,社会的技能,自己管理,社会資源の利用,自身の安全の維持)において制限がみられるとともに,支援の必要性が実証されていることが特徴である。管理は教育,家族カウンセリング,および社会的支援から構成される。 知的能力障害は,神経発達障害の1つと考えられている。神経発達障害とは,小児期早期,典型的に... さらに読む 自閉症 自閉スペクトラム症 自閉スペクトラム症とは,社会的交流およびコミュニケーションの障害,反復常同的な行動様式,ならびにしばしば知的能力障害を伴う不均一な知的発達を特徴とする,神経発達障害の1つである。症状は小児期早期に始まる。患児の大部分においてその原因は不明であるが,エビデンスから遺伝的要素の存在が支持されており,また一部の患者では,何らかの内科的病態によって自閉症が引き起こされることもある。診断は発達歴および観察に基づく。治療は行動管理であり,ときに薬物... さらに読む 学習障害 学習障害の概要 学習障害とは,学業成績において個人の知的能力から予測される潜在的な水準と実際の水準との間に乖離を生じさせる病態のことである。学習障害では,集中または注意,言語発達,視覚および聴覚情報処理に機能障害や困難がみられる。診断では,認知的,教育的,言語的,内科的,心理学的評価が行われる。治療は主に教育的管理であり,ときに内科的治療,行動療法,および精神療法も行われる。 学習障害は神経発達障害の一種と考えられている。神経発達障害とは,小児期早期,... さらに読む ,または 行動面の問題 小児における行動上の問題の概要 小児または青年が示す行動の中には,親や他の大人にとって心配の種になるものが数多くある。行動または行動様式は,発生頻度が高いか持続期間が長く,かつ不適応(例,情緒的成熟,社会的機能,または認知機能に干渉する)である場合に,臨床的な意義をもつようになる。重度の行動上の問題は 精神障害に分類されることもある(例,... さらに読む を有することがある。

網膜無色素斑がよくみられ,眼底検査で観察可能なことがある。

永久歯のエナメル質の小腔もよくみられる。

皮膚所見として以下のものがある:

  • 初期は淡い灰色を呈する葉状白斑,乳児期または小児期早期に発生する

  • 顔面の血管線維腫(脂腺腫),小児期後期に発生する

  • 先天性の粒起革様皮(オレンジの皮に似た隆起性病変),通常は背部に出現する

  • 皮下結節

  • カフェオレ斑

  • 爪下線維腫,小児期または成人期早期のあらゆる時点で発生しうる

結節性硬化症の皮膚症状

診断

  • 臨床基準

  • 皮膚病変の同定

  • 罹患臓器の画像検査

  • 遺伝子検査

これらの基準によりTSCの確定診断を下すには,以下のいずれかが必要である:

  • 正常組織のDNAにおけるTSC1またはTSC2のいずれかの病原性変異の同定

  • 2つの大症状または1つの大症状 + 2つ以上の小症状

これらの基準によりTSCの暫定診断を下すには,以下が必要である:

  • 1つの大症状または2つ以上の小症状

身体診察を行って典型的な皮膚病変を検索する。網膜斑の有無を確認するために眼底検査を行うべきである。

胎児超音波検査で心臓の筋腫が検出された場合,または点頭てんかんが発生した場合は,TSCが疑われる。

心臓または頭部の症候がルーチンの出生前超音波検査で描出されることがある。確定診断には罹患臓器のMRIまたは超音波検査が必要である。

特異的な遺伝子検査が利用できる。

診断に関する参考文献

予後

予後は症状の重症度に依存する。軽度の症状がみられる乳児は,一般に予後良好で,生産的な人生を長く送るが,重度の症状がみられる乳児には重篤な機能障害が生じることがある。

重症度にかかわらず,大半の患児で持続的な発達の進行がみられる。

治療

  • 対症療法

  • シロリムスまたはエベロリムス

TSCの治療は対症療法と特異的治療の両方による:

現在のところ,シロリムスとその誘導体であるエベロリムスの経口薬は 上衣下巨細胞性星細胞腫 星細胞腫 星細胞腫は星細胞から生じる小児中枢神経系腫瘍である。診断はMRIに基づく。治療は外科的切除,放射線療法,化学療法の併用により行う。 星細胞腫の悪性度は,低悪性度(low-grade)の緩徐進行型腫瘍(最も頻度は高い)から,高悪性度(high-grade)の悪性腫瘍にまで様々である。星細胞腫は,1つの腫瘍群としては最も頻度の高い 小児脳腫瘍であり,脳腫瘍の約40%を占める。ほとんどが5歳から9歳までに発生する。この種の腫瘍は脳または脊髄の... さらに読む の治療にのみ承認されているが,TSCのほとんどの合併症の予防および治療に使用できることを示唆するエビデンスが増えている。これらの薬剤は,一部の患者で脳の結節,大きすぎて切除できない心臓横紋筋腫,および顔面の病変を縮小させ,痙攣発作を軽減することが証明されている。顔面の血管線維腫の治療には,シロリムスの外用薬が有用となることがある(1 治療に関する参考文献 結節性硬化症は,複数の臓器に腫瘍(通常は過誤腫)が発生する優性遺伝性疾患である。診断には,病変のある臓器の画像検査が必要である。治療は対症療法か,中枢神経系腫瘍が増大していれば,シロリムスまたはエベロリムスを使用する。合併症を検出するためにモニタリングを定期的に行わなければならない。 結節性硬化症(TSC)は,6000人に1人の小児で発生する神経皮膚症候群であり,85%の症例ではハマルチンの産生を制御する さらに読む 治療に関する参考文献 )。これらをはじめとするTSCの合併症を対象として,これらの薬剤を検討している研究が進行中である。

青年および妊娠可能年齢の成人には遺伝カウンセリングが適応となる。

合併症のスクリーニング

TSCの合併症を早期発見するため,定期的なスクリーニングを全ての患者に行うべきである。

典型的には以下を行う:

  • 頭蓋内合併症を検出するための頭部MRI,少なくとも3年毎

  • 腎腫瘍を検出するための腎超音波検査または腹部MRI,学齢期は3年毎,成人期は1~2年毎

  • 18歳以上の女子では,労作時呼吸困難および息切れのスクリーニングを年1回,高分解能CTを5~10年に1回

  • 学校での支援および行動面での介入計画に役立つ,小児への定期的な神経心理学的検査および行動学的スクリーニング

臨床的なモニタリングも重要であり,ときにより頻回の検査が必要になる。頭痛,技能の喪失,または新たな種類の痙攣発作の発生は,中枢神経系に生じた結節の悪性化または増大が原因である可能性があり,神経画像検査の適応である。

治療に関する参考文献

  • 1.Darling T: Topical sirolimus to treat tuberous sclerosis complex (TSC).JAMA Dermatol 154(7):761–762, 2018.doi: 10.1001/jamadermatol.2018.0465.

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