(消化器系の先天異常の概要 消化器系の先天異常の概要 大半の先天性消化管異常は,何らかの腸閉塞を引き起こし,出生時または生後1~2日までに哺乳困難,腹部膨隆,および嘔吐で発症することが多い。 回転異常など転帰が非常に良好な先天性消化管奇形もある一方,死亡率が10~30%と比較的高い先天性 横隔膜ヘルニアなど,転帰が不良な消化管奇形もある。... さらに読む も参照のこと。)
米国における胆道閉鎖症の発生率は出生10,000~15,000人当たり1例である(1 総論の参考文献 胆道閉鎖症は,肝外胆管の進行性硬化による胆道系の閉塞である。診断は血液検査,超音波検査,肝生検,および肝胆道シンチグラフィーによる。治療は手術による。 ( 消化器系の先天異常の概要も参照のこと。) 米国における胆道閉鎖症の発生率は出生10,000~15,000人当たり1例である( 1)。 ほとんどの場合,胆道閉鎖症は生後数週間が経過した後,おそらく肝外(および,ときに肝内)胆管の炎症および瘢痕化に引き続いて発症する。早産児または出生時の... さらに読む )。
ほとんどの場合,胆道閉鎖症は生後数週間が経過した後,おそらく肝外(および,ときに肝内)胆管の炎症および瘢痕化に引き続いて発症する。早産児または出生時の新生児にはほとんどみられない。炎症反応の原因は不明であるが,レオウイルス3型やサイトメガロウイルスなど,いくつかの感染性微生物の関与が示唆されている。さらに,いくつかの遺伝子(CFC1,FOXA2)の1つに,異常を伴う遺伝的要素が存在している可能性もある。
無治療の場合,進行性かつ不可逆的な肝臓の瘢痕化を伴う 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む が生後2カ月までに生じる可能性がある。
約15~25%の患児には,多脾/無脾,腸閉鎖,内臓逆位, 心奇形 心血管系の先天異常の概要 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む , 腎奇形 泌尿生殖器系の先天異常の概要 泌尿生殖器における解剖学的先天異常は,臓器系先天異常のなかで最も頻度の高いものである。 尿路奇形は, 尿路感染症や 閉塞,尿うっ滞, 結石形成,腎機能障害など多くの合併症の素因となる。ここでは次のような先天性の尿路奇形を考察する: 膀胱異常 プルーンベリー症候群 腎奇形 さらに読む など,他の先天異常がみられる。
総論の参考文献
1.Zagory JA, Nguyen MV, Wang KS: Recent advances in the pathogenesis and management of biliary atresia.Curr Opin Pediatr 27(3):389–394, 2015.doi: 10.1097/MOP.0000000000000214.
症状と徴候
胆道閉鎖症の乳児は 黄疸 新生児高ビリルビン血症 黄疸とは,高ビリルビン血症(血清ビリルビン濃度の上昇)が原因で皮膚および眼球が黄色く変色することである。黄疸を発生させる血清ビリルビン値は,皮膚の色調および体の部位によって異なるが,通常,2~3mg/dL(34~51μmol/L)で強膜に,約4~5mg/dL(68~86μmol/L)で顔面に黄疸が認められるようになる。ビリルビン値が上昇す... さらに読む を呈し,しばしば濃色尿(抱合型ビリルビンを含有する),灰白色便,および肝脾腫がみられる。
生後2~3カ月までに,発育不良と栄養障害,そう痒,易刺激性,および脾腫がみられることがある。
無治療の場合は,肝線維化が 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む に進行し,結果として 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。... さらに読む , 腹水 腹水 腹水とは,腹腔内に液体が貯留した状態のことである。最も一般的な原因は門脈圧亢進症である。症状は通常,腹部膨隆により生じる。診断は身体診察のほか,しばしば超音波検査またはCTに基づく。治療法としては,食塩制限,利尿薬,腹腔穿刺などがある。腹水に感染が起こることもあり( 特発性細菌性腹膜炎),しばしば疼痛と発熱を伴う。感染の診断には腹水の分析および培養が必要である。感染は抗菌薬で治療する。... さらに読む による腹部膨隆,腹壁静脈怒張,および 食道静脈瘤 静脈瘤 静脈瘤は,門脈圧亢進症に起因する下部食道または近位胃の静脈拡張で,門脈圧亢進症の原因は典型的には肝硬変である。大出血することがあるが,他には何も症状を引き起こさない。診断は上部消化管内視鏡検査による。治療は主に内視鏡的結紮術およびオクトレオチド静脈内投与による。ときに経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術を行う必要がある。 ( 消化管出血の概要も参照のこと。) 門脈圧亢進症は,いくつかの病態によってもたらされるが,主な原因は... さらに読む による上部消化管出血が発生する。
