(染色体異常症の概要 染色体異常症の概要 染色体異常は様々な疾患の原因となる。性染色体(XおよびY染色体)の異常よりも常染色体(男女とも22対ある相同な染色体)の異常の方が多くみられる。 染色体異常はいくつかのカテゴリーに分けられるが,大きく数的異常と構造異常に分けて考えることができる。 数的異常としては以下のものがある:... さらに読む も参照のこと。)
クラインフェルター症候群は最も頻度の高い 性染色体異常 性染色体異常の概要 性染色体異常には性染色体の異数性,部分欠失,または重複が関与し,モザイクの場合もある。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) 性染色体異常はよくみられ,様々な先天奇形や発育異常を合併する症候群の原因となっている。その大多数は出生前から疑われることはないが,母体年齢が高いなどの他の理由で実施された核型分析の際に偶然発見されることがある。出生時に異常を認識することも困難である場合が多く,思春期まで診断されないこともある。... さらに読む で,出生男児の約1/500に発生する。過剰なX染色体は60%の症例で母親由来である。胚細胞が精巣内で生存できないため,精子およびアンドロゲンが減少する。
患児は高身長で上下肢が不自然に長い傾向がみられる。しばしば小さく硬い精巣がみられ,約30%で 女性化乳房 女性化乳房 この写真には,男性患者の肥大した乳房組織が写っている。 女性化乳房とは,男性において乳腺組織が肥大する病態である。女性化乳房は,乳房の脂肪が増加するものの乳腺組織の肥大はみられない偽性女性化乳房と鑑別する必要がある。 乳児期および思春期にみられる男性乳房の腫大は正常である(生理的女性化乳房)。通常,腫大は一過性かつ両側性で,平滑でかつ硬く,乳輪下に対称性に分布する;乳房に圧痛を伴うこともある。思春期に発生する生理的女性化乳房は,通常は約... さらに読む が認められる。
通常,思春期発来年齢は正常であるが,顔毛の発育不良がしばしば認められる。言語性学習障害の素因がある。臨床像は非常に多彩であり,47,XXY男性の多くは正常な外見と知能を有する。精巣の発達は,精細管が硝子化して機能を喪失した状態から精子を多少産生できる状態まで様々であり,卵胞刺激ホルモンの尿中排泄量がしばしば高値となる。
約15%の症例でモザイクがみられる。一部の細胞で正常な男性の核型(XY)を有する男性では,生殖能力があり,体型異常はそれほど明白でない場合がある。Y染色体に加えてX染色体を3つまたは4つ有する男性もおり,5つ有する男性も存在する。X染色体の数が増えるほど,知的障害と体型異常の重症度が高くなる。過剰なX染色体1つにつき,IQが15~16ポイント低下し,言語機能(特に表出性言語)が最も影響を受ける。
診断
出生前診断,しばしば母体年齢が高いなどの他の理由で細胞遺伝学的検査が行われた場合
臨床的な外観に基づいた出生後の検出
核型分析,蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)解析,および/または染色体マイクロアレイ解析による細胞遺伝学的検査
身体診察で精巣が小さく女性化乳房を有する青年を認めた場合,クラインフェルター症候群が疑われる。多くの男性が不妊症精査の過程で診断される(おそらくモザイクのない47,XXY男性の大半は生殖能力が低い)。
細胞遺伝学的検査(核型分析,FISH解析,および/または染色体マイクロアレイ解析)により診断を確定する。(染色体異常症の診断 診断 染色体異常は様々な疾患の原因となる。性染色体(XおよびY染色体)の異常よりも常染色体(男女とも22対ある相同な染色体)の異常の方が多くみられる。 染色体異常はいくつかのカテゴリーに分けられるが,大きく数的異常と構造異常に分けて考えることができる。 数的異常としては以下のものがある:... さらに読む および 次世代シークエンシング技術 遺伝子診断技術 遺伝子診断技術は急速に発展している。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でDNAまたはRNAを増幅することで,遺伝子または遺伝子断片のコピーを大量に複製することが可能である。 ( 遺伝学の概要も参照のこと。) 遺伝子プローブを用いれば,特定の正常または変異DNA断片の位置を同定することが可能である。様々な種類のプローブにより,幅広い大きさのDNA配列を検討することができる。既知のDNA分節をクローニングして蛍光分子で標識することもでき(蛍光... さらに読む も参照のこと。)
治療
テストステロンの補充
思春期発来直後の妊孕性温存に関するカウンセリング
クラインフェルター症候群を有する男性は,内分泌医が評価し,テストステロン補充の適応があるかどうかを判定すべきである。テストステロン療法は,男性徴候,筋肉量,骨格,および良好な心理社会的機能の発達を確保するため,典型的には思春期に開始する。より最近の研究からは,早期のホルモン療法が47,XXYの男児における発達および行動の問題に役立つ可能性があると示唆されている。
クラインフェルター症候群の男児には,通常,言語療法ならびに言語理解,読字,および認知障害に対する神経心理学的検査が有益である。
思春期発来後,男児は妊孕性温存に関するカウンセリングを受けるべきである。