診断
総ビリルビンおよび直接ビリルビン
肝機能検査
血清α1-アンチトリプシン濃度
汗中塩化物イオン濃度の測定
腹部超音波検査
肝胆道シンチグラフィー
一般的には肝生検および術中胆道造影
胆道閉鎖症は,総ビリルビン値と直接ビリルビン値両方の上昇によって同定される。 α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症は,肺の主要なアンチプロテアーゼであるα1-アンチトリプシンの先天的欠乏であり,成人においてプロテアーゼを介した組織破壊および気腫の増大を招く。異常なα1-アンチトリプシンの肝臓への蓄積は,小児でも成人でも肝疾患の原因となる。血清α1-アンチトリプシン値が < 11mmol/L(< 80mg/dL)であれば,診断が確定する。治療として,禁煙,気管支拡張薬,感染症の早期治療,および選択された症例では... さらに読む も胆汁うっ滞の原因として比較的頻度が高いため,血清α1-アンチトリプシン濃度を測定すべきである。肝機能を評価するために必要な検査としては,アルブミン,肝酵素,プロトロンビン時間/部分トロンボプラスチン時間(PT/PTT),アンモニア値などがある。 嚢胞性線維症 汗試験 嚢胞性線維症は,主に消化器系と呼吸器系を侵す外分泌腺の遺伝性疾患である。慢性肺疾患,膵外分泌機能不全,肝胆道疾患,および汗の電解質濃度の異常高値を引き起こす。診断は,新生児スクリーニング検査で陽性と判定された患者または特徴的な臨床的特徴を認める患者において,汗試験を行うか,嚢胞性線維症の原因遺伝子変異を2つ同定することによる。治療は,積極... さらに読む を除外するために汗の塩分濃度も測定すべきである。しばしば, 新生児胆汁うっ滞 診断 胆汁うっ滞はビリルビンの排泄不全であり,抱合型 高ビリルビン血症および黄疸を引き起こす。原因は多数あり,臨床検査,肝胆道シンチグラフィー,ときに肝生検および手術によって同定される。治療は原因により異なる。 胆汁うっ滞は正期産児の2500人に1人で発症する。直接ビリルビン値が1mg/dL(17.1μmol)を超える場合と定義されている。胆汁うっ滞は決して正常ではなく,評価が必要である。... さらに読む に対するその他の代謝性,感染性,遺伝性,および内分泌系の原因について評価するために,さらなる検査が必要となる。
腹部超音波検査は,肝臓の大きさと胆嚢および総胆管の特定の異常を非侵襲的に評価することができる。胆道閉鎖症の乳児では,胆嚢が収縮して小さくなっているか,観察できないことが多い。しかしながら,これらの所見は非特異的である。ヒドロキシ基イミノ二酢酸を用いる肝胆道シンチグラフィー(HIDA scan)も行うべきであり,腸管内への造影剤排泄があれば胆道閉鎖は除外されるが,排泄がない場合は胆道閉鎖症,重度の新生児肝炎,ならびに胆汁うっ滞のその他の原因が考えられる。
胆道閉鎖症の確定診断は,肝生検および術中胆道造影による。古典的な組織学的所見は,線維化による門脈域の拡張と胆管増生である。胆管には胆栓もみられることがある。術中胆道造影では肝外胆管の開存がみられない。
予後
胆道閉鎖症は進行性であり,無治療では生後数カ月までに門脈圧亢進症を伴う肝硬変を起こし,肝不全を来して1歳までに死に至る。
治療
術中胆道造影
肝門部腸吻合術(葛西手術)
しばしば肝移植
胆道閉鎖症が推定される児には,術中胆道造影による外科的検索が必要である。胆道閉鎖症が確定した場合は,肝門部腸吻合術(葛西手術)を施行すべきである。葛西手術は理想的には生後1~2カ月で施行すべきである。この時期を過ぎた場合,短期的予後は顕著に悪化する。術後,多くの患児に胆汁うっ滞の持続,再発性の上行性胆管炎,および発育不良などの重大な慢性的問題がみられる。上行性胆管炎の予防として術後1年間は抗菌薬の予防投与(例,トリメトプリム/スルファメトキサゾール)が処方されることが多い。ウルソデオキシコール酸10mg/kgを1日3回経口投与するなど,胆汁分泌を促進する薬剤(利胆薬)が術後にしばしば使用される。成長を支えるのに十分な摂取量を確保するために,脂溶性ビタミンを補充するなどの栄養療法が非常に重要である。至適治療がなされていても,ほとんどの患児は肝硬変を発症し肝移植を必要とする。
肝門部腸吻合術を受けられない患児には,しばしば1~2歳までに肝移植が必要になる。
要点
ほとんどの場合,胆道閉鎖症は生後数週間が経過した後,おそらく肝外(および,ときに肝内)胆管の炎症および瘢痕化に引き続いて発症する。
患児は黄疸を呈し,しばしば濃色尿(抱合型ビリルビンを含有する),灰白色便,および肝脾腫がみられる。
生後2~3カ月までに,発育不良と栄養障害,そう痒,易刺激性,および脾腫がみられることがある。
血液検査結果,超音波検査,肝胆道シンチグラフィー,肝生検,および術中胆道造影よって診断する。
治療は肝門部腸吻合術(葛西手術)による。
通常はその後に肝移植が必要になる